旭川電気軌道108万株の「顛末」

 旭川電気軌道㈱の筆頭株主・光陽商事㈱が所有する電気軌道株108万株が密かに売却された問題は本誌先月号既報の通りだが、購入代金はなぜかふらのバス㈱から出ていた。しかも光陽商事へ振り込まれる間に2000万円が消えていた。旭川地裁は108万株の譲渡・質権設定禁止の仮処分を決定。108万株と1億円はともに光陽商事が握る。(記事は2月7日現在)

巨額迂回振り込み
 旭川電気軌道の発行株数は714万株で、株主は800人を超える。その数多い株主の筆頭が光陽商事。108万株を所有する。
 本誌先月号既報の通り、その108万株が密かに売却され、売却代金の一部として1億円が光陽商事に振り込まれた。振り込んできたのは昨年11月6日に新設されたばかりの㈱紅葉商事(旭川市神楽岡15の4、金野久男代表)だった。
 1億円もの大金を資本金100万円の設立されたばかりの会社が簡単に捻出できるとは信じがたい。本誌先月号では「電気軌道が関連企業から貸付金として提供させ紅葉商事に回したのではないか」との〝推理〟を紹介したが、その後の取材で、やはり電気軌道の経営陣が子会社に大金を拠出させ、株購入資金として紅葉商事に提供していたことが判明した。
 その金の流れは図表に示した通り。
 まず、ふらのバス(富良野市住吉町)が電気軌道北洋銀行大雪通支店の口座に6999万9460円と4999万9460円を2回にわたって振り込んだ。総額1億1999万8920円。1億2000万円から振込み手数料を引いて手続きしたものと思われる。昨年12月15日午前中の早い時間だ。
 電気軌道はこれに1512円をプラスし1億20000万432円を小切手で紅葉商事に振り出した。432円の端数がつく巨額かつ半端な金額である。
 そして紅葉商事は電気軌道経由で入ってきた1億2000万432円のうち1億円を光陽商事に振り込んだ。
 ふらのバスから出た1億2000万円が、電気軌道─紅葉商事を経て光陽商事の口座に入るまでのすべてが、12月15日の午前中の短時間に行われた。

総額は約4億円
 1億円という巨額な振り込みに心当たりがなかった光陽商事の経理担当者が銀行から教えてもらった振込主の電話に問い合わせると、金野氏と思われる男性が「小山田氏、斎藤氏、宮本氏、私の4人で株譲渡契約を結び、手付金で1億円を振り込み、残金約3億円は3月末に行うことを決めた」と言ったという。電気軌道経営陣が仕切って1億円が動いたのである。金野氏によると、さらに3億円が振り込まれてくるという。
 何度も報じているとおり、光陽商事が電気軌道の筆頭株主であることを利用して宮本典洋氏、電気軌道OBの斎藤哲朗氏らが電気軌道の臨時株主総会を招集し強引に新役員体制を発足させた(10月11日)。社長には元旭川トヨタの村中浩氏が就任し、大竹泰文専務は留任。宮本氏は常務、斎藤氏は監査役に就いた。
 これに対して豊島弘通元会長の相続人で光陽商事の大株主である豊島美智子氏と2人の娘─尾﨑摩衣子氏、濱田美紗子氏が光陽商事の臨時株主総会召集を要求し、開催日は12月15日と決まった。議題は小山田社長解任。つまり、豊島家が光陽商事の〝経営権〟を取り戻す日。その日にぶつけて迂回振込みが実行されたのだ。
 臨時株主総会は予定通り行われて小山田氏は解任され尾﨑氏─濱田氏の姉妹が新たに取締役となった。しかし108万株譲渡契約が法的に問題なく行われていれば、株はもう光陽商事にはない。豊島家が筆頭株主として電気軌道の臨時株主総会を招集し村中社長らに役員退陣を求めることはできないのだ。

