慶友会吉田病院を労基が立ち入り調査

 道北における有力な民間医療機関のひとつ、医療法人社団慶友会(吉田良子理事長)。その「予防医療センター」に2月3日、労基の立ち入り調査が入った。本誌は同センターで、残業時間を書類上、別の月に繰り延べる行為が行われたことを示す文書を入手。こうした行為は旭川労働基準監督署も把握している模様だ。慶友会は2012年にも労基から是正勧告を受けており、改めてコンプライアンス意識が問われている。

健診は開院直後から主要事業
 国道39号を当麻に向けて走ると、左側に医療法人社団慶友会吉田病院の予防医療センターが見えてくる。かつて自動車ディーラーが置かれていた建物は、大きなガラスとカーブした壁面が特徴的だ。しかし、利用者はここまでやって来るわけではない。健診車(レントゲン機器などを搭載したバス)と、医師や看護師などのスタッフが旭川市内はもとより、札幌にある拠点も経由して全道各地の企業、団体、施設などに向かい、健康診断のサービスを提供している。同センターに所属する健診車は12台。健診事業を手掛ける道北地域の民間病院としては圧倒的な存在だ。
 慶友会のホームページに掲載されている「グループ沿革」によれば、吉田威氏(故人)を病院長とする吉田病院が31床規模で開院したのは1981年12月のこと。翌年4月には健康診断事業がスタートし、5月には健診車を初めて導入している。現在、グループの3つの主要な事業は旭川市4条西4丁目の吉田病院が担う「医療」、予防医療センターを中核とする「保健」、そして社会福祉法人慶友会が営む特別養護老人ホーム・老人保健施設・グループホームなどの「福祉」。グループ沿革からも、保健が発足当時から現在に至るまで重要な柱であることがわかる。
 予防医療センターの健康診断では、利用者が医師の診断、体重や血圧などの測定のあと、健康維持のためにアドバイスを受ける。職場での健康診断の場合、社員の健康に大きな影響を与えるのが労働時間だ。月100時間以上の残業を強いられている人の心身に深刻な悪影響が及び、生命すら脅かされるおそれがあることは、近年発生した数々の労災事案により社会に広く知られるようになっている。健康を守る立場にある慶友会の予防医療センターなら、そのあたりは熟知しているだろう。
 その慶友会予防医療センターで2月3日朝、労働基準監督署による立ち入り調査が行われた。2人の係官が訪れ、昼休みを挟んで夕方まで職員の労働時間などに関するデータを調べた。係官は同センターが職員たちに対して行った健康診断の結果にも注目している模様。本誌が入手した文書によれば、同センターは一部の職員に月100時間以上、残業させていたことがあるだけでなく、勤務時間に関するデータを改ざんした疑いがある。
 記者の手元に1枚の表がある。縦軸方向には職員の番号と氏名が並び、横軸方向には平成31年4月、同5月、令和元年6月、同7月の記入がある。表の中の数字はその月の各職員の残業時間(休日出勤含む、以下同じ)の長さ。中には月95時間、月92時間、85時間に達している人もいる。こうした長時間労働に従事している人の中には、女性の名前もあり、職員の健康を考える上で望ましくない状況であることは素人の目にも明らかだ。
 とはいえ、どんな職場でも多忙な時期はあるもの。予防医療センターの場合、健診が比較的多い年度の前半に作業量が集中する傾向があるという。

残業約40時間を別の月に振替え
 信じがたいのは、下の表にある4行の記載だ。「(実名)さん、5月分116:05だったため内39:40後月へ」といった記述が4人分ある。5月、6月には4人すべてについて各100時間を超える残業時間が発生したことから、そのうち三十数時間から五十時間弱を7月以降の月に繰り延べた、という意味だと思われる。
 残業をなかったことにするのはもちろん「アウト」だが、一部を繁忙期から閑散期に繰り延べて分散するのは労働基準法第24条の定める「全額払いの原則」に反する。「職場ごとに締め日は決まっていて、それをベースに出勤日数や時間外労働の長さを算出することになります。その分について給料日に全額を支払わなくてはなりません」と、ある社会保険労務士は説明する。
 残業代の不払いはよく報じられるが、残業時間を他の月に繰り延べる行為は、許されないとはいえよくあることなのかとの問いに、この社労士は苦笑する。「普通の企業は残業時間を書類上操作するのではなく、作業そのものを他の月に振り分けて平準化するものです」
 本誌が別に入手した2枚の文書には、文書Aにも登場する職員の名前が記載されている。文書Bには毎日の出勤・退勤時刻(朝7時半ごろから深夜0時30分まで勤務している日もある)、残業時間などが記録されている。「過重労働時間」(超過労働時間の意味と思われる)の合計は文書Aにある修正前の数値と同じ100時間以上。一方、文書Cの出勤・退勤時刻からは、健診車とともに出向いた先での勤務を終えた職員が、事務所に戻った後で従事した仕事の時間が丸ごと消されており、結果的に文書Aの記述通り、「過重労働時間」が70時間強に減らされていた。改ざん前の文書Bに上司の印鑑はないが、改ざん後の文書Cには、予防医療センターのトップである部長のシャチハタ印が押されており、残業や休日出勤に対する手当の支給や当局に対する届け出は文書Cに記されたデータに基づき行われたと推定できる。
 ここでは職員1人についての資料を比較したが、記者は他に2人の職員について、同様の操作が行われていることを示す文書も確認した。朝6時20分から夜9時30まで勤務したデータが丸ごと空白になるなど、より大胆な操作も行われていた。

