来春旭川市議選 自民が5人の新人擁立

 来年4月の統一地方選。各種選挙が予定されるが旭川市民とって一番身近なのは市議選。本番までまだ8ヵ月の猶予はあるが、新人候補の顔ぶれがそろってきたこともあり、戦いの構図が見え始めている。特徴的なのは昨年のトリプル選挙の余勢をかってか、自民党が5人もの新人を市議会に送り込もうとしていること。今津寛介市長の安定与党を築こうとする強い意気込みがみられる。さて、次期市議選はどんな展開になるのか。(記事は8月5日現在、文中敬称略)

勇退決めた現職は2人だけ
 この記事の制作にあたって本誌は現職の旭川市議会議員34名の自宅にアンケート調査票を送った。質問は来春の市議選に「立候補する」「立候補しない」「考慮中」の3項目から一つ選んでもらうもので、回答は郵送かファクスでお願いした。
 期限とした日までに34名全員から回答が寄せられた。一部、住所が変変わっていたり、ファクスが不調で届かなかったものもあったが、それらには直接電話で回答をもらった。
 具体的には後述するが、回答の中では「立候補する」が21名、「立候補しない」が2名、「考慮中」が11名だった。
 「考慮中」と答えた人の理由では、公明党議員の室井安雄、中村徳幸、門間節子、高花詠子はそろって「今後、党本部で検討されるため」とし、民主・市民連合の中川明雄は「特に理由はなく決心に時間を要するのみ」、高見一典は「後援会役員の方々と相談して方向を決めたい」、品田登紀恵は「迷っています」としているが、いずれも「出馬の方向で考慮中」ととらえることができる。
 微妙な感じで「考慮中」としてきたのが自民党・市民会議の蝦名信幸と宮本儔。蝦名は「蝦名安信議員(実子)との交代の可能性を考慮しています」と理由を記してきたが、宮本の理由記入欄には何も書かれていなかった。
 これらの回答を整理すると現時点で、現職34人のうち今季限りで勇退を決めているのは2人だけ。本誌の独自取材で得ている情報を加味し、選手交代が考えられる人を足したとしても勇退は1~2人増えるだけ。とすれば、来春の選挙には少なくとも30人ほどの現職が名乗りを上げてくることが予想される。
 前回選挙では26人の現職が立起した。辞めた8人の中には笠木薫や穴田貴洋のように道議選へ鞍がえした人、塩尻伸司や久保厚子、山城えり子のように後継者やパリテ企画の女性候補にバトンタッチしたケースもあるが、それから見れば次回は、自民の蝦名(信幸)、共産の小松を除いて世代交代を理由に自身の立起を取りやめるといった流れにはなっていない。
 もっとも公明と民主・市民連合にはこの先、バトンタッチが起きてくる可能性もありそうな気配だが、具体的には雪が降り始める時期まで待たなければならないだろう。

公明5、共産4の立起は確定的

 34人の現職の中で、本誌に対し「立候補する」と表明しているのは、自民・市民会議の杉山允孝、安田佳正、福居秀雄、上村有史、松田卓也、佐藤貞夫、菅原範明、高橋英俊、蝦名安信の9人。 民主・市民連合では松田宏、高木啓尊、江川彩、塩尻英明、野村パターソン和孝は立候補を表明。中川明雄、高見一典、品田登紀恵、髙橋紀博は考慮中としているが、いずれも立起してくる可能性が高い。公明党は5人いずれも党の道本部が決めることなのでまだ確定はできないが、仮に交代があったとしても総勢5人の出馬は確実。
 共産党はすでに小松の後継として新人の擁立を決めているので能登谷繁、石川厚子、真嶋隆英に加えて出馬は4人。無党派Gは金谷美奈子、上野和幸、日隈利穂の3人。無所属の横山啓一も名乗りを上げてくる。
 横山は本誌アンケートに「立候補する」と回答を寄せているが、「後援会の皆様に対しての意思表明、後援会また支持組織(北教組)との確認を終えていないので、現時点では本人個人の意思とお考え下さい」とのコメントも寄せている。
 これら現職組に対し新人で出馬を表明しているのは自民党の公認、ないしは推薦を見込んでいる5人。立憲民主からは不出馬を決めている白鳥の後継としてウワサされる女性候補を加え、少なくとも2人以上の新人が出てくる見込みだが、まだ具体名はあがってきていない。

意欲見せる新人6人の横顔
 安定した与党体制を目指そうとする自民党から名乗りを上げようとしている新人はいまのところ年齢順に石川正貴(48)、中谷昭典(48)、石川雅之(43)、今野力(45)、阿部奈緒(37)。以下に一人ずつ略歴や出馬への思いを紹介する。
 石川正貴(いしかわ まさき)は永山で東和リサーチを経営する。昨年は今津寛介市長誕生に貢献し、市内の自民党関係者には知られた存在。すでに公約も出来上がっているが、その柱の一つに挙げているのが人口減対策。「人口減少を止めることは難しい。ただ、減少を緩やかにするような様々な施策を提案、実行し、与党議員として貢献したい」と意気込む。旭川JC時代の仲間たちが選挙を支えることになりそうだ。
 中谷昭典(なかや あきのり)は東光で農産物加工品の製造・販売、旭川未来創生社を経営する。札幌出身で北見工大を卒業後、旭川ガス、なかせき商事の仕事に携わったあと独立。「開拓者精神たれ!」をキャッチフレーズに資金団体「新しい旭川を創る会」を立ち上げ、後援会づくりにも取り組む。「新しい農業を研究し、経済の活性化を追求し、住みやすいまちを探求する」と心はすでに選挙戦に入っている。
 石川雅之(いしかわ まさゆき)は神楽生まれの神楽育ち。福祉専門学校を卒業し札幌の中村記念病院で16年間作業療法士として勤務したが、5年前に旭川に戻りデイサービス「結かぐら」を開設。神楽岡小のPTA会長を務めながら神楽まちづくり推進協議会、旭川未来会議2030のメンバーとして地域活動に取り組む。「身内に政治家がいないので勉強したい」と自民党政治塾に通い、共生社会の実現を目指す。
 今野力(こんの つとむ)は高台小、春光台中、旭川実業高と春光台に根を下ろす。建設業アサヒ工営の2代目社長で、身長189㎝の威風堂々たる体格。政治家や経済人がそろう旭川竜馬の会の中心メンバーで、とにかく行動することを信条として「いまは民間に元気がない。文句を言うのはもう飽きた。市民の不満を行政とともに取り上げるため市議を目指す」と勢いがある。周囲からは「市議になれ」と早くから進められていたがやっと決意した。
 阿部奈緒(あべ なお)は埼玉県からの移住で4歳と1歳の女児2人の子育てに奮闘中。「介護サポート プランタングループ」の看護師で施設長を務める。「大好きな旭川には発展のポテンシャルを感じるが人が減ってくるなどマイナス要因が多くみられる。マチづくりには政治力が必要。子育て環境の整備に取り組みたい」と立起への強い思いを語る。自民党政治塾の塾生で、これまでにたびたび保守系の選挙活動に携わってきている。
 このほか確定した新人候補としては共産党公認の中村美楠子(なかむら みなこ)がいる。市議会の論客として知られる小松晃の後継者に抜擢され、30年間の教員生活から離れ、すでに現職の市議、道議とともに街頭での政治活動に力を入れている。生まれも育ちも旭川であることが強みで、自宅は神居だが小松の地盤、西地区を引き継ぎ、共産党が死守してきた4議席確保をうかがう。