弱み握られ?
 ふらのバスは、電気軌道が666株、富良野市が334株所有する、電気軌道の子会社であり、第三セクターでもある。  
 子会社が親会社に資金を融通すること自体に問題はない。ただ、ふらのバスの企業規模を考えると巨額すぎる金額である。 
直近3期の決算を見ると、ふらのバスの売上高は5億7200万円─5億6000万円─5億5600万円と推移している。電気軌道への送金1億2000万円は、年間売上高のほぼ4分の1にあたるのだ。直近3期の純利益は2500万円─5300万円─5400万円で、計算上は直近3期の純利益をそっくり電気軌道に提供した格好。
 ふらのバスの社長は旧経営陣から唯一残留した大竹氏である。12月15日時点では電気軌道専務でありふらのバス社長だ。
 9月に河西社長ととも大竹専務も辞任すると思われていたが、残留するとの情報が流れた。この時、宮本氏は本誌にこう語っている「大竹はまだまだ利用価値があるから、しばらく専務として残す」そしてこう付け加えた。「大竹の女性スキャンダルは聞いているだろう。お前のところ(北海道経済)では書かないだろうな、書くなよ」。
 「まだまだ利用価値がある」とは、大竹氏を利用して株購入資金をふらのバスから引き出すとことではなかったのかというのは考えすぎか? 大竹氏には女性問題がつきまとう。さんろくの某酒場で付き合っている女性と愁嘆場を演じたのは有名な話。社内に親密な関係の女性社員がいることは電気軌道の大半の社員の知るところだ。女性問題で何らかの弱みを握られ、9月に辞められず、さらに巨額拠出という〝危ない橋〟を渡ってしまったということだろうか。

認められた仮処分
 さて、ふらのバスは3月期決算である。1億2000万円が年度末までに返還されていれば大きな問題にならずに済みそうだが、状況は厳しそうだ。というのは、光陽商事の新社長となった尾﨑氏が年末に旭川地裁に申し立てた「電気軌道、紅葉商事は、光陽商事が所有する108万株の売却、書き換えをしてはならない」が認められ「仮処分決定」の判決が1月23日に出たのだ。
 この種の申し立てとしては異例に早い裁判所の決定だ。先月号で斉藤監査役が光陽商事の銀行印の印影を持ち出し警察が出動した騒動を紹介したが、電気軌道と紅葉商事の株取得の手法が尋常でないとの裁判所の判断が働いたようだ。
 108万株は光陽商事に戻った。また、手付金として振り込まれた1億円は光陽商事の口座に残ったまま。ふらのバスは1億2000万円をどう穴埋めするのか。
 尾﨑氏はまた、10月11日の電気軌道株主総会自体が「違法行為があった」として無効を求め1月10日に訴訟を起こしている。

表紙1803
この記事は月刊北海道経済2018年4月号に掲載されています。

スピードマイニング(本社旭川)の将来性早くも〝枯渇〟?

 ビットコイン、仮想通貨、コインチェック…。ITを活用したお金の流れにまつわるニュースが騒がしいが、「私とは関係ない」と思っている人も多いはず。実はこの旭川に昨年、仮想通貨の流通に欠かせない施設が構築されたとの発表があった。しかし、ビットコイン相場の急落から明らかなように、仮想通貨はまだ大きな不安要素をはらんでいる。旭川の施設の将来性にも大きな疑問符がつく。

