来春旭川市議選 自民が5人の新人擁立

 来年4月の統一地方選。各種選挙が予定されるが旭川市民とって一番身近なのは市議選。本番までまだ8ヵ月の猶予はあるが、新人候補の顔ぶれがそろってきたこともあり、戦いの構図が見え始めている。特徴的なのは昨年のトリプル選挙の余勢をかってか、自民党が5人もの新人を市議会に送り込もうとしていること。今津寛介市長の安定与党を築こうとする強い意気込みがみられる。さて、次期市議選はどんな展開になるのか。(記事は8月5日現在、文中敬称略)

勇退決めた現職は2人だけ
 この記事の制作にあたって本誌は現職の旭川市議会議員34名の自宅にアンケート調査票を送った。質問は来春の市議選に「立候補する」「立候補しない」「考慮中」の3項目から一つ選んでもらうもので、回答は郵送かファクスでお願いした。
 期限とした日までに34名全員から回答が寄せられた。一部、住所が変変わっていたり、ファクスが不調で届かなかったものもあったが、それらには直接電話で回答をもらった。
 具体的には後述するが、回答の中では「立候補する」が21名、「立候補しない」が2名、「考慮中」が11名だった。
 「考慮中」と答えた人の理由では、公明党議員の室井安雄、中村徳幸、門間節子、高花詠子はそろって「今後、党本部で検討されるため」とし、民主・市民連合の中川明雄は「特に理由はなく決心に時間を要するのみ」、高見一典は「後援会役員の方々と相談して方向を決めたい」、品田登紀恵は「迷っています」としているが、いずれも「出馬の方向で考慮中」ととらえることができる。
 微妙な感じで「考慮中」としてきたのが自民党・市民会議の蝦名信幸と宮本儔。蝦名は「蝦名安信議員(実子)との交代の可能性を考慮しています」と理由を記してきたが、宮本の理由記入欄には何も書かれていなかった。
 これらの回答を整理すると現時点で、現職34人のうち今季限りで勇退を決めているのは2人だけ。本誌の独自取材で得ている情報を加味し、選手交代が考えられる人を足したとしても勇退は1~2人増えるだけ。とすれば、来春の選挙には少なくとも30人ほどの現職が名乗りを上げてくることが予想される。
 前回選挙では26人の現職が立起した。辞めた8人の中には笠木薫や穴田貴洋のように道議選へ鞍がえした人、塩尻伸司や久保厚子、山城えり子のように後継者やパリテ企画の女性候補にバトンタッチしたケースもあるが、それから見れば次回は、自民の蝦名(信幸)、共産の小松を除いて世代交代を理由に自身の立起を取りやめるといった流れにはなっていない。
 もっとも公明と民主・市民連合にはこの先、バトンタッチが起きてくる可能性もありそうな気配だが、具体的には雪が降り始める時期まで待たなければならないだろう。

公明5、共産4の立起は確定的

 34人の現職の中で、本誌に対し「立候補する」と表明しているのは、自民・市民会議の杉山允孝、安田佳正、福居秀雄、上村有史、松田卓也、佐藤貞夫、菅原範明、高橋英俊、蝦名安信の9人。 民主・市民連合では松田宏、高木啓尊、江川彩、塩尻英明、野村パターソン和孝は立候補を表明。中川明雄、高見一典、品田登紀恵、髙橋紀博は考慮中としているが、いずれも立起してくる可能性が高い。公明党は5人いずれも党の道本部が決めることなのでまだ確定はできないが、仮に交代があったとしても総勢5人の出馬は確実。
 共産党はすでに小松の後継として新人の擁立を決めているので能登谷繁、石川厚子、真嶋隆英に加えて出馬は4人。無党派Gは金谷美奈子、上野和幸、日隈利穂の3人。無所属の横山啓一も名乗りを上げてくる。
 横山は本誌アンケートに「立候補する」と回答を寄せているが、「後援会の皆様に対しての意思表明、後援会また支持組織(北教組)との確認を終えていないので、現時点では本人個人の意思とお考え下さい」とのコメントも寄せている。
 これら現職組に対し新人で出馬を表明しているのは自民党の公認、ないしは推薦を見込んでいる5人。立憲民主からは不出馬を決めている白鳥の後継としてウワサされる女性候補を加え、少なくとも2人以上の新人が出てくる見込みだが、まだ具体名はあがってきていない。