目標2億円アップ 人手不足は解消せず
 慶友会グループは創立から約40年。この地域における他の有力民間病院よりも後発だとはいえ、それでもこの地域を代表する民間病院の一つとしての地位を確固たるものにしている。なぜその慶友会が、職員の時間外労働に関して不適切な処理を行わなければならないのか。関係者の話から実情が浮かんできた。
 まず、グループ全体で見た収益率の低下だ。他の病院と同様、医療法人社団慶友会もまた保険診療では収益を上げることが難しくなっている。一方、健康保険とは関係の薄い健診事業は、努力と工夫次第で儲かる余地があった。病院は病気になった人が来るのを待っていなければならないのに対して、健診事業は企業や団体、学校など契約が見込める相手に積極的にセールスをかけることで売り上げ増が見込めるためだ。健診事業に力を入れた結果、ピーク時の2016年には健診部門だけで年商約12億円、利益2億円を確保し、グループの健診事業に対する依存が深まった。その後、機器の更新や、健診事業を専門に手掛ける全国的な団体との競争激化で収益はやや悪化したものの、それでも慶友会にとり有望な事業であることに変わりはなかった。
 慶友会グループの成長を維持するために立ち上げられたプロジェクトチームは2018年、健診事業の強化、とくに帯広での新拠点確保を通じた十勝圏の開拓という目標を定めた。予防医療センターでは2年計画を想定していたものの、それが前倒しされ、急きょ、18年の暮れから拠点の物件探しが始まった。帯広市内のコンビニ跡に白羽の矢を立て、大急ぎで契約を結び、5月の大型連休に旭川から連日スタッフを送り込み、連休中にはなんとか体制を整えた。
 また、法人本部から予防医療センターは年間売上2億円アップのノルマを課された。積極的な営業活動で新規顧客の獲得には成功したものの、慢性的な人材不足が続き、本来なら旭川でデスクワークに就いているはずの人員が全道各地での健診の現場の応援に駆り出され、土日に旭川に戻ってたまった仕事を消化する状況が続いていたとの情報がある。
 ただ、こうした状況は長時間労働の原因でもあり、結果だとも言える。看護師や技師などは資格と経験さえあればどの医療機関でも働けるため、業界内での流動率が高く、情報の拡散も早い。長時間労働の情報が広まれば、人材の募集は一段と難しくなる。

標準報酬月額の膨張防止が目的?
 残業時間の分散には、制度的な動機があったと考えられる。毎年4~6月に職員に支払う報酬は、「標準報酬月額」の算出ベースになり、同年9月から翌年8月の健康保険・厚生年金の額に影響する。逆に言えば、毎年4月~6月の残業代を他の月、たとえば健康診断では比較的業務量が少なくなる秋以降に先送りすれば、標準報酬月額を抑制することで、その後1年間、雇用者の負担する健康保険・厚生年金関連のコストを節約できる。もちろん、こうした行為は職員への正当な報酬の支払いや、健康保険・厚生年金の公平なコスト分担の観点から許されるものではない。
 もう一つの動機になった可能性があるのが、残業代割り増しの回避だ。時間外労働については賃金を25%以上、上乗せすることが義務付けられているが、月60時間を超える残業については、通常の1.5倍の割増賃金を支払わなければならない。ということは、残業時間が分散されて60時間を超過する部分が減れば、職員が受け取るべきだった割増賃金が減る。この規定は、中小企業については今のところ実施が免除されているものの、慶友会は職員数や資産規模から大企業とみなされ、適用対象となる。
 この記事で紹介した一連の行為は、労基も立ち入り調査の前から把握していた模様。同署は本誌の取材に対して「個別の案件については取材に応えられない」との立場をとるが、慶友会については過去に是正勧告を行ったこともあり、驚いてはいないはずだ。

2012年にも労基から是正勧告受ける
 いまから8年前のこと、健診のため地方に向かった慶友会の車両が事故を起こして、職員が骨折した。これをきっかけに長時間労働の疑いに注目した労基が調査を行った。2012年5月31日付けで慶友会の当時の理事長に向けて発せられた是正勧告書には「労働者に、時間外労働に関する協定の上限を超えて、1日8時間、週40時間以上の労働を行わせていること」など5項目の問題点が列記されている。これらの問題についてはその後、是正が行われたと考えられるが、根本的な体質の改善までには至らなかったようだ。
 なお、こうした問題について本誌では慶友会に質問を送付したが、回答はなかった。

表紙2003
この記事は月刊北海道経済2020年03月号に掲載されています。

東川源水公園でマナー違反横行

 北海道の屋根・大雪山系の自然が生み出した名水を自由に汲むことができる「大雪山源水公園」(東川町)。平成の名水百選にも選ばれたこの天然水を目当てに早朝から日没まで多くの人が訪れる人気スポットだが、中には取水口にホースを差し込んだり、わずか「100円以上」の協力金を支払わずに利用するなどのマナー違反が後を絶たず、利用者の間から不満の声があがっている。

