青少年ICTパーク1月オープン

 コンピューターゲームを競技として楽しむ「eスポーツ」。その拠点施設「青少年ICTパーク」(仮称)が来年1月にも、旭川市中心部の国劇跡(3条通8丁目)にオープンする。プログラミング教育とeスポーツが今後どう連動し、相乗効果を発揮していくのか、新たな展開も期待できそうだ。

「コクゲキ」で実証実験  ワクワクする仕掛けを
 昨年6月発足した道北eスポーツ協会(事務所はスガイディノス旭川)は「eスポーツは多くの人が親しむことのできるスポーツ・競技。場所を選ばず行え広い北海道にマッチし今後成長すると予測され、大きな可能性を秘める」と期待。昨年8月にはイオン旭川西で北海道大会旭川ブロック予選と位置づけ、人気のプログラム「太鼓の達人」などを用いて開催した。
 IT業界で全国的にも注目される旭川プログラミングコンテストの実行委員を中心に構成される「旭川のeスポーツを考える会」(下村幸広代表)では昨年12月、市民活動交流センターと「旭川eスポーツ講演会」を共同開催。教育先進国のノルウェーで体育の授業で採用されている状況が映し出され、他のフィジカルスポーツと異なり性別や障害の有無、体力、体格の差が成績に影響しないなどの特徴も紹介された。
 こうした流れを背景に、旭川市やNTT東日本、大雪カムイミンタラDMO(観光地域づくり推進法人)がコンソーシアム(共同事業体)を結成し、来年1月にオープンするのが「ICTパーク」だ。道内で官民が協力してeスポーツの競技場に取り組むのは初めての試み。総務省の実証実験として、高速・大音量の第5世代(5G)通信システムで、特定の建物や敷地を範囲とする「ローカル5G」を用いたイベントも行う。
 ホテルカンダが入居する国劇跡のビルの元映画館(3、4階)を改修し約200席からなるeスポーツ競技場「コクゲキ」を開設。タテ3㍍横5㍍サイズの大型発光ダイオード(LED)モニターを設置し、東京・秋葉原にあるeスポーツ施設のエグゼフィールドアキバと結び、プレーヤー同士が遠隔で複数対戦できる。
 ビルの1階にはプログラミング教育などを遠隔で行うことができるトレーニングルーム(約100平方m)を設ける。実証実験はNTT東日本が応募し受託が決まったもので受託額は1憶3000万円。市は5300万円を予算計上し、大会運営費や関連機器の整備費にあてる。実証実験は来年3月までだが、通信施設はそのまま使用でき、ICT(情報通信技術)関連の人材を育てる考え。
 ICTパークのオープニングセレモニーでは、式典に続いて、西川将人市長と中高生とのエキシビジョンマッチ等を予定。運営主体となるDMOは今後、「ワクワクするような仕掛けづくりを行っていきたい」としながら、eスポーツを通じた企業対抗戦等を企画している。当面はオンラインと併用で開催する見通しだが、eスポーツの大会を毎月、継続的に開催。「にぎわいを創出し、人が行き交う場にしたい」と意欲的だ。

〝旭川モデル〟10周年学生対抗eスポーツも
 このICTパークにもトレーニングルームとして確保されるのが、「プログラミング教育」の場。IT業界で注目を集めるのが〝旭川モデル〟と呼ばれる「旭川プログラミングコンテスト」だ。16歳以下を対象としICTエンジニア養成を目的に実行委員会形式で開催。会場では運営スタッフによるインタビュー付きのユーモアあふれる実況中継を交え、熱戦が展開される。
 今年度から新学習指導要領により小学校の学習カリキュラムに導入した「プログラミング教育」に先行して行われたこともあり〝旭川モデル〟として注目を集めた。同様のしくみで釧路や函館、札幌、帯広でも地方大会がこれまで開かれてきた。道内にとどまらず、長野や山梨、和歌山、岐阜、福岡といった全国各地でも旭川モデルが活用され、旭川市はプログラミング教育での先進都市として評価されているという。
 そしてコンテスト開始から今年10周年を迎え節目の開催となったが、新型コロナウイルス感染防止のため通常と異なり、オンラインで文化の日の11月3日に開催。会場となったイオンモール旭川駅前店では、コロナ対策を施しながら実施された。実行委員長を務める小川博・東海大教授は「このコンテストのプログラミングが物事のアルゴリズム(計算する手続き)と、作品制作がプレゼンテーションの基礎力を養ってきた」と歩みを振り返る。
 一方、eスポーツでも新たな企画がイオン旭川駅前で始動する。〝旭川をeスポーツの拠点に〟と呼びかけ12月19、20の両日、「道北学生対抗eスポーツ大会」と銘打ち開催。フードコートでは5Gの技術展示も行う。
 プログラミング教育のメッカともされる旭川に、さらにeスポーツの拠点としての要素が加わる。プログラミングとeスポーツ。この二つが両輪となって今後、様々な効力を発揮する原動力となるのもICTパークの働きしだいと言えるであろう。

表紙2012
この記事は月刊北海道経済2021年12月号に掲載されています。

東京の金融コンサルが美瑛で羊飼い

 金融関連事業を主力とし、農業法人を傘下に置くトゥルーバグループホールディングス(本社東京)が、美瑛町内に系列会社を設立した。担い手不足や高齢化といった問題を抱える国内農業に、これまでも法人化という手法を持ち込んできた。美瑛では「びえい和牛」で知られるファームズ千代田と協力して羊を生産し、東京にある系列の飲食店で使用する予定だという。

