高砂が作る〝ネコ酒〟で世界市場開拓

 日本人でさえ若者には日本酒が強すぎる、重すぎるとして敬遠されがちなこの時代、日本酒で海外市場を本格的に開拓するには、もっと敷居が低い商品が必要なのではないか─こうしたアイディアに基づき㈱Kカンパニー(本社札幌)が開発、高砂酒造㈱が受託生産しているのが「ネコ酒」だ。すでにブラジル向けに本格的に輸出しているほか、欧州、アジア市場の開拓も目指している。

酒離れ進み国内シェアも低下
 日本酒ブームの盛り上がりを感じる機会が増えている。全国各地で関連イベントが開催され、ドラマやマンガの題材として登場することも多い。ネットを活用して、知る人ぞ知る銘酒を取り寄せて楽しんでいるマニアが読者の中にもいるかもしれない。
 ところが、いま日本酒業界は需要の減少という厳しい現実に直面している。かつて酒の王者だった日本酒は、いまではビール、発泡酒、ウイスキー、酎ハイ、ワインなどと並ぶジャンルの一つでしかない。
 国内で日本酒(清酒)を製造している事業者の数は1405(2016年10月、国税庁による調査)。10年前と比較して約300も減少した。すべての酒の国内消費量に占める清酒の比率は1989年の15・7%から、2016年には6・4%まで低下した。従来は低価格品だった焼酎の高級化が進み、一部の清酒ファンが焼酎に流れたことも影響している。しかも、同じ期間に酒離れが進んだ結果、酒全体の成人1人あたりの消費量は95・7㍑から80・9㍑まで減少している。
 国内需要の減少に対応して、日本酒業界は早くから「SAKE」の輸出に取り組んできた。道内の酒蔵も、海外市場の開拓を目指している。これまでにない新しい取り組みが、Kカンパニーの中嶋圭さんが中心となって進めている「ネコ酒」の海外市場での販売。中嶋さんは10年前から日本国内の酒蔵の海外市場進出を支援するコンサルティング業務を展開しているのだが、そのためのツールの一つが、自社ブランドの日本酒「ネコ酒」だ。
 ビンには猫をモチーフにした、従来の酒瓶のイメージとは一線を画したシンプルなイラストが描かれている。2016年にブラジルに16㌧を出荷。現地でビール用のガラス瓶に詰めて、代理店を通じてサンパウロ州、リオ州を中心とする地域で発売した。その後も1㌧単位でブラジル向け輸出を継続している。昨年からは酒質を高めた「ネコ酒プレミアム」を国内で製造・瓶詰して輸出。イギリス、シンガポール、マレーシア、台湾、タイでも市場開拓を目指している。

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この続きは月刊北海道経済2019年04月号でお読み下さい。

上川小豆産地消滅の危機?

 本誌2月号記事「道産小豆不足 菓子業界を直撃」を読んだ小豆生産者から切実な声が寄せられた。上富良野町で40年以上にわたって小豆栽培を手掛けている60代の男性・Aさん。「富良野エリアでは、小豆から大豆に作付転換する農家が急激に増えており、このままでは〝上川小豆〟が消滅してしまう」と危機感を強めてのことだ。

台風が直撃
 本誌2月号では、道産小豆不足の現状と、旭川の菓子業界への影響について報じた。記事の内容をおさらいするとこうだ。
 国内で消費される小豆は、3分の2が国内産で、そのうち9割を北海道産が占める。2012年から15年まで豊作が続いたために在庫が膨らみ、需給調整のために作付け面積の削減が行われて、16年の作付面積は前年の約3割減となる1万6200㌶となった。
 しかし皮肉にもこの年、道内小豆の主要産地である十勝地方を台風が直撃。収穫量は前年比55%減の2万7100㌧にまで落ち込み、在庫過多の状況が一転、小豆不足が深刻となった。
 再び増産が進められ、翌年の17年には作付け面積は1万7900㌶にまで増えたものの収穫量はふるわず4万9800㌧。16年を除いて過去10年間で最も収穫量が少なかった09年の4万650㌧をかろうじて上回るにとどまった。さらに18年には初夏に低温と日照不足、長雨が続き、収穫量は前年を下回る見込みだ。
 ただでさえ在庫が不足しているところに、菓子業者や食品メーカーが在庫確保に奔走したことで品薄に拍車がかかり、道産小豆の価格は前年比2割近く高騰。全国の製餡や菓子メーカーでは十分な量を確保できず値上げに踏み切る店舗が相次ぎ、旭川市内でも老舗菓子店が一部商品を値上げし、人気商品の一時的な販売中止を検討するなど影響が広がっている。