ミネラル豊富
 旭岳源水は、旭岳をはじめとする大雪山系の大自然が蓄えた雪解け水が、長い年月をかけて濾過されて出来た自然の恵みをたっぷりと含んだ天然水。日本の湧き水は軟水が多いが、旭岳源水は硬度110、ph値7.2という弱アルカリ性の中硬水で、炊飯や麺ゆでに使ったり、コーヒーやお茶を入れるのに使う人も多く、「まろやかさが増す」と評判だ。
 北海道は羊蹄山「ふきだし公園」の湧き水など、天然水が豊富に湧き出ることで知られているが、なかでも旭岳源水はカルシムをはじめマグネシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラルがバランスよく豊富に含まれていることでも知られている。
 この天然水を汲むことが出来るのが東川町ノカナンにある旭岳源水公園で、東川町から旭岳・天人峡方面へと延びる道道1160号を車で約30分の距離にある。
 公園入口のすぐ近くに駐車場があり、「源水岩」と名付けられた取水場が3基設置されている。1基につき3つの取水口が取り付けられており、訪れた人たちはこの9つの取水口から水を汲むことができる。1分間に約4600リットルという豊富な湧出量を誇り、水温は常に6、7度。駐車場は除雪をしているので冬期間でも利用することができ、年間を通じて清冽な水を汲むことができる。
 東川町が源水公園を整備したのは04年。当初は3つの取水口がついた源水岩が1基しかなく、水汲みの順番を待つ人たちが長い列を作り、また駐車場のスペースも手狭だったために、利便性を高めるために09年に再整備が行われた。取水場をさらに2基増やし、ペットボトルやポリタンクなどを置きやすいように台を設置。水を汲んだ容器を運搬するための台車も用意し、トイレも整備。駐車場も18台まで駐車できるように拡張された。

取水口にホース
 旭岳源水は「平成の名水」にも選ばれた銘水で、源水公園には、この天然水を目当てに地元や旭川市民をはじめ、多くの観光客が訪れる。東川町の直近のデータでは、18年4月下旬から10月末までの半年間の車両入り込み台数は、乗用車が2万917台、バスは112台。冬期間のデータはないが、夏の期間には及ばないものの、やはり多くの利用者が訪れている。
 こうした湧き水の名所では珍しいことではないが、源水公園でもまた、一部の心ない利用者によってマナー違反が繰り返されている。
 その一つが取水口の独占。観光客は、水筒や小さなサイズのペットボトルに水を持ち込んで水を汲んでいく人が大半だが、車で訪れる利用者の中には、大きなポリタンクを何個も持ち込んで水を大量に汲む人も少なくない。
 数多くのポリタンクを持ち込むため、取水口を占領して水を汲み続ける人もおり、長時間待たされる利用者からは「夫婦で大型のペットボトルを大量に持ち込み、他に待っている人たちがいるのに全部汲み終わるまで複数の取水口を独占している」と非難の声があがる。
 また効率よく水を汲むために、用意してきた自前のホースを取水口に差し込むというマナー違反を平然と行う人もおり、見かねた利用者が諫める場面も珍しくない。
 こうしたマナー違反に対し、東川町都市建設課では「著しい場合には管理人が注意しています。多くの方に気持ちよく利用していただくためにもマナーを守って利用をお願いしたい」と話す。

「支払う必要ない」
 また東川町では、08年に協力金箱を設置し、施設管理の費用に充てるために、車1台につき100円以上の協力金を呼びかけている。
 左上の写真のように、取水口のすぐそばに大きな看板と協力金箱が設置されているが、大量に天然水を汲みながら、協力金を払わずに公園を後にする人も実は少なくないようだ。
 週に1度のペースで水汲みに訪れるという男性は、「水を入れたポリタンクの重さで軽トラックの荷台が沈むほど大量の水を汲んでおいて、協力金を払わずに帰ろうとする中年の男性がいた。見かねて声をかけると、『東川町が観光促進のために整備しているのだから、支払う必要なんかない』と言って、車に乗り込んでしまった」と話す。
 こうしたマナー違反は、どうやら管理人の監視がない時間帯に行われているようで、ある利用者は強い口調で次のように話す。
 「確かな数字は記憶していないが、町が協力金の協力状況を調査した結果が広報誌に紹介されていた。管理人がいる時間帯は協力金を収める人は7、8割程度で、時間外になると1割程度となっていた。あれだけ美味しくて体にも良い水を汲ませてもらえることに感謝の気持ちを抱くことすらしない利用者が多すぎる。数年前には台風による大雨で施設の一部が決壊するなどの被害もあり、その修復も含めて管理には多くの費用がかかっているはず。これほど整備された環境で銘水を好きなだけ汲むことができるのだから、100円くらい払うのは当然だ」
 こうした協力金を払わない利用者に対し、同町の担当者は、「あくまで協力金なので、強制できるものではありませんが、施設保全などより良い環境づくりに役立てており、皆さまのご協力をお願いしたいと考えています」と話す。
 なお、同町によると、18年度の4月下旬から10月末までの協力金の決算額は199万3千円。前ページの車両入込数は、乗用車だけでも優に2万台を超えており、本来ならば協力金の総額も200万円を超えているはず。わずかの協力金を惜しむ利用者がいることはこの数字を見ても明らかだ。

使用禁止の名所も
 全国の湧き水スポットの中には、マナー違反のために使用が中止となったところや、有料化になったところもある。
 マナー違反のために源泉での取水が禁止となったのが岡山県真庭市の塩釜の冷泉。節度を超えた水の持ち帰りや、水くみのために長時間駐車する車が周囲の迷惑になるなどの理由で1994年に源泉での取水が禁止となった。また、福岡県東峰村宝珠山の「岩屋湧水」では、利用者が取水口を長時間独占するなどのマナー違反が横行。それまでは清掃協力金として募ってきたが、09年に有料化に踏み切った。
 湧出量が豊富で、夏期には2人の管理人が常在する源水公園では悪質なマナー違反が横行しているわけではないようだが、人気のスポットを大切に守っていくためにも、利用者の節度が求められている。

表紙2002
この記事は月刊北海道経済2020年02月号に掲載されています。

優佳良織買収するエーコー財団

 旭川市南ヶ丘にある優佳良織工芸館など3施設を買収する予定の一般財団法人「エーコー財団」(山下潔理事長)は、施設の買収にかかる取得税などの経費や今後の施設改修にかかる費用が多額になることから、施設について博物館法の認定を受けて固定資産税を非課税にするなどして運営費用の圧縮を図る。今年3月までにその申請を提出し、年内にも認定を受けたいとしている。