予断を許さない選挙になりそう
 自民党から名乗りを上げようとしている5人の新人はいずれも党に対し公認申請を提出する予定だが、審査はもう少し先になりそうだ。自民党会派としては市議会で絶対与党の立場を貫くためにも少なくとも現状より2~3人の増員が必要。5人全員が「公認」を得られることは考えにくいが、党勢拡大を考えれば「推薦」を含め、申請が認められることになりそう。
 また本誌ではアンケートとは別に、動向が気になる組織や個人に電話による意向調査も行った。前回3人の候補者(一人は東川町)を立て全員を当選させた女性の社会・政治参加を標榜するパリテ企画では「今後、メンバーと話し合っていく」とし、新人擁立はまだ具体化していない。
 また、前回次点で涙をのんだ松家哲宏は「いまは札幌で松木謙公(衆議)の秘書をやっているので、旭川に戻って市議選に出ることは全く考えていないし、ありえない」ときっぱり答えている。前回、市議をやめて道議に挑戦した穴田貴洋には市議復帰のウワサもあるが「後援会と相談してからでないと答えられない」とのことだったが、まだ回答は得られていない。
 いずれにしても現在の情勢では、市議会の現有勢力を上回る勢いの新人立起が見込まれる。特に5人の新人を立てることが確定的な自民党を軸とする地域が入り乱れての激しい選挙戦となりそうだ。ここ数回、当落の予想がさほど困難でない選挙が続いていたが、この次は予断を許さない波乱含みの戦いとなりそうな雲行きにある。

表紙2209
この記事は月刊北海道経済2022年09月号に掲載されています。

産業廃棄物処理施設に空白期間

 旭川市江丹別町共和で稼働中の産業廃棄物処理施設が4年後には満杯となることから、次の処分場となる場所を早期に見つけなければならない。重責を担うのは管理・運営する旭川振興公社なのだが、なぜかもたついている。このままでは産廃の廃棄ができない空白期間が生じてしまう。市民の矛先は責任の一端を担う旭川市環境部にも向けられており、市議会でも追及された。

事業活動、市民生活への影響必至
 廃棄物は法律で産業廃棄物と一般廃棄物に分類されている。大まかに言えば、産業廃棄物は事業活動に伴って発生するごみで、一般廃棄物は一般家庭から発生するごみと理解しておいてもよい。両方のごみとも種類が細かく分類され、持ち込み(廃棄)場所も定められている。
 様々な区分がある中で、現在江丹別町共和にある産廃処理施設「旭川廃棄物処理センター」は第三セクターである旭川振興公社が運営する。ここでは埋立、破砕、発酵などの方法で、燃え殻・汚泥・廃油・廃プラスチック類・木屑・繊維屑・金属屑・ガラス屑・陶磁器屑・がれき類、煤塵など、主に建設関連の仕事で生じた廃棄物の処理にあたっている。
 この産廃処理施設は、もとをただせば市に押し付けられたようなもので、昭和の時代には市が江丹別に設置していた一般廃棄物のごみ処分場で産廃ごみも一緒に受け入れていたが、こうした〝あわせ産廃〟をやめることにしたため、2002(平成14)年4月に市が場所を貸与して振興公社に産廃処理の運営を委託したものである。
 以降、振興公社は江丹別町共和で2期工事、3期工事と施設を拡張し現在に至っているが、現在の所在地ではこれ以上の拡張はできず、新たな場所を求めて移転する必要が出てきた。見通しでは2026(令和8)年には受け入れが困難となる状況にあり、その期限が迫ってきている。
 振興公社が予定しているのは、少なくとも27ヘクタール以上の用地を確保できる場所。先に決まった一般廃棄物の処分場は18ヘクタール程度の土地を探していたが、それよりずっと広い場所が必要となる。市街地か
ら遠くなく、交通の利便性も悪くなく、用地買収もしやすいという好条件の場所がどこにあるのか。
 振興公社は昨年来、市と協議しながら場所探しにあたってきたが、いまだ確定に至る兆しは見えない。一日も早くめどをつけなければ、事業活動、市民生活に影響が及ぶことは必至だ。

表紙2209
この続きは月刊北海道経済2022年09月号でお読み下さい。

家庭教育推進団体 役員は統一教会関係者

 安倍晋三元首相が奈良県内で選挙の応援演説を行っている最中、背後から銃撃されて死亡したのは7月8日のこと。以来、マスコミでは「旧統一教会」(現在の世界平和統一家庭連合)に関する情報が飛び交っている。「それは大都会の話。遠く離れた地方都市・旭川には関係ない」とは言い切れない。旧統一教会に関わりのある人物が市民生活に関わる条例の制定を、複数の議員を巻き込んで推進してきたことが明らかになった(本誌の取材後に活動を離脱)。家庭教育そのものは反社会的なものではないが、市民は条例制定の背景にある動きを知っておくべきだろう。

