ツルハの牙城崩せないサツドラ

 ドラッグストアーナンバー1のツルハにナンバー2のサツドラが挑戦状をつきつけて展開されている旭川でのドラッグストア戦争は、どうやらツルハが牙城を守り抜くようだ。今年に入ってサツドラが相次いで3店舗を閉めたのと対照的に、ツルハは7月、創業店に近い4条16丁目に4条店をオープンさせる。

王者にリベンジ
 1972年に札幌市で創業した㈱サッポロドラッグストアー(サツドラ)は、2017年11月時点でドラッグストアー187店、調剤薬局10店、その他2店を展開。年間売上高784億円(18年5月期)を超え、㈱ツルハに次ぐ道内ナンバー2のドラッグストアーチェーンに成長した。
 01年に、当時国内トップの㈱マツモトキヨシと業務提携した後、05年に旭川へ進出し、ツルハ発祥の地4条17丁目に隣接する3条17丁目に旭川1号店を出店した。道内ナンバー2の王者ツルハへの挑戦だった。
 しかしこの時はツルハの牙城に爪痕を残すこともできず業績不振のため5年で撤退するという屈辱を経験した。
 旭川エリアでの戦略を練り直し、撤退から3年後の13年6月に大町2条7丁目に「メガドラッグ旭川大町2条店」をオープンさせた。薬や化粧品だけでなく、酒類や冷凍食品、生活雑貨なども扱う大型店で、この形態の店舗を主力にサツドラは大町に続き「豊岡4条店」「旭川4条店」「花咲町店」「プラタナス通店」(神楽岡)と、次々に新店をオープンさせた。16年12月には「旭川緑町店」をオープンさせ、アッシュ1階の小規模店なども含めて旭川の店舗数を一挙に8とした。
 メガドラッグ形態でのリベンジで、サツドラはあえてツルハ既存店に近い立地に次々と新店をオープンさせ対抗意識むき出し。極めつけは緑町店で、嵐山通線をはさんで「ツルハ緑町店」の真向かいへの出店。住所(緑町18丁目)は同じで番地だけが違うという、まさにガチンコ対決の立地となった。

メガドラッグ
 さて、サツドラが王者ツルハに挑んで繰り広げられている〝ドラッグストアー戦争〟だが、どうやらツルハに軍配が上がりつつあるようだ。サツドラは今年3月に花咲町店を閉店したのに続いて、6月に入って緑町店、永山3条店と、相次いで3店舗を閉じた。
 サツドラ花咲町店は、ホクレンショップ北部店閉店のあとに、旭川市農協が所有する店舗を借りて15年にオープンしたもので、いわば「中古物件」への出店。このためレイアウトに制約があり、不本意な店舗づくりで、集客・売り上げは低調なままに推移した。開店4年で閉店に追い込まれたのも止むをえなかったとも言えそうだが、しかしその3ヵ月後、6月7日に閉じた緑町店は鳴り物入りの大型店メガドラックだった。
 ツルハ緑町店は、小規模店舗で老朽化も進んでいる。その目の前へのライバルの大型店オープンは、長年ツルハをひいきにしていた地域の消費者の目に「食品スーパー並みの品揃えのサツドラ新店にツルハはかなわないだろう」と映った。しかし予想に反して、ツルハが善戦し、サツドラの集客は伸びなかった。
 ツルハ善戦の要因の一つは、シニア世代、とくに女性層の〝ツルハファン〟の多さ。「ツルハの店舗は接客も含め温かい感じがする。長年利用しているので親しみがある」(60代女性)。シニアの下の世代が「品揃え豊富で通路が広く清潔なサツドラが好き」「酒やスポーツドリンクなど薬以外の買物がしやすい」と、新しい店舗形態を受け入れているのと対照的だ。
 商品の価格に大きな違いがないこともあって、サツドラは決定的な集客力を見せ付けるまでに至らなかった。

