文化会館契約延長は妥当か?

 改修・建て替えの構想が浮上したために1年の空白期間が設けられていた旭川市民文化会館の舞台装置操作業務。改修も建て替えもしないことになったため、過去2年間同業務を請け負った業者との間で急きょ契約を変更したが、同業他社からは「十分に情報が公開されていない」と反発する声が上がっている。

欠かせない「裏方」
 ライブ、演劇、講演会…。固定型の客席とステージを備えた施設としては道北で最大規模を誇る旭川市民文化会館。6月の大ホールのスケジュール表には「ゴスペラーズ」「北島ファミリー」「三山ひろし」「内山玲子バレエスタジオ」「旭川青年大学」などの名前が並び、この会場がこの地域の文化にとり欠かせない舞台であることがわかる。
 このような会場を運営するには、主役である出演者と、出演者を客席から見つめ、拍手と歓声を送る観客のほか、運営を支える「裏方」が必要だ。裏方の中心的な存在が、「市民文化会館舞台設備操作等業務」の請負業者。業務仕様書によれば、その内容は会館の舞台・照明・音響設備の操作、これらの機器の操作に関する使用者(行事の主催者など)との事前・当日の打ち合わせや助言、機器の点検や整備など多岐にわたる。
 市民文化会館、そして旭川市公会堂はいずれも市民の共有財産だが、専門性の高いこれらの業務は、市の職員にはこなせない。このため2つの会場を管理する旭川市の社会教育部文化振興課では、公募型プロポーザルを実施して舞台設備操作等業務を請け負う民間業者の選定を定期的に行ってきた。大雪クリスタルホールについては、別に業者選定が行われている。
 前回、公募型プロポーザルが決着したのは2015年1月のこと。選定されたのは㈲サウンド企画だった。同社は市内のこの業界では最も長い歴史をもつ企業で、見積合せによる随意契約、指名競争入札が行われてた時代から一貫して市からの受注に成功している。唯一の例外は、旭川シティネットワーク(FMリベール)に契約を奪われた2009年度だ。2013~14年には初めて公募型プロポーザルが行われたが、この際にもサウンド企画が最も高い評価を得た。
文化会館は2年だけ
 市は14年、翌年4月から舞台設備操作などの業務を請け負う業者を選定するにあたって、それまで2年間だった契約期間を3年間に延長することを決めた。
 ただし、実際に契約期間が延ばされるのは対象となる2つの会場のうち公会堂だけ。市が作成したプロポーザル実施要領には、こんな一文がある。
 「ただし、平成29(2017)年4月1日から平成30(18)年3月31日までは、改修工事に伴い旭川市民文化会館が閉館予定のため対象外」
 この実施要項が作成された時点では、旭川市民文化会館を改修または建て替える構想があった。開業から40年以上が経過し、外壁や屋上の劣化が進んだことから雨漏りや配管からの水漏れが発生。車椅子への対応やエレベーターの設置などの面でバリアフリー基準に適合していない部分も多い。2014年には2403万円の予算を付けて調査し、大規模改修基本計画書も策定している。計画通り進めば、2017年度は市民文化会館を休館し、35億円をかけて改修を行うことになった。その後、建設資材の高騰や耐震改修の追加などで、工費の膨張が確実になった。結局、2016年度に予定していた実施設計は行われず、当面は修繕で会館の延命を図ることになった。
 そこで突如浮上したのが、市民文化会館の建て替え構想だ。昨年5月末に市がまとめた「新庁舎建設基本計画骨子」の中で、本庁舎を建て替えたあと、現在の本庁舎跡地に新しい市民文化会館を立てることが盛り込まれたのだ。結局、こうした唐突な方針の変更が市議会の反発を受けたことから、市民文化会館建て替えの方針は年末までに正式に撤回された。
 すったもんだの末、市民文化会館を休館する必要はなくなった。しかし、サウンド企画と結んだ契約からは、2017年度の市民文化会館が除外されている。新たに業者を選定するか、契約を変更しなければならない。このため旭川市は、約2年前にサウンド企画と結んだ契約を変更するかたちで、同年度の市民文化会館の業務について契約を結び直した。これに伴い契約金額は当初の税込み約1億2600万円から、約1億4859万円へと2259万円増額された。

遅れた情報公開
 市民文化会館の契約延長をあとで知った民間企業からは、疑問の声が上がる。「工事や設備の納品を伴わない2000万円以上の契約といえば、かなりの規模。1社だけとの交渉で決めてしまうことが適切なのかどうか…」
 以前は随意契約が珍しくなかった市と民間企業の取引だが、度重なる不正から透明化を求める声が上がり、一般競争入札が中心になった。舞台設備操作等業務は単純な価格競争に適さないことから、応募者側が一定価格の範囲内で運営内容について提案を行い、その優劣を競う公募型プロポーザル方式が採用されることになった。2年前に業者選定が行われていた際も、この方式を通じて透明性が確保されていた。
 ところが、2017年度の市民文化会館の操作業務については業者選定を行わず、それまでの2年間の業者との契約を延長し、金額を上乗せして行うことを、教育長が裁量で決定した。もともとの契約に「市は必要のあるとき、業務の内容を変更することができる。業務委託料、履行期間を変更する必要があるときは双方協議して決める」との趣旨の一文が盛り込まれていたことも、契約変更という判断の根拠になったと思われる。
 その判断自体は、著しく不当だとは言えない。市民文化会館について3年間、新たに業者の選定を行えば公会堂との間にズレが生じるし、わずか1年間のために公募型プロポーザルを実施すれば業者側も市も手間がかかりすぎるためだ。
 しかし、契約変更で対応するという判断が適切なものだとすれば、市は堂々と市民に公表してから契約を変更するべきだった。新しい履行期間、業務委託料を盛り込んだ契約が発効したのは新年度の始まった4月1日。ところが、社会教育文化振興課のウェブページでそれが公表されたのは、本誌が取材を申し込んだ4月25日の夜になってからだった。同課では「公表を失念していたのは申し訳ない」と説明するが、これでは同業他社が疑心暗鬼になるのもやむを得ない。
 適正な業者選定には情報公開が不可欠だ。市民文化会館をめぐる契約の変更は、透明化という意味で反省材料を残したと言えそうだ。

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この記事は月刊北海道経済2017年6月号に掲載されています。