6月24日、深川市議会で佐々木一夫市議(れいわ新選組)に対する問責決議が可決された。佐々木市議に対する問責決議はこれで6回目。事実に反する内容を前提とした質問を行ったというのが理由だが、佐々木市議は事前に質問内容を通告しており、市役所は何ら質問内容について問題を指摘せず、議会での質疑で担当部長が強い口調で佐々木市議を非難した。議員の質問が真実に立脚したものであるべきなのは当然としても、こうした経緯を考えれば、佐々木市議への一方的な問責はあまりに強引。佐々木市議は同じ日に予定していた質問の一部内容が、明確な根拠と理由の説明がないまま近沢弘幸議長に受理されなかった。問責決議に佐々木市議が行った弁明からは、「疑義」などの表現が削り取られる異常事態も。議員個人の思想にも踏み込み、憲法の定めた「言論の自由」を侵害する可能性さえある。深川市議会の異常な状況を追った。

「品位と秩序害する」
問題の問責決議は、鶴岡恵司、北村薫、田畑陽美、伊藤美恵子、宮澤孝司、松本雅祐の各市議によって提案された。次頁にその内容を掲載した。
「事実に反する内容を前提とした質問」とは、決議の1週間前、6月17日に佐々木市議が第2回定例会で行った、「電子クーポンによる交付は市民に大変不評だったと聞くが、市民の市長への手紙の返答では8割を超える市民が電子クーポン交付方法で喜んでいるとの論拠は何か?」との問いを指す。昨年度、深川市が行った生活応援給付金事業について、近隣の町より深川市の給付金が少なく、現金ではなく電子クーポン交付によって行われたことを受けての質問だ。佐々木市議は一市民からの情報提供をもとにこの質問を行ったのだが、これに対する企画総務部長が行った答弁は、市議会での理事者の答弁としては異例の強い表現を含んでいた。
「本市において、『8割を超える市民が電子クーポン交付方法で喜んでいる』との趣旨で返答した事実はございません」「このような事実に基づかない市民に誤解を与えるような質問は大変心外であります」
答弁書で否定せず
佐々木市議は一瞬、あっけにとられたような表情を浮かべ、再び企画総務部長に説明を求めたが、部長の舌鋒はさらに鋭くなった。
「市長への手紙は、市民からご意見をいただける大変重要な制度。いただいた意見には市長がすべて目を通し、所管から回答している。市長への手紙の回答は、手紙をいただいたご本人に対し、文書により回答しており、市からの回答内容についてはご本人しか知りえない。知りうる対象が限られている手紙という事象について質問するなら、市民に誤解を与えないため十分な裏付けを取らなければ、その信ぴょう性が問われる」「質問で手紙の内容を取り上げたのは(佐々木)議員であり、その内容には議員が責任をもつべき」「事実に基づかない内容で議会で一般質問されることは、制度の根幹を揺るがすものであり、行政に対する信頼を失墜させることにもなり、看過できるものではない。行政をチェックする立場の議員がこのような質問をして許されるのかどうか、市民の皆様はどう思うか」
深川市はいまも市長への手紙への回答内容を公表していないが、情報を総合すれば、回答には「8割を超える市民が電子クーポンを利用した。市民は喜んでいる」との内容が含まれていた模様。これを深川市からの回答を受けとった市民が「8割を超える市民が電子クーポン交付に喜んでいる」と誤解して、佐々木市議に情報を提供し、前述した質問につながった。そして企画総務部長は佐々木市議が事実にもとづかない質問をしたと批判したのである。議場でのやり取りだけを聞けば、「十分なチェックを経ずにこのような質問をした議員はけしからん」と感じる深川市民がいるかもしれない。
しかし、このやりとりには前段がある。市議会での質問に向けて、佐々木市議から企画総務部総務課に6月11日に渡された「一般質問通知書」で、以下のような質問を行うと事前に予告していた。
「近隣他町が3・1万円から2万円の交付金に対して深川市は5000円だった。電子クーポンによる交付は市民に大変不評だったと聞く。『市長への手紙』の市民への返答では8割を超える市民が電子クーポン交付で喜んでいるとしているが、その論拠は何か?」
16日に総務課から答弁書が提出された。その中には「論拠ということですが、職員が市民対応の中で得られたご意見等が論拠となります」と明記されている。通告にある「8割を超える市民が電子クーポン交付方法で喜んでいる」との文言を否定していない。答弁書を読めば、「8割を超える市民が電子クーポン交付方法で喜んでいると市役所が認識している」と、普通は解釈するだろう。
ところが、翌17日に行われた市議会での答弁は、まったく違う内容となったのである。それこそが、佐々木市議が驚きの表情を浮かべた理由だ。事前の答弁書の内容と実際の答弁の内容のかい離は、市議会と市役所の間の信頼関係を損なうはずだが、なぜか市議会が怒りの矛先を向けたのは佐々木市議であり、市役所の姿勢を非難する声は聞こえてこない。そして24日には冒頭で紹介した問責決議案が提出された。
なぜ企画総務部は、事前の答弁書のなかで間違いを指摘しなかったのか。市役所の能力不足のためなのか、それとも佐々木市議に間違った質問をさせることで攻撃材料を得るのが目的だったのか。記者には合理的な理由が思い浮かばない。