5月に市内で講演会
 本誌7月号でも紹介したが、5月23日に旭川市内のココデで「家庭教育を考える~親の孤立化を防ぐ取り組み~」と題して講演会が開かれた。講師は静岡県議会議員の藤曲敬宏氏。静岡県で8年前に制定された家庭教育支援条例の取り組みや成果、今後の課題などについて語った。
 講演で氏が語ったのは「幼少期からの家庭教育は心の豊かさや思いやり、善意の判断など基本的な倫理観の醸成に重要な時期」「(条例制定は)子育て支援の核が家庭教育支援策になると同時に、縦割り行政から部局横断的に横串を指す効果につながった」といった話。旭川でも家庭教育の欠如を痛感させる事態が相次いでおり、講演会の参加者も家庭教育支援の必要性を感じたはずだ。
 主催者の「旭川家庭教育を支援する会」で事務局次長を務めていたのがA氏(市民団体の情報を集めたサイト「asahikawa.genki365.net」には代表者としてA氏の名が登録されている)。会は2020年8月23日に設立された。ウェブページには「児童虐待、育児放棄などが目立ってきている中で、次代を担う子どもが健やかに育つ環境づくりなど、家庭教育への支援がより必要となってきています。旭川市における家庭教育支援条例の制定と、家庭教育の支援並びに推進を目的として本会を設立いたしました」(抜粋)との説明がある。
 議員、教育関係者などの意見を集めて条例案が今年1月にまとめられた。この条例案はまず、「家庭は教育の原点であり、すべての教育の出発点である。基本的な生活習慣及び豊かな情操、思いやりや善悪の判断などは、愛情による絆で結ばれた家族とのふれあいを通じて、家庭で育まれるものである。家庭教育においては、生涯にわたる人格形成の基礎が培われる幼少期が特に大切な時期であるため、保護者の役割が極めて重要である」などとうたっている。さらに、保護者の責務として「子どもの教育について第一義的責任を有することを自覚しなければならない」、祖父母についても「子育てに関する知恵および経験を活かし、保護者と連携しながら家庭教育の支援を行うよう努めるものとする」などと定めている。子どもの学びのほか、「親としての学びの支援」「親になるための学びの支援」に関する規定もある。

もう一つの肩書き
 おそらく、家庭教育の重要性を全面的に否定する人はいないだろう。家庭の状況は千差万別であり、教育に時間やお金を投じることができない家庭をどう支援していくのか、条例が家庭という「私」の領域に踏み込むことがどこまで許されるのかについての論争はあるが、この旭川でも教育や子育てをめぐりさまざまな事件や事例が発生しており、家庭教育の機能不全が数々の問題の一因となっていることは否定できない。「家庭教育を支援する」と聞けばほとんどの市民は「良い政策」と評価するのではないか。
 しかし同時に、これらの動きの背景にある動きに目を移せば、不安を感じずにはいられない。
 会の中心的な人物で、活動の出発点ともなったA氏にはもう一つの肩書きがある。同性婚に反対する団体「同性婚問題を考える旭川の会」の事務局だ。同性婚を法的に認めるべきかどうかについては賛否両論があり、反対の声を上げる集会を開いたとしても、それは憲法が保障する言論の自由の範囲内の行為。同性婚推進派の集会と同様、反対派の集会の自由も守られなければならない。
 興味深いのは同性婚問題を考える旭川の会がこれまでに開いた行事のゲストの顔ぶれだ。ネットに残る情報によれば、2019年12月7日には平和大使協議会の事務次長が来旭して何らかの行事を開いた模様(同日に撮影されたと思しき画像には世界日報の編集委員の姿もある)。平和大使協議会とは旧統一教会系の組織であり、その本部は東京新宿のビルの5階にあり、同じビルには1階から8階まで旧統一教会系列の組織がずらりと入居している。
 2020年8月23日には同性愛問題を考える旭川の会主催で「同性愛先進国 アメリカの悲劇と混乱」と題して世界日報の記者が講演している。世界日報も旧統一教会とのつながりが深い。
 話を家庭教育支援をめぐる動きに戻そう。家庭教育支援は、旧統一教会系のメディアが推進している活動でもある。来年4月1日に発足する子ども関連行政を担当する省庁の名称が「こども庁」から「こども家庭庁」に変更された背景にも、旧統一教会に近い自民党議員の働きかけがあったとの見方がある(旧統一教会系の団体は、名称変更を評価しているものの、それが旧統一教会からの働きかけによるものかは明らかにしていない)。
 旭川でも条例制定を「旭川家庭教育を支援する会」が推進しているわけだが、すでに教育の専門家も関わった具体的な条例案を旭川市に提出している。また、活動には現役の国会議員、旭川市議も参加している。自民党系の市議の一人に話を聞いた。
 「何度か行ったが、しくみづくりには一生懸命だが、肝心の具体的な家庭への支援の活動は薄いような気がしたので参加しなくなった。会と旧統一教会の関係についてはまったく知らなかった」
 別の市議の話。「教育について学校や社会、地域、家族それぞれの連携が必要だという主旨であったため、私も昨年から参加しており、議論されることの重要性を認識している。市内外から様々な有識者がオープンな場で講演されており、宗教的な意味合いがある会ではないと認識している。なお、宗教を信じる方々は尊重しているが、公共の福祉に反し、社会に不安を与えることはあってはならないことだと思う」
 本誌はA氏本人にも書面で取材。A氏は7月27日に回答を寄せた。
Q 現在の「旭川家庭教育を支援する会」における立場は?
A 事務局次長を務めている。
Q 現在の条例案の状態は?
A 1月15日に「教育関係者による意見交換会」を行い、そこに参加して頂いた、旭川市総合政策部、子育て支援部、旭川市教育委員会社会教育部の各部長に条例案を渡した。現在も、より良い内容にしていくために、中身を継続して検討している。更により多くの有識者に紹介して、検討して頂く。
Q 同性婚問題を考える旭川の会と世界平和統一家庭連合の関係は?
A 特に関係はない。それぞれ個別の目的と活動をしている別団体だ。
Q 家庭教育を支援する会と世界平和統一家庭連合の関係は?
A 前の質問と同じく、特に関係はない。それぞれが個別の目的と活動をしている別団体だ。
Q あなたは世界平和統一家庭連合の信徒なのか。
A 私個人の内面の信仰については、返答を差し控えさせていただく。
 なお、後日、A氏に対面で取材したところ、A氏は旧統一教会と「一部関係している団体に職員として勤務している」と明らかにした。同時に「旭川家庭教育を支援する会の活動は個人として関わっており、仕事とは何ら関係のない話だ」と強調した。