ドミナント戦略
 また、小売業界にはこんな見方もある。「ライバルが出店しても客を奪われなくするために、ツルハは同一地域に複数の店舗を構える〝ドミナント戦略〟をとっている。近文地区では、緑町店に加え直線距離で500㍍の錦町15丁目に錦町店、同じく700㍍の北門町14丁目に近文店を配置しドミナント方式が出来上がっている。サツドラの新店が目の前のツルハ緑町店をおびやかしたとしても、近文エリアで見るとツルハに致命的なダメージを負わせることはできなかった」
 ツルハ緑町店の客は減ったが、サツドラ緑町店の集客も目標には遠く及ばなかった。開店から2年半、業績不振を挽回できず閉店となったという経緯。
 緑町閉店の9日後、今度はサツドラ永山3条店が閉店した。同店は緑町店同様、ツルハ永山3条西店に隣接しての立地(住所はともに永山3条8丁目)。ツルハ3条西店の顧客をそれなりに奪いダメージを与えたようだが、永山エリアは強力なドミナント方式でツルハ店舗がずらりとそろう。永山3条4丁目に永山3条店、7条5丁目に環状通店、7条4丁目に永山7条店、8条4丁目に永山南店、2条19丁目に永山店、6条13丁目に永山6条店と、3条西店も含めて7店舗の配置だ。
 ツルハの分厚い多店化展開の前に衆寡敵せず。サツドラ永山3条店も業績不振で閉店に追い込まれたようだ。
 札幌と旭川の消費者の〝嗜好〟の違いも、サツドラ苦戦の要因の一つだとする業界人もいる。「店舗が大きく、酒や食品など幅広い品揃えのメガドラッグは札幌の消費者には歓迎されているが、旭川ではクール過ぎる店舗と受け止められるようだ。サツドラよりは雑然としたツルハの店舗に旭川市民は親しみを感じている」との解説だ。

食品スーパー化
 業界内には「サツドラの大町店とプラタナス通店の閉店・撤退もありえる」との不穏なウワサも流れているが、サツドラ店舗開発の幹部は「数ヵ月の間に3店舗が閉じれば〝旭川撤退か〟といわれてもしかたがないが、しかし、これ以上の撤退はない」と、きっぱりと否定する。店舗戦略としては前向き姿勢は変わらないそうで「周辺8町も含め、新店舗出店の気持ちは十分にある」と付け加える。
 サツドラは昨年師走、札幌市内に実験店舗「東雁来11条店」をオープンさせた。食品スーパー、惣菜メーカー、精肉メーカーの3社がコンセッショナリー方式(売り場を借りて出店する専門店)で出店。青果、鮮魚、惣菜、精肉の生鮮売り場が広さ約60坪と充実している=左の写真=。通常のドラッグストアーにはないバックヤードも設けて生鮮食品の調理スペースも確保されている。
 2007年に5兆円だったドラッグストアー業界の市場規模はこの10年で1・5倍に拡大した。食品の品ぞろえを増やしスーパーマーケットやコンビニから顧客を奪ってきたのが拡大の要因で、小売業界の王者イオンの業績さえも脅かす存在となってきている。。サツドラの実験店はドラッグストアーの〝食品スーパ化〟を一段と加速させたもので、各方面から動向が注目されている。
 ツルハの多店化の前に旭川で苦戦を強いられているサツドラだが、食品スーパーなどとタイアップした新戦略で再度、ツルハに挑む可能性もある。

4の16に新店
 一方、創業の地旭川でサツドラの挑戦を再び退けつつあるツルハは絶好調。
 昨年7月、JR旭川駅前に地下1階地上12階建ての「ツルハBLDG」を開業し、1階フロアの9割にあたる約1000平方㍍を売り場とする「旭川駅前店」をオープンさせた。2階にエステと語学教室を、3階から上には「長谷川ホテル&リゾート」(東京)が経営する「ワイズホテル」を入れた。
 同じく旭川駅前、西武旭川店A館跡地にも、複合商業施設を建設し、1階にツルハ、2階に商業テナントを入れ、3階から上層階にホテルを迎え入れる。年内着工、21年秋ごろの開業見込み。旭川生まれの上場企業として、駅前ゾーン、中心部活性化に極めて大きな貢献を果たしている。
 そして、老朽化し手狭な4条17丁目の創業店を移転新築。4条16丁目に市内50店目となる新店をこの7月にオープンさせる。ライバル進出を阻止する店舗展開の確立だ。

表紙1908
この記事は月刊北海道経済2019年08月号に掲載されています。
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