「人口ダム機能」低下する旭川市

 総務省が発表した2017年の住民基本台帳に基づく人口移動報告によると、上川管内23市町村のうち17市町村で、人口転出が転入を上回る「転出超過」となっていることが分かった。旭川市が最多の830人で、名寄市228人、富良野市198人と続く。道北の人口流出を防いでいた旭川市の「ダム機能」も低下している。

830人の転出超過
 住民基本台帳に基づく人口移動報告は、総務省が1月末に発表した。それによると、旭川市は転入1万245人に対し転出1万1075人で、830人の転出超過となった。前年は747人の転出超過だったから、さらに83人拡大したことになる。
 管内23市町村の転入・転出数は次ページの表の通りで、転出超過の上位は、旭川に次ぐのが名寄市で228人、続いて富良野市198人、士別市166人、鷹栖町81人などとなっている。一方、転入が転出を上回ったのは東川町、上富良野町、下川町、占冠村、比布町、当麻町の6町村だけで、管内全体で人口流出が止まらない現状が浮き彫りとなっている。

ダム機能の限界
 若者が札幌や首都圏へ流れる一方で、上川管内の高齢者、また宗谷、留萌からの高齢者の転入が続く。この結果、老齢人口割合が高まりつつも、大幅な人口減少はなかったのが2010年頃までの旭川だ。36万人台を長く維持し、05年に36万人の大台を割りはしたものの14年までは35万人台をキープしてきた。
 道北圏という広域でとらえると、若年層が転出する一方で高齢者を近隣から集め人口流出を食い止める「ダム機能」を旭川は果たしてきた。
 しかし今回の総務省の人口移動報告で管内最多830人の転出超過となった旭川は、人口ダム機能が著しく低下していることが歴然となっている。
 国立社会保障人口問題研究会(社人研)と日本創生会議が数年前に発表した予測値では、旭川は15年以降急速に人口減が進み40年には24万1526人になるとされている。この予測が当たっているとしたら、現在下り坂にさしかかり、このあと下り傾斜は急になる。本誌先月号既報の通り、今年2月1日のデータでは34万人も割り込み33万9858人となったが、これが人口急減の始まりなのかも知れない。
 24万人というのは昭和30年代の旭川の人口で、40年にはその規模までまちが〝縮小〟するという予測。それほどの人口減が急速に進むとは信じがたいが、ダム機能を失った今、人口が増える要素は残念ながら見当たらないのが現実のようだ。

上川北部が顕著
 上川管内の中でも、北部8市町村の人口減が顕著だ。今回の人口移動報告では下川町が唯一転入増となっているが、ほかは軒並み減少。2年前に公表された国勢調査では、8市町村の減少率は7・0%に達し、全道平均を上回った。
 上川北部の拠点都市である名寄市は12年に3万人台を割り、その後年間400人強の減少を続け、今年1月の人口は2万7891人。名寄市では「大学や病院がそろい、潜在的に人口を吸収する力はある」としているが、人口減を抑える効果的な政策はみつからない。
 士別市は、1954年の市政施行以来、15年に初めて人口2万人を割った。旧士別町時代を含めると、約70年ぶりの1万人台となっている。死亡率が出生率を上回る自然減が顕著で、若い世代の流出をどう防ぐかが緊急課題だ。
 上川だけでなく宗谷管内も10市町村すべてで人口減が加速しており、稚内市を例にとれば、人口のピークは75(昭和50)年の5万5464人から、今年1月の人口は3万4801人にまで減少。ピーク時と比較して約40%も減った計算になる。少子化と若者の管外への流出が止まらず、それに対する特効薬は見つからない。
 留萌管内も同様で、管内拠点の留萌市は70年に4万人を割り込み、97年に3万人をも割って今年1月の人口は2万1738人。雇用の場が少なく若者の流出が続いている。

交流人口増やせ
 4年前に発表され日本創生会議の「消滅可能性都市896」には、道北のほとんどの市町村が入っていた。そして現状、人口の推移はほぼその指摘どおりになっている。創生会議の〝試算〟を上回るペースで人口減が進んでいるまちもある。
 そんな〝消滅予測〟を払拭しているのは東川町だ。今回の人口移動報告でも唯一、三桁、108人の転入超過となった。
 同町は住宅建設費補助などの移住促進策を打ち出しており、その成果が現れ、大雪山連峰の麓で旭川空港も近い立地もあって本州からの移住者がカフェなどをオープン。まちの認知度が高まってさらに移住者を呼び込み好循環が生まれている。
 今回の人口移動報告には実は外国人はカウントされていないが、同町では2009年度から外国人学生受け入れに取り組んでいる。初年度は韓国から72人を受け入れ、翌年度は台湾も加わり2カ国合わせて104人。その後、中国、ラトビア、タイと増えて、さらにシンガポール、ヨルダンなどからも生徒が集まる。日本語を学び終えた生徒は離日し、代わりに新しい生徒が町にやってくる。たえず相当数の学生がまちに滞在している。
 移住者、滞在者を増やす。交流人口を呼び込むのが人口減を食い止める方策の一つのようだ。

表紙1804
この記事は月刊北海道経済2018年4月号に掲載されています。
この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!