IT時代の「鉱山」
 かつて北海道は鉱業の一大生産拠点だった。道北だけでも、紋別近郊の鴻之舞鉱山では、金・銀・銅が採掘されていた。下川にあった下川鉱山からは黄銅鉱、磁硫鉄鉱を産出。富良野近郊の野沢鉱山ではクリソタイル(白石綿)を生産していた。留萌、羽幌、昭和炭鉱(沼田町)といった地域では石炭が生産され、日本のエネルギー需要を支えた。しかし、鉱物資源の枯渇や採算割れなどのために、こうした鉱山のほとんどは閉山し、いまでは廃墟となってまれに物好きなマニアが訪れる場か、鉱物生産に伴い大量に残された有害物質を堆積するだけの場となっている。
 2017年、旭川市内で久しぶりに「鉱山」が誕生した。場所は1条通10丁目のオフィスビル内。とはいえトロッコもボタ山もなく、必要なのは専用のコンピュータとネットの回線だ。すべてが計画通り、宣伝通りなら、この場所で「ビットコイン」という名の財産が生み出されるはずだった。
 ここで「採掘施設」を稼働させているのは、同ビル内に登記上の本社を置く㈱スピードマイニング(小嶋真由社長)。この企業のウェブページを開けば、現在、旭川で展開している事業の大枠がわかる。その説明の前に、仮想通貨とは何なのかを説明しなければならない。

膨大な計算への報酬
 仮想通貨とは、ネット上で我々が毎日使う現金のように取引される通貨のこと。専門取引所で現金と交換して購入・売却できる。当局による価値の保証がない反面、規制も受けない。紙・金属の実体としてではなく電子データとしてコンピュータに保存されている。現金はどこかの金庫に預け入れられるのに対し、仮想通貨は複数コンピュータで記録を共有・相互監視するブロックチェーンで管理されている。
 仮想通貨の中で最も有名なのはビットコイン。その後、リップル、イーサリアム、ライトコインといった後発組も登場している。仮想通貨が今後定着するか、商取引の決済で一般的に用いられるようになるかは不明だが、世界中で仮想通貨が新たな投資先として注目を集めたのは事実。とくにビットコイン(BTC)の円に対するレートは昨年4月には1BTC=13万円程度だったものが、しばしば下落しながらも年末に向けてじりじりと上昇し、12月17日には最高値の223万円まで達した。しかしその後急落し、2月7日現在では約80万円となっている。
 ビットコインなど仮想通貨はネットを通じた取引が中心であることから、一攫千金を狙ってなけなしの手持ち資金をつぎ込んだ若者も多い。昨年12月からの急落で、虎の子をすっかり失ってしまった人もいると伝えられている。その反面、ピーク時よりも安くなったいまこそが買い時だと判断して、ビットコイン取引に参入した人もいる。ビットコイン関連業者はなおもテレビやネットで積極的に宣伝を流しており、しばらくはフィーバーが続く可能性もある。
 仮想通貨には、円に対する日本銀行のような管理者が存在しない。代わりに導入されたのが、世界中に分散したコンピュータで仮想通貨の流れを追跡・記録する「ブロックチェーン」という概念だった。ブロックチェーンに乗せて仮想通貨を世界中で流通させるには、膨大な計算を行う必要があるのだが、その計算は有志が提供するコンピュータが担う。無報酬のボランティアではなく、計算量に応じてビットコインで報酬が支払われる。計算しただけで報酬が支払われるというのはあまりにもウマイ話に聞こえるが、実際にそういった話が転がっているのがIT業界だ。