地方議会で、事前の通告とのずれが問題になることはあるが、それは質問する側の脱線によるものだ。答弁者は膨大な事象について「ぶっつけ本番」で正確に答弁することなどできないから、事前の準備は欠かせない。その準備を困難にするような、事前通告のない議員からの質問はルール違反との見方が強い。今回の深川市議会での出来事は逆で、答弁する側が事前の説明を無視するような答弁を行った。だとすれば事前のすり合わせには意味がない。
本誌は企画総務部長に、事前の答弁書と実際の答弁内容が大幅に異なった理由について書面で質問した。企画総務部は「事前の答弁要旨については、議員の求めに応じて提供しているものであり、内容が変更となりえる旨についてはあらかじめ伝えている。したがって、当該要旨は参考資料としての位置づけにとどまるものであり、最終的な答弁内容を拘束するものではない」と回答した。本誌は、佐々木市議に事前の答弁書で間違いを指摘していれば、企画総務部長が「このような事実に基づかない市民に誤解を与えるような質問は大変心外」と部長が感じる必要もなかったのでは、と尋ねたが、この質問には返答がなかった。
どこの自治体でも議会の前には、質問と答弁の内容についてすり合わせを行うため、役場の部長や課長が資料を抱えて議員の控室にやってくる。企画総務部の説明を信じるなら、一通りの話し合いが済んだ後でも、深川市では答弁内容が変更になることがあり、議員に渡されたのは「参考資料」に過ぎないことになる。深川市議会には寛大な議員が集まっているようだ。
質問1件不受理
ここまで紹介してきたのは、6月17日に佐々木市議が行った第1の質問内容をめぐる騒動。佐々木市議は第一に市立病院管理職の昇格について質問しようとしていたのだが、その旨を一般質問通告期限前日の10日、通知文書に記して提出したところ、翌11日の11時頃、近沢議長から受理しない旨の通知が口頭であった。佐々木市議が文書による通知を求めたところ、11時30分ごろに通知が送られてきたものの「13時までに修正質問を提出せよ」とも書き添えられていた。指定のタイムリミットを守ることは不可能で、議長からのこうしたかたちの通知への疑問もあったことから、佐々木市議は第一の質問を削らざるを得なかった。
佐々木市議は、過去の議長から「この質問、私ならこう聞くけどね」など、婉曲に修正を求められたことはあり、それには応じてきたと語るが、近沢議長になってからは説明が行われなくなったと語る。質問が一つ事実上削られるのは今回が初めてだ。佐々木市議は質問に入る前の「まくら」でこの問題に軽く触れるしかなった。
近沢議長は本誌の文書による質問に対して、「一般質問の内容が市の一般事務に関する事項に限られることから、通告書に記載された内容について必要な整理および修正を求めたもの」「過去の議会運営委員会において、特定の個人に係る人事を一般質問で取り扱うことは適当でない旨整理されている」「通告書に記載された内容のうち特定の職員個人に係る任免・昇格に関する事項については、任命権者の権限に属する事項として、一般質問として取り扱う範囲を超えるものとされている」「本件に関する取扱いについては、これまでの議会運営の中で必要な説明が行われている」「本件は議会運営上のルールおよび従来の整理に基づき対応したもの」(概略)などと回答を寄せた。本誌は明確な法律、条令、規則上の根拠や、憲法違反の疑いについて議長の考えを尋ねたのだが、返答はなかった。
佐々木市議の質問に眉をひそめる市議や理事者がいるのも事実だが、答弁のなかで指摘を否定したり、(事前の説明とのズレを別にすれば)「このような質問は大変心外であります」と答弁する自由も、さらに言えば佐々木氏に対する問責案を決議する自由ももちろんある。しかし、質問させないのはレベルの違う問題だ。不受理とするなら、今回なぜ不受理にしたのか、その理由と、法律や条令、規則上にある根拠を文書で示すべきだ。
そもそも、議員の言論に不満があるなら、理事者や他の市議は言論で対抗すべき。事前の説明と違う内容で答弁したり、法的根拠を示さないまま質問を一部受理しないのは、「言論では対抗する力がない」と認めるようなものではないのか。
疑義許さず
問責決議をめぐっては、さらに「ひと悶着」があった。問責決議案が提案者から読み上げられた後、佐々木市議が弁明を行った。その直後、田畑陽美市議から「不適当な発言があった」と議事進行がかかった。近沢議長は「議事録精査」のため暫時休憩を宣言。議運で議事録精査が行われた結果、約3時間後に議事が再開され、議長が佐々木市議に発言の一部を撤回するか質問。佐々木市議がこれを拒否したことから、議事録から削除させた。
佐々木市議以外の深川市議たちは、何が「不適当」だと感じているのか。やや長くなるが、前ページの枠内に弁明の全文を掲載した。傍線が引かれているのがなかったことにされた部分だ。
まず、議運と佐々木市議のやりとりに関する部分がごっそりと削除されている。次に、「市民の見識を事実誤認と規定してしまうこと」への疑義も削除されている。最後に、「市民の疑問を議会で伝えたことから問責された」との部分だ。
