「天人閣」事業譲渡にファンドが動く

休館後1年近くが経過する東川町天人峡温泉のホテル「天人閣」が、再開へのかすかな希望を残してもがいている。昨年春に天人閣の事業を引き継いだ㈱カラーズ・インターナショナルはすでに再建をあきらめ、新たな譲渡先を探している模様だが、廃墟同然となった温泉施設に手を差し伸べる事業者が現れるかどうか。周囲の関心は高まっているが、いまのところ見通しは立っていないようだ。

何がどうなっているのか情報不足
 創業120年、明治の時代から旭川の名門「明治屋」が経営してきた天人閣が8億4000万円もの負債を抱えて民事再生、自己破産の道をたどるようになったのが10年前。その後二転三転し、昨年4月に㈱カラーズ・インターナショナル(本社・東京港区、松本義弘社長)に経営権が移った際には、関係する多くの機関が有力企業とされるカラーズ社への期待感であふれた。
 しかしこの時の事業譲渡では、建物の所有権はカラーズ社が握ったものの、営業権は直前まで天人閣を経営していた地元資本の㈱松山温泉(藤田幸雄社長)が担うという変則的なものであったため、周囲からは「経営実態が見えてこない」という声も上がっていた。例えば、昨年の天人閣営業中の売り上げはカラーズ社に送られ、従業員給与などの経費はカラーズ社から支払われていた。また事業譲渡を受けた後、道に収めた不動産取得税はカラーズ社の名前で払われ、町税である固定資産税や入湯税の納付書もカラーズ社あてに送られている。
 林野庁に対する国有地使用許可願いや温泉使用願いは㈱松山温泉が出しており、北海道森林管理局上川中部森林管理署も国有地使用許可は㈱松山温泉に与えている。
 しかし、この国有地使用許可については1年更新の条件が付けられていながらも10月末現在、土地使用料も温泉使用料も未納状態で、近く督促状が発送されることになっている。契約を更新できず土地も建物も使えない状況が続く中で廃墟同然の天人閣がどうなっていくのか。残念ながら正確な情報は入ってこない。

ファンド会社が役場を訪ねてきた
 今年9月末で切れた国有地使用許可を次年度も更新したいとする契約書は、すでに㈱松山温泉の藤田社長から上川中部森林管理署に提出されている。同署では契約書は受け付けたが、許可を出すために必要な年間の土地使用料約60万円と温泉使用料約100万円、合わせて150万円以上が未納となっているため、現在のところ正式契約とはなっていない。また、東川町への固定資産税や入湯税、観光協会の会費などもカラーズ社からはまだ支払われていない。
 そんな状況の中で10月1日、東京に本社を置くファンド会社「地域創生ソリューション㈱」の社員が突然、東川町役場を訪ねてきた。対応した産業振興課によれば、同社はカラーズ社の松本社長の依頼で天人閣を引き継ぐ新たな事業者を探している。そのためにまず現地を視察に来たということで、事業者が見つかれば同社がそこに出資するという話だったという。
 このことによって、カラーズ社が天人閣の事業譲渡を考えていることがはっきりしたのだが、実は今年に入ってから、カラーズ社が天人閣の譲渡先を探しているという話は伝わってきていた。
 昨年春には「10億円を投じて天人閣を再生させる」と取引業者の前で力強く語った松本社長が、その舌の根も乾かぬうちにあっさり見切りをつけていたことに地元関係者は唖然としたものだが、東川町の観光事業に期待をかける行政としては、こうした民間企業の変節にも打つ手はなく、成り行きを見守る以外に手はなかった。

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この続きは月刊北海道経済2019年12月号でお読み下さい。