道知事選候補に鈴木直道待望論

 高橋はるみ道知事(64)の去就が注目される中、来春の知事選候補として浮上しているのが夕張の〝星〟鈴木直道市長(37)に対する待望論。夕張市とは職員派遣等で旭川市も交流があるが、何より「旭川夕張会」を通じて親交を深めている。同会の中でも期待論は大きいが、その実現性はいかに。

菅官房長官も高く評価
 高橋知事の去就をめぐっては、その後援会で来夏の参院選道選挙区(改選数3)の自民党候補に推薦する動きが表面化。本人は現職の立場上、求心力を維持するため、進退表明はしていないが、自民党道連は、高橋氏や現職の伊達忠一参院議長(79)、岩本剛人道議(53)、中川賢一札幌市議、柿木克弘前道議(50)の5氏を軸に、擁立する2人を絞り込むことになった。高橋氏が周囲に5選不出馬の意向を伝えているとの報道もあるが、5選目の可能性も自民党関係者の間で指摘されている。
 来年は知事選と参院選が12年ぶりに同じ年に実施される。これら2つの選挙事情が複雑に絡み合うことにもなるが、仮に高橋氏が5選不出馬を決めた場合の知事選候補として、自民党内で浮上したのが夕張市長の鈴木氏だった。
 こうした中、鈴木氏が8月20日、自民党道連の吉川貴盛会長が官房長官の菅義偉氏を招いて開催した経済人らの会合で、道内自治体トップとしては秋元克広札幌市長と2人だけ呼ばれてあいさつ。同25日には、道連が将来の政治家養成を目的に開いた「HOKKAIDO政治塾」で講師を務めたため、「擁立に向けた動きではないのか」との憶測が一部の間で広がった。
 実際、吉川道連会長は鈴木氏を「イチオシ」で、菅官房長官は鈴木氏とは法政大2部の先輩・後輩の仲。「ともに〝苦労人〟ということもあり評価している」(自民党関係者)。ただ、「吉川会長が鈴木氏を推しているのは、高橋知事との確執があるためで、辞めさせたいようだ」(同)との穏やかではない見方もある。
 ちなみに、菅氏は幼少のころ、秋田県のイチゴ農家の長男として家事手伝いをしながら過ごした。高校卒業と同時に上京し、段ボール工場で入学資金を貯め、法政大に入学。政治の道を志し、小此木彦三郎氏の下で秘書を11年務めた。1996年衆院選で初当選を果たし、2012年に官房長官に就任して歴代最長在職記録を更新している。縦割りや前例踏襲になりがちな官僚に睨みを利かせる。朝晩100回の腹筋が、激務をこなす秘訣だとか。

道議会は「消極的」とも
 これに対して鈴木氏は、埼玉県生まれ。高校2年の時に両親の離婚により母子家庭で育つ。経済的苦境に陥り家計を助けるため、引越し業者や酒類の卸売センター等で肉体労働を中心に多くのアルバイトを経験。いったん大学進学を断念したものの、東京都庁に入庁する。その後も働きながら法政大の法学部に夜間通い、ボクシング部の主将も務め、地方自治を学んだ。
 そして2008年1月、猪瀬直樹東京都副知事(当時)の発案により〝助っ人〟として派遣されたのが夕張市。市役所での通常業務はもちろん、地域イベントへの協力、さらには住民のために除雪の手伝いも積極的に行った。10年11月には、夕張市長選への出馬を決意して都庁を退職。無所属で出馬して11年4月に4人が立候補した混戦を見事制し、30歳の若さで全国最年少市長に就任している。
 15年4月には無投票再選を果たし、同11月に日本メンズファッション協会が主催する「第44回ベストドレッサー賞」でベストドレッサー賞・政治部門を最年少で受賞。道内初の快挙でもあり、さらに注目を集めた。
 財政破たんから10年。その節目の17年3月には、財政再建と地域再生を両立する新たな財政再生計画を策定。総務大臣の同意を勝ち取り、財政再生団体からの実質的な脱却へ道筋をつけることにつながった。著書には「やらなきゃゼロ!」(岩波ジュニア新書)、「夕張再生市長 課題先進地で見た『人口減少ニッポン』を生き抜くヒント」(講談社)など話題作が多い。
 こうした活躍が際立ち、自民党本部や道連幹部、経済界の中にも鈴木氏を推す声はある。9月下旬には自民党選対委員会(委員長、角谷隆司道議)が、高橋5選を決議する会合を開こうとしたものの、あえなく「吉川道連会長に〝鎮圧〟された」(道連幹部)とみられている。
 一方で「鈴木氏が知事選に出れば、立憲民主の逢坂誠二衆議が立起する可能性が大きい」との見方もあり、自民党道議団からすれば「仮に、知事選に負ければ、12年間厳しい状況になるとして緊張感がある」(某自民党道議)。また、知事部局では「(鈴木氏が)37歳ということで、25人のトップリーダーとしては若すぎるのでは? 経験が不足している」ととらえる関係者もいる。道議会内の雰囲気としても、鈴木氏の知事就任に関しては、「消極的」との見方が多いという。
 夕張市職員労働組合は、鈴木市政2期7年の成長と課題を検証し3選出馬を要請。引き続き市政の舵取り役を鈴木氏に期待している。一方、鈴木氏に知事候補としての思いを抱く吉川道連会長は、10月2日発足した第4次安倍改造内閣に農水相として初入閣。これまで以上に大役を担うことになったが、知事選候補者選びについては「年内が勝負」と作業を急ぐ考え。はたして今後、鈴木氏が持ち前の情熱を注ぐことになるステージは、夕張市政になるのか、道政になるのか予断を許さない。
 旭川夕張会の副会長でもある旭川選出の東国幹道議は、「私の郷里でもある夕張市から知事候補が出るのは当然、歓迎するものの、議員会長として大所から考えながら合意形成を整える立場にあるゆえ慎重さは崩せない」。しかし、「JR石勝線夕張支線に関する廃止提案の決断や、夕張に対しての道内外へのPR等の発信力は大したもの」と評価している。
 鈴木氏とは時々一緒にラーメンをすする間柄でもあるが、そんな東道議にさえ鈴木氏は知事選については口を開かない。政治家の出処進退というのはそれだけデリケートな要素を多分に含むが、「旭川市とは職員派遣や旭川夕張会でもお世話になっており、これからも共に歩んでいきたい」。
 鈴木氏は東道議を通じて、本誌にこう語ってくれた。

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この記事は月刊北海道経済2018年11月号に掲載されています。