3億円で500台
 このしくみに注目して設立されるのが「マイニングセンター」だ。高速で作動するコンピュータを導入、ネットに接続して作動させることで、報酬を獲得することを目指す。かかるコストは初期の設備投資と電気代、そしてシステムの運用スタッフに支払う人件費だ。
 このうち電気代は、コンピュータを動かすのにかかると同時に、熱くなったコンピュータを冷やすのにもかかる。つまり、気温が涼しい地域でマイニングを行えば、熱い地域よりもコストを抑えることができる。スピードマイニングが旭川進出を決めた理由は、まさにそれだった。
 ス社はホワイトペーパー(投資家向けの事業説明書)の中で以下のように説明している。
 「マイニングセンターは日本の北海道内を予定しています。(中略)日本の北海道は東京から遠く離れた地方で寒冷であり、拠点として適しております」
 ほかにもス社は▽まず自己資金3億円で500台のマイニングマシーンを発注済み▽その後ICO(後述)で30億円を調達、うち20億円でマイニングマシーンをアジア最大規模となる3000台購入、といった大風呂敷をホワイトペーパーで広げている。
 ス社がマイニング以上にウェブページで力を入れて宣伝しているのがICOだ。ICOとは「トークン」という独自の仮想通貨を発行し、投資家に販売して資金を集める行為のこと。仮想通貨の将来がバラ色なら投資家は利益を得られるが、その見通しが立たない現状では、投資家にとりリスクの高い投資先となる。ただ、ス社はWebページ上で、昨年11月付けでトークンの販売が終了したと説明している。販売予定額を売り切ったためなのか、ほかの理由なのかは明らかにされていない。事業への投資を名目に広く出資を募った企業の経営が破綻して大きな被害が出る事件は過去に何度も繰り返されてきただけに、ICOに応募した投資家としてはス社の今後の事業がうまく進むことを祈るしかない。
 この冬も旭川市民を苦しめている厳しい寒さがIT事業で強みになるなら、まさに「奇貨」。IT産業を発展させる絶好のチャンスだ。だが、さまざまな情報を総合すると、ス社の将来性には疑問符がつく。この「鉱山」がそもそも「虚構」だった可能性さえある。

「全日」の再興目指す
 2012年8月、「㈱全日本プロレスリングシステム」という会社が東京都文京区湯島で設立された。設立目的の冒頭には「プロレスの興行」と記されており、取締役には、渕正信という昭和のファンには懐かしいレスラーも名を連ねていた。
 この企業はその後、㈱アールワン→㈱きらめきアセットマネジメント→㈱小嶋不動産と転々と社名を替えていくことになる。会社の設立目的はそれ以上のペースでコロコロと変更され、不動産売買→各種債権の買い取り・保証→新車・中古車販売業→不動産の販売・運用と変遷した。社名が「スピードマイニング」、に変更されたのは昨年10月のこと。ほぼ同時に登記上の本社を旭川市内に移転している。
 こうした社名や目的の頻繁な変更自体に、法的な問題はない。注目すべきは、設立から2013年11月まで「白石伸生」なる人物が社長を務めていたという事実だ。
 実業家の白石氏はプロレス好きが高じて、ジャイアント馬場の死去以降、低迷が続いていた全日本プロレスの支援に名乗りを挙げたが、結局低迷を脱するには至らず、現在はプロレスと距離を置いている模様。SNSで奔放な発言を繰り返したこともあり、一時はプロレスファンに名を知られる存在だった白石氏も、最近ではほぼ忘れられた状態になっている。
 その白石氏の名前が再び登場するのが、㈱みんなのクレジットをめぐる騒動だ。同社はウェブサイトを通じて広く集めた資金を融資する「ソーシャルレンディング」事業を手がけていたが、関東財務局による調査で、集めた資金の大部分が親会社に集中していたことが判明し、昨年3月に1ヵ月間の業務停止命令と業務改善命令を受けた。8月にも東京都から業務停止処分(1ヵ月)と業務改善命令を受けた。みんなのクレジットは数千人から総額34億円を集めたと言われ、投資家は巨額のお金の行方に注目している。なお、白石氏は4月29日付けでみんなのクレジットの社長を辞任している。