固定資産税節約
 2016年に経営破たんした㈱北海道伝統美術工芸村が所有していた優佳良織工芸館と国際染織美術館、現在でも結婚式場などとして営業している雪の美術館の3施設は、同社が破たんした後、破産管財人の成川毅弁護士が管理している。固定資産税滞納分が5億4000万円あったことから、旭川市が大口の債権者。優佳良織は市内の有力な観光施設であることから、再活用にあたっては市の意向が注目されていた。
 そのような状況の中、不動産業や携帯電話販売事業を展開するハスコムグループの山下潔会長が、「せっかくの資産を何か有効活用できないか」と、私財を投げ打って設立したエーコー財団がこれら3施設を1億1000万円で買収する運びとなった。
 ところが、買収に際して取得税など4000万円近い費用が必要になることや、将来的に古くなった施設の改修に莫大な費用がかかることから、少しでも経費を圧縮するために、固定資産税が非課税になるなど税制上の優遇措置が受けられる博物館法を活用する案が浮上した。
 この法律によれば、施設に十分な展示資料があり、施設内に学芸員を配置、年間150日以上開館しているなどの要件を満たせば、博物館認定を経て税金などが免除されると定めている。また、それより基準が緩い「博物館相当施設」というものもあり、これも固定資産税は非課税となる。博物館という括りで認定されれば、山下会長が「先の見通しが立たないものに投資するつもりはない。旭川の観光拠点として地域に貢献できるもの、また博物館のような施設であれば協力したい」と、かねがね言っていたことが現実化することになる。
 博物館法認定に向けた申請は、エーコー財団が直接行うものだが、これまでの経緯を考えれば、旭川市や旭川市と周辺7町が加盟する「大雪カムイミンタラDMO」(観光地域づくり推進法人)の協力は不可欠だ。

今更の横やりも
 エーコー財団が手を挙げたことで、旭川市の〝お荷物〟だった優佳良織施設を買収することがほぼ決定したわけだが、意外なことに冷ややかな声も上がっている。市議会からは「競売にかければ5億円ぐらいで売却できたのではないか」などという声が出ているというのだ。
 たしかに、確実なものではなかったが、中国系の企業や宗教団体などが買収に向けて動いているとの情報が流れたことはあった。遠くはニセコ、道北では富良野などでチャイナマネーの活発な動きが伝えられ、旭川市内でも駅付近の一等地や旭川医大付近の見晴らしのいい区画が新興宗教の団体に買収されたことはあるが、優佳良織については「金だけで海外の投資家に売却してもいいのか」という批判の声が目立ち、買収が具体化することはなかった。
 旭川市と関係の薄い企業や団体の手に優佳良織が落ちるのを食い止めたのがエーコー財団の山下会長の心意気だったわけで、いまさら「競売にかければ」といった声が出てくるのは意外な話だ。
 また、「現職の副市長がエーコー財団の理事に就任したのはおかしい」という声もあった。これは、旭川市の表憲章副市長が同財団の理事に就任したことを良く思わない一部の経済人や市議の声。昨年12月の定例議会では、その点を一般質問で問いただす市議の動きもあったようだが、西川将人市長から表副市長に「今後のこともあるので手伝って欲しい」と要請したことが「お墨付き」となり、一部市議らは質問することを控えた。
 ただし、今年2月ごろ、博物館法を活用した認定への道筋ができた時期に、「いらぬ誤解をまぬかれないよう、理事を辞任する」(表副市長)と、けじめをつけたい意向だ。

「博物館相当」認定 工芸館が焦点
 問題は、今後の北海道教育委員会に対する認定届けの提出に向けて、市が速やかにエーコー財団に対して協力体制を取ることができるかだろう。今のところ同財団は素人集団に過ぎないが、市と大雪カムイミンタラDMOは、認定への道筋をつけることができなければ、エーコー財団の下での優佳良織再生というビジョンが絵に描いた餅に終わってしまう。
 認定へ向けた具体的な方法だが、ひとまず今年3月末までに申請の準備にメドをつける。市のある幹部は次のような見解を示す。
 「3つの施設のうち、雪の美術館と国際染織美術館はすでに美術館相当に値する。残る優佳良織工芸館は現状では微妙で今後の課題。学芸員は新たに採用するか、もしくは市の職員を派遣しても構わない。施設の開館日数も特に心配することはないだろう。3月末までにある程度のメドをつけ、年内までに形を作り上げればいい」
 残る問題は、施設の今後の運営。まずは老朽化した施設を改修して魅力あるものに造り変えることができるノウハウ。「ここの点については、すでにある民間業者との間で詰めている。どうすれば採算ベースの乗せることができるかは運営上重要なポイントになる」と、市のある幹部は前向きな姿勢を見せる。

表紙2002
この記事は月刊北海道経済2020年02月号に掲載されています。

旭川の建築単価 道内主要都市より割安

 地域経済で重要な役割を果たしている建築業。幅広い産業への波及効果もあり、その動向が注目される。「道内建築業」は「十把一絡げ」にとらえられることも多いが、実は地域によって状況は微妙に異なる。政府の統計をもとに地域別の建築業の状況を探った。

