外来種アライグマ旭川で捕獲数急増

 愛くるしい姿で動物園でも子供たちに人気のアライグマ。実は生態系への深刻な影響が懸念される外来種動物で、旭川を含む道北エリアで捕獲数が急増している。農作物を食い荒らすなど被害が広がり、市ではワナを貸し出すほか、本格的な捕獲作戦を視野に、GPS発信機を駆使した行動調査に乗り出した。

「ラスカル」で人気者に
 40代以上の読者ならば、アライグマと聞けばテレビで放映されていたアニメ「あらいぐまラスカル」を思い出すのではないだろうか。動物好きの主人公の少年とラスカルが一緒に過ごした1年間を描いた作品で、1977年1月に放映された。ラスカルのやんちゃで愛らしい姿が人気を集め、不朽の名作として語り継がれている。最近ではスマホのLINEスタンプのキャラクターとして登場し、人気が再燃している。
 アライグマは、北アメリカ原産の中型哺乳類。成長した個体の体長は41㌢から60㌢で、体重は4㌔㌘から10㌔㌘。尾の縞模様、目の周りの黒いマスク模様が特徴だ。
 森林や湿地帯から都市部まで幅広い環境に適応し、小型の哺乳類をはじめ野鳥やその卵、魚類、両生類、昆虫類、果実、野菜、穀類などを食べ、このたくましい雑食性が強い繁殖力に結びついているようだ。手先が器用で学習能力が高いが、成長すると力だけではなく気性も荒くなるという一面もある。
 アニメ放映をきっかけにペット用に販売されたが、飼育しきれずに捨てられた個体が自然界で繁殖。天敵がいないために次々と数を増やした。
 野生化したアライグマは、畑の果物や野菜を食い荒らしたり、畜舎の餌を盗食。さらに民家の天井裏や床下に侵入して巣を作り、ペットや池の鯉を捕食するなど被害が広がった。また、アライグマより小型で生活域が競合するキツネやタヌキを駆逐するため、生態系にも深刻な影響を与えている。
 2005年には、国外から持ち込まれた外来種の中でも生態系をはじめ人の生命や体、農林水産業への悪影響がとくに大きい「特定外来生物」に指定された。

06年に初捕獲
 旭川で初めてアライグマが捕獲されたのは2006年。市ではすぐに捕獲作戦に乗り出した。
 10年の捕獲数は22頭だったが、翌年の11年には122頭と急増。その後も、14年139頭、15年296頭と右肩上がりで増え続け、16年は307頭と過去最多となった。捕獲作戦が一定の効果をあげているものの、生息数が増えているためにいたちごっことなっているのが実態のようだ。
 このため、深刻になっているのが農業被害。市農政部農畜産係によると、スイートコーンを生産している農家が被害に遭うケースが多く、果樹園ではブドウの被害が発生しており、西神楽をはじめ、神居、江丹別、東鷹栖、東旭川町瑞穂など市内全域に被害が広がっている。
 農家だけではなく家庭菜園も被害に遭うケースが後を絶たない。神居エリアに住む男性は趣味で手がけていた畑をアライグマに荒らされ、ついに畑づくりを断念したという。「畑を囲うなどの対策をしても侵入し、トウモロコシが全滅した。もっと駆除に力を入れて欲しい」と憤りを露わにする。
 今年に入ってからの被害額自体は約15万円と多くはないが、市の担当者は「繁殖力が強く、対策を講じないと被害が拡大する可能性がある」と警戒を強める。
 市では、約200台の箱ワナを用意し、要請に応じて農家に貸し出している。今年は約20台ほどが貸し出され、罠にかかったアライグマは安楽死処分された。

GPSを首輪に装着
 生態系保全の立場からアライグマの防除に力を入れている市環境部環境政策課では、今夏からアライグマの行動追跡調査に乗り出した。
 市に事務局を置く「旭川市生物多様性保全推進協議会」(出羽寛会長)が実施するもので、捕獲した個体にGPS送信機が付いた首輪を装着して再び野に放ち、タブレットを用いてアライグマの行動範囲や活動時間を把握するという調査だ。
 8月下旬に西神楽、9月には東旭川で捕獲したメスにGPS送信器付きの首輪を装着。定期的にデータ化しているが、担当職員によると「継続して追跡することが出来ているため、他のエリアに移動することなく、比較的狭い範囲で行動していることが分かった」と話す。
 収集したデータは専門家が解析し、その結果を踏まえて効果的な捕獲作戦に取り組む考えだ。
 「現段階では行動範囲はそれほど広くないようだが、もし行動範囲が近郊市町村にも及んでいる場合には、市単独ではなく他町村との連携が必要になる」(担当者)
 旭川市には、ウチダザリガニをはじめセイヨウオオマルハナバチ、オオハンゴンソウ、アズマヒキガエルという4つの外来種が確認されているが、アライグマはウチダザリガニとセイヨウマルハナバチと並んで、特に生態系や人間活動への影響が大きい生物として日本生態学会が定めた「日本の侵略的外来種ワースト100」のリスト入りしている特に危険度の高い外来種だ。
 旭川での被害を最小限に食い止めるためにも、市の捕獲作戦に期待がかかる。

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この記事は月刊北海道経済2017年12月号に掲載されています。