生産者の高齢化
 上富良野の生産者・Aさんから電話を受けたのは3月号の発行から一週間後。「このままでは上川から小豆が無くなってしまう。産地を守るためにも周りの生産者に少しでも小豆を作ってもらう必要がある」という切実な声だった。
 Aさんの農園は上富良野から美瑛町白金に向かう道道353号沿いにある。小豆をはじめアスパラ、馬鈴薯、かぼちゃ、スイートコーンを栽培し、稲作も行っている。40年ほど前から小豆を栽培し、複数の品種を手がけていた時期もあったが、富良野エリアが三重県の老舗菓子店と小豆の契約栽培をしていたこともあり、現在は「しゅまり」に特化している。
 小豆は、他の農作物に比べて使用する肥料が少ない低コストの作物だが、作業には手間がかかる。上川地方では、5月から6月上旬にかけて播種し、発芽後は中耕除草機による作業を2度ほど行う。開花から収穫まで3度ほど防除が必要だ。
 完熟して葉が落ちるまで畑で育て、収穫時にはまずはビンカッターという機械で刈り取る作業が行われる。サヤが乾燥していると機械に当たってはじけてしまうため、朝露が残る早朝しか行うことができない。まさに時間との勝負だ。それからコンバインで刈りとった豆を集めて収穫するという流れで行われる。
 これに対し、大豆は刈り取りの作業をせずに汎用コンバインで収穫できる。また単価は小豆とほぼ同じで、国の保証もある。そのため、小豆から大豆に転換する生産者は後を絶たない。
 富良野エリアでも小豆の栽培をやめる生産者が相次ぎ、現在では最盛期の8割程度にまで減少したが、Aさんは、「小豆不足は農家の高齢化が根底にある」と語る。
 「農家の高齢化が進み、後継者がいない場合には離農せざるを得ない。離農者から畑を譲り受けた農家の耕地面積は必然的に大きくなるので、手間のかかる小豆ではなく、機械で効率よく作業が出来る大豆に転換する農家が増えている。これまでは小豆の価格が上がれば生産者も栽培したが、今は価格が4万円台と高騰しているが積極的に作ろうという人はいない」。
 さらに富良野エリアでは、3年ほど前に大手食品メーカーと契約栽培を始めたことで黒大豆の作付が一挙に広がり、小豆の作付面積の減少に拍車がかかった。

十勝の代替産地
 上川エリアは十勝に次ぐ小豆の産地だ。たびたび台風の被害に遭ってきた十勝に比べて、気候の変動が少なく、十勝が天候不順で不作にあえいだ年でも安定した量を収穫することができ、食品業界からは十勝のいわば〝代替産地〟として認識されてきた歴史がある。
 Aさんは上川エリアを小豆の主産地として存続させようと必死だ。そのためにも、昨年十勝で開催された生産者と和菓子業界の〝サミット〟のような場が効果的だと提案する。「小豆不足が続き、規模の小さな和菓子店が一度竈の火を消すと再起できないと思う。今のように組織に小豆を納めて終わりというのではなくて、生産者と菓子メーカーが交流する場を設け、生産者が自分たちが手がけた豆がどのような製品になり、消費者からどんな反響があるのか知ることで、小さな規模ならば作ってみようかということにもなる」。
 またAさんは、小豆栽培が産地の「地力」維持にもつながると訴える。「産地を維持するためには地力が大切になる。小麦や大豆ばかりでは地力が落ちるが、亜鉛を豊富に含む小豆は土中にミネラルなどを残して地力を高めてくれる。小豆を輪作に組み込み、畑の地力が落ちても復活するような形をとっていく必要がある」。
 富良野エリアでは幸い、今年度の小豆の作付けは少しだけ増える見通しだが、Aさんの地元上富良野では作付けが増加する見込みはない。Aさんは「十勝エリアで唯一作られていない品種が『しゅまり』。この品種を生産者に少しずつでも手がけてもらうことで、上川エリアで守っていきたい」と強く訴えた。

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この記事は月刊北海道経済2019年04月号に掲載されています。

グリーンホテル 富良野土地7500坪取得

今や〝第二のニセコ〟と呼ばれている富良野市北の峰地区で、繊維卸、山室繊維㈱のグループ会社、㈱グリーンホテル(旭川市1条通6、山室淳三社長)が昨年11月、約2万5000平方㍍(7500坪)の農地(一部宅地)を取得した。同社では「まだ農地転用ができておらず使い道は未定」と説明するが、日に日に地価が高騰している注目の地区だけにその行方が注目されている。北の峰で不動産バブルの兆しが見えていることをきっかけに、上川管内一体の一大リゾート構想も再浮上している。