札幌に3分の1集中
 国土交通省が毎年行っている建築着工統計調査によれば、2018年に道内で着工した建築物は2万330棟、合計床面積は495万7365平方メートル、工事費予定額の合計は9421億9419万円に達する。北海道の主力産業と言われる農業の産出額が年間約1兆2000億円だから、建築業も道内産業の重要な柱であることがわかる。
 当然、建築業の着工件数には地域的な偏りがあり、人口195万人(人口はすべて2018年)の札幌市に道内合計の約3分の1にあたる7074棟が集中している。以下、人口8万人以上の12市(札幌、旭川、函館、釧路、苫小牧、帯広、江別、小樽、北見、千歳、室蘭、岩見沢)における状況に注目すれば、札幌の次が旭川の1376棟、函館の1051棟、帯広の873棟と、ほぼ人口に比例するかたちで続く。
 注目すべきは人口千人当たりで割った着工件数。最高は千歳市の6.44棟で、これに江別市の5.81棟が続く。大都市・札幌のベッドタウンとして発展を続ける千歳と江別で活発な住宅着工が続いていることをうかがわせる。これに続くのが帯広市の5.21棟。旭川は4.04棟とこれらの市よりかなり少ないが、それでも水産業の苦戦で人口減少の止まらない釧路市の3.34よりも多い。
 統計には建物の構造別の数字も掲載されている。棟数の大半を占める木造建築の床面積は全道の合計で241万3156平方メートル、棟数は1万6382。札幌市が5086棟で31.1%、旭川市が1189棟で7.3%、函館市が920棟で5.6%、帯広市が753棟で4.6%をそれぞれ占めている。

坪単価 最高は北見
 1棟あたりの面積にも微妙な違いがある。上記12市の中で着工した木造建築の1棟あたりの面積が最も広いのは岩見沢市の156.92平方メートルで、これに室蘭市の152.43平方メートル、旭川市の152.22平方メートルが続く。ちなみに札幌市は135.33平方メートル、その近郊の江別市は136.61平方メートル。地価の高い札幌周辺は他の地域よりも木造建築がやや小ぶりであることがわかる。
 建築会社の収益と密接な関係のある1平方メートルあたり単価にも、地域的なばらつきがある。12市で最も高いのは北見市の18万円。これに札幌市の17万3600円、千歳市の17万3100円、江別市の17万1800円が続く。旭川市は16万100円で12市では帯広市に次ぐ安さ。旭川市の木造建築の坪単価は道内の主要な都市のなかでは安めという状況が数字にはっきりと表れている。
 鉄筋コンクリート造の着工棟数は全道で1081棟。そのうち札幌市に760棟が集中している。新千歳空港の拡張が続く千歳市は36棟、函館市は26棟、旭川市は18棟、小樽市は12棟だった。1棟あたりの面積は農業関連の大型建築物の多い帯広市が3146平方メートルで最大。以下、室蘭市の2998平方メートル、北見市の2604平方メートル、苫小牧市の2569平方メートルが続く。旭川市は1788平方メートル、札幌市は1051平方メートルだった。
 鉄筋コンクリート造建築物の1平方メートルあたり単価に注目すれば、北見市は45万1700万円、帯広市が43万7100円。これらの地域では、大型かつ単価の高い建物が建設されていることがわかる。旭川市は28万8700円だった。
 道内の建築は都市部に集中しており、町や村では少数の工事しか行われていない。例外はインバウンド客向けのホテルや観光施設の建設が相次ぐニセコ地区。とくに人口が1万6432人しかいない倶知安町では各種の構造を合わせた棟数が168、面積が11万2826平方メートル、予定額が319億956万円に達するなど、集中的な投資が行われた。

耐寒でもコスト差なし
 以上、道内の状況に注視してきたが、道外の状況についても注目してみよう。よく言われるのは、道内、とくに寒さの厳しい道北や道東は断熱性能を高めなければならないため住宅コストがかさむという「特殊事情」。このコスト高が全国的な住宅メーカーの旭川進出を阻んでいると指摘する業界関係者もいる。ところが、統計を見る限り工事費にそれほど大きな違いはない。
 前述した通り、旭川市の木造建築の1平方メートルあたり工事費予定額は16万100円。旭川市と同じ30万人前後の人口を抱える他の中核市と比較してみれば、群馬県高崎市は17万6000円、埼玉県越谷市は16万3000円、山口県下関市は16万6000円、福岡県久留米市は16万3000円だった。なお、単価は道内でも道外でも都市から離れた町村部で割高になる傾向にある。ちなみに東京都23区内では台東区が21万6000円で最高だった。
 この記事では道内を中心に建築業の状況を見てきたが、旭川市内の主要な住宅メーカーが札幌圏など道内のほかの地域に進出するようになって久しく、今では札幌市内の工事現場で旭川市民になじみ深い社名を記したのぼりを見かけることも珍しくない。セールス人員や職人の確保など課題はあるものの、旭川市よりも単価が高いこと、そして需要が旺盛であることが全道各地への進出を促しているようだ。

表紙2002
この記事は月刊北海道経済2020年02月号に掲載されています。

カムイスキーリンクス 集客に本腰

 積極的な施設更新とインバウンド効果から、「カムイスキーリンクス」の来場者数が増加している。昨シーズンは9万8634人をカウントし、今シーズンは大台の10万人超えが視野。キロロスノーワールドや星野リゾートトマムスキー場などとの連携で利用者増の相乗効果を狙う。

