衰退進む旭川の地域経済、「主要産業」は公的年金

 経済界には景気状況の厳しさを肌で感じている人が多いはずだが、その傾向は数字にもはっきり現れている。平均所得に注目した前号の本誌記事に続き、今回は所得階級別の比率、そして主な収入源に注目する。一連の数字から明らかになったのは、地域経済が直面する厳しい現実だった─。

年収千万円超の比率、帯広が旭川上回る
 旭川市の平均課税所得は全国1741自治体の中で887位(2017年)─本誌が前号で伝えた数字だ。北海道のランキングは179自治体中114位。人口では道内2位、北海道・東北で4位という有力な都市ではあるが、住民の平均的な所得水準を比較すれば、音威子府や遠軽といった村・町を大きく下回っていることも明らかになった。
 しかし、これらの数字はあくまでも平均値。旭川、そして道内の主要な都市には、どれくらいの比率で高所得者と低所得者が住んでいるのかは、他の統計に注目しないと見えてこない。
 地域経済の厳しい現実を示す数字がある。「48・4%」─旭川市の約15万2000世帯のうち、年間収入が300万円以下の世帯が占める比率だ。総務省発表の「2013年住宅・土地統計調査」の結果にはこんな数字が出てくる。
 世帯収入階級別の比率に注目すれば、300万円以下は48・4%、300~500万円は27・0%、500~700万円は12・9%、700~1000万円は7・1%、1000万円以上は2・7%となっている(住宅・土地統計調査では1000~1500万円と1500万円以上を区別しているが、ここではまとめて算出)。
 この分布を帯広市と比較してみると、年収300万円以下の世帯の比率は大きく違わないが、1000万円以上が3・3%と、旭川市を0・6ポイント上回っている。高級住宅や飲食店の状況などから、帯広市を訪れた際に都市全体のリッチさを感じることがあるが、数字の上でもそれがはっきりと証明されている。ちなみに、札幌市ではこの比率が3・6%と、帯広市をさらに上回っている。札幌市の発展ぶりを考えれば、これは自然な数字といえるだろう。
 一方、収入300万円以下の世帯の比率はどうか。主な都市がいずれも45%以上であるのと比較して目立つのが、札幌市の40・1%、そして苫小牧の42・8%という比率の低さ。札幌市は「高収入世帯が多く低収入世帯が少ないまち」ということになる。
 しかし、札幌市でさえ、全国平均と比較すれば「高所得者の少ないまち」に分類される。全国平均に注目すれば、収入1000万円以上の世帯の比率は5・9%と、札幌市を2・3ポイントも上回っている。旭川市(2・7%)と全国平均の間には、倍以上の開きがある。日本の平均像と比較すれば、旭川には半分以下の金持ちしか住んでいないというのが現実だ。
 時系列を切り口に地域経済の変化を観察すれば、浮き上がってくるキーワードは「衰退」だ。5年前、2008年の「住宅・土地統計調査」で、旭川市の世帯収入階級別の比率は、300万円以下が43・9%、300~500万円が27・2%、500~700万円が18・5%、700~1000万円が8・2%、1000万円以上が3・1%だった。2013年の数字と比較すれば、300万円以下の世帯が約5ポイント増加し、他の階級が約1ポイントずつ減っている。
 この調査は5年ごとに行われており、2018年は10月1日に調査が始まった。高齢化が一段と進んでいることを考えれば、最新版では「300万円以下世帯」が半分を超えている可能性が大きい。

半数以上の世帯は公的年金が頼り
 収入の内訳にも、地域経済の厳しい現実は色濃く反映されている。総務省が行った「全国消費実態調査」(2014年)によれば、旭川で抽出調査の対象となった6462世帯のうち、主な収入が勤め先収入だった世帯の比率は36・3%で、公的年金・恩給の51・5%を大きく下回った。格差社会の象徴とも言える利子・配当金を主な収入とする世帯はわずか0・5%。高所得者層の象徴である「不労所得」に頼って生きている人が旭川市にはごくわずかしかいないことがわかる。
 こうした数字が示すのは、旭川市における主要な「産業」が農業やものづくり、サービス業ではなく、もはや「公的年金・恩給」だということだ。公的年金・恩給の原資は現役世代の納める年金保険料や税金であり、現役世代がいつまで耐えられるのか、現在の公的年金制度が維持できなくなったら地域経済はどうなってしまうのかと、行く末を心配せずにはいられない。
 この主な収入の内訳についても、顕著な地域差がある。札幌市で勤め先収入が主な収入だった世帯の比率は52・0%と全世帯の半分を超えており、公的年金・恩給の30・3%を大きく下回っている。
 この記事で紹介したのは、マクロ経済の状況を示す数字だが、その背景には、給料が減って公的年金に頼るようになった世帯、年収が500万円から300万円に減った世帯などの「実例」がある。いまは中間層にカテゴライズされ、この記事を他人事として読んでいる人の中にも、いつか「300万円以下世帯」に仲間入りする人がいるかもしれない。

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この記事は月刊北海道経済2018年12月号に掲載されています。