旭川の公的5病院が診療情報を共有

 旭川の5つの公的病院が電子カルテなど患者の診療情報を共有し、地域の診療所がネット上で情報を閲覧できるネットワークシステム「たいせつ安心i(あい)医療ネット」が4月1日に本格稼働した。深川、富良野、留萌にある3つの公的病院も画像提供で連携し、道北エリアにおける「1地域・1カルテ」の確立を目指す。

診療情報を閲覧
たとえば朝起きて、お腹が急に痛くなって近所のクリニックを受診したとする。数ヵ月前に公的病院で胃腸の検査を受けたばかりだとしたら、その時の検査結果やレントゲンなどの画像をかかりつけ医がすぐに見ることができれば、どれだけ効率的だろうか。
こんな画期的なシステムが旭川で4月1日に本格稼働した。旭川市医師会(山下裕久会長)が事業主体となって運営する「たいせつ安心i医療ネット」(以下iネット)。市内にある5つの公的病院(日赤、市立、厚生、医療センター、旭医大)が持つ患者の診療情報を、民間病院や診療所がインターネットを介して閲覧できるというものだ。
iネット構想が浮上したのは4年前。2010年に都道府県(第三次医療圏)の広域的な医療体制を整備拡充することを目的とする「地域医療再生計画」が閣議決定されたことを受け、翌年の11年1月、上川総合振興局に医療機関と医師会が集まって行われた協議がきっかけとなった。当時、複数の公的医療機関でインターネットを利用した医療ネットワークの導入が検討されていたが、市内にある5つの公的病院と地域の診療所をネットワークで結び、患者の診療情報を一元的に利用可能とするシステムづくりを目指す案でまとまった。
すでに日赤病院が院内の電子カルテにある情報をインターネットを介して連携している地域の医療機関に提供する「旭川クロスネット」というシステムを導入済みで、順調に実績を伸ばしていたため、旭川市医師会では新たに導入するシステムを旭川クロスネットの〝拡大版〟と位置付け、日赤のノウハウを活用しながらシステム構築のための準備を進めていった。
5つの公的病院と地域の診療所をネットワークで結ぶという一大プロジェクトだけに準備期間だけで3年という年月を要した。ハードルとなったのが5病院全ての参加を取り付けること。この事業に対して国から1億2500万円の補助があったものの、システム構築には各公的病院に1000万円から2000万円程度の負担や、システム維持のためのサーバー費用が必要であるなど、コスト面での課題があったためだ。
旭川市医師会では医療ネットワークの先進地として知られる長崎の「あじさいネット」をはじめ別府「ゆけむり医療ネット」、島根の「まめネット」の視察や、勉強会を重ねながら旭川の現状に適した仕組みを検証。5病院すべての参加も決まり、今年1月に協議会を発足させ、4月1日に本格稼働した。

表紙1404
この続きは月刊北海道経済2014年6月号でお読みください)
この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!