判決書に記された生々しい実態
 信教の自由は、憲法で保障されている。他にも宗教組織から手厚い支援を受けていて、政権与党の一角として政策の立案や推進に深く関わっている政党がある。旧統一教会の活動や政界との関連がことさらに問題視されるのは、その活動の反社会性が突出しているためだ。
 生々しい実態を、誰でも読むことができる。「裁判所」のホームページにある判例集を「統一教会」や「世界平和統一家庭連合」などのキーワードで検索すると、平成13年11月30日に大阪地方裁判所で下された損害賠償請求事件の判決文に行きつく。元信者10人が起こした裁判の判決で、裁判長は被告の統一教会(訴訟の途中で世界平和統一家庭連合に改称)に対して、1億5833万円の支払いを命じた。判決書に記載されていた手口の一例を紹介しよう。
 原告Aさんは重い病気にかかり夫に先立たれ消沈していた。信者がAさんに対して家系図を示しながら、「御主人が死んだのは先祖の因縁のせい。あなたの子どもも20歳まで生きられるかどうか分からない。父親も御主人も成仏ができなくて地獄で苦しんでいる」と語りAさんを不安に陥れ、500万円の「本翡翠念珠」と540万円の「多宝塔」を購入させた。夫の生命保険金が下りたあとは2100万円分の物品を購入させた。─判決書にはこうした手口が原告10人分、詳細に記載されている。

「今後も会長として活動続ける」(東代議士)

 旭川市内にも、世界平和統一家庭連合の施設がある。信仰を続けながら幸せに暮らしている信者の家庭もあるのだろう。が、安倍元首相襲撃をきっかけに、この宗教団体の実態に改めて注目が集まっている。逮捕された男の母親が数千万円を教団に寄付して自己破産、家庭が崩壊したことを男が恨んでいたとの報道があるが、それほどの寄付を受け入れる教団は果たして「普通の宗教」なのか。ちなみに、一時日本からの芸能人の参加などで話題を集めた合同結婚式は、コロナのために規模を縮小したとはいえ、今年も4月に韓国で開催された。
 家庭教育の推進そのものは、単親家庭の子や経済的な事情や親の健康状態の十分な家庭教育を受けられない子もサポートするのであれば、多くの子どもたちの幸せに合致する。ただし、一般市民とも関わりの深い条例が旭川市でも制定されるのであれば、誰がどのようなプロセスで条例案に関わったのか、市民に広く公開する必要がある。
 現在、旭川家庭教育を支援する会の会長は、東国幹衆議院議員が務めている。本誌が東事務所に書面で送った質問と、即日返送されてきた回答は以下の通り。
Q 会長就任の経緯は?
A 複数の世話人からの賛同のもと打診があったのでお引き受けした。
Q 支援する会と世界平和統一家庭連合の関係について何か知っているか。
A 何も知らない。
Q 今後も旭川家庭教育を支援する会の会長として活動するか。
A 活動する。
 東氏は危機感を感じていないようだが、それには歴史的、かつ全国的な事情もある。
 政界関係者にとり、「統一教会」よりもなじみ深いのはむしろ「国際勝共連合」。教祖である文鮮明氏が1968年に韓国で設立、同年には日本での活動を開始している。いまでこそ右派は韓国に批判的だが、当時はソ連・中共・北朝鮮からの共産主義勢力を跳ね返すためのパートナーだった。自民党と勝共連合の密接な関係は、「霊感商法」が明らかになったあとも変わらなかった。自民党には、統一教会から寄付を受けたり、会合に参加したり、イベントでビデオで祝賀メッセージを寄せる国会議員がゴロゴロいる。その代表格が銃撃されて死亡した安倍元首相。にもかかわらず、自民党内から統一教会との関係を見直すべきだといった声は聞こえてこない。
 本誌は、旭川家庭教育を支援する会の落合博志副会長にも取材した。
 「家庭活動支援を通じて地域を良くしたいという純粋な思いで活動してきた。A氏が旧統一教会に関与しているのなら、関係を解消した上で、これからも会の活動を続けていく」(落合氏)。A氏からは8月4日付けで「一身上の都合で事務局次長を辞任する」との辞任届が提出された。

累計の全国被害額 1237億円
 自民党の一部の国会議員たちは旧統一教会と関連のある団体だと知った上で知ってイベントに参加しているが、旧統一教会については、正体を隠した活動で仲間を増やして信徒集めにつなげているとの指摘がある。たとえば「CARP〇〇」といった団体は社会問題や環境問題、SDGsに関心のある若者を集めてセミナーなどを開催し、札幌でも活動の実績があるが、実質的には旧統一教会の別動隊だとみられている。
 旭川家庭教育を支援する会の参加者も(すべてではないが)A氏の背景を知らなかったと強調する。会を取材した本誌記者も、「同性婚問題を考える旭川の会」や旧統一教会との関わりについては知らなかった。A氏は「それぞれが個別の目的と活動をしている別団体」と強調するが、関係を隠していることこそが旧統一教会の問題点だ。
 霊感商法の被害者やその家族を支援している「全国霊感商法対策弁護士連絡会」のウェブページによれば、相談のあった被害額は2018年だけで21億9100万円あまり。1987年からの累計では1237億円と、自然災害に匹敵する規模になる。行政や政治が利用され、お墨付きを与えるようなことがあってはならない。

表紙2209
この記事は月刊北海道経済2022年09月号に掲載されています。

塩漬け6年 東海大跡地の行方

東海大学旭川キャンパス(旭川市神居町忠和)の跡地が〝塩漬け〟のまま6年を迎えた。民間事業者からアイデアや意見を出してもらう「サウンディング型市場調査」も行ったが、利活用の方法は五里霧中のままだ。跡地の有効活用は今津寛介旭川市長の選挙公約の一つだが、今のところ具体的な動きは見えない。

寄付されたが
 同キャンパスは、1972年4月に東海大学工芸短期大学として、旭川市外を西方から見下ろす丘の上で開校した。当時の五十嵐広三市長が、東海大の松前重義総長に働きかけ実現したとされる。以来、建築・デザイン・木工・家具などの分野に優れた人材を数多く輩出してきた。卒業生は5000人を超える。旭川市内でも多くのOB、OGが活躍している。
 2008年には東海大学と統合され、旭川キャンパスとなった。「くらしデザイン学科」「建築・環境デザイン学科」の2学科を運営してきたが、少子化の影響で定員割れが続き、2010年には札幌キャンパスに「デザイン文化学科」を新設することで、旭川キャンパスを閉鎖・統合する方針が決まり、2014年3月に閉校された。忠和の高台にそびえていた旭川市民になじみ深いタワーが姿を消して久しい。
 閉校から2年後の2016年、土地35万平方㍍と研究棟・図書館(共に2000平方㍍弱)の一切が旭川市に寄付(無償譲渡)された。土地は一般的なゴルフ場の3分の1ほどの広さで、スタルヒン球場14個分に相当する。
 寄付はされたが、敷地内のグラウンドなどでスポーツ団体が野球やクロスカントリーの練習をしたり、専門学校が重機の使い方を教えるフィールドとして利用するなど、散発的な利用に留まっており、本格的な利活用には至っていない。