来場者10万人視野
 旭川の中心部からクルマで30分、神居町西丘にある旭川市が所有するカムイスキーリンクスは、初心者用8本、中級者用9本、上級者用8本と多彩なコースを楽しめるスキー場。全国でも数少ない「陽の当たるスキー場」で、夕方まで粉雪の状態を保つ〝極上パウダー〟がウリだ。
 もともとの経営主体は「日本ゴルフ振興」だったが、2003年に同社が経営破たんし、旭川市が施設を無償で譲り受けて営業を継続している。実際の運営は「㈱旭川北インター開発公社」から「アライ地所㈱」を経て、18年からは「一般社団法人大雪カムイミンタラDMO」が指定管理者となっている。
 カムイスキーリンクスを冬季観光の目玉にしようと、旭川市は14年から大規模改修に着手し、ゴンドラとペアリフトの更新、センターハウスと山頂レストハウスの改修、また18年には自動ICゲートを導入した。この間の設備投資は27億円に達する。その積極投資が奏功して昨シーズン(18年12月~19年3月)は9万8634人が来場した。前年度に比べて26%増、人数では1万人余り増え、当面の目標としていた「来場者10万人」が視野に入ってきた。

外国人スキー客増
 インバウンド好調の影響から外国人スキーヤーが増加していることもカムイスキーリンクスの来場者数を押し上げている。
 昨シーズンは前年度より800人近く、率にして20%アップして4499人が来場した。最も多いのはオーストラリアの1378人で、これに次ぐのがアメリカの545人。急増しているのが中国で、前年度102人の4倍、409人が来場した。
 市内のホテル業者によると「中国、台湾、タイなどのお客様は年間通して大勢宿泊されますが、数年前から1月、2月のスキーシーズンはオーストラリアなど欧米の外国人のお客様も目立つようになりました。カムイスキーリンクスでスキーを楽しみ、翌日旭岳まで足を延ばしてスキーやスノーボードをするようです。冬まつりなどのイベントだけでなく、スキーを目的に来道する中国の方も増えています」

ニセコからシフト
 18年に指定管理者となった大雪カムイミンタラは、オーストラリアと中国でのプロモーションを通して、カムイスキーリンクスなど旭川圏のスキー場の魅力をアピールしている。これに先んじて、市や観光協会が中心になって05年に発足した「富良野・旭川地区オーストラリアスキー客誘致協議会」もオーストラリアでPR活動を続けてきた。そうした取り組みの成果が昨シーズンの外国人来場者増の要因。また、指定管理者となった大雪カムイミンタラが英語と中国語を話せるスタッフ常駐の案内所を設けるなど、外国人スキーヤーの利便性が高まっていることも好調の理由のようだ。
 「スキーヤーが増えすぎたニセコを敬遠してカムイリンクスにやってくる外国人が増えているのではないか」とは前出のホテル業者。「ニセコでは中国、香港のスキー客も増えてきたが、欧米のスキーヤーはそれを嫌う傾向もある。新しいスキー場を求めて、雪質はニセコ以上だと定評があるカムイスキーリンクスへオーストラリアやアメリカのスキーヤーがシフトしているのではないか。ニセコは風が強い日が多くゴンドラが止まることも珍しくないが、カムイスキーリンクスは風が余りないのもアドバンテージ。今後さらに外国人スキーヤーは増える。第二のニセコとなる可能性も秘めている」と話す。

共通チケット
 仮に、外国人スキー客がもっと増えホテル業者の言うように第二のニセコのように活気づけば不動産投資も促進され、低迷する地価も上昇するなど多方面にわたって旭川の経済活性化が進むことになる。
 もっとも、ニセコがカムイスキーリンクス以上に優位な点もある。
 一つはスキー場の数。ニセコにはニセコビレッジ、アンヌプリ、ニセコHANAZONO、ニセコグラン・ピラフと4つのスキー場があり共通リフト券も販売されている。また山麓に大きな集落があり、民宿からペンション、ホテルまで宿泊施設が充実している。
 雪質ではカムイスキーリンクスにアドバンテージがあるがゲレンデ下の環境ではニセコに軍配が上がるというわけだ。
 カムイスキーリンクスでは今シーズンから、キロロスキーリゾート、ニセコモイワスキーリゾートと広域提携で共通シーズン券の販売を開始。また星野リゾートトマムスキー場とも連携し、共通で使えるリフト券も販売して相乗効果を狙う。大人一日券3100円を3700円に値上げしたことと積雪の遅れがどう影響するか気にかかるが、第二のニセコを目指すリンクスの取り組みに注目したい。

表紙2001
この記事は月刊北海道経済2020年01月号に掲載されています。

旧西武A館にツルハが17階建てホテル

 西武A館跡地を取得し創業の地、旭川市にランドマークを建設する計画のドラッグストア全国大手、㈱ツルハ(札幌市)は、早ければ12月中にも建築申請を提出し2020年3月に工事を着工する準備を進めている。建物の規模は、鉄骨造り地上17階建て。施工は大手ゼネコンと地元の㈱エスデー建設のJVで請け負う予定で、土地取得を含めた総事業費は60億円規模となる。

紆余曲折経て計画固まる
 西武A館跡地の再開発は、2017年12月下旬、ドラッグストア大手のツルハが西武所有の土地(全体の約7割)を正式に取得した時点から始まった。その後、西武から業務の代行を任された三井系の不動産業者、三井物産都市開発㈱(東京)が取りまとめ、地元業者が所有する一部の区画を残してほとんどの土地をツルハが取得した。建物は地下と地上部分全てを解体して更地となった。全体の買収額は「建物の解体費も含めて8億円規模」(市内のある不動産業者)と見られていた。
 新たに建設される建物は、中心市街地という場所柄から旭川市とも協議を重ねた結果、ツルハの創業地への思いや国や市からの補助金など様々な要素が交錯した。結局、市からはわずかな補助金(市と国を合わせても1億円程度)しか出せないという結論に達したことから、ツルハは独自で建物の建設に取り組む方向に舵を切った。

