旭川市が地価下落を主導?

 個人の資産の中で大きな割合を占めるのが土地。周辺の土地が坪単価いくらで売買されたのか、土地の所有者なら気にせずにはいられない。近所で自治体が土地を安売りしたとすれば……。ある市民から本誌に「自分が所有する土地と道路1本挟んで隣接する市有地が安く売られた」という情報が寄せられた。調べてみると、この市有地と情報提供者の所有地とは、坪単価で1万円近い開きがあった。行政が民間地主の利益を損なっているのではないか─。

道路1本でこれだけ違う
 市内中心部で長年旅館を営んでいた60代のAさんは、1年前に旅館をたたみ、建物を解体して更地に戻した。土地の面積は約180坪。毎年発表される路線価は直近で坪7万4000円だった。固定資産税の評価額は同6万6000円と路線価より8000円安く評価されている。Aさんは1年前に2度、不動産業者に依頼して売却先を探したが、この業者が示した適正な売却価格は固定資産税の評価額を上回っていた。
 「不動産業者が示してくれた評価額は、坪当たり8万8000円。180坪で1600万円近い価格で売却できるはずだった。固定資産税の評価額より2万円以上高い額だった。結局、金額ではない理由で売却できなかったが、その当時と比べ、今も土地の評価額は下がっていないはず」とAさんは語る。
 そんな折、Aさんが所有する土地と道路1本隔てた向かいの土地に、「市有地売却」という看板が10月に立てられた。この土地は以前、市の施設があった場所で、かなり前に更地に戻されている。面積は823・28平方㍍(249坪)で、販売の最低基準価格は1060万円に設定されていた。坪単価は約4万2500円と、Aさんの土地の固定資産税評価額と比較すると、坪当たりで2万3500円安いことになる。

市と民間では見解が異なる
 11月1日、市総務部管財課で行われた一般競争入札でこの土地は、最低基準価格を348万円上回る1408万円(坪当り約5万6500円)で市内の不動産業者が落札した。改めて、落札された市有地の価格をAさんの土地の固定資産税評価額と比較すると、坪当たり9500円、Aさんの土地が高いことになる。
 落札された市有地の坪単価をそのままAさんの土地(180坪)に当てはめると、不動産会社が売却できる額として示してくれた1600万円が、1400万円余りまで下がることになる。
 これは行政による土地のダンピングではないのか? 記者は市に売却された市有地について取材した。
 「最低基準価格の設定は、市の諮問委員会と相談しながら決めている。この市有地の場合、面積が広すぎることや地型が三角形であることが減点対象になった。一方で角地であるため若干、加点してこの金額に設定した」(管財課)
 ところが、民間の不動産業者数社に聞いてみたところ、市とは違った見解を示した。ある不動産会社社長は「固定資産税の評価額は年ごとに変わる。また需要と供給のバランスで、評価額や路線価に関係なく価値が上下することはよくあること」と前置きして、次のように話す。「裁判所でいう競売(市の場合は公売)であれば、税金の滞納などで差し押さえた物件のため、滞納分以上で売却できれば御の字。ところが、今回の物件は元々、市が使っていた土地。周辺の土地の価格を勘案して、適正な価格で売却されるのが一般的ではないか」

市民が納得できる説明を
 前述したように、土地の形態などで価格に差が出ることは当然あるが、ここまで金額に開きが出るとAさんが憤るのも無理はない。Aさんは「固定資産税は、その評価額を元に計算され、所有者が住んでいる自治体に支払うものだ。評価額と売却価格の間にこれだけ金額に開きがあるということは、私は不当に高い固定資産税を支払っていることになるのではないか」と疑問を投げかける。
 Aさんは10月下旬、市管財課に出向いて説明を求めたが、納得した答えを聞くことができなかった。今後、弁護士などに相談して決着をつけるつもりだ。
 長年続いている地価下落の傾向を反映して、公有地の売却は当初の評価額よりも安い価格で契約されることがほとんど。今回の件とは規模が異なるが、市は北彩都の市有地を売却する時にも、買い手が見つからず大幅な価格の減額を行った。たとえばJR旭川駅北口の市有地4000平方㍍余りは当初、約10億円で売却する予定だった。ところが再三の入札で買い手がつかず、何と半額以下の4億9500万円でツルハに売却した。ほかにもことごとく投げ売り状態で市有地を売却し、残る市有地はわずかになっている。当時、市のある幹部に投げ売りについて問いただしたところ「塩漬け物件になるよりはましだ。損失分は減損会計で処理する」と、苦渋の決断だったこと漏らした。
 財政難の今、市に遊休資産を抱えておく余裕はない。安売りはやむを得ない判断だろうが、売却された価格よりも高く設定されていた評価額をベースに毎年固定資産税を払っている土地所有者にしてみれば、到底納得が行かない話。市は土地所有者が納得できる説明を求められているのではないか。

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この記事は月刊北海道経済2017年1月号に掲載されています。