「みんクレ」との関係
 話をそろそろスピードマイニングに戻そう。ス社は昨年11月、東京銀座に本社を置く㈱NEWARTの子会社である㈱ニューアート・コインとの戦略的業務提携を発表した。ス社はニュースリリースで「ニューアート・コイン社から弊社にマイニングマシーンが発注され、弊社が運用管理まで一貫してサポートして参ります。また、その結果、幣社が現在実行中のマイニングICOにおける投資家への仮想通貨リターン率はマイニング管理受託からのレベニューシェアによる追加マイニング収入が加算され、これまで以上に高くなります」と強調している。
 ここで白石氏が再度登場する。N社で会長兼社長を務める白石幸生氏は、前述した白石伸生氏の父親だ。
 スピードマイニングと、みんなのクレジット、NEWARTの関係をもう一度整理すれば…
①スピードマイニングの出発点となった企業で初代社長を務めたのが白石伸生氏
②その後、白石伸生氏が社長を務めたみんなのクレジットでは、ネットを通じて集めた資金の大半を関係会社に融資していたことが明らかになり、業務停止処分を受けた。出資金が出資者に戻ってくるかはいまのところ不明
③スピードマイニングはネットを通じて広くマイニング事業への投資を呼びかけている
④ス社の経営からは離れているように見えた白石伸生氏だが、父・白石が経営するN社のグループ会社がス社と提携を結んだ。
 現在、みんなのクレジットは投資家から訴訟を起こされている状況。ウェブの掲示板には、ピンチを打開するためス社とN社がICOを企てたのだろうといった観測も書き込まれている。
 本誌ではス社の旭川事務所に電話をかけて取材を申し込んだが「代表は東京にいて忙しい」「取材は受けていない」との回答。ウェブサイトを通じて再度取材を申し込んだものの、英文の自動返信だけが返ってきた。ス社の本社があるはずのオフィスビルを訪ねたが、入り口の雪の積もり方から判断して、人の出入りはほとんど行われていないようだ。

消えた580億円
 この記事の取材をしている最中に「コインチェック」事件が発生した。仮想通貨を取り扱っていた業者、コインチェック社のサーバーが不正に侵入されて26万人から預かっていた総額580億円もの資金が不正に引き出されたこの事件は、仮想通貨が多くのリスクをはらんでいることを浮き彫りにした。旭川の街角で計算するだけで富が生み出されるというのは投資家だけでなく市民にとっても夢のある話だが、冷静に見守る必要がありそうだ。

表紙1803
この記事は月刊北海道経済2018年3月号に掲載されています。

住民基本台帳ベースでも34万人割った旭川市の人口

 人口減少が止まらない。2月1日時点の旭川市の人口は33万9858人と、前月比で353人、前年同月比で2775人減少した。長年守り続けた「北海道・東北で札幌、仙台に続く第3の都市」の座も譲り渡した。人口、とくに若年人口が減り続ける将来への対応策が求められている。

多死時代が到来
 33万9858人。今年2月1日時点での旭川市の人口だ。「36万人都市」だったはずの旭川市だが、いつの間にか34万人の大台さえ割り込んでしまった。33万9858人は、住民基本台帳をもとにした数字。人口統計としては他に直近では2015年10月1日を基準日として実行された国勢調査がある。このときの旭川市の人口は33万9605人。同じ日の住民基本台帳ベースの人口は34万5566人だったから、5000人以上のズレがあった。冒頭で挙げた数字は、どの基準を使うにせよ旭川の人口が34万人を下回ったことを意味している。
 人口の増減は、出生数と死亡数の差である自然増(減)と、転入と転出の差である社会増(減)に大別できる。このうち顕著なのは自然減の拡大だ。2007年の自然減は554人だったが、昨年は1987人へと拡大した。07年には2649人が生まれて3203人が死んだのに対して、17年は2203人が生まれて4190人が死んだ。生まれる人が16%減る一方で、死ぬ人は3割増えた計算だ。もうすぐ、死ぬ人の数が生まれる人の2倍に達しようとしているのは、「多死時代」を象徴する現象と言えるだろう。社会増(減)は年ごとのばらつきが大きいものの、減少傾向が続いている。