1、2階は商業施設 3階以上がホテル
 そのような経緯を踏んで2019年4月にいったんまとまった計画だったが、「A館跡地には高度利用地区という縛りがあり、10階以上の建物を建設する必要があった。そこで計画を練り直し、ようやく計画が固まったのは11月上旬ごろだったようだ」(市内のある設計業者)。
 その後、旭川市へ練り直された事業計画を伝え、早ければ12月下旬までに建築確認申請を提出する運びとなっている。11月下旬現在でわかっている計画によれば、本体の建物は鉄骨造り17階建て。2階部分までをツルハなどの商業スペース、3階から17階は底地より小さめの建物が建設されてホテルが入居する。外観のイメージとしては、現在の旭川市役所本庁舎のような形になる。
 本体とは別に、緑橋通寄りの土地には鉄骨造り10階建て規模の自走式駐車場も建設される予定になっている。総事業費は、土地の取得や建物の解体費を合わせて60億円規模になる模様。施工業者は、大手ゼネコンと地元業者でツルハとの関係が深いエスデー建設のJVになる予定。

気になるホテルの概要
 気になるのはホテルの概要。本誌では19年11月号で、西武B館跡に隣接する山京エイトビルを買収した㈱アマネク(東京)に関して、ツルハが建設する複合ビルに入居するホテルをアマネクが運営する可能性があると報じた。アマネクは「その点についてはノーコメント」としたが、否定はしていなかった。
 ツルハの建物建設に関わるある建設業者にその疑問をぶつけてみると、「あくまで予定」と前置きして次のように語った。
 「今回の計画の最終決定は、12月下旬に開かれるツルハの取締役会に委ねられている。その場で承認されれば、年内にも建築確認申請提出、年明け2月に起工式、3月に工事着工というスケジュールになる。それと並行して、ホテルの運営を委託する業者と契約することになるが、アマネク社と協議していることは否定しない」
 アマネクは02年4月に設立され、18年1月に商号変更した、まだ歴史の浅い企業だが、最近の実績には目覚しいものがある。同社のHPによると、都内を中心に京都や大分で「アマネク」ブランドのホテルを運営している。温泉地として有名な大分県別府市では、約3800平方㍍の敷地に14階建て266室のリゾートホテル「アマネク別府」(仮称)を建設中。同じく大分県由布院で既存の施設をリノベーションした旅館も運営している。また、箱根で土地を購入し、ホテルを建設する計画(建物建設は出資者を募っている)もある。

再開発で中心街に活気戻るか
 A館跡地の再開発計画が最終局面を迎える中で、駅側(宮下通)にあるB館跡はどうなるのか。11月下旬現在、建物の解体が半分以上進み、予定通り20年2月までに解体作業は完了する。土地を所有する前田住設は「6月までに国へ補助金の申請をするが、構想として100億円近い規模の事業計画を立てている」と説明する。
 一方、近隣の1条買物公園通に面するエクスビルは、国からの補助金決定が早ければ年内に控えており、「承認されれば、旭川市と国を合わせて8億円の補助金を得ることができる」(市内のあるデベロッパー)。補助金の決定を受けて20年には建物など概要は見えてくるはずで、エクスビル再開発に支払われる補助金の額は、B館跡地再開発にも大きな影響を与えることになりそうだ。
 旭川の中心部は、西武百貨店の撤退から3年以上が過ぎる中、その衰退ぶりは隠せないが、A館跡地再開発をテコに、もう一度活気が戻ることを願うばかりだ。

表紙2001
この記事は月刊北海道経済2020年01月号に掲載されています。

今津の後の自民衆院道6区候補は誰?

 11月30日午後、4回目の開催となった自民党道第6区選挙区支部(吉川貴盛暫定支部長=自民党道連会長、竹内英順幹事長=道議)の「第6区支部長選考幹事会」が旭川市内のホテルで開かれた。会議は30分ほどの短いもので進展は何もなく、候補者選びの今後については竹内氏と本間勲氏(支部長代行)の2人の道議に預ける形で終わり、方向性の確認は1月末開催予定の次回幹事会まで持ち越されることになった。次期衆院選は早ければ7月の東京都知事選と同時、もしくは8月の東京五輪後という見通しがささやかれる中で、候補者不在の状況は一日も早く解消したいところなのだが……。(文中敬称略)

挙げられたのは相変わらず4人の名前
 今津寛前衆議が引退を表明、自民党の衆院選道6区の次期候補が不在となって早2年が過ぎた。現職または次期候補が支部長を務める仕組みの中で、道連会長の吉川衆議が暫定的に6区の支部長となり、本当の支部長を選ぶ作業が19年夏から竹内幹事長と本間支部長代行を中心に進められてきた。
 これまでを振り返ると、1回目は7月23日、2回目は8月19日、3回目は9月21日、そして今回の11月30日。この間、自民党旭川支部が独自に各業界・団体への聞き取り調査を実施、竹内幹事長と本間支部長代行も旭川を中心に6区管内の企業や団体の意向を聞いて歩き、「誰が候補にふさわしいか」など、幅広く意見を聴取してきた。
 2回目の会議以降、会議のテーブルに名前が挙がったのは旭川支部が推す東国幹道議をはじめ鈴木貴子(衆議・鈴木宗男参議長女)、加藤剛士(名寄市長・加藤唯勝元道議長男)、今津寛史(小野寺五典衆議秘書・前衆議今津寛長男)、さらに元衆院議員で現在はタレントとして活躍している杉村太蔵らだった。
 これら名前の挙がった人たちに対し選考幹事会として直接、立起の意思確認に動いた形跡はなく、4回目の会議でも竹内幹事長の口からは相変わらず東国幹、鈴木貴子、加藤剛士、杉村太蔵の4人の名前が挙がっだけにすぎない。
 竹内幹事長の口から「〇〇に当たってみたが脈はありそうだ」とか「〇〇は可能性がない」などという報告を期待していた選考幹事会メンバーはなんとも拍子抜けした様子だったという。つまり第3回の会議時から2ヵ月以上たっても、何の進展もなかったということなのである。

