管内戸建て住宅2.6%増

2016年度(16年4月~17年3月)の上川管内ハウスメーカー実績は、戸建て住宅が前年比2.6%、共同住宅で同2.2%の増加となった。低金利や金融機関の貸し出し条件が緩和されたことが追い風になったようだ。今年度も引き続き増加が見込まれているが、19年4月に実施される予定の消費税増税をにらみ、ハウスメーカー各社は新築以外にリフォームやリノベーションといった改装に重点を置く動きも見せている。

石山工務店が8年連続のトップ
ハウスメーカー別で見ると、トップは8年連続で石山工務店。前年の81棟からさらに3棟を上積みして84棟となった。2位以下は、ミサワホーム北海道59棟(前年同)、北海道セキスイハイム49棟(同10棟増)、家計画41棟(同8棟減)、一条工務店40棟(同11棟増)と続く。
上位5社は、一条工務店を除き前年度と同じ顔ぶれ。急増した一条工務店は、昨年度に29棟となり初のベストテン入りを果たし、さらに棟数を一気に伸ばした。旭川への進出は12年で、わずか5年でベスト5に入るまで棟数を伸ばしてきた。
同じ道外大手のタマホームは、対照的に足踏み状態。一条工務店より1年早く旭川に進出したが15棟と低迷している。両社の違いを市内のあるハウスメーカー幹部は、「価格的にはタマホームの方が安い。ただ、一条工務店は品質の高さで評価が高い。安さだけでは旭川の市場は開拓できない」と分析する。

戸建て共同ともに今年も堅調
種類別に見ると、戸建て住宅と共同住宅はいずれも2%台の増加と、15年度と比べ持ち直している。棟数は戸建て住宅が1125棟と、ここ5年間の中で13年度(1310棟)、12年度(1227棟)に次いで多い。共同住宅は238棟と、ここ5年間では最も多く前年度の減少から一転して増加した。戸建て住宅と共同住宅はともに、13年度から続いていた減少がストップした。
持ち直した理由として挙げられるのは、低金利と、企業が投資を差し控える中で金融機関の貸出先が先細り、個人向けの融資条件が緩和されたことと見られている。
今年度はまだ始まったばかりだが、「昨年度の状態をキープしている。戸建て住宅は、若干だが前年度より増加する可能性が高い。共同住宅も、新築に引き合いがあり前年を上回る可能性が高い」と悪い材料は見当たらないようだ。
ただ、いったん見送られた消費税増税が、19年4月に実施される可能性がある。消費税増税は17年4月に実施される予定だったが、19年に先送りされることになり、昨年度は駆け込み需要が起きなかった。
一方で今の景気動向を見ると、国民が敏感に反応する消費税増税はふたたび見送られる可能性もある。年度内に行われる可能性が指摘される衆議院選挙の動向如何でどうなるかは不透明だ。
ただし、日銀の低金利政策が続く中で、持ち家を購入したいと希望する人たちにとって有利な状況が今後もしばらく続くことは間違いない。

家族構成の変化で進むリフォーム
ところで、少子高齢化が進む中、住宅事情も様変わりしてきた。地方から都会へ人の流れが加速し、地方都市の人口減少が止まらない。これまで大人数で暮らした家族が両親2人だけになり、要らなくなった部屋が増え無駄な光熱費が家計を圧迫する。そのため、2階部分を閉じて1階部分だけで暮らしている住宅もあると言われるが、抜本的な対策として家を売却して便利なマンションに引っ越すことや、建物の老朽化を機に2階建てから平屋にリフォームしたいという問い合わせが増えている。
建物の改修が増えていることに伴い、ハウスメーカー各社もそのニーズを取り込もうとしのぎを削っている。業界で早くからリフォームやリノベーションを手かげてきた市内の大手ハウスメーカ幹部は、「今や激戦状態になっているが、改修に関してはこれまでどれだけ新築の棟数をこなしてきたかが重要だ。さらに、所有者がどのような住宅を求め、改修にかかる予算など業者がどこまで所有者に寄り添えるのかも大事だ」と語る。

人口減少に対応
一方、道外からの移住を希望する富裕層をターゲットにした営業を強化しているハウスメーカーもある。ある業者の幹部は「数も大事だが、質を重視した注文建築は単価が高く利益も大きい。移住を希望する人たちは、老後を自然豊かな環境でゆったりした時間を過ごしたいと考えている。細かい注文も多いが、お金をかけることにあまり抵抗感はない。昨年7000万円を超える住宅を建てた実績もある。市内の企画住宅3棟分の価格だ」と胸を張る。
このハウスメーカーは、様々な交友関係や資材メーカーからの情報などで良質の顧客を開拓している。「一度気に入ってもらえれば、口コミで広まる可能性もある。35万都市の旭川とその周辺は、大自然に囲まれいろんなスポーツも楽しめ、普段の生活にも不自由しない便利さもある。何度か移住を希望する人たちを連れて案内したが、だれもが環境の良さをほめてくれた」と今後の注文に自信を覗かせる。
将来的に旭川やその周辺はさらに人口が減少する。建築する棟数を競うより、周りの環境のよさを味方にした住宅を進めていくのも一つの手ではないか。人を呼べる魅力が旭川にはゴロゴロ転がっていることをもっと外に発信するべきだ。

表紙1707
この記事は月刊北海道経済2017年7月号に掲載されています。
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