摘出した側の副腎には異常なし 「誤診」か否かめぐり医療訴訟

 肺、腎臓、睾丸、卵巣…。人間の器官には左右2つが備わっているものがいくつかある。病気の治療のために片側を摘出したとしても、もう一方が健康なら社会生活を維持することは可能だが、もしも健康な側を摘出してしまったら…。2年前に旭川赤十字病院で行われた手術で、片方の副腎を摘出したことが適切だったかどうかをめぐる裁判が始まった。
一方なら摘出できる

 2017年3月に旭川赤十字病院で手術を受けたのは、当時22歳の女性。高血圧の治療のために左側の副腎を摘出されたが、その後の病理検査では、摘出された副腎から異常(病巣)が発見されず、その後の診察で少なくとも右側の副腎には異常があることがわかった。女性は医師の誤診が原因と主張。母親とともに約6300万円の損害賠償を求め、担当した医師と旭川赤十字病院を経営する日本赤十字社(東京)を訴えた─これが訴訟のあらましだ。
 副腎とは、左右の腎臓の上にある小さな臓器。腎臓が尿の濾過を担っているのに対し、副腎はホルモンをいくつも作っている。このうちアルドステロンは人体に不可欠なナトリウムを体に蓄えるホルモン。副腎に腫瘍ができてアルドステロンが過剰になると、塩分が大量に蓄えられて高血圧になる(原発性アルドステロン症)。高血圧症の人の約1割が、原発性アルドステロン症だと言われている。
 治療のためには腹腔鏡下での副腎摘出手術が有効だ。ただし、人体に不可欠な副腎をどちらかひとつ残さなければならないため、手術が可能なのは、左右どちらかの副腎に異常があり、もう片方が正常な場合(片側性)に限られる。両側に異常がある場合(両側性)や他の理由で手術ができない場合、最初から手術の選択肢はなく、薬物投与など他の方法で治療することになる。

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この続きは月刊北海道経済2019年11月号でお読み下さい。