意欲見せる新人6人の横顔
 安定した与党体制を目指そうとする自民党から名乗りを上げようとしている新人はいまのところ年齢順に石川正貴(48)、中谷昭典(48)、石川雅之(43)、今野力(45)、阿部奈緒(37)。以下に一人ずつ略歴や出馬への思いを紹介する。
 石川正貴(いしかわ まさき)は永山で東和リサーチを経営する。昨年は今津寛介市長誕生に貢献し、市内の自民党関係者には知られた存在。すでに公約も出来上がっているが、その柱の一つに挙げているのが人口減対策。「人口減少を止めることは難しい。ただ、減少を緩やかにするような様々な施策を提案、実行し、与党議員として貢献したい」と意気込む。旭川JC時代の仲間たちが選挙を支えることになりそうだ。
 中谷昭典(なかや あきのり)は東光で農産物加工品の製造・販売、旭川未来創生社を経営する。札幌出身で北見工大を卒業後、旭川ガス、なかせき商事の仕事に携わったあと独立。「開拓者精神たれ!」をキャッチフレーズに資金団体「新しい旭川を創る会」を立ち上げ、後援会づくりにも取り組む。「新しい農業を研究し、経済の活性化を追求し、住みやすいまちを探求する」と心はすでに選挙戦に入っている。
 石川雅之(いしかわ まさゆき)は神楽生まれの神楽育ち。福祉専門学校を卒業し札幌の中村記念病院で16年間作業療法士として勤務したが、5年前に旭川に戻りデイサービス「結かぐら」を開設。神楽岡小のPTA会長を務めながら神楽まちづくり推進協議会、旭川未来会議2030のメンバーとして地域活動に取り組む。「身内に政治家がいないので勉強したい」と自民党政治塾に通い、共生社会の実現を目指す。
 今野力(こんの つとむ)は高台小、春光台中、旭川実業高と春光台に根を下ろす。建設業アサヒ工営の2代目社長で、身長189㎝の威風堂々たる体格。政治家や経済人がそろう旭川竜馬の会の中心メンバーで、とにかく行動することを信条として「いまは民間に元気がない。文句を言うのはもう飽きた。市民の不満を行政とともに取り上げるため市議を目指す」と勢いがある。周囲からは「市議になれ」と早くから進められていたがやっと決意した。
 阿部奈緒(あべ なお)は埼玉県からの移住で4歳と1歳の女児2人の子育てに奮闘中。「介護サポート プランタングループ」の看護師で施設長を務める。「大好きな旭川には発展のポテンシャルを感じるが人が減ってくるなどマイナス要因が多くみられる。マチづくりには政治力が必要。子育て環境の整備に取り組みたい」と立起への強い思いを語る。自民党政治塾の塾生で、これまでにたびたび保守系の選挙活動に携わってきている。
 このほか確定した新人候補としては共産党公認の中村美楠子(なかむら みなこ)がいる。市議会の論客として知られる小松晃の後継者に抜擢され、30年間の教員生活から離れ、すでに現職の市議、道議とともに街頭での政治活動に力を入れている。生まれも育ちも旭川であることが強みで、自宅は神居だが小松の地盤、西地区を引き継ぎ、共産党が死守してきた4議席確保をうかがう。

予断を許さない選挙になりそう
 自民党から名乗りを上げようとしている5人の新人はいずれも党に対し公認申請を提出する予定だが、審査はもう少し先になりそうだ。自民党会派としては市議会で絶対与党の立場を貫くためにも少なくとも現状より2~3人の増員が必要。5人全員が「公認」を得られることは考えにくいが、党勢拡大を考えれば「推薦」を含め、申請が認められることになりそう。
 また本誌ではアンケートとは別に、動向が気になる組織や個人に電話による意向調査も行った。前回3人の候補者(一人は東川町)を立て全員を当選させた女性の社会・政治参加を標榜するパリテ企画では「今後、メンバーと話し合っていく」とし、新人擁立はまだ具体化していない。
 また、前回次点で涙をのんだ松家哲宏は「いまは札幌で松木謙公(衆議)の秘書をやっているので、旭川に戻って市議選に出ることは全く考えていないし、ありえない」ときっぱり答えている。前回、市議をやめて道議に挑戦した穴田貴洋には市議復帰のウワサもあるが「後援会と相談してからでないと答えられない」とのことだったが、まだ回答は得られていない。
 いずれにしても現在の情勢では、市議会の現有勢力を上回る勢いの新人立起が見込まれる。特に5人の新人を立てることが確定的な自民党を軸とする地域が入り乱れての激しい選挙戦となりそうだ。ここ数回、当落の予想がさほど困難でない選挙が続いていたが、この次は予断を許さない波乱含みの戦いとなりそうな雲行きにある。

