今津対佐々木の一騎討ち 生き残るのはどちら?

 10月10日公示、22日投開票の衆議院議員選挙。過去3回対決した今津寛(自民党公認、公明党、新党大地推薦)と佐々木隆博(立憲民主党公認)が、今回は初めて2人だけの「一騎討ち」を演じることに。どちらの陣営も「背水の陣」で必死の選挙戦を展開する。政策実現力をアピールする今津か、安倍政権ストップを訴える佐々木か。有権者の下す選択はどちらだ? (記事は10月10日現在)

過去3回の対決
 佐々木は佐々木秀典の後継として2005年11月に衆院選挙に初めて出馬して以来、これまで3回当選、1回落選している。一方の今津は旧2区時代も含めて9回衆院議員に立候補して、うち7回当選(比例復活が1回、比例北海道ブロックでの当選者の辞職と次点候補の死去に伴う繰り上げ当選が1回)。佐々木と今津の直接対決はこれまで3回あり、うち佐々木が2勝、今津が1勝。前回、2014年11月の衆院選では、佐々木が10万4595票で当選、今津は10万1748票でわずかに及ばなかったものの、比例で復活した。2人の得票率の差は約1・2ポイント。共産党の荻生和敏は2万4656票だった。
 今回の選挙では、民進党の希望の党への合流で一時は危ぶまれた共産党を含む野党の協力が、10月5日までにまとまった。道6区でも立憲民主党、共産党、緑の党、社民党、新社会党、6区市民の会の共闘が成立した。単純な足し算をすれば、前回の選挙で佐々木、荻生が獲得した票を合計すれば13万票近くと、今津を大きく上回る。
災害復旧の成果強調
 今津陣営の関係者の多くは、厳しい戦いであることを認めながらも、勝機はあるとみる。まず今津寛本人が強調するのは、昨年夏に災害が6区内を襲ったあと、現地に足を運んで復旧を加速したことで、郡部での支持者が増やせたということだ。実際、今津は上川地区農協組合長会と政策協定を結び、推薦を得た。TPP交渉の行方が微妙だったこともあり、前回選挙では今津、佐々木と等距離だったJAが今津寄りの姿勢を鮮明にしたのは、心強い材料だ。
 もう一つは新党大地の動き。今津が事務所を開いた9月24日の時点では鈴木貴子の処遇をめぐる自民党と新党大地の交渉が決着していなかった。この日開かれた今津の事務所開きに新党大地の関係者が姿を見せず、関係者をやきもきさせたが、最終的には鈴木貴子の自民党入りと、比例名簿の上位に載ることが決まり、新党大地が今津を支援することになった。注目は、新党大地にどれだけの集票力があるのか。今津に近い人物は「(新党大地代表の)鈴木宗男は、公明党よりもうちのほうが上と豪語していた。創価学会が強い旭川市内はともかく、郡部に熱狂的宗男ファンがいるのは確か」と語る。公示前には鈴木宗男と自民党道連選対本部長の長谷川岳(参議院議員)の対立が表面化したが、今津陣営の一人は今津個人と鈴木宗男の間には古くからの密接なパイプがあるため、6区の情勢には影響しないとの見方を示す。
 新谷龍一郎・旭川商工会議所会頭を先頭に、経済界は一致団結して今津を支える姿勢を示している。今回から選挙権年齢が「18歳以上」に変更されるが、10~20代は自民党支持率が高いこと、やはり自民党支持者の多い幌加内町が道6区に加わることも、今津陣営にとっての好材料だ。

注目は西川の動き
 民進党の前原誠司代表が党の「身売り」を発表する瞬間まで、佐々木は着々と選挙を想定した準備を整えているように見えた。道連は秋以降の解散を想定し、旭川市内で佐々木は街宣車を走らせ、安倍政権への批判を続けた。ところが予想外の希望の党への合流。それまで憲法9条の堅持や安保法制廃止の主張を繰り返していた佐々木にとり、右寄りの傾向が顕著な小池百合子率いる希望の党への合流は受け入れがたかったはずだが、一議員としての判断よりも、道連代表として、支持基盤の脆弱な新人候補にも配慮した判断を優先した。9月29日の時点で佐々木が示した条件は、民進党からの出馬を予定していた11人がすべて希望の党に合流すること。ところが、その直後から小池の「排除」方針が注目を集め、リベラル色の強い道内候補が憲法や安保法制などについて踏み絵を迫られる可能性が濃厚に。枝野幸男らが新党を結成する動きを始めるとこれと連携し、佐々木はチャーターメンバーの一人として立憲民主党に参加した。佐々木は「道連代表でなかったら、もっと早く決断できていただろう」と振り返る。
 佐々木はこれまでの選挙を、党+労組+農民連盟の3軸(または後援会を加えた4軸)で闘ってきた。立憲民主党から立起するとはいえ、佐々木陣営の一人によれば、民進党の地方組織は温存されており、連合からの支援も揺るがない。農民連盟からも前回同様の支持が得られると期待する。
 今津陣営が注視していたのは、西川将人旭川市長の動きだ。前回選挙では民主党が市長選での西川3選の勢いをそのまま総選挙に持ち込んだ。今回の選挙を前に危機感を抱いた今津陣営は、商工会議所を通じて西川に中立を守るよう働きかけた。9月29日夜の佐々木の事務所開きでは西川が登壇して佐々木を声援したものの、10月11日には経済界が中心となり開催した今津の集会にも西川が姿を見せて挨拶した。西川としては、自民党の行事には出られないが、日頃から一緒に動いている経済界中心の集会なら可能と判断したようだ。
 前回選挙と比較して西川の立ち位置が変化したことや、今後の西川の動きが選挙戦に与える影響が注目される。

最後の対決の勝者は?
 佐々木は今回、立憲民主党からの出馬を宣言すると同時に「仲間のチャンスを増やしたい」として比例名簿への記載を辞退すると明言して背水の陣を敷いた。今津は名簿に名前こそ記載されたとはいえ、名簿上位は小選挙区の道10区を公明党の稲津久に譲る元岩見沢市長渡辺孝一と、前回選挙は民主党から出馬、今回は自民党に転じる鈴木貴子が占める。自民党にとり前回ほどの得票は望み薄であり、今津を含む道内の重複候補にとり、比例復活の可能性は2014年の選挙よりも低い。それだけに小選挙区での勝利が至上命題となる。
 今津、佐々木のうちどちらが当選するにせよ、この2人の対決はこれが最後になる可能性が高い。4回目の対決となる今回、軍配はどちらに上がるのか。

表紙1711
この記事は月刊北海道経済2017年11月号に掲載されています。
この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!