ハスコムが2条ビル敷地取得完了 超大手がホテル建設へ

 「本州のマンション大手、不動産大手が手を組んで旭川で第2のタワーマンションを建設する」─そんな報道がなされたこともある旭川市2条通8丁目の一角。対象となる土地のうち約3分の2の取得は早々と完了したものの、残る敷地に建つ「二条ビルディング」は築65年以上。権利が複雑で、十数年間にわたり取得が難航していた。ところが最近、㈱ハスコムの関係会社が権利関係をクリアーにして土地を取得。年商5兆円クラスの超大手が取得意向を正式に伝えており、ビル解体後に売買が実現の見通し。旭川市中心部での新しい大型ホテル登場が期待される。

数年かけて権利問題解決
 資金、人脈、情報…。不動産業を営むのにこれらの要素が重要であることは業界の外部にいる記者にもわかる。しかし、それ以上に重要なのはくり返し壁に突き当たっても決して諦めない強い心なのではないか。2条通8丁目の土地をめぐる動きを見ていると、そんな気がしてならない。
 緑橋通りに面している「二条ビルディング」(地下1階地上7階建て床面積3000平方メートル)。建ったのは1959(昭和34)年で、築65年を過ぎている。すでに取り壊された旭川初の近代的鉄筋コンクリートビル「アサヒビル」と数年しか変わらない。とはいえ、その1階部分では複数の飲食店が最近まで客を集めており、連休には帰省客やインバウンド客が行列を作ることもあった。少なくとも緑橋通りに面した部分は「現役」の建物だった。
 不動産事業やグループ会社を通じて携帯電話販売事業を営むハスコムが、山下潔会長を中心に二条ビルやその背後(買物公園側)にある土地の再開発を目指していると記者が最初に聞いたのは、十数年前のことだ。かつて北洋銀行の支店があった2条通8丁目855番地は、2014年にハスコムの手に渡っている。その面積は1000平方メートル以上で、2・3仲通りから2条本通りまで達している。855番地から緑橋通側に寄った一角(2112番地1、332平方メートル)には、かつて歯科医院と立派な石倉が建っていたが、これも2015年にハスコムの手に移った。
 ここまで行けば、二条ビルの底地となっている2112番地5、2112番地2も所有者が交代するのは時間の問題と思われた。過去にはこのゾーンで「タワマンが建設される」との報道がなされたこともある。
 光陰矢の如し。それから10年以上の歳月が経った。長い歴史がある不動産だけに権利関係が複雑で、すべての関係者から同意を得るのは容易ではなかった。関係者の主張が対立し、司法の場に持ち込まれたこともあった。再開発が望まれながら10年、20年と放置され、そのまま廃墟になっていく建物はいくらでもある。二条ビルの再開発についても記者の耳には数年の間隔を置いて新しい動きについての情報が入ったが、ではいつになったら再開発が始まるのかとの問いに、関係者は「いつかは始まるが、しばらくかかる」といった説明を異口同音に繰り返していた。記者の本心を言えば、「その『いつか』は永遠に来ないのではないか。二条ビルは永遠に廃墟として緑橋通りに存在し続けるのではないか」と疑い始めていた。

開店祝う花輪 もう一つの意味
 ところが、その「いつか」が思いがけず到来した。すでに二条ビル内の店舗はすっかり退去し、その一部はほど近い場所で華々しく営業を再開している。移転後の店先に掲げられた美しい花は、店の門出を祝うものであると同時に、長年膠着状態にあった大きな不動産プロジェクトの進展も意味していた。
 ハスコムの山下会長、そして困難な交渉役を担った不動産会社ホッポウ、渡邉一憲社長の粘り腰、地道で面倒な作業を担ったホッポウ若手社員たちの努力があってはじめて実現した取引の状況はこうだ。ハスコムのグループ企業が、二条ビルの底地2筆を複数の権利者から買い取った。今後、二条ビルを解体して更地にしたうえで、現在は駐車場となっているハスコムの所有地2筆と合わせて転売する。面積は4筆合わせて1904平方メートル(576坪)だ。面積が大きいだけに取引価格は数億円に達する。記事の執筆時点では、まだ登記上の土地所有者は4筆ともハスコム、またはそのグループ企業となっている。
 1904平方メートルの土地については、すでに販売先が決まっている。相手は連結売上高5兆円以上の巨大企業だ。
 ではこの土地はどんなかたちで再開発されるのか。まず思いつくのは「2棟目のタワマン」だが、可能性は低い。というのは、昨今の建設コストの高騰の結果、タワマンを建てたとしても分譲価格が高すぎて、東京大阪の富裕層はともかく、市民にはまったく手が届かないものになってしまうためだ。「市民に縁がないものを作っても意味がない」と渡邉社長は直言する。
 もう一つの選択肢はホテル。バイヤーになる予定の巨大企業はホテルの建設や運営についても、日本国内・海外の両方で豊富な実績を持つ。
 旺盛なインバウンド需要、旭川に富裕層のニーズに応えられる都心型のホテルが不足していることを考えれば、国際的な水準の大型ホテルが自然な選択肢だろう。
 2の8の一角にどんなホテルが建つのか、現時点で見通すのは難しいが、旭川にはこれまでなかったようなサービスが(できるなら市民にも利用可能な価格帯で)もたらされることに期待したい。多くのインバウンド客がホテルから賑わいを求めて周辺地域に繰り出すとすれば、周囲の飲食店や物販店はインバウンド客への対応力が試される。
 利害関係者が多岐にわたる不動産の取引で常に問題になるのが権利にまつわる問題の解決。一つ一つ解決して権利をすべて手に入れた山下会長は本誌の電話取材にいつも通りの淡々とした口調で「長くかかったね」と語るが、安堵した様子は声からうかがえる。2の8の土地をめぐる進展は、近く迎えるハスコム創業60周年に花を添える慶事だ。

この記事は月刊北海道経済2026年9月号に掲載されています。

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