市場調査で民間は数々の魅力指摘
 旭川市は民間事業者への売却や貸付も視野に検討を重ねてきた。2019年には民間事業所を対象にサウンディング型市場調査を実施し、市内に事業所を有する3社から考えや意見を聞いた。3社からの意見として▽市中心部から近く利便性が良い▽自然が豊かで市内を一望できるロケーションの素晴らしさ▽新規事業の展開で雇用機会の創出と観光客の増加が見込める─などの指摘があった。
 提案内容は、A社が家具製造・体験交流施設(事業方式・購入あるいは賃貸)、B社が文化・観光施設(同・公設民営)、C社が高齢者向け福祉施設(同・賃貸)を挙げた。調査結果から、旭川市は民間事業者に利活用のニーズがあると把握する一方で、都市計画法が定める用途の制限といった課題が明確に浮き彫りになったと受けとめている。だが、この調査以降、具体の動きは見えず塩漬けが続く。

利活用妨げる土地の用途区分
 寄付された土地は、旭川市の都市計画で第2種中高層住居専用地域に定められている。建築基準法は、第2種中高層住居専用地域では、店舗は1500平方㍍を超えてはならず、原則2階建て以下と定めている。さらに、カラオケボックス・ボウリング場などの遊戯施設、ホテル・旅館といった宿泊施設も建てられない。こうした用途の制限から、文化・観光・交流といった施設を整えるためには現行の用途区分のままでは難しいのが実態。「都市計画法上の用途の制限は高いハードルの一つ」(所管・市政策調整課)との認識だ。
 用途の変更は、そう簡単ではない。変更することが旭川市全体の利益に合致する合理性のあるプランを有識者・市民(公募)らで構成する「都市計画審議会」に提示し、諮る必要がある。審議会の承認を経て道とも協議し、理解を得ることも求められる。

土砂災害警戒区域
 課題は、もう一つある。敷地内は土砂災害警戒区域で、一部は、一定の要件を基に開発が制限される特別警戒区域に指定されている。開発に伴う施工に厳しい技術的基準が設けられているほか、建築物の構造にも規制が加えられる。このため通常に比べ事業費が割高になることは必至で、利活用策のネックともなりそうだ。
 今津市長は、今年2月の記者会見で、冬季のトレーニングセンター誘致について言及をしているが、具体的な場所については明言を控えている。
 跡地から、国道12号のバイパスを超えた南には、旧優佳良織3施設がある。一時期、市内の経済人から一体的に再開発すべきとの声が出たこともあるが、具体化する前に旧優佳良織はツルハなどが取得した。
 東海大旭川キャンパス跡地の維持管理費は年間150万円ほど。厳しい台所(財政)事情の旭川市にとって重い負担だ。利活用されないまま塩漬けが続き、税金からこれまでに1000万円ほどの費用が投じられたことになる。
 跡地を整備するには、多大な資金投下が必要だが、一般家庭の預貯金に相当する市の財政調整基金の2020年度残高は44億円ほどで、中核市平均の半分ほどにとどまる。2021年度決算見込みの借金残高(地方債残高)は1718億円。「財政調整基金の額を見ても他の中核市に比べ低く、市の財政状況は決して潤沢とはいえず厳しい」(旭川市財政課)
 建設中の市本庁舎の今後の借金返済(起債償還)に加え、一般廃棄物最終処分場、旭川市民文化会館整備など今後も高額な支出が見込まれる案件が目白押しの旭川市にとっては、東海大学旭川キャンパス跡地の利活用で市が事業主体となる多大な投資はできるだけ避けたいのが本音だ。
 だが、塩漬けのまま年間150万円の公金を無益に費やすこともできない。早急な対応が求められる。旭川市に寄付された跡地は、全市民の共有財産なのだから。

表紙2208
この記事は月刊北海道経済2022年08月号に掲載されています。

ファッションビル「オクノ」の行方

「9月閉館」との情報が走り回ったファッションビル「オクノ」(旭川市3条7丁目、石原嘉孝社長)。全32のテナントのうち3分の2は撤退するものの、婦人服や飲食店など10店が3フロアに集約され当面の営業継続が決まった。数年後に閉館・解体され複合商業施設に生まれ変わる構想があるが、ビル解体費は6億円にのぼる見込みで、2条買物公園の「マルカツ」同様に先行きは不透明だ。

ファッション発信
 今年4月中旬、「マルカツが今秋10月で閉店する」との情報がテナント関係者から各方面へ流れた。所有する遠藤管財(札幌)の遠藤大介代表は、本誌などマスコミに対し「老朽化で水漏れのトラブルが発生し、(数年先と考えていた)閉店を前倒しすることとした。閉店時期は未定だ」と説明した。
 「時期は未定」とのことだが、 年内には閉じ、その後解体されるものと思われる。
 買物公園は90年代以降衰退が顕著で、2009年の丸井今井旭川店閉店に続き、12年には旭川エスタ、14年にはエクス(旧丸井マルサ)と、大型商業施設が閉館し、16年には西武も撤退し旭川店を閉じた。そうした荒波の中でもマルカツは、経営母体は変わりながらも、前身の松村呉服店・丸勝百貨店からほぼ100年続いてきた。それだけに、「旭川発祥の百貨店も無くなるのか」と残念に感じる市民が多いのだが、マルカツ閉店報道から1ヵ月しかたたない5月中旬、今度は「オクノが9月で閉店する」とのショッキングな情報がオクノのテナント関係者から飛び出した。
 「そうごデパート旭川店」として1973年に開業し、85年に現商号に変更したオクノは地上8階地下2階建て。婦人服の人気テナントや紳士服のオーダーメード専門店などがそろい、80年代後半から90年代はファッション文化の発信地として人気を集めた。またオクノ前は旭川でナンバー1の〝待ち合わせスポット〟でもあった。
 所有・運営会社の㈱オクノの90年代前半の売上高は約45億円で推移していた。

