北海道旭川工業高校について、北海道の教育部局関係者が最近旭川市を訪れ、旭川市、旭川商工会議所などに対して、2028(令和10)年に募集を停止する方向で検討を進めていることを伝えた。これまで旭川工業の定員維持を道に働きかけてきた関係者の間には衝撃が走ったが、この春の入試での工業化学科の競争倍率は「0.3」。深刻な定員割れ、そして今後の中学卒業者の減少を考えれば、今後の巻き返しは困難ではないかとの見方が生じている。

まだ素案だが…
工業化学科は旭川工業高校全日制課程に設置されている6学科のうち一つで、学年あたりの定員は40人1クラス。授業は実習と座学からなり、3年間で基礎から応用までを一つずつ学ぶ。道北圏でただ一つ環境に重点を置いた科目を学習することができるのも強みだ(旭川工業高のウェブページから)。
本誌が関係者から集めた情報を総合すれば、道の関係者はあくまでも素案として、この工業化学科を2028年度に募集停止とする考えを示したという。対応した旭川側の関係者は、「受け入れるわけにはいかない」と伝えた。この素案はまだ道議会にも示されておらず、正式決定するまでにはまだ遠い道のりが残っている。道議会の審議を通じて再考を求める余地もある。とはいえ、諸般の事情を考えれば、巻き返しは難しく、仮に工業化学科の閉科を徹底して拒否するのであれば、旭川市内の他の高校、他の科についてクラス減少を受け入れる必要がある。素案通りの募集停止となれば、2020年3月末の自動車科の閉科に続く動きとなる。
この素案の背景には、上川南学区(上川町~南富良野町)における高校入学者の減少傾向がある。道が作成した「高等学校配置計画検討資料」によれば、2025年度の中学卒業者の数は3248人。これが2028年度には3100人まで減少する。このため、上川南学区内で2間口(2クラス)減らす必要があるというのが道の基本的な立場。大幅な定員割れが続いていた美瑛高校について、昨年秋に2028年度の募集停止が決定していることから、「あと1クラス」が焦点となっていた。すでに旭川市以外では減っていることから、残る1クラスは旭川市内の高校から、となるのが自然だ。
いったんは巻き返し
旭川工業高校についても、まず2028年度中の学級減の方針が提示されたものの、市、商工会議所、旭川建設業協会、旭工同窓会などによる巻き返しが行われ、並行して旭川市選出の安住、林、木下、寺島の各道議が積極的に道に働きかけた効果もあり、昨年10月に公表された「公立高等学校配置計画」では、「地域企業を支える専門技術者育成に向けた学科構成のあり方をさらに検討する」として、決定時期が今年度中に先延ばしされていた。
状況変化のきっかけとなったのは、この春の入試だった。電子機械科、情報技術科で倍率が「1」を上回ったものの、電気科、建築科、土木科、工業化学科で「1」を下回った。とりわけ工業化学科は「0.3」と落ち込みがとりわけ深刻だった。旭川工業高校の間口の維持を求めていた関係者は、特定の科を優先することなく、おしなべて存続するよう求めていたが、「0.3」という数字を受け、道の教育部局は工業化学科に「狙い」を定めたとみられる。
「2028年募集停止」は確定したものではなく、理論的には、今後も旭川の行政、産業界や議員が間口維持を求め続けることは可能だ。しかしその場合、道が「では旭川市内の高校のうち、どこで間口を減らせばいいのか」とボールを投げてくるのは必至。地域社会としても苦渋の選択を迫られることになる。道議会に諮られていない現時点で、一部の関係者が早くも巻き返しは「なかなか難しい」とみるのはそれが理由だ。
地域に残る人少数
工業化学科が他の科よりも不利だったのは、卒業者の地元就職比率が低いということ。地域社会がどんなに粘り強く道に存続を働き掛けたとしても、その地域に残る人材が低いとすれば、説得力に欠ける。言ってしまえば、工業化学を学んだ人材が魅力を感じるような就職先が、この地域には乏しかったことが根本原因だったと言える。その点、比較的地域内での人材需要が明確な電気科、建築科、土木科は有利だった。
上川南学区の高校が直面する状況は、かなり深刻だ。地域内の中学校を卒業する人は、2025年度の3248人から、2034年度には2619人まで減ると見込まれている。閉科こそまだ取りざたされていないものの、先述した美瑛高校だけでなく、旭川以外のまちにある高校の大半ではすでに欠員が出ている状況。旭川市内でも定時制高校は大幅な定員割れの状況にある。中学卒業者の減少で、今後生き残りはさらに厳しくなる。
安住太伸道議は今回の事態に関して、道はもっと広い視野から柔軟な対応をするべきとの見方を示す。
「小中学校のクラスについては地域の実情を考えて複式学級を含めさまざまな制度が取り入れられているのに、高校では『1クラス40人』という大前提があり、それを下回ると国が面倒をみない。しかし、高校等進学率が99%に達して、ほぼ義務教育化しているこの時代、産業への影響も考えながら、道教委は国に人数の減った高校職業学科の維持への支援を強く要望すべきではないのか」
私立高校は公立校以上に定員割れが深刻な状況。「今後も少子化が続くことを考えれば、まだ具体的な動きはないが、遅かれ早かれ私立高校同士の統廃合を真剣に検討すべき時期がやってくる」とある私学関係者は語る。
人口減少社会では、高校入学者、新郎新婦、建設現場の担い手など、あらゆる「人」が減る。見方を変えれば、高校の学科が一つ減るとしても、それは社会全体が縮小していく流れの中の一現象に過ぎないのかもしれない。