列店の食材確保
 10月14日に設立された法人の名称は「トゥルーバファーム北海道㈱」、住所は美瑛町春日台で資本金は300万円。代表取締役には志波和佳氏が就任。会社の目的には、「農産物の生産、加工及び販売、農産物の貯蔵及び運搬、畜産物の製造、加工及び販売」といった事業を営むことや、これらの事業を営む会社などの株式を所有することといった記述がある。
 トゥルーバファーム北海道の住所は、番地を含めて㈱ファームズ千代田と同じ。フ社のアブガンドロージン・アバラゼデ社長がト社の取締役に名を連ねている。両社に取材を申し込んだところ、志波氏が電話取材に応じた。
 「我々はグループ内で居酒屋を経営している。その店で食材として使う羊を、美瑛で生産する。とはいえ、我々にはその技術がない。たまたま知り合いだったファームズ千代田が羊を飼育していることを知り、まずはお願いすることにした」
 ウェブページによれば、トゥルーバグループは東京・神田でそば居酒屋「創」を今年8月にオープンさせている。美瑛で生産された羊肉はこの店に送られるようだ。
 志波氏によれば飼育の規模は繁殖用の羊が40匹程度。1匹の母親から通常は年1頭、双子が生まれることもあり、毎年50頭程度の生産を見込んでいる。外部への販売は行わず、全量をグループ内で使用する。品種はサフォークやポールドーセットとなる見通しだ。
 日本国内で消費される羊肉の大半は豪州産とニュージーランド産。北海道でもここ数年、羊肉を生産する動きが拡大しているが、道内のジンギスカン店も大半の肉は輸入品だ。その最大の理由は価格差。国産の羊肉は割高で、高級レストランに需要が限られる。しかしト社では、グループ企業で生産した羊を直接仕入れることで中間コストをある程度圧縮できると考えているという。
 たしかに、輸入品が当たり前の羊肉について「国産」をアピールすれば、消費者に対する訴求効果は大きい。しかし、それなら他社が生産した食材を仕入れても同じこと。志波氏は「自社で育てたことを強調したい」と、グループ会社をあえて設立した理由を説明する。

モンゴル出身社長
 ト社と協力するファームズ千代田は、先代の高橋洋美社長(現名誉会長)の父が戦後間もないころに入植して創業。昭和40年ごろから肉用牛の生産に着手した。2004年には和牛の母牛を導入したが、これに合わせてモンゴル出身のアバラゼデ氏が招かれた。以来、高橋氏と二人三脚でファームズ千代田で牛の管理に当たり、現在はアバラゼデ氏が社長として経営している。
 日本、とくに道北のような地方で外国出身の企業経営者は少数派であり、なかでもモンゴル出身者の社長就任はまれ。しかし、いまから20年以上前に来日してから獣医学の研究に携わってきたアバラゼデ氏は肉牛生産を主力事業とする企業の社長として「適材」の人物だった。ちなみに牛肉はモンゴルの主要な輸出品のひとつだ。
 同社のウェブページには主要な事業として銘柄「びえい和牛」の生産、ふれあい農場の経営、ファームレストラン千代田、千代田家畜人工授精所の経営などが並んでいる。
 一方のトゥルーバはどんな企業なのか。中核となる持ち株会社、トゥルーバグループホールディングス(HD)同社のウェブページによれば、社名は「True Value Added」(真価創造)に由来する。第一勧銀(現みずほ銀)出身者が2003年設立。日本国内ではいち早く動産担保融資(Asset Based Lending、ABL)に取り組み、M&A、フィンテックなどにも進出した。
 「不動産については鑑定士がいるのに、在庫や売掛金といった動産については、鑑定士が存在せず、評価の方法も確立していなかった。そこで我々が、在庫品や売掛金を評価し、金融機関に対して評価書を出す事業を始めた」(志波氏)
 金融関連のカタカナ文字がずらりと並ぶ主要な事業内容の中で目立つのが、2017年に設立した100%出資の子会社「トゥルーバアグリ㈱」。この企業のウェブページには「『農業』を『農産業』にすべく、法人を主語にしたアグリビジネスを推進します」との目標が掲げられている。具体的には大分で黒毛和牛の放牧繁殖事業、佐賀での「園芸と畜産、物販、飲食等の複合事業」などを展開しているという。

新手法持ち込む?
 道外企業による多額の資金を投じた農業経営としては、神内ファーム21(空知管内浦臼町)が有名。戦後間もないころに根室の原野で農場経営に挑戦して失敗したものの、その後、消費者金融会社「プロミス」を興して大企業に育てた神内良一氏が、若き日の夢を実現するために1997年に設立した企業だ。130億円とも言われる巨費を投じて高級な肉牛、羊、野菜、マンゴーなどを大規模に生産してきたが、2017年に神内氏が死去したことを受け、全株式が「こてっちゃん」で知られる兵庫県の食品加工会社、エスフーズ㈱に売却されたものの、今も浦臼町での事業を継続している。
 また、外食大手のワタミグループも農業に進出した企業。一時は異業種参入が長続きするかどうか疑うむきもあったが、現在も全国各地で農場を経営するなどしている。
 ト社が設立した新会社は資本金300万円と規模が小さく、当面はグループ内の居酒屋に商品の供給先を限定する方針。しかし、そもそも各地で農業に進出した背景には、担い手の減少と高齢化といった日本の農業が抱える問題がある。今後、こうした問題を解決できる経営手法や資本を抱える本州資本の道内農業進出が増える可能性もある。

表紙2012
この記事は月刊北海道経済2021年12月号に掲載されています。