着服問題で揺れる留萌商工会議所、専務理事が割腹自殺

 今年3月に発覚した元女性職員(42)の着服事件に一定のけじめをつけようとしていた留萌商工会議所(對馬健一会頭)が、問題の核心を知る人物とされていた梁川信専務理事(64)のよもやの自殺によって、闇の中に逆戻りしてしまった。梁川氏の葬儀で葬儀委員長を務めた對馬会頭や二人の副会頭の進退問題を含め、同会議所は落とし所を求め、さらに混迷の度を深めていきそうだ。

車中で凄絶な最期2通あった?遺書
8月25日、留萌市内は朝から衝撃的な話題で大騒ぎとなった。今年春から、長年経理を担当していた女性職員による多額の使い込み事件で対応に苦慮していた商工会議所の梁川専務理事が、自宅車庫の車の中で自殺を図ったというものだった。
梁川氏は、着服事件で懲戒解雇になった元女性職員の上司として管理上の不適切さを指摘されたものの、内部調査や外部監査に協力しながら、事件の全容解明に取り組む姿勢を見せていた。
rumoi しかしその一方で、会議所議員や会員らの間には「女性一人で10年以上に及んで不正を働けるはずはない。事務局内部に犯罪に手を貸していた者がいたのではないか」との憶測が広がり、45年以上にわたり事務局職員を務めてきた梁川専務は、その核心を知る人物として何かと矢面に立つことが多かった。
「梁川専務が車の中で自殺を図った」という話を聞いて、市民の多くは車の廃ガスによる自殺と思ったはず。しかし実際は凄絶な割腹自殺だったようだ。伝え聞くところ車中は目を覆う惨状で、現場を訪れた警察官も思わず声を失うほどだったという。
報道によると家族にあてた遺書があったといい、覚悟の自殺であったことがうかがい知れるが、そこにはどんなことが書かれていたのか。そしてもう一通、会議所の事務局長にあてた遺書もあったというが、もちろん公表はされていない。
また、地元紙の日刊留萌新聞は、突然の訃報を聞いた對馬会頭のコメントとして「着服問題の解決が近づき(8月)21、22日に監督官庁と打ち合わせを行い、報告のめどがついたと話していただけに、残念でならない。想像以上に心労があったのだと思う」という内容を報じた。
その時会頭が言った「想像以上の心労」とは果たしてどのようなものであったのか。そして、そもそもどのような心労があったのか。今後、梁川氏に話を聞く機会が失われてしまっただけに、謎めいた自殺の動機とともに、着服事件の真相究明も難しくなってしまったようだ。

覚悟の背景を見極めるべき
梁川氏の遺体が車の中から発見されたのは8月25日、月曜日の朝。前日の日曜日から行方が分からなくなっていたのを家族が心配し、車庫を探したところ発見した。22日金曜日までは、普段と変わらぬ様子で仕事をこなしていたという。
遺体が発見された日の朝から、話はたちまちのうちに広がり、留萌市内では様々な憶測が乱れ飛んだ。梁川氏が専務理事として商工会議所の着服事件に苦しい対応をしていたことは会議所関係者の誰もが承知していた。
このため梁川氏の自殺は、着服事件の真相部分と何らかの関わりがあるのではないかという憶測で、ある人は「なかなか全容が解明されない事件の責任を取ったのではないか」と言い、ある人は「今後、自分にも厳しい追及の手が及んでくることを覚悟し、悲観したのではないか」と言う。
一方では、梁川氏が割腹自殺をしたということに重きを置く人もいる。日本では死因の第1位が自殺という統計もあり、自ら死を選ぶ人の数は多い。しかし近年において割腹自殺のケースは極めてまれ。「自殺するにしても、まさか切腹とは…よほどの覚悟に違いない」。その覚悟に至った背景をしっかり見極めるべきと強調する。
自分の腹部を短刀で切り裂いて死ぬ割腹自殺には、古来、主君に殉ずる「追腹」(おいばら)、職務上の責任や義理を通すための「詰腹」(つめばら)、無念のあまり行う「無念腹」などがあるとされるが、梁川氏の場合はこれらの中に該当するものがあったのだろうか。

葬儀委員長務めた對馬会頭の思いは
葬儀は8月27日通夜、28日告別式の日程で行われ、葬儀委員長は對馬会頭が務めた。会場いっぱいに花輪が並び、祭壇には梁川氏の生前の笑顔の写真が飾られていた。
以下はこの時の葬儀委員長の挨拶である。
「8月25日の早朝に突然の訃報に接し、ただただ驚くばかりです。
ご本人は昭和44年留萌商工会議所に入所以来、その後、昭和50年には中小企業相談所の経営指導員となり、国の中小企業振興政策のため、税務申告等の指導、雇用保険・労働保険等の代行業務などに従事していました。
その後、経験を買われ商工会議所事務局長を長く務め、昨年11月には専務理事に就任、その間45年以上の長きにわたり市内の多くの会員事業と関わりを通じ、地元経済の振興に力を注いでいたところです。商工会議所役員、議員一同改めて長年のご労苦に感謝を申し上げ、ご冥福をお祈りします」
今年3月に発覚した元女性職員による着服事件のことを知らない人なら、故人の功績を紹介する對馬氏の挨拶も淡々としたものに聞こえたかもしれないが、對馬氏の思いの中には「専務理事として、最後まで後始末をしっかりやってほしかった」という無念の気持ちがあったのではないか。
本誌は事件発覚後、この問題を2度にわたって報道してきた。記事の内容は、会議所の事務局長を長く務め、昨年から専務理事に就任していた梁川氏が、内部調査や外部監査からは見えてこない部分を知っているのではないかという論調のものだった。
もちろん確信を得て書いたものではなかったが、会議所の内部事情に詳しいと思われる人物(複数)からの投書や、会議所関係者の話を参考に〝世間の目〟を報道してきた。
しかし、對馬会頭がおそらくそう感じているように、本誌もまた、核心に迫るための大きな砦を失った。

