名寄市街地近代化 補助金審査に甘さ?

 名寄市の「中心市街地近代化事業」は、商業地域内で行う店舗や事務所の新築・増改築の工事費を市が補助するというものだが、事業者が市役所に申請する書類等の審査体制が不十分なため、補助金の不正受給が横行する可能性が出てきている。市は「審査は適正に行っている」と強調するが、市民の間からは「このままでは公序良俗に反する、ただの税金のばらまきに終わってしまう」と危惧する声も上がっている。

工事費8割補助 上限600万円
 名寄市では従来から市内の中小企業者を対象に様々な支援事業を行っている。今年に入ってからはコロナ対策の一環として一部、補助基準の特例措置を設け、期限付き(今年4月~来年3月)で支援の中身を充実させたものもいくつかあり、その中の一つに「中心市街地近代化事業」がある。
 これは、市が都市計画用途地域としている商業地において、店舗や事務所を近代化(新築・改築・増築)する場合に工事費の一部を市が補助するというもので、これまでは工事費が300万円以上のものについて2割まで補助するという基準を、150万円以上の工事について8割まで補助すると基準を変えた。
 補助限度額の600万円、施工業者は地元企業であるという条件は変わらなかったが、さほど大がかりな工事でなくとも制度を利用できるようになり、しかも8割も補助を受けられる仕組みに変わったことは、深刻なコロナ問題への対策とはいえ、行政にとっては結構な大盤振る舞いである。
 工事を計画する事業者が行う補助金申請は4月から始まっており、窓口となる市経済部産業振興室によると、7月末現在で申請が上がってきたのは3件ということだが、「中心市街地近代化事業」と同様の制度で、中心市街地以外のエリアを対象とする「店舗支援事業」(補助限度額100万円)の方は7件にのぼっており、この際、積極的に行政の支援を受けようとする中小事業者の意欲が伝わってくる。

工事金額水増した見積書を市に提出?
 7月下旬、名寄の市民から本誌に情報提供があった。簡単に言えば「補助金申請における市の審査が不十分で、このままでは市民の血税が悪質業者の食い物にされる」という内容だった。この情報提供者Aさんは、市に対して審査のずさんさを指摘し改善を求めたが、その時の対応の甘さに納得がいかず、このまま放っておけば被害が増え続けると、詐欺罪の適用を求めて警察にも情報を持ち込んでいる。
 Aさんが「中心市街地近代化事業」制度に盲点があることを意識し始めたのは、市内のある工事業者が話していた内容を耳に挟んだからだ。
 この事業では、補助の対象となるのは建物の新築や増改築に係る経費だけで設備の更新や屋根・外壁の塗り替え・補修などは対象外となるのだが、飲食店事業者から改築工事を相談された施工業者が「役所の担当者は、1本5000円の材料を5万円だ10万円だと言っても分からないから、補助に該当するような見積書を作ってあげる」と言っていたというのだ。
 これは言い換えれば、見積書の工事金額を増やすことによって、補助金として受け取る金額も増えるから、その分で補助対象外の工事も行えるということである。さらにうがった見方をすれば、実際以上に補助金を多額に受け取ることができれば、事業者と施工業者で山分けできるということにもなる。ここまでくれば、補助金制度を利用した悪質な詐欺ということにもなる。
 Aさんも、こうした手口の詐欺行為が行われているという証拠を握っているわけではない。しかしAさんは、水増しの見積書を作ってあげると言っている施工業者(個人事業主)の人柄を知っていることもあり、疑いの思いは募るばかりだ。

表紙2009
この続きは月刊北海道経済2020年09月号でお読み下さい。
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