問責される議員からの弁明に対して、他の議員たちが賛同せず問責決議案を可決することはあっても良い。ところが、深川市議会ではご丁寧に弁明の内容を一部「不適当」を理由に議事録から削ったうえで可決したのである。なかでも異常さが際立つのが、「疑義」の2文字さえ削除されたということだ。事実関係ではなく、佐々木市議の心の中の思いを外部に表現することさえ妨げようとしているのである。第三の部分も、「市民の疑問を議会で伝えた」は真実、「問責決議を受けた」も真実。これらを因果関係で結んだことを問題視して削除するなら、弁明の機会を与える意味がなくなる。
もっとも、生活応援給付金の支給額が近隣町より少なかったこと、この問題を佐々木市議だけが市議会で取り上げてきたとの主張は削除されておらず、良心が残っていることがわかる。
佐々木市議への問責が可決されるのはこれが6回目。しかし、これまでの問責決議が、佐々木市議の力を削いだ形跡はない。市議会が強硬な手段を用いるたびに、佐々木市議に注目が集まり、「佐々木市議対残りの全議員」の構図の下、支持は強固になっているようにさえ見える。深川市議会が今後も同様の決議を重ねるつもりなら、その影響を慎重に考えたほうが良い。
佐々木一夫市議への問責決議
佐々木議員は、令和8年第2回市議会定例会における一般質問において、十分な事実確認及び調査を行わないまま、事実に反する内容を前提とした質問を行った。
その後、議会運営委員会において、同議員から提出のあった関係書類等を確認した結果、当該質問は事実誤認に基づくものであることが確認されたため、同議員から、本会議において訂正を行いたい旨の意向を確認した。
しかしながら、同議員は前言を翻し、自らの調査不足及び事実確認の不十分さについて謝罪するどころか「私は、市民からの情報に基づき質問しただけだ」と述べるなど、自らの責任を第三者へ転嫁する発言を行った。
議員には、自らの発言に責任を負うとともに、市民から得た情報についても十分な調査及び裏付けを行ったうえで質問を行う責務がある。同議員はその責任を果たさず、さらに訂正・謝罪の場が用意されていたのにもかかわらず真摯な反省を示さなかった。この行為は、市議会に対する市民の信頼を損ない、議会の品位及び秩序を著しく害するものである。
よって、佐々木一夫議員に対し、自身の発言責任について強く反省を求め、問責するものである。
以上、決議する。
令和8年6月24日 深川市議会
問責決議に対する佐々木市議の弁明(6月24日)
弁明の場を与えていただきありがとうございます。最初は私の17日の質問翌日の議会運営委員長の私の質問に対する市側答弁がおかしいので、議会として抗議すべきと思うので協力してくれという話から始まったのですが、いつの間にか抗議が遠のき、私の事実誤認による謝罪の話になっていきました。
そして、昨日23日の議会運営委員会に出て初めて知ったのですが、議運は質問の訂正を求めていたのであって、事実誤認による謝罪が優先したというのではなかったと初めて聞きました。これでは議会運営委員長の話と違うので、なぜ議運委員長が私に議運決定と違うことを伝えたのかと疑問に思っています。
さて、私が事実誤認について言いますけども、事実関係認識についてはですね、行政との間で質問通知をして、十一日に担当所管と事実認識確認を含むですね、聞き取り調査を終えておりまして、それに対応したね、答弁書の内容もございました。
その時点でですね、全て事実、せめてあるいは問題がないとの認識で私は終わっております。私自身が元市職員でありますが、行政の言い分を市民が別の意味に捉えることはよくあることであります。多様な市民がですね、多様な捉え方をすることは、民主主義社会における多様性の一面であり、だからこそ行政としてですね、市民理解を求める意味での責任がございますし、ましてや議会がですね、市民の見識を事実誤認と規定してしまうことには、私には疑義があります。
私はただ一人、今年一月の臨時議会以来、この生活応援給付金の電子クーポン支給について批判と対応を要求してきました。また、私の指摘通りの混乱が起きたことに対して、議会でただ一人再再質問までして批判をしてきました。
さらに、ただ一人、自分のれいわ新選組市議会報告によってですね、5000円の支援金金額も近隣他町の4ないし6分の1であることや、近隣他町は電子クーポン採用していないことも市民周知してきました。今回もただ一人、市井の市民の深川市の電子クーポン支給への批判の声を直接的に議会に届けてきました。
まあ、市行政の側からは、あるいは議会の側から様々な異論が出てくることは最初から想定しています。まあ、これで六度目の問責ですけれども、さらに言えば、深川市議会ただ一人の懲罰被処分者でもあります。
すべての市民に向けて宣言いたします。
私は市民の一しもべであり、市民の代弁者です。今回は市民の疑問を議会で伝えたことから、私の問責にまでなりましたけれども、どうぞこれからも深川市行政に対する疑問の声を、意見を私に届けてくださるよう希望しますと。(打消し部分は削除された)