表紙2209
この記事は月刊北海道経済2022年09月号に掲載されています。

産業廃棄物処理施設に空白期間

 旭川市江丹別町共和で稼働中の産業廃棄物処理施設が4年後には満杯となることから、次の処分場となる場所を早期に見つけなければならない。重責を担うのは管理・運営する旭川振興公社なのだが、なぜかもたついている。このままでは産廃の廃棄ができない空白期間が生じてしまう。市民の矛先は責任の一端を担う旭川市環境部にも向けられており、市議会でも追及された。

事業活動、市民生活への影響必至
 廃棄物は法律で産業廃棄物と一般廃棄物に分類されている。大まかに言えば、産業廃棄物は事業活動に伴って発生するごみで、一般廃棄物は一般家庭から発生するごみと理解しておいてもよい。両方のごみとも種類が細かく分類され、持ち込み(廃棄)場所も定められている。
 様々な区分がある中で、現在江丹別町共和にある産廃処理施設「旭川廃棄物処理センター」は第三セクターである旭川振興公社が運営する。ここでは埋立、破砕、発酵などの方法で、燃え殻・汚泥・廃油・廃プラスチック類・木屑・繊維屑・金属屑・ガラス屑・陶磁器屑・がれき類、煤塵など、主に建設関連の仕事で生じた廃棄物の処理にあたっている。
 この産廃処理施設は、もとをただせば市に押し付けられたようなもので、昭和の時代には市が江丹別に設置していた一般廃棄物のごみ処分場で産廃ごみも一緒に受け入れていたが、こうした〝あわせ産廃〟をやめることにしたため、2002(平成14)年4月に市が場所を貸与して振興公社に産廃処理の運営を委託したものである。
 以降、振興公社は江丹別町共和で2期工事、3期工事と施設を拡張し現在に至っているが、現在の所在地ではこれ以上の拡張はできず、新たな場所を求めて移転する必要が出てきた。見通しでは2026(令和8)年には受け入れが困難となる状況にあり、その期限が迫ってきている。
 振興公社が予定しているのは、少なくとも27ヘクタール以上の用地を確保できる場所。先に決まった一般廃棄物の処分場は18ヘクタール程度の土地を探していたが、それよりずっと広い場所が必要となる。市街地か
ら遠くなく、交通の利便性も悪くなく、用地買収もしやすいという好条件の場所がどこにあるのか。
 振興公社は昨年来、市と協議しながら場所探しにあたってきたが、いまだ確定に至る兆しは見えない。一日も早くめどをつけなければ、事業活動、市民生活に影響が及ぶことは必至だ。

表紙2209
この続きは月刊北海道経済2022年09月号でお読み下さい。

家庭教育推進団体 役員は統一教会関係者

 安倍晋三元首相が奈良県内で選挙の応援演説を行っている最中、背後から銃撃されて死亡したのは7月8日のこと。以来、マスコミでは「旧統一教会」(現在の世界平和統一家庭連合)に関する情報が飛び交っている。「それは大都会の話。遠く離れた地方都市・旭川には関係ない」とは言い切れない。旧統一教会に関わりのある人物が市民生活に関わる条例の制定を、複数の議員を巻き込んで推進してきたことが明らかになった(本誌の取材後に活動を離脱)。家庭教育そのものは反社会的なものではないが、市民は条例制定の背景にある動きを知っておくべきだろう。

