中東情勢の混迷で危惧されていた「公共工事入札不調」が現実のものとなった。旭川市の市営団地建替え工事が業者の入札辞退で不調に終わった。入札不調の混乱はさらに拡大しかねない情勢だ。

7階建て41戸
旭川市豊岡5条1丁目にある旭川市営の「第2豊岡団地」は建設から60年近くが経過し、建物の老朽化や設備の劣化が進んだことで建て替えが進められている。既存の施設が4棟に再編される計画で、1号棟と2号棟はすでに完成し供用済みで、3号棟は今秋の完成に向けて工事が進められている。
残るは4号棟。RC造7階建てで延べ面積3319平方メートルの規模。多様な世帯の生活スタイルに対応できるよう2DK、2LDK、3LDKの住戸が計41戸できる予定だ。
実施設計は主体を創明建築設計・廣建築設計共同体、設備がアドエンジニアリングが25年に担当。建築主体、衛生、電気、機械の4分割で発注し建設が進められる予定だった。
建築主体の予定価格は11億9658万円(税抜き)で工期は26ヵ月。5月26日に入札が予定されていた。
異例の不調
発注工事名は「第2豊岡団地建替え4新築工事」。旭川市の業者格付けでAランクの4共同企業体が参加申請していたが、どの共同企業体も札入れを行わず辞退届を出したことから「入札不調」となった。
入札不調とは、入札を実施しても落札者が決まらない状態を指す。入札に参加する業者がいない、または有効な応札がゼロで落札者が決まらない状態。応札者はいたが入札価格が発注者の設定した予定価格の上限を超え落札者が決定できない状態は「入札不落(ふらく)」と言う。
旭川市の建築工事で「不調・不落」のため入札が成立しなかったのは異例なことだ。
中東情勢の混迷で苦境に陥っている建設業界の現状を、本誌先月号記事「中東情勢の混迷で公共工事に暗雲!」として紹介したが、住宅設備会社幹部Sさんの話を再録するとこうだ。
─3月以降、メーカーなどから毎日のように値上げの通知が届く。とくに塗料や断熱材などの上昇が激しく、建設コストが大幅に膨らんでいる。出荷制限も発生していて、資材が調達できないために建物は完成したが塗装ができないという異常事態も起きている─
「不調続発する」
─資材、メーカーによって差はあるようだが、値上げ幅は軒並み40~50%で、70%超えもある。
あらゆる鉄製の部材は、さび止めもペイントを塗ることが必須。未塗装のままで雨にさらされればわずかな日数で赤さびが浮き出る。そのさび止めのペイントは原油からつくられるナフサ由来の化学製品。
建物の基礎を支えるコンクリートにも異変が起きている。生コンは練り上げてから2時間ほどで固まり始めるため、「90分ルール」が決められているが、この「90分」を支えているのもナフサ由来の混和剤。その混和剤の供給網も目詰まりを起こしている─と、解説してくれた。
結びに「大手ゼネコンの受注済みでありながら未着工あるいは途中で止まっている工事〝手持ち工事〟が膨らんでいる。深刻な人手不足が主な要因だったが、そこに今回、資材不足が重なっている。危機は公共工事にも広がり始めている。道路、トンネル、橋梁(きょうりょう)などインフラの根幹を支える資材の暴騰は、公共工事の入札という仕組みを麻痺(まひ)させる。旭川市や道北の市町村で工事入札の不調が続発する」と、極めて厳しい、悲観的な予測をしていた。
Sさんの危惧は早くも現実のものとなった。予定価格11億円を超える大型工事・第2豊岡団地4号棟の入札は不調、施工業者は決まらなかった。
再開発の延期・中止
東京都武蔵野市は7月に改修工事を始める予定だった「武蔵野公会堂」の入札を中止した。四国松山市の「給食センター」は旭川同様入札不調だった。
役所側が提示する積算価格は、実勢価格に合わせて月単位などで改定される仕組み。しかし、今起きているのは、その改定ペースをはるかに上回る日単位の値上げで、改定されたばかりの積算価格ですら、実勢価格とは大きな乖離(かいり)が出ている。
北海道では余り詳しく報道されていないが、首都圏などで再開発計画の延期や中止が相次いでいる。
帝国ホテルは、31~36年度にかけて予定していた「帝国ホテル東京本館」の建て替え時期を未定に変更したとゴールデンウィーク明けに発表した。建設費や労務費の高騰で隣にあるタワー館の解体工事が先送りとなり、本館の着工が見通せなくなった。西武ホールディングスは、品川駅前再開発に伴う「グランドプリンスホテル新高輪」の建て替え時期を建設費の高騰で見直した。名古屋駅前の再開発計画、JR九州の博多駅前複合ビル建設など全国の主要都市で延期・中止が相次いでいる。
旭川市内では3条買物公園オクノ跡地や2条7丁目などででホテル建設計画が進んでおり、他にも中心部でホテル構想が浮上している。長い停滞から抜け出てようやく旭川中心部でも再開発気運が盛り上がってきたところだが、混迷する中東情勢はそうした計画に深刻な影響を及ぼしそうだ。
入札不調後の一般的な対応は、条件を見直して再び入札を実施することだが、資材価格変動が続くいまの状況では第2豊岡団地4号棟再入札には時間がかかるものとみられる。