コロナ追い打ち
 2000年に入ってから集客力、売上高は下降線をたどるが、11年の丸井、16年の西武閉店で一部有力テナントがオクノに移ったこともあって〝復活への兆し〟も見られた。しかし15年の「イオンモール旭川駅前」開業によるダメージは大きかった。イオン開業に際し石原代表は本誌インタビューにこたえ、巨大な相手イオンをライオンに例えて「コロシアムの中で(オクノが)独りライオンと戦うようなもの」と話している。
 企業信用調査機関によると、ここ数年オクノはテナント入居率の低下により不動産賃料が減少し、さらに新型コロナウイルス感染拡大がこれに追い打ちをかけた。「2度にわたる緊急事態宣言発令で休館を余儀なくされ、テナント撤退も続いた。売上高は90年代のピークから大幅に落ち込んでいる」(信用調査会社)。
 オクノの石原代表も「コロナ被害は甚大」とし、昨年21年の売上高は「ピーク時の2割弱にあたる約7億8000万円」としている。
 マルカツに先立ち、今年9月でオクノは閉館してしまうのか? 閉館した場合跡地の再開発を考えているのか? 石原代表にいくつか疑問をぶつけてみた。
 「〝閉館〟という情報だけ先行し、9月でオクノはなくなると受け止めている市民も多いようだが、10月1日以降も営業は続ける。現在32あるテナントのうち、約3分の2が9月で撤退するが、残る約10のテナントで〝縮小営業〟となる。北海道新聞に急きょ案内広告(前ページ掲載)を出したように、1階に飲食店とアパレル、5階に矯正歯科など、6階に旭川カムイミンタラDMOなどが残り、3フロアに凝縮しての営業となる」と、全館閉館ではないことを強調する。
 ただ、個別の店舗との交渉は現在進行中のようで、どの店舗が残りどこが撤退するかの詳細は5月末の段階では決まっていない。

先進性失われた
 3フロアという変則的な営業を決断した経緯、また将来的なオクノ運営については次のように語ってくれた。
 石原 コロナがやはりこたえた。街に人はこない。商品は売れず、テナントの撤退が続いた。
 これはオクノだけの問題ではなく、日本中のファッション、アパレル系が大打撃を受けガタガタになってしまった。例えば大手のワールドだが、50ほどのブランドを扱っていたのが半分になり、人員も同じように半減した。新規に出店するどころか逆にテナントとして入っていた店の退店の連続で、引くことが仕事みたいになってしまった。
 この先も、ベーシックな価格帯のユニクロなどは生き残るのだろうが、中価格帯以上は、北海道なら札幌だけでいい、東北ならば仙台だけ、実店舗はそこだけであとはネットで購入してくれという考えに変わった。地方都市でファッションをやることが難しくなってきてしまった。
 前身のそうごデパートは、日本初のファッションビルだったが、ファッションが持っていた時代の先進性、時代を変革していく力がなくなったんだと思う。今それに近いのはSNSではないだろうか。一人ひとりが情報を発信して時代を動かしている。オクノもいろんなことを仕掛けてきたが、僕から発信することがなくなった。

補助金視野に…
 石原 建物自体の問題もある。
 築49年たって、耐震は不合格だ。エレベーターとエスカレータも老朽化し、エレベーターはアナログからデジタルに変えたが2基で数千万円の工事費がかかった。エスカレーターは昔のまま、ガタガタいっているがどうにか調整しながら使用している。なおすとすればやはり数千万円の資金が必要になる。
 電源設備も耐用年数が限界となっており、業者からいつパンクしてもおかしくないと忠告されているし、また配管設備も問題を抱え水漏れ事故も実際に発生している。そうした建物の老朽化で、メンテ費用がかかり、その捻出に追いまくられてきたというのがここ数年の実情だ。
 コロナと老朽化の下で、何か新しい答えを出さなければならないと思案してきた。
 新しい街の機能を持ったビルへの建て替えはできないかと、都市再開発プランで実績のある市内の設計事務所にも相談した。国の補助金を活用するなどして複合商業施設を建設するという〝出口〟も見えた感じがする。
 地権者は私が代表を務めるオクノも含め6人いるが、実際に再開発計画が動き出すことがあれば〝石原さんに任せる〟との了承を得ている。ただ、解体費が6億円に達する。その捻出が可能なものかどうか。
 早ければ3年後の25年に全館閉館し解体、再開発に取り組みたいと希望しているが、具体的なことは何も決まっていない。国からの補助金も視野に入れ、再開発の方法をこれから探っていこうという段階だ。

実現には曲折
 「老舗大型店がなくなれば地域は一段と衰退する。官民共同で思い切った再開発をして中心部に人が集まる施設をつくってほしい」─そんな思いを抱く市民は多い。オクノ跡地の大型商業施設実現に期待したいものだ。
 ただ、石原氏も指摘しているように、解体費6億円は大きな壁だ。先に閉館が決まった2条買物公園のマルカツは、オーナーの遠藤管財・遠藤大介氏が「マルカツの名を残した25階超の複合商業施設建設」の壮大なプランを語っているが、やはり解体費で数億円、25階超ビル建設工事費には100億円近い巨費が必要。2条買物公園、3条買物公園の再開発始動にはかなりの時間が必要で、また曲折がありそうだ。

表紙2208
この記事は月刊北海道経済2022年08月号に掲載されています。

2022参院選 自民長谷川盤石 船橋接戦制す

改選3議席の参院選北海道選挙区。焦点は自民党と立憲民主党のうちどちらが2議席を獲得するのか、さらに言えば現職の長谷川岳が票をどれだけもう一人の自民党の候補、船橋利実に譲れるのかに絞られていた。自民党がバランス良く2人の間で票を配分すれば立民の2人当選が望めないことは、どちらの党にもわかっていたはず。終盤まで自民党支持者の票が長谷川に集中するとの懸念があったが、蓋を開けてみれば自民2人、立憲1人当選という結果に終わった。(敬称略)

6年前の悪夢
 6月上旬、調査結果を見た自民党の旭川市議が表情を曇らせた。
 「船橋(利実)がヤバイ。4位にも入っていない」
 この時点で、自民党関係者の頭には2016年参院選の結果が浮かんだはずだ。
当 長谷川岳(自) 648269
当 徳永エリ(民) 559996
当 鉢呂吉雄(民) 491129
次 柿木克弘(自) 482688
(自は自民党公認、民は民進党公認)
 自民の2人の得票数を合計すれば、民進の2人より約8万票も多い。ところが改選3議席のうち2議席は民進のものになり、自民は長谷川岳の1議席にとどまった。当時の状況を率直に評した政治家がいる。「一人を勝たせ過ぎて、結果として力を落としている。北海道は頭悪いと思った。計算できないのか」。今年4月に選挙応援のため来道した麻生太郎副総裁が、室蘭で開かれた集会で語った言葉だ(船橋は麻生派に、長谷川は安倍派に所属している)。