5月に市内で講演会
 本誌7月号でも紹介したが、5月23日に旭川市内のココデで「家庭教育を考える~親の孤立化を防ぐ取り組み~」と題して講演会が開かれた。講師は静岡県議会議員の藤曲敬宏氏。静岡県で8年前に制定された家庭教育支援条例の取り組みや成果、今後の課題などについて語った。
 講演で氏が語ったのは「幼少期からの家庭教育は心の豊かさや思いやり、善意の判断など基本的な倫理観の醸成に重要な時期」「(条例制定は)子育て支援の核が家庭教育支援策になると同時に、縦割り行政から部局横断的に横串を指す効果につながった」といった話。旭川でも家庭教育の欠如を痛感させる事態が相次いでおり、講演会の参加者も家庭教育支援の必要性を感じたはずだ。
 主催者の「旭川家庭教育を支援する会」で事務局次長を務めていたのがA氏(市民団体の情報を集めたサイト「asahikawa.genki365.net」には代表者としてA氏の名が登録されている)。会は2020年8月23日に設立された。ウェブページには「児童虐待、育児放棄などが目立ってきている中で、次代を担う子どもが健やかに育つ環境づくりなど、家庭教育への支援がより必要となってきています。旭川市における家庭教育支援条例の制定と、家庭教育の支援並びに推進を目的として本会を設立いたしました」(抜粋)との説明がある。
 議員、教育関係者などの意見を集めて条例案が今年1月にまとめられた。この条例案はまず、「家庭は教育の原点であり、すべての教育の出発点である。基本的な生活習慣及び豊かな情操、思いやりや善悪の判断などは、愛情による絆で結ばれた家族とのふれあいを通じて、家庭で育まれるものである。家庭教育においては、生涯にわたる人格形成の基礎が培われる幼少期が特に大切な時期であるため、保護者の役割が極めて重要である」などとうたっている。さらに、保護者の責務として「子どもの教育について第一義的責任を有することを自覚しなければならない」、祖父母についても「子育てに関する知恵および経験を活かし、保護者と連携しながら家庭教育の支援を行うよう努めるものとする」などと定めている。子どもの学びのほか、「親としての学びの支援」「親になるための学びの支援」に関する規定もある。

もう一つの肩書き
 おそらく、家庭教育の重要性を全面的に否定する人はいないだろう。家庭の状況は千差万別であり、教育に時間やお金を投じることができない家庭をどう支援していくのか、条例が家庭という「私」の領域に踏み込むことがどこまで許されるのかについての論争はあるが、この旭川でも教育や子育てをめぐりさまざまな事件や事例が発生しており、家庭教育の機能不全が数々の問題の一因となっていることは否定できない。「家庭教育を支援する」と聞けばほとんどの市民は「良い政策」と評価するのではないか。
 しかし同時に、これらの動きの背景にある動きに目を移せば、不安を感じずにはいられない。
 会の中心的な人物で、活動の出発点ともなったA氏にはもう一つの肩書きがある。同性婚に反対する団体「同性婚問題を考える旭川の会」の事務局だ。同性婚を法的に認めるべきかどうかについては賛否両論があり、反対の声を上げる集会を開いたとしても、それは憲法が保障する言論の自由の範囲内の行為。同性婚推進派の集会と同様、反対派の集会の自由も守られなければならない。
 興味深いのは同性婚問題を考える旭川の会がこれまでに開いた行事のゲストの顔ぶれだ。ネットに残る情報によれば、2019年12月7日には平和大使協議会の事務次長が来旭して何らかの行事を開いた模様(同日に撮影されたと思しき画像には世界日報の編集委員の姿もある)。平和大使協議会とは旧統一教会系の組織であり、その本部は東京新宿のビルの5階にあり、同じビルには1階から8階まで旧統一教会系列の組織がずらりと入居している。
 2020年8月23日には同性愛問題を考える旭川の会主催で「同性愛先進国 アメリカの悲劇と混乱」と題して世界日報の記者が講演している。世界日報も旧統一教会とのつながりが深い。
 話を家庭教育支援をめぐる動きに戻そう。家庭教育支援は、旧統一教会系のメディアが推進している活動でもある。来年4月1日に発足する子ども関連行政を担当する省庁の名称が「こども庁」から「こども家庭庁」に変更された背景にも、旧統一教会に近い自民党議員の働きかけがあったとの見方がある(旧統一教会系の団体は、名称変更を評価しているものの、それが旧統一教会からの働きかけによるものかは明らかにしていない)。
 旭川でも条例制定を「旭川家庭教育を支援する会」が推進しているわけだが、すでに教育の専門家も関わった具体的な条例案を旭川市に提出している。また、活動には現役の国会議員、旭川市議も参加している。自民党系の市議の一人に話を聞いた。
 「何度か行ったが、しくみづくりには一生懸命だが、肝心の具体的な家庭への支援の活動は薄いような気がしたので参加しなくなった。会と旧統一教会の関係についてはまったく知らなかった」
 別の市議の話。「教育について学校や社会、地域、家族それぞれの連携が必要だという主旨であったため、私も昨年から参加しており、議論されることの重要性を認識している。市内外から様々な有識者がオープンな場で講演されており、宗教的な意味合いがある会ではないと認識している。なお、宗教を信じる方々は尊重しているが、公共の福祉に反し、社会に不安を与えることはあってはならないことだと思う」
 本誌はA氏本人にも書面で取材。A氏は7月27日に回答を寄せた。
Q 現在の「旭川家庭教育を支援する会」における立場は?
A 事務局次長を務めている。
Q 現在の条例案の状態は?
A 1月15日に「教育関係者による意見交換会」を行い、そこに参加して頂いた、旭川市総合政策部、子育て支援部、旭川市教育委員会社会教育部の各部長に条例案を渡した。現在も、より良い内容にしていくために、中身を継続して検討している。更により多くの有識者に紹介して、検討して頂く。
Q 同性婚問題を考える旭川の会と世界平和統一家庭連合の関係は?
A 特に関係はない。それぞれ個別の目的と活動をしている別団体だ。
Q 家庭教育を支援する会と世界平和統一家庭連合の関係は?
A 前の質問と同じく、特に関係はない。それぞれが個別の目的と活動をしている別団体だ。
Q あなたは世界平和統一家庭連合の信徒なのか。
A 私個人の内面の信仰については、返答を差し控えさせていただく。
 なお、後日、A氏に対面で取材したところ、A氏は旧統一教会と「一部関係している団体に職員として勤務している」と明らかにした。同時に「旭川家庭教育を支援する会の活動は個人として関わっており、仕事とは何ら関係のない話だ」と強調した。

