激突!旭川市長選 民主西川VS自民東

 任期満了に伴う旭川市長選(11月2日告示、9日投開票)は、3選を目指す現職の西川将人氏(45)と、旭川市選出の道議で新人の東国幹氏(46)が出馬を表明。西川氏は民主党が、東氏は自民党・新党大地がそれぞれ推薦し、道内市長選としては2年ぶりの両党激突となる。いまだ動向がはっきりしない安住太伸氏、共産党、さらには方針を明確にしていない公明党・創価学会の出方にも注目が集まる。(文中敬称略)

保守の結束アピール
nishikawa 西川に2連敗中の自民党旭川支部では、候補選びに難航していたが、西川の出馬表明(8月8日)に急かされた形で土壇場で東に出馬を要請。8月5日の時点では「ありえない話」と全面的に否定していた東だったが、一転して出馬を決め、これで2人の頭文字をとって〝東西対決〟が実現した。
道内における市長選で自民党と民主党が対決したのは、2012年11月の北見市長選が最後。それ以降、13年6月に実施された北広島市長選から14年4月の富良野市長選まで、道政史上、異例の8連続無投票や相乗りなどが続いていたが、この9月の根室市長選(14日投開票)は選挙戦になっている。
8月12日の正午に開かれた自民党候補者選考委員会では「選挙戦で勝てる候補」「そのために保守一本化できる候補」をキーワードに満場一致で東の擁立を決定。奇しくも支部長の東本人が、自身の擁立を求める答申を森本茂廣委員長から受け取ることになった。
東はこの答申を重く受け止めたが、「支部長として責任をとるというのではなく、120%自ら納得して踏み切った」と出馬の意向を固めた。同日の夜に開かれた加藤礼一道議会議長のビールパーティーで今津寛衆議は「最強の候補だ」と自信をみせている。
東は8月18日、旭川グランドホテルで開いた出馬表明の記者会見場に「我われの旭川じゃないか」と書かれたタスキをかけて登場。彼の両隣には今津と加藤が座り、ほかにも保守系市議、後援会関係者が一堂に並んで結束ぶりをアピールした。
その席で東は、「西川市長は道北のリーダーとして役割を果たしていない。住民の意見を政治に反映させ、自らの信念で政策を打ち出し、市民に理解を求める姿勢にも欠けている」と批判し、対決姿勢をあらわにした。
市長選には無所属で立候補することを表明。近隣自治体との連携をはじめ、福祉や医療などの社会資源の活用、旭川空港の「新千歳空港代替化」など交通網の整備を進めるほか、企業の海外進出支援などを重点政策として挙げている。
市役所改革については若い職員たちの知恵やアイデアを吸収し、モチベーションを上げるための組織づくりに努める意向。財政再建に関しては収支バランスをはかり、赤字体質の市立病院のあり方を見直すほか、「旭川ブランド」の魅力を発信しながら税収をアップする方針を示した。
「日本一の除排雪体制」を構築して市民生活の充実を図っていきたい考えで、「信念に基づく政策を打ち出し、結果を出す市政を目指したい」と東。また、政権与党・自民党の道議でもある立場から、国政とのパイプを強調。ただ、国の考えと地方の考えには合致していないところもあるため、現場に合った制度設計の必要性を説いている。

新党大地は東推薦
東は道議1期目の2002年にも市長選に挑んでいるが、この際は3選を目指す菅原功一前市長に227票差という市長選始まって以来の僅差まで迫った。06年の市長選では、いったん出馬を表明したものの、結局は出馬を断念。このとき、初当選を果たしたのが西川だった。
azuma その後、東は07年の道議選で再び道議に返り咲き。11年の道議選ではトップ当選を果たし、道議会会派「自民党・道民会議」で幹事長を務めてきた。今後は道議としての活動を続けると思われたが、急転直下、市長選に挑む道を選んだ。
これを受けて8月25日、前回10年の市長選で西川を推薦した新党大地(鈴木宗男代表)は、東の推薦を決定。自民党道連は9月2日に東の推薦を決め、道内選出の国会議員と道議が旭川市内に入り支持を呼びかけ、選挙期間中は柿木克弘幹事長または遠藤連選対委員長が、東の事務所に常駐するなど道連を挙げて支援していく構えだ。
選挙戦の行方を左右する要素の一つは、自民党が過去の選挙で何度も繰り返してきた「保守分裂」を防ぐことができるかどうか。8年前に加藤が市長選に出馬した際には加藤カラーを薄め「もっと熱く我ら旭川人の会」を立ち上げたように、今回は東カラーをやわらげ「変わる旭川 市民の会」として支持を広げていく構えだ。