〝脱繊維〟を目指す山室繊維グループ
 グリーンホテルの親会社に当たる山室繊維は、低迷する繊維卸業から脱却するため、早くから全国チェーンの飲食店や書籍販売のフランチャイズ(FC)に加盟して、旭川市内を中心に店舗展開してきた。手始めに1986年、モスバーガーを旭川市内1号店としてオープンした。2000年代に入ると、02年にドトールコーヒー、06年にはブックネットワンと次々にオープンした。直近では15年11月、市内忠和にベビーフェイスプラネットをオープンした。これら繊維卸以外の売上高は全体の半分近くを占めるようになり、利益率も繊維卸部門より高い。
 新たな業態に進出して成功した山室繊維だが、グリーンホテルも一時期、旭川市内でホテルを経営していたものの、宿泊業から脱皮し不動産業を中心に変貌を遂げようとしている。その一つが今回の土地の取得だった。

「外国資本ばかりが買収するのはまずい」
 グリーンホテルが買収した土地は、富良野市北の峰町から同市山部方面へ走る道道沿いから富良野プリンスホテルの敷地に向かった一画。総面積は2万4927平方㍍(7554坪)で、地目は2万2228平方㍍が畑、残る2699平方㍍が宅地となっている。
 何らかの用途に再開発するとなれば、全体の約90%を占める畑を地目変更する必要がある。本誌1月号の現地ルポ「富良野が第2のニセコに」で指摘した㈱レックスコーポレーション(札幌市)が買収した約7000坪も土地の大半が畑で、同社では「転売する可能性もあるが、周りの状況を見ながら5年をメドに用途を考える」と、長期的な視野で再開発を検討している。これは簡単に農地を転用できない現状を指しており、比較的柔軟な姿勢を見せている富良野市、しかも再開発が進んでいる北の峰地区とはいえ、再開発の開始までには時間を要する。
 今回の主役、グリーンホテルの山室社長も、レックス社とよく似たコメントを残している。
 「周りの状況を見てみると、中国人など外国資本ばかりが土地を買い漁っている。それはまずいのではないかと考え取得した。決して転売が目的ではなく、ましてや誰かの代行として取得したわけではない」と前置きし、次のような見解を示す。
「地目がほとんど畑のため再開発をする場合は、地目変更が必要になる。すぐさま変更できるわけではないが、将来的にレストランなどの商業施設を考えている。需要があるといわれているホテルなどの宿泊施設は考えていない。地目変更ができなかった場合は、そのまま農地として活用することも考えている」

全国大手のホテルが狙っていた土地
 地目変更に時間がかかるという事情のために、グリーンホテルが取得する以前、別の企業がこの土地の取得を断念したという情報もある。この企業をよく知る旭川のある不動産業者は次のように解説してくれた。
 「具体的な企業名は言えないが、旭川市内でもホテルを運営している全国大手のホテル業者で、富良野にリゾートホテルを建設する計画があった。どちらかといえばビジネスホテルを主体にしていた企業だが、数年前にリゾート部門を新設してからは全国的にリゾートホテルを建設している。ところが、地目変更に時間がかかるため断念したようだ。その代わり、中富良野町に土地を物色しているようで、すでに取得したという情報も伝わっている」
 このホテル業者はそれほど富良野に執着していたようだが、その背景には富良野が道内有数のリゾート地として、ニセコに代わる人気の場所になるという期待感があるのかもしれない。

高騰する地価 「安い買物」
 グリーンホテルが取得した土地は、日に日に上昇している地価と比較すれば、相対的に〝割安〟だったようだ。地元の不動産業者は「地目が畑ということで、坪単価はせいぜい2〜3万円程度でなかったか。それでもグリーンホテルより前に取得を考えていたホテル業者よりも、総額で1000万円ほど高い金額で取得したようだ」と見ている。
 北の峰地区では、用途が幅広く好立地の土地であれば現在、坪当たり70万円という情報もある中で、地元では「地目変更に時間はかかるかもしれないが、急いで開発しないのであれば、安く取得できたのではないか」との声が囁かれている。
 ところで、北の峰地区は、現状でもう手一杯という情報もある。その理由として、同地区の山手側にある富良野スキー場や富良野プリンスホテルの敷地が一つの境目となり、それらの裾野に当たる土地が売買の対象になっていることが挙げられる。
 旭川のある不動産業者は、「その境目を外れると一気に価値が下がり、売買の対象にならない。ニセコも同様の動きだった」と解説する。
 ニセコ地区で一時期、坪当たり140万円という破格の値段が付いた土地は、同地区の比羅夫(ヒラフ)など限られた場所で、それ以外はたとえ交通の便が良い国道沿いの土地であっても「ひと山いくらといった価格にまで下がってしまう」(札幌市のデベロッパー)。

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