判決書に記された生々しい実態
 信教の自由は、憲法で保障されている。他にも宗教組織から手厚い支援を受けていて、政権与党の一角として政策の立案や推進に深く関わっている政党がある。旧統一教会の活動や政界との関連がことさらに問題視されるのは、その活動の反社会性が突出しているためだ。
 生々しい実態を、誰でも読むことができる。「裁判所」のホームページにある判例集を「統一教会」や「世界平和統一家庭連合」などのキーワードで検索すると、平成13年11月30日に大阪地方裁判所で下された損害賠償請求事件の判決文に行きつく。元信者10人が起こした裁判の判決で、裁判長は被告の統一教会(訴訟の途中で世界平和統一家庭連合に改称)に対して、1億5833万円の支払いを命じた。判決書に記載されていた手口の一例を紹介しよう。
 原告Aさんは重い病気にかかり夫に先立たれ消沈していた。信者がAさんに対して家系図を示しながら、「御主人が死んだのは先祖の因縁のせい。あなたの子どもも20歳まで生きられるかどうか分からない。父親も御主人も成仏ができなくて地獄で苦しんでいる」と語りAさんを不安に陥れ、500万円の「本翡翠念珠」と540万円の「多宝塔」を購入させた。夫の生命保険金が下りたあとは2100万円分の物品を購入させた。─判決書にはこうした手口が原告10人分、詳細に記載されている。

「今後も会長として活動続ける」(東代議士)

 旭川市内にも、世界平和統一家庭連合の施設がある。信仰を続けながら幸せに暮らしている信者の家庭もあるのだろう。が、安倍元首相襲撃をきっかけに、この宗教団体の実態に改めて注目が集まっている。逮捕された男の母親が数千万円を教団に寄付して自己破産、家庭が崩壊したことを男が恨んでいたとの報道があるが、それほどの寄付を受け入れる教団は果たして「普通の宗教」なのか。ちなみに、一時日本からの芸能人の参加などで話題を集めた合同結婚式は、コロナのために規模を縮小したとはいえ、今年も4月に韓国で開催された。
 家庭教育の推進そのものは、単親家庭の子や経済的な事情や親の健康状態の十分な家庭教育を受けられない子もサポートするのであれば、多くの子どもたちの幸せに合致する。ただし、一般市民とも関わりの深い条例が旭川市でも制定されるのであれば、誰がどのようなプロセスで条例案に関わったのか、市民に広く公開する必要がある。
 現在、旭川家庭教育を支援する会の会長は、東国幹衆議院議員が務めている。本誌が東事務所に書面で送った質問