6人の現職が気をもむ〝台風の目〟安住太伸の動静

 「無投票の可能性大」と選挙関係者が口を揃えるのが来年4月の道議選旭川市。いまのところ、いずれも現職の自民、民主のそれぞれ2人と公明、共産の1人ずつしか立候補の動きはなく、定数6でぴったりと収まる。ただ各陣営とも気を揉むのは安住太伸元市議の動き。みんなの党分裂で四面楚歌の厳しい状況に追い込まれているが、仮に出馬すれば2万票といわれる当選ライン突破の可能性は高い。本人は「進退はまったくの白紙」と話すものの、彼の動静次第で一転、道議選は少数激戦の様相も。(文中敬称略)

加藤と東
安住太伸今秋の市長選を睨みながら戦闘態勢への秒読み間近なのが来年4月に予定される道議選旭川市。従来通り、定数6をめぐる戦いへと突入する。
まず、自民党は国政での追い風の中で現職の加藤礼一(5期)、東国幹(3期)の2人が議席の死守を目指すと見られる。
かつては自民党だけで定数の半分の3議席を目指したこともあったが、有権者の選択が多様化するなかで、そこまでの勢いはない。
加藤は道議会議長のポストを射止めた実績を武器に、前回は東に奪還されたトップ当選への返り咲きを視野に入れて戦う。一方の東は、連続トップ当選を目指しながらも、今秋の市長選に担ぎ出される可能性もある。自民党旭川支部の市長選候補者委員会が実施したアンケート調査で、東は最多得票を獲得したからだ。ただ、アンケートではほかにも複数の有力候補の名前が上がっており、東に収束して行くかはまだまだ不透明な状況。しかし、他の候補での擁立が難しい場面が訪れれば、東に出馬を要請するという緊急事態も考えられる。
仮に、東が市長選で勝利した場合は、代わって現職市議でかつて道議選に挑戦したこともある安田佳正を筆頭に、市議初当選組の穴田貴洋や木下雅之などの名前が浮上してくることも考えられるが、現時点でそのような動きは皆無だ。市長選の候補選びで不透明なところもあるが、現時点では加藤、東の2人で道議選に挑む可能性が大。

木村と三井
一方の民主党も、現職の木村峰行(4期)、三井あき子(4期)の2人で決まりのようだ。こちらも自民党と同様、3議席を目指す状況にはない。 特に木村は副議長ポストを手にした。その勢いで連続当選を目指すことになる。手堅い組織票をバックに、前前回(2007年)は2位の上位当選を果たした。前回(2011年)は4位と低迷したものの、今回は副議長を前面に押し出すことで、上位当選への復活を目指す。
三井は1999年に市議から道議に鞍替えし、見事トップ当選。2期目も票の上乗せに成功したものの、僅差で加藤に及ばず2位に甘んじた。続く3期目の前前回は5位と低迷。4期目に挑んだ前回は苦戦が伝えられたが、トップの東と1200票差にまで接近し、大きく挽回した。同じ4期目の木村とは道議会での力量の違いが指摘されているものの、〝アッコ人気〟はまだまだ健在。選挙選では底固い支持基盤をベースに連続当選をねらう。

吉井、真下
公明の新人・吉井透は選挙戦で安定感を誇った前職・荒島仁の後継として知名度不足を組織力でカバー。5位という結果だったが、見事初陣で当選を果たした。公明票は安定しているのが特徴で、5人の市議会議員がフル稼働すれば、当選ラインは自ずから見えてくるようだ。
また、共産の真下紀子は「怪物」といわれた萩原信宏の後継として2003年に初当選。萩原が獲得していた約2万5000票より、6000~7000票目減りしているものの、3期連続当選を果たし、共産として1議席を死守している。道議会では質問回数がダントツの1位と他の議員を圧倒しており、際立つ存在になりつつある。
投票率により、トップ当選が3万票を上回ったこともあるが、当選に向けてはまず2万票確保が各候補の最低条件といえる。現職6人は当選ラインとされる2万票が視野に入っている。
かつて3議席を目指したこともある自民・民主だが、現有の2議席確保が精一杯で、党勢拡大の動きはない。仮に、市議の中から道議に挑戦しても2万票というのは大きな壁だ。現職市議の力量から見ても、当選圏内に入ってくるような人材はいない。それは、公明・共産も同じで、1議席死守が至上命題。新たな候補を擁立するだけの余力は持ち合わせていない。

レジェンド
ここで一つ、見落としてはならないのが、前回みんなの党の公認で出馬し、最下位に終わった菅原範明元道議の票の行方だ。菅原は前回の選挙を「ラストチャンス」として背水の陣で戦った。当時は、東日本大震災の影響もあり、選挙は自粛ムードが漂った。各有力候補が軒並み票を目減りさせる中、菅原は約1000票ほど上積みしたものの、当選ラインには達しなかった。
その菅原はすでに政界から引退。後継はおらず、票は宙に浮いたままだ。本来であれば、現在、みんなの党の北海道支部長を務める安住に道議選出馬の要請があってもおかしくない状況だったが、みんなの党の分裂騒ぎのほか、渡辺喜美前代表が借入金問題で辞任に追い込まれるなど、党の混乱が続き選挙対策どころではないのが現状だ。安住自身、本誌のインタービューに「進退はまったくの白紙」と答え、いずれの選挙にも出馬を考える状況にはないとしている。
それでも各党選挙関係者が口を揃えるのが「みんなの党であれ、無所属であれ、安住が旭川市の道議選に出馬すれば、当選ラインの2万票に迫ってくるのは確実。そうなれば、無投票どころか、現職6人と安住の熾烈な戦いに突入することになる」と安住の動きを注視している。前回の道議選では、一時期出馬を検討した安住と落選した菅原との間に修復不可能な〝亀裂〟が生じた。したがって、菅原票がそのまま安住に流れることは考えにくいが、それでも安住の個人票を基礎に、当選ラインまで達してくるというのが選挙関係者の一致した意見だ。
市長選出馬で東が道議選に立候補しなかった2003年の道議選は無投票になりかけたが、病院理事長の的場光昭が急きょ出馬し、選挙戦になだれ込んだ。この時は的場が1万票に届かず大きな波乱はなく終わった。安住は市長選出馬から市議選へ戻ったかと思えば衆議選を目指し、みんなの党に入党し菅原への選挙協力を反故(ほご)にして道議選へ出馬しようとした。そのめまぐるしい〝変節〟に支持者は離れたといわれる。しかし市議時代の圧倒的な選挙の強さはまさにレジェンド。腐ってもタイ。3万票には遠いが2万票はとるだろうと、周囲は見ている。道議選が無競争で終わるのか、それともかつてない激戦へと変貌するのかは、安住の出方次第だ。

市長選の目も?
安住本人の心境は囲み記事インタビューの通り。所属するみんなの党の混乱で安住も四面楚歌の状況に置かれている。重い口調からは、10ヵ月を切った道議選のことなど考える余裕はないと受け取れる。しかし旭川市議会の古参議員はこんな風に言い切る。「安住は市長選に出てくる。たとえ勝算がないとしても、市長選で闘って来春の道議選に勢いでなだれ込む」。果たしてどうなのだろうか。

表紙1407
月刊北海道経済2014年7月号には安住氏のインタビューが掲載されています