一印旭川魚卸売市場 M&A情報の真相

「一印が丸水札幌の傘下に」と報じたのは業界紙「日刊食品速報」9月24日付け。旭川を代表する企業・㈱一印旭川魚卸売市場(旭川市流通団地1の3、大廣泰久社長)の〟身売り話〟とあって、市場関係者だけでなく旭川経済界全体に衝撃が広がり、マスコミ各社は取材に走った。しかし、当事者の一印、丸水ともに沈黙を続けており、それだけにM&A情報の真偽も含め様々、情報が飛び交っている。

ノーコメント
丸水とは、札幌中央卸売市場の丸水札幌中央水産㈱(武藤修代表取締役)のこと。昭和35年3月に水産問屋など4社が合併して設立された企業で、直近の売上高は602億円。同じ札幌中央卸売市場で水産物を扱う曲〆高橋水産㈱と一、二を競っている。食品速報9月24日付けは、その丸水が一印を傘下に収める動きがあると報じ「一印の業績低迷。借入金の負担は重く、自力での再建は難しいとの判断が背景にある」としている。
一印→01確かに、一印の近年の業績はさえない。直近3期の売上高は、2011年12月期119億円、12年12月期112億円、13年12月期108億円と右肩下がりで、11年12月期と翌12年12月期は赤字決算となっている。
売上高ダウンの第一の要因は、人口減と少子高齢化による生鮮品消費量の減少。道内ではこの10年の間に、売上高減少に歯止めがかからず、北見魚菜卸売市場、美幌地方卸売市場、江別卸売市場、夕張卸売市場、赤平地方卸売市場、空知中央地方卸売市場、丸鱗名寄魚菜卸売市場と、7つの卸売市場が破綻に追い込まれている。今年で創業116年となる老舗中の老舗であり、道北の企業売上高ランキングでは常に10位前後に入る押しも押されもせぬ旭川を代表する会社である一印といえども、極めて厳しい状況に追い込まれているのだ。
取引業者に衝撃が走り、社員は困惑、マスコミは事実関係の確認に走った。しかし、肝心の丸水と一印はノーコメント、口を閉ざしている。食品速報の報道と前後して海外出張から帰旭した大廣社長は、9月末に再び東南アジアへ出張に出かけたが、その合間に新聞社の記者が大廣社長をつかまえ問い質したが、記事のようなことはないと短く答えるのみで、逃げるように去ったといわれる。本誌の取材に対しては、湯本常務取締役が「何も話すことはない」、食品速報の記事の真偽に関しても「何も言えない」を繰り返すだけ。
一印と長い付き合いの業者が同社を訪ね、事の真偽を質したところ、営業部門統括の戸松専務は「報道されたようなことはない。実害があり迷惑している」と否定したが、管理部門統括の湯本常務は「何も言えない」とM&A情報自体は否定しなかったという。「専務は事情を知らない。常務は知っているが言えない感じだった。

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この続きは月刊北海道経済2014年11月号でお読みください。
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