カムイミンタラDMO佐藤副理事長を副市長抜擢

 注目の旭川市特別職人事。今津寛介市長は3月6日までに、大雪カムイミンタラDMOの佐藤昌彦副理事長(61歳)、旭川市の熊谷好規総合政策部長(58歳)を就任させる人事案を市議会の各会派に示した。3月3日に副市長を退任した中村寧氏に続き、菅野直行(64)、桝井正将(49)の両副市長はそろって退任する。このうち桝井氏は国交省の官僚だったが、市長が強い意志で招いた人物。佐藤氏もこれまで異例の経歴をたどってきた。「2代」続けてのサプライズ副市長人事となる。

佐藤氏(副市長就任後に撮影)

前例「あるわけない」
 佐藤氏の副市長起用が報じられたその日、本誌はある副市長経験者に確認した。「上川総合振興局長、昔でいえば上川支庁長の経験者が旭川市のナンバー2に就任した前例があるのですか」「ないない。あるわけがない」。
 桝井氏の起用もサプライズだったが、佐藤氏の起用は、「2段構えの大胆な人事」と言える。大学卒業後、「ロッテリア」で店長を務めた経験を持つ佐藤氏は、その後道庁入り。経済畑に身を置いたあと、観光局長となり、2021年に上川総合振興局長として旭川に赴任した。23年、定年まであと1年残して道庁を退職し、大雪カムイミンタラDMOの副理事長に転身した。佐藤氏の明るくてエネルギッシュな人物像、行政手腕を高く評価して、旭川市だけでなく1市8町の観光価値を高める役割を担うDMOの司令塔として「ヘッドハンティング」したのが今津市長だった(DMO理事長は今津市長が兼任)。
 佐藤氏は期待に応えて冬季観光の核となるカムイスキーリンクスの改革に取り組み、従来は一部の自治体が加わっていなかったDMOに1市8町すべてが参加する体制も整えた。2023年に開かれたアドベンチャートラベル・ワールドサミット北海道では一部の行事を旭川に招き、観光地としての旭川の国際的知名度アップにも貢献した。今津市長の佐藤氏への評価は一段と高まり、また元道職員として優れた行政能力を備えていることにも着目し、副市長がそろって退任するこのタイミングで白羽の矢が立ったわけだ。

財政改革への貢献大
 もう一人の熊谷氏は、室蘭工大を卒業後、市民生活部長、土木部長、地域振興部長などを歴任。もともとは土木工事の専門家だが、企画にも詳しい。熊谷氏が2022年から務める総合政策部長は、市長・副市長の元で重要政策の立案・調整などに当たる市政の中枢だ。旭川市が市の「貯金」にあたる財政調整基金を積み増し、25年度末の時点で70億円に到達、中核市の平均額である110億円が視界に入ってきたが、これについても熊谷氏の貢献が大きい。総合政策部長としての働きぶりが、今回の順当な「昇格」につながったとみられる。

菅野氏は振興公社へ 桝井氏は国交省復帰
 一方、すでに退任した中村氏、近く退任する見通しとなった菅野氏について、今津市長は常々「お二人とも私の『家庭教師』。支えていただいており、感謝している」と周囲に語っており、今後も別の立場で旭川市と関わりの深い団体の運営を担う見通し。このうち菅野氏は、元副市長の赤岡昌弘氏に代わり旭川振興公社の社長に就任するとの見方が強い。中村氏については今後のポストについて調整が続いている模様だ。
 桝井氏は2023年4月に国土交通省からの派遣を受け旭川市で市政補佐官に就任、24年から2年間は副市長を務めた。旭川市の規模の自治体で副市長3人制は異例だが、この間に政府への補助金の申請の方法、市役所内部での書類作成の方法など多くのノウハウを旭川市にもたらした。国交省で下水道関連の仕事を担当してきた経験を活かし、神居古潭春志内で建設が進む廃棄物最終処分場の廃水処理について、忠和の下水処理施設に廃水を送って処理する方法を提言し、多額のコスト節約に貢献した。桝井氏は新年度から国交省に戻るが、桝井氏のもたらしたノウハウは今後も長く旭川市で力を発揮しそうだ。
 副市長3人の体制は2年間で終了し、今後は通常の2人へと復帰することになる。
 桝井氏、今回提案のあった佐藤氏に加え、現在、市健康保健部長を務めている山口亮氏も、札幌市役所からの派遣を受けている人物。これは中村元副市長の人脈と、今津市長の強い思いで実現した人事だ。しかしこうした人材は貴重であり、実現するには派遣元の役所の事情、旭川市の事情、そして本人の意向が合致する必要がある。今後も同様の人事が続く可能性は低い。ただし、今津市政になってから職員レベルでの道との人材の交流(派遣と受け入れ)は活発化している。
 なお、前述の副市長に加え、金沢匡貢税務部長を(監査委員3人のうち市を代表する)代表監査委員に、富岡賢司土木部長を水道事業管理者に据える人事も提案された。佐藤氏は経歴こそ異例だが、その手腕は広く評価されており、他の人物も議会ではよく知られた存在で、議論を呼ぶ人選ではないため、このまま市議会の賛同を得る可能性が高い。
 昨年の9月の旭川市長選挙で再選されてから最初の新年度を迎える今津市政は、市長の強いリーダーシップを佐藤氏、熊谷氏という2人の副市長が支え、人口減少局面における旭川市の活性化という最優先課題に取り組むことになりそうだ。

この記事は2026年4月号に掲載されています。
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