元女性職員からの聞き取り行われず
今回の着服事件で商工会議所は7月15日、臨時議員総会や会員説明会を開き、外部監査の調査結果を報告した。それによると、当初、元女性職員の告白をもとに3290万円とはじき出されていた着服金額が、それより800万円も多い4100万円に膨らむことが報告された。
また、会議所側はあくまでも女性職員を刑事告発しない方針を明らかにし、事件の解明よりも「着服金の全額回収が最優先」であることを強調した。しかし、この方針に納得できない議員や会員も多く、問題の幕引きはまだまだ先になりそうな予感がした。
会員の不満は顕著に現れ、会員説明会が終わって間もなく、7月18日付の日刊留萌新聞の投稿欄「さざ波」には〝一市民〟からの投稿として次のような苦言があった。一部を抜粋すると─
「(会員説明会では)女子職員からいまだ聞き取り調査が終わっていないという報告でした。6月2日に行われる予定だった聞き取り調査が、6月1日に専務理事の机の上に『明日の聞き取り調査は都合がつかない』旨の女子職員からの手紙があったとの報告でした。
その後も電話やメールで連絡を取ったが15日の報告会までに女子職員から聞き取り調査ができていない、とのことです。それで済む会議所の体質には理解しかねます。
追加で800万円を超える横領額が出たとのことですが、聞き取り調査にも応じない女子職員が本当に返済できるのでしょうか。女子職員が今回の事件を重く受け止めているのであれば、聞き取り調査をきちんと受け、状況説明をするべきですし、会議所は本人からの聞き取り調査をせず、結論を出すべきではないと思います」
この投稿文にあるように、会議所は3月の定期監査で長年の着服を発見し、経理を担当していた元女性職員が「自分がやった」と横領を認めて以来、誰も本人から詳しい事情を聞いていない。その後の内部調査や外部監査でも、肝心の元女性職員からは何ら話を聞いていないのである。
「詳しく話を聞けないわけでもあるのではないか?」─会議所関係者はもとより一般市民も、一つの仮説を立てて疑惑を膨らませていった。

呼び出しに応じず横領女性が抵抗?
留萌の情報通に話を聞くと、会議所から元女性職員へ出した呼び出し状は内容証明郵便で行われ、受け取った女性は内々に「聞き取り調査には応じるが、その場合は記者会見をしたい」と伝えてきたとされる。
記者会見までして女性が何を話すのか。危険?を察知した会議所側があえて女性を呼び出すことを避けたのではないかという憶測が、市内に蔓延しているというのだ。
また、女性が返済しなければならない不足分の約800万円については、女性側が時効を盾に追加返済を拒んでいるとも伝えられるが、すでに返済した金額も、時効分を加味すれば、逆に払い過ぎているという話さえ出ているようだ。
「元女性職員は、すべての責任を自分一人に押し付けて、解決を図ろうとするやり方に抵抗しているのだと思う」と言い切る会議所関係者もおり、「記者会見を開きたい」と伝えてきたという女性の心中を想像する。
また、前出の情報通は「当初、横領金額は3290万で、その全額を女性側が支払ったとされていたが、実際にはこのうち3〜400万円を誰かが払ったという話が出てきた。その誰かが、誰なのかは想像するしかないが、それが事実ならやはり、元女性職員一人だけの犯罪ではなかったということになる」と、事件発覚時から噂になっていた〝共犯説〟に信ぴょう性を持たせる話をしてくれた。
着服事件の全容を知っていると思われていた梁川専務理事の突然の自殺は、すべてを闇の中に包み込んでしまったのかもしれない。

会員が納得できる事態の収拾を期待
留萌商工会議所は、着服事件で混乱していたため、昨年度の決算総会がまだ開かれていない。外部監査が終了し、問題の幕引きに一定のめどがついたことから8月28日に常議員会、9月上旬に決算総会を開く予定だったが、梁川専務の衝撃的な死去があったため延期されている。
予定されていた常議員会や総会では、先に辞任の意思を表明していた對馬会頭や水戸繁男、辻本哲也両副会頭の辞任が認められ、また、事件発覚直後から對馬会頭に辞意を伝えていた梁川専務理事の後任も決め、新たな体制作りに向けて走り出す手はずだった。
しかし、想定外の出来事により對馬会頭の計画は振り出しに戻ってしまった。「こんな事態になって、對馬氏は全容解決に至らぬまま、会頭としての責任を放棄するかもしれない」と見る向きもあるが、タイミング悪く会頭になったとはいえ、会議所の再出発に道筋をつけてから引くのが本筋。
本誌への投書によると留萌商工会議所には、旅費の二重取り、徴収した懇親会費のピンハネ、私的飲食費の会議所負担、業務外のタクシーチケット使用などなど、改善すべき問題点がまだまだ存在するという。
会議所再興のために強力なリーダーシップを発揮できる人材が求められていることは確かだが、對馬会頭や二人の副会頭には、議員や会員が納得できる事態収拾を期待したい。