選考幹事会は初めから貴子ありき?
 選考幹事会の成り行きを外野席から見守っているある自民党旭川支部の関係者は、伝わってくる候補者選考の動きを聞きながら、次のような分析をする。
 「今回の衆院選6区の候補者選びは、出来レースのような気がしてならない。つまり竹内幹事長には初めの段階から鈴木貴子で行こうという思惑があり、何人か別の人の名前を挙げているのも貴子に持っていくための形づくりにすぎないのではないか」
 竹内幹事長が6区の暫定支部長で自民党道連会長の吉川貴盛の意向を受け〝貴子ありき〟で候補者選考を進めようとしているのではないかという見方は、以前からウワサとしてあった。
 6区有権者数の7割近くを占める大票田の旭川支部が推し、必然的に最有力候補として挙げられるはずの東国幹道議に対し、同じ道議の竹内があまり良い感情を抱いていないという話も伝わっており、「竹内は東が衆院選候補になることを阻止したいのではないか」というのが、貴子にこだわる理由だというのだ。
 竹内と東の関係はともかくとして〝初めから貴子ありき〟の信ぴょう性の高さを想像させる話が出回っている。
 それは19年6月16日に旭川市内のホテルで開かれた自民党北海道第6区選挙区支部の令和元年度定期大会に出席した吉川暫定支部長と竹内幹事長の2人が、大会終了後に向かいのホテルに場所を変え、旭川の経済界を代表する2人を呼んで「6区の候補者は貴子にしたい」と話したとされることだ。
 確認の取れた話ではないが、仮にそうした会談があったとすれば、この時点からすでに吉川道連会長の腹は決まっていたということになる。吉川には道連会長として、7区(釧路・根室)にこだわる鈴木貴子の6区への国替えを実現させれば、伊東良孝衆議との調整に苦労しなくてもいいという思惑があったとしても不思議ではない。
 「(選考幹事会は)出来レースではないか」という見方が旭川の自民党関係者の間で出てくるのもあながち根拠のない話ではなさそうだ。

「勝てる候補」が選考の大きな命題
 11月30日に開催された4回目の選考幹事会では、次回開催を年明けの1月末として、なんの進展もないまま散会した。当初は「11月中には決めたい」としていたが、その11月中には何も決めることができず、竹内幹事長と本間道議に今後を預ける形で年を越すことになった。
 では、今後どうなっていくのだろうか。次期衆院選がいつになるかはっきりした見通しは立てられないが、いずれにしても東京都知事選(7月5日)と同時、東京五輪後(9月以降)を視野に入れて準備を進めておく必要がある。とすれば、少なくともその半年前には候補が決まっていなければ、相手候補が佐々木隆博であろうが西川将人であろうが、自民党の劣勢は明らかだ。
 自民党は「勝てる候補」という大きな課題を持って候補者選考を進めている。いま名前の挙がっている東、鈴木、加藤、杉村の中では、知名度で勝るタレントの杉村が「勝てる候補」に最も近いと思われるが、その杉村はすでに本誌の取材に対しても「ノー」の結論を出している。また、名寄市長の加藤も最近の名寄の混乱状態を考えれば、市長職を放り投げて国政へという状況にはない。

貴子は無理、やっぱり東しかいない
 残るのは東国幹と鈴木貴子の2人ということになってくるが、貴子本人はあくまでも地元7区からの立起にこだわっている様子が伝えられ、父親の鈴木宗男参議も「貴子は7区から」と言い続けている。
 確かにいかに知名度があり、上川管内に根強い信者を多く持つ宗男の長女という強みがあったとしても、6区の選挙区では落下傘候補という位置づけとなり、有権者にどれだけ浸透できるか不安は残る。貴子もそれを十分承知しているはずで、しかも短期決戦となればなおさら。6区管内で貴子への期待感が出ているのは間違いないが、貴子も今は、よほどのことがない限りそれに簡単に応えられる状況ではないようだ。
 とすれば結局、東しかいない。戦いの相手を選挙にめっぽう強い西川と想定して「東で勝てるのか」という声があるのも確かだが、状況を考えると、今のところ東以上の候補は見当たらないのである。
 6区の選挙では小選挙区で負けても比例の惜敗率で救われるケースが過去に2回あった。このほかいずれの戦いも接戦状態なのである。東を6区の候補者として推している自民党旭川支部の関係者も「以前は〝東で勝てるのか〟だったが、今は惜敗率を考慮し〝東なら当選できる〟に党内のムードが変わってきた」と言う。

待たれる東の態度表明
 半年がかりで難航する候補者選びだが、今の状況を打開できる簡単な方法が一つある。それは東自身が「私がやる」と手を挙げることだ。
 道議選では3度のトップ当選を飾り、選挙強さを見せつける東だが、旭川市長選では2度苦い思いを体験しており、このことが国政への道を躊躇する一つの要因になっているとも想像できるが、周囲から「東しかいない」の大合唱が起こってくれば、さすがに決断せざるを得ないだろう。
 伝えられるところ鈴木宗男からも東に対し「あなたが出るべきだ」との激励があったとされるだけに、ここは一番、6区の候補者選考に風穴を開ける意味でも、東の態度表明が待たれる。

表紙2001
この記事は月刊北海道経済2020年01月号に掲載されています。