西川は実績強調
これに対して西川陣営では、東の出馬は想定されていた結果とはいえ、最も警戒しなければならない強力な対立候補であることは確か。政権与党としての自民党の勢いと、東陣営の充実した後援会組織も脅威だ。西川陣営としては、西川市政2期8年の実績と安定感を強調しながら支持を訴えていく方針のようだ。
8月19日に開かれた三井あき子道議のビールパーティーでは、民主党6区代表で前衆議の佐々木隆博が「中国の故事によると、東を司る神様が『青龍』であるのに対し、西の神様は『白虎』。これに重ねると、今回の東西対決は〝龍虎の決戦〟ともいえる。しかも虎は秋の神様ともされ、選挙は秋に行われるため、ぜひ西川に勝ってもらいたい」と士気を鼓舞した。
西川は市長選に無所属で臨むが、民主党北海道は8月23日、連合北海道旭川地区連合会(高橋紀博会長)は28日にそれぞれ、過去2回の市長選と同様、2期8年の実績を評価して西川の推薦を決めている。
8月30日に開かれた「西川まさひと選挙対策本部発足総会」では、民主党北海道副代表の小川勝也参議が「道北の将来を占う選挙。ライバル候補に負けない構想を練り、投票箱のフタが閉まるまで戦っていこう」とあいさつ。木村峰行道議会副議長は「安心して暮らせるまちづくりの先頭に立ってきた西川市政の集大成が次の4年。その実現を果たしていこう」などと参加者に呼びかけた。
また、西川まさひとふるさと後援会の杉山正幸会長が選対本部長に就くほか、相談役に佐々木秀典元衆議、顧問に青木延男元道議、本部長代行には佐々木隆博、選対委員長に木村峰行道議が務めるなどの役員人事を承認している。
杉山選対本部長は「相手がどうあろうと、結集すれば必ず勝利することを信じて疑わない。今までにない厳しい戦いになるが、支援の輪を広げていこう」と力強く訴えた。
民主党は一昨年の政権交代以降、全国的に支持率の低下にあえいでいるが、西川については党のカラーよりも2期務めた実績をアピール。この市長選で勝利し、来春の統一地方選に向けてはずみをつけたい考えだ。道内選出の国会議員をはじめ、道議、市町村議らが、旭川市内の支援者や知人に支持を呼びかける運動にウェートを置いて「3選」を目指す。

安住は9月末表明?
過去2度にわたって市長選に出馬し、今回もその動向が注目されるみんなの党北海道支部の安住太伸支部長(44)は、9月29日に開かれるビールパーティー「進め!安住たかのぶ決意の集い2014」(同実行委主催)で市長選出馬の有無を含め、今後の政治活動の方向性を表明する見通しだ。
ある安住後援会幹部は「斬られても斬られても立ち上がっていくのが安住の選挙。いい加減にしろという気持ちもあるが、安住支持者らがいい意味でまとまってきているのも事実。どっちに転がってもいいような体制づくりをしているので〝最後の大勝負〟のつもりで、市議を辞め市長を目指した当初の気持ちを貫いてほしい」と語り、後援会として安住に出馬要請する可能性を匂わす。
また、共産党関係者などで構成する「明るい旭川の会」では、独自候補を立てるつもりで今年6月から協議を重ねてきたが、9月8日現在でまだ結論を出すに至っておらず、9月12日の会合で最終的な結論を出す考え。
東が出馬を決めるまで「現職有利」とみられ、西川の3選ムードが支配的だったが、両陣営の戦闘モードは日増しに活気を帯びて「安住や共産党候補を計算に入れなければ勝負は互角」との見方も広がっており、全く予断を許さない情勢になってきている。
各陣営の勢いを知る
ところで、陣営の勢いを知る上で参考になるのが、それぞれの後援会が主催して開かれるビールパーティーだ。いずれもロワジールホテル旭川の同じ会場で開かれたが、出馬表明を視野に入れたタイミングで7月29日に実施された西川のビールパーティーには、約1200人(主催者発表)の支持者らが来場し、西川後援会としては過去最多の動員を記録した。後援会幹部によると、チケットの販売実数は、前年の1200枚を大きく上回る2284枚にのぼったという。
これに対して、出馬表明した後の8月27日に開かれた東のビールパーティーには約2000人(主催者発表)の支持者らが詰めかけ、会場からあふれるほどの盛況ぶりだった。チケットの販売実数は「口座振込などのケースが多く現段階では把握しきれていない」と後援会幹部は話している。
9月7日に東、13日には西川陣営の選対事務所開きが相次いで実施された。東の事務所開きには公明党の吉井亨道議、室井安雄市議なども顔をそろえ、東支援の姿勢をアピールしている。
現市政の3期目を実現させたい民主党と、8年ぶりの市政奪還を目指す自民党。西川に軍配が上がるのか、それとも東が西川の3選にストップをかけるのか。それぞれの威信をかけた〝東西対決〟の火ぶたが切って落とされた。

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