事件相次ぎ印象悪化したが… 道北の治安の良さ全国5位

「なぜ旭川だけ、これほどショッキングな事件が相次ぐのか」。そんな驚きを感じている人が多いのではないか。犯罪に直接関わった2人の人物の長期刑が確定した神居古潭の殺人事件、人気施設の旭山動物園を舞台にした異常な事件…。東京に出張した人の多くが、「旭川から来ました」と言うと「あの旭川ですか」と、相手が怪訝な表情を浮かべると嘆く。次にそんな経験をしたら、胸を張って告げて欲しい。「統計を見れば、旭川の治安は国内のほとんどの地域よりも良好です」と。

粗暴犯の多さが顕著
 異常な事件が起きすぎた。しかし、旭川市民で治安の悪化を体感している人は少ないはず。本誌が毎月掲載している事件簿でも、「クルマのワイパーが何ものかによって曲げられた」「空地に違法投棄された」「店内の商品が持ち去られた」といった、凶悪性のない犯罪が大半を占める。
 実際、この地域の治安の良さは統計からも明らかだ。警察白書に掲載されている2024年のデータをもとに、全国51の地域(46都府県+道内の札幌方面、旭川方面、函館方面、釧路方面、北見方面)の各種犯罪の人口1万人あたりの発生頻度(認知件数ベース)を比較してみる。
 まず、すべての刑法犯の総数は、日本全国で73万7679件。総人口で割れば1万人あたり59.1件となる。地域別で比較すれば(右表。カッコ内は51地域中の順位。1位が最も犯罪が多いことを示す)、旭川は30.7件(47位)、最少は秋田の27.9件(51位)。最高は大阪の92.8件(1位)で、旭川の3倍以上に達する。以下、群馬76.0件(2位)、茨城73.6件(3位)が続く。東京は68.1件で7位だ。
 犯罪の類型別でみれば、人口あたりの犯罪発生件数にはばらつきがある。殺人、強盗、放火、強制性交などの凶悪犯が最も多いのは大阪で0.99件(1位)、青森が0.77件(2位)、東京が0.73件(3位)で続く。旭川は0.39件で38位だ。同じ道内でも、釧路は0.58件(14位)、北見0.58件(15位)と、比較的凶悪犯の発生件数が多かった。ちなみに最も凶悪犯が少ないのは山口で0.28件だった。
 暴行、傷害、脅迫、恐喝といった粗暴犯の状況はやや異なり、旭川での人口1万人あたり発生件数は5.40件(11位)と決して少なくない。道内の他の方面も札幌6.94件(3位)、北見6.21件(5位)、釧路6.16件(6位)と粗暴犯の頻度の多さが目立つ。ちなみに全国最多は「やはり」と言うべきか、兵庫の7.40件。
 実は、犯罪の件数の大半は窃盗犯が占めている。このため刑事犯全体の数の多さは窃盗犯の数によって大きく左右される。旭川における窃盗犯の発生件数は17.6件で47位。1位の大阪は66.1件だから、実に旭川の4倍も泥棒が多いということになる。
 以下、旭川での発生件数と全国順位だけ記せば、知能犯は1.95件(49位)、風俗犯は1.11件(31位)となる。

17年で約7割減少
 これまで地域別の犯罪頻度のばらつきに注目してきたが、日本全国にほぼ共通する顕著な変化がある。それは、犯罪の長期的な減少傾向が続いているということだ。2007年の刑法犯の認知件数は日本全体で190万件あまり。前述した2024年のデータと比較すれば、この間に61.4%も犯罪が減っている。同じ期間の犯罪減少率を比較すれば、京都が77.2%で最大。旭川は68.8%で減少幅5位と比較的優秀な数字を残している。この期間に犯罪が増えた地域は一つもないが、沖縄県で39.1%と減少率が小さいのが気になるところだ。
 なぜ犯罪が減ったのか。それは、多くの犯罪が若年層によって引き起こされるという現実があるから。若年層が減れば犯罪も減る。こんなところにも少子化の影響が及んでいる。錠や監視カメラの進歩で窃盗が困難になったことも影響しているようだ。
 とはいえ、「日本の治安は17年間で6割も減った」─そう聞いても納得がいかない人も多いのではないか。警察庁が昨年10月に行ったアンケート調査では「治安が10年間で悪くなった」と答えた人が約8割に達した。警察庁は、特殊詐欺、サイバー犯罪など従来になかったタイプの犯罪が現れ、関連報道が増えたことを理由に挙げているが、より大きな影響はSNSや動画サイトの登場だろう。凶悪な事件、ショッキングな事件、週刊誌が大きく取り上げた事件は、「バズって」広く拡散し、人々の記憶に深く刻まれる。動画作成者やインフルエンサーは購読者を増やすためにさらにショッキングに、時には面白おかしく取り上げる。旭川で起きた問題や事件も、こうした環境の中で、20年前なら考えられなかったかたちで注目を集めてしまった。
 注意したいのは、治安の良いまちで暮らす人が、外部の人間のしかけたワナに簡単にはまってしまう可能性だ。現代の特殊詐欺は国際電話や、外国からのメールに頼って行われる。旭川が安全だとしても、こうしたボーダーレスな犯罪が阻止されるわけではない。
 とはいえ、統計が示す通り、旭川は全国有数の「安全地帯」という真実を、を全国にアピールすることはできないのだろうか。

この記事は月刊北海道経済2026年8月号に掲載されています。
この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!