後援会長急きょ変更
 3年後、19年の参院選道選挙区に自民党から出馬したのは、高橋はるみと、元道議の岩本剛人。4期16年にわたり知事を務めた高橋の知名度は圧倒的で、選挙運動をしなくても当選できるのは明らかだった。選挙活動の資源は全面的に岩本に集中し、2議席を軽々と獲得。立憲民主は1人を擁立して当選させるのがやっと。19年に岩本を集中的に応援する自民党の方針が徹底されたのは、16年選挙での失敗が苦い薬になったことに加え、高橋自ら岩本への集中的な応援を呼びかけたためだ。
 衆院選に初挑戦してから26年、参院初当選から12年。長谷川は51歳となった。多少は性格が丸くなり、「もう一人の自民候補」のことを考える余裕が出てきたのかといえば、そんなことはまったくなかった。自民党関係者は語る。「ただ勝つのではなく、圧倒的な票差で勝つことが長谷川陣営の目標。船橋の当落など眼中になかったのだろう」。
 長谷川のこうした姿勢が、船橋の旭川後援会長の人選にも反映されている。船橋に近い高橋はるみの強い働きかけで、新谷龍一郎旭川商工会議所会頭が引き受けることがほぼ決まっていた。ところが、長谷川が新谷や旭川市内の有力者に電話をかけて猛烈な巻き返しを図った結果、新谷は最終的に就任を断念。新谷の意向で会長職を引き受けたのは副会頭の山下裕久だった。長い間、前旭川市長・西川将人の有力な後援者として動いてきた山下は、自民党の選挙に関わった経験が乏しく、長谷川の旭川後援会長を務めた商工会議所副会頭・荒井保明と経験の差は明らかだったが、それでも船橋のために奔走した。なお、山下については「損な役回りになる可能性が大きかったのに、むしろよく引き受けた」などと評価する声もある。

味方百人 敵百人
 長谷川を評して多くの自民党関係者が口にする表現が「味方が百人いて、敵も百人いる」だ。和を重視してことを荒立てることを嫌う政治家が増えたいま、長谷川のような政治家は少数派。それでも、予算獲得などについて功績があり、長谷川のウケがいいのは事実だ。
 マスコミなどの調査で「長谷川は盤石。船橋、徳永、石川(知裕)は横一線」などと報じられてから、自民党の動きが慌ただしくなった。7月3日には総裁の岸田文雄、4日には幹事長の茂木敏充が道内に入り、「重点候補」の船橋を応援した。「首相が応援するということは、党としても絶対に船橋を落とすわけにはいかないということだ」と、旭川の自民党関係者。とはいえ長谷川は有権者個人にも建設業界にもよく浸透していた。「幹事長が船橋を推せと言ったからハイそうですか、とはならない。今年よさこいソーランが札幌で久しぶりに本格開催されたことも、長谷川の追い風となった」(別の自民党関係者)。
 一方の船橋も必死の選挙戦を展開。故郷の北見圏での集中的な得票の効果もあり、最終的には全道で次点・石川と2万4840票の差で3位に滑り込み、「自民2・立憲1」の結果に終わった。
 長谷川と船橋だけの得票に注目すれば、全道の得票率は長谷川57%に対し船橋43%、旭川では長谷川60%に対して船橋40%。長谷川の集票力は圧倒的だった。
 札幌の船橋選対中枢にいる人物は「あまり知られていないようだが、船橋はこれまでの議員生活で中央と太いパイプを築いてきた。さまざまな分野について道民に貢献してくれるだろう」と今後に期待する。

銃撃事件影響は?
 立民は苦しい選挙を強いられた。国民民主党が独自候補の臼木秀剛を擁立したために、一部の労組票を奪われた。単純計算の上では、今回臼木秀剛が獲った9万票余りが徳永と石川に半分ずつ入っていれば、立民2自民1という結果に終わっていたことになる。
 投開票日の2日前には、安倍晋三元首相が奈良県内での選挙演説中に銃撃され死亡するという衝撃的な事件が発生した。注目されるのは、今回の選挙結果への影響。投票率は前回の53.76%に対して今回は53.98%とほとんど違いはなく、全国的な自民優勢と立民の苦戦は各社の調査で早くから予想されていた。北海道選挙区の結果は、その延長線上にあると解釈することもできる。

表紙2208
この記事は月刊北海道経済2022年08月号に掲載されています。

旭川医大の「ガバナンス」どこへ?

 旭川医科大学にくすぶる「公益通報」問題。外部の弁護士も加わった調査委員会が、現在副学長を務める2人の新学長選出直前の行動に対して「不適切」との判断を示したことは本誌5月号で報じた通り。この報告書に、西川祐司学長ら現執行部がどう対応するのかが注目されていたが、事態は予想外の方向へと動きつつある。報告の内容を受け入れず、前段階の「予備調査」からやり直すことで、すでに出ている結論をなかったことにしようとしている模様。いま「ガバナンス」という言葉の意味が問われている。