増加地域は永山だけ
 同じ旭川市内でも人口増減は一律ではない。地区別ごとに傾向には大きなばらつきがある。違いをわかりやすくするために今年1月1日現在の人口と、約20年前の1998年3月末の人口を比較してみると、市全体の人口が6%減ったのに対して、農村部の江丹別・西神楽ではそれぞれ45%、29%減ったのが目立つ。一方で、市の中心部に近い中央地区で15%減、西地区で9%と落ち込みが激しい。一昔前には若い世帯が多かった豊岡および東光の1~4丁目を抱える東地区でも6%減、春光地区と神居地区は10%減少となっている。地区別でこの20年間で人口が増えたのは永山(1・64%)だけだ。
 市内で総人口が減り、生まれてくる子どもが減る中、増加しているグループがある。それは、東南アジア、南アジアの外国人。国勢調査ベースで2000年10月には447人の外国人が居住していた。うち長年日本社会で暮らしている人が多いと見られる韓国・朝鮮人、中国人は288人。ベースは異なるが、住民基本台帳をもとに昨年1月1日時点の外国人数に注目すれば、その総数は812人。韓国・朝鮮人、中国人は374人で、フィリピン82人、ネパール62人、ベトナム142人など東南アジア、南アジア勢の顕著な増加が目立つ。その大半は技能実習生として定住しているとみられ、この旭川でも外国人労働力への依存度はじわりじわりと深まっている。

原発事故の影響
 人口では遠く札幌に及ばない。北海道・東北全体を見回せば、仙台という大都市がある。旭川市民にとってのささやかな自慢は、「北海道と東北で第3の都市」ということだったが、この強みも失われた。
 現在、旭川に代わって「北海道と東北で第3の都市」となっているのは福島県いわき市だ。福島県では県庁所在地の福島市や、歴史の舞台となった会津若松市の方が知名度が高いが、県内で最も人口と工業生産額が多いのはいわき市。福島県は山地で山通り、中通り、浜通りに三分されているが、このうちいわき市は太平洋岸の浜通りの中心都市であり、福島市などが位置する中通りよりも、むしろ南側に広がる茨城県とのつながりが密接だった。新幹線は走っていないが、在来線の特急列車を利用すれば東京から2時間強の距離だ。
 いわき市の人口のピークは1998年に記録した36万661人。その後は旭川市を上回るペースで減少が続いていたが、2015年9月から10月にかけて約2万5000人、率にして約7%も増加して34万9344人に達し、旭川を抜いて「北海道と東北で第3の都市」となった。ちなみに同じ月の旭川市の人口は34万5566人だった。
 この突然の人口の急増には、統計上の要因が作用している。北海道を除く多くの都府県では、「現住人口」をベースに人口統計を発表している。5年おきに実施される国勢調査ではじき出された数字をベースに、その後の自然増減・社会増減を加算して最新の人口を算出する方式だ。ところが、道内の自治体ではこの方式が採用されておらず、国勢調査の結果は発表されるものの、人口統計のベースは住民基本台帳となっている。一般的には現住人口をベースにしたほうが実勢を正確に反映できると言われているが、最新の国勢調査の結果が反映されるたびに大きな数字の変化が生じる傾向がある。いわき市の人口が見かけ上急増した15年10月1日は、前回の国勢調査の基準日だ。
 実際にいわき市の人口が旭川市を上回っているのは確実。2011年3月に事故が発生した東京電力福島第1原発は直線で約40㌔。原発で居住が困難になった自治体から多くの人がいわき市に移り住んだ。原発に近い自治体への帰還は進んでおらず、住民はこのままいわき市に定着する可能性が高い。

9年後には31万
 順位はともかく、長期的な人口減少傾向は避けられない。旭川市は第8次総合計画の中で、2027年度の人口が31万2000人に、高齢化率が36・5%に達すると予測している。110ページの同計画に「人口」という言葉が登場するのは80回。人口減が行政、経済、社会など広い分野に影響し、その対策が必要になっているためだ。
 人口減への対応を迫られているのは行政だけではない。個々の企業も人口のカウントダウンを直視し、生き残りの方法を探ることを求められている。

表紙1803
この記事は月刊北海道経済2018年3月号に掲載されています。