「犯人扱い」に反発
 3月8日、旭川医科大学で開かれた大学運営会議。松野丈夫学長代行、西川祐司副学長(次期学長予定者)、平田哲副学長、吉田貴彦副学長らが出席した。なぜか、その場には大学運営会議のメンバーではないはずの奥村利彦教授、川辺淳一教授もいた(役職はいずれも当時)。会議の中で奥村氏、川辺氏が、公益通報に対応する調査委員会のヒアリングを受けたが、「弁護士の態度が威圧的だった」「犯人扱いされた」などと抗議した(本誌には、この会議に先立ち、奥村氏と川辺氏が松野氏の部屋を訪れて強く抗議したために、松野氏がたまらず2人に大学運営会議で不満を述べさせたとの情報も寄せられている)。
 公益通報については本誌がこれまで何度か取り上げているが、改めて振り返れば、公益通報を行った人物は、昨年11月15日に新学長を決めるための意向聴取(投票)が行われる直前、学長選考会議議長の奥村氏と委員の川辺氏が、西川氏に投票するよう働きかけていたことを問題視して、公益通報制度に沿った通報を行った。学外の弁護士4人、学内の教職員数人からなる調査委が設置されて聞き取りが行われ、2人の行為は「不適切」だったとする報告を3月31日にまとめた。3月8日の大学運営会議は、調査委が結論を出す前に行われたことになる。
 大学運営会議の中で、西川氏は2人の行為が妥当だったかどうかについて見解を示すことなく、調査委について注目すべき発言をしている。
「ヒアリングのしかたが尋常ではない」
「4人の弁護士がこの問題を理解しているのかがわからない。弁護士を替えるのも一つの方策と思う」
「公益通報の取り扱いにあたっては、弁護士を加えるかしっかり検討すべきだ」
 組織内で不適切な行為、不正な行為が行われた場合には、調査委に外部の弁護士が加わるのが常識となっている。内部だけで調査を行えば「お手盛り」との批判が避けられず、手続きに瑕疵があれば事態が余計に混乱するためだ。4人の弁護士の名前は発表されていないが、本誌がうち1人の名前を把握してネット上の情報を確認したところ、数々の上場企業が不正発覚を受けて設置した調査委に参加したり、コンプライアンス構築委員を務めるなどしていた。調査委による不正の解明については豊富な実績を持っている人物のようだ。
 弁護士は一般的に刑事弁護で被疑者に対する警察や検察による人権侵害を防ぐ立場にあり、(旭川医大の件は刑事事件ではないが)聞き取りで人権を侵害しないよう配慮したとみられる。調査委が公益通報者本人の主張だけでなく、ほかの学内関係者から具体的な証言を得ていたとの情報も、本誌に寄せられている。調査委の弁護士が「高圧的」だったのかどうか、2人を「犯人扱い」したのかどうかは不明であるものの、一連の行為が「不適切」だと判断するのに十分な材料を、調査委は聞き取りの時点で得ていたのではないか。

予備調査委でも検討
 旭川医大の「公益通報者保護規程」は、公益通報が行われた場合、学長(この件では学長が不在のため松野学長代行)が副学長、事務局長、その他学長が必要と認めた人で構成される予備調査委員会を設置すると定めている。予備調査委が本格的な調査が必要と判断した場合、副学長(1人)、教授(3人)、事務局部長(1人)、その他学長が必要と認めた人が参加する調査委員会が設置され、調査終了後に速やかに学長に報告する。今回の公益通報に対しては、学内関係者による予備調査の段階でも、「調査の必要あり」との判断が下されていたことになる。
 調査委による調査の結果、西川氏が学長に正式就任する1日前の3月31日、奥村氏、川辺氏の行為は「不適切」だったとの正式見解が示された。同日に学内で発表された西川執行部のリストには、奥村氏、川辺氏が副学長として名前を連ねていた。
 調査委の見解に西川執行部はどのように対応したのか。「公益通報者保護規定」は「学長は、調査の結果、法令又は本学規則等に違反するなどの不正が明らかになったときは(中略)就業規則に基づく懲戒処分等を課すことができる」「必要に応じて、関係行政機関等に対し、当該調査及び是正措置等に関し、報告を行うものとする」などと定めている。
 2人の行為は「不適切」と結論づけられたが、それが保護規定にある「法令又は本学規則等」に即違反するとは言えない。学長の選考のための投票は公職選挙法の規制を受けず、「学長選考会議の議長や委員は特定候補への投票を呼び掛けてはならない」との明確なルールも学内に存在しないためだ。それはルールではなく、社会常識や道徳に照らして「不適切」とみなされる行為だろう。
 とはいえ、調査委の出した結論に、大学として対応し、見解を示す必要があるのは明らかだが、旭川医大は対外的には完全な沈黙を守っている。かたくなな姿勢は本誌の報道後も変わらない。ある時期までは大部分の教職員にとって本誌がこの件についての唯一の情報源となっていた。

病院長も「やり直す」
 しかし大学内部からも、疑問の声が漏れ始めた。5月11日に開かれた教授会では、出席者から公益通報に対する調査結果についての質問が出たが、西川学長は「調査結果に問題がある」とだけ述べ、多くを語ろうとしなかった。それを補足するかたちで、4月1日に旭川医大病院長に復帰した古川博之氏(副学長)が「調査を学内でし直す」と説明したという。
 本誌は旭川医大の事務局を通じて、大学運営会議での西川氏の発言、教授会での古川氏の発言の真意、現状での公益通報への対応などについて取材を書面で申し込んだが、「今回の件につきましては、今後、学内での報告を予定しており、学内での報告の前に内容についてお話すべきではないと考えております」との反応が返ってきた。
 すでに出ている調査結果をなかったことにして、調査をやり直すとすれば、非常に強引なやり方だが、執行部は着々と手続きを進めている模様。本誌には、再度の予備調査委の委員として、古川・松本成史・本間大の各副学長が選ばれたとの情報も寄せられている。彼らは調査委ではなく、その前段階である予備調査委の委員。予備調査委が「シロ」の判断を下せば、正式な調査委は設置されない。問題点を指摘することもなければ、当局への報告、再発防止の必要もない。
 とはいえ、すでに出ている結論をなかったことにして、いまの執行部が満足する形で公益通報への対応に「幕を下ろす」としても、それが大学の内外に対してどれだけ説得力を持つのかは疑問だ。こうしたやり方が通用するのなら、組織内で起きた問題を外部の専門家のを加えた調査委で究明するという手法が無力化してしまう。

総意に沿った行動?
 ある医大の関係者は、大学全体の今後を心配する。「すでに出ている調査委の結論を発表し、学長が必要と考える処分を行えば、たとえ非常に軽いものだとしても区切りをつけることができるのに、なぜそうしないのか。解決を先延ばしているだけではないのか」
 公益通報の対象になったのは、奥村氏、川辺氏の集票行為だった。ただ、2人は独自の判断で〝暴走〟したのではなく、西川学長を支えるグループの総意に沿って行動した可能性が大きい。そしていま、西川執行部の副学長たちが予備調査をやり直そうとしている。
 「ガバナンスの確立」を掲げて就任した西川学長と現在の執行部が、調査委の結論を受け入れず、調査のやり直しを強引に推し進めるなら、彼らの言う「ガバナンス」の意味に疑問を感じるのは記者だけではないはずだ。

表紙2207
この記事は月刊北海道経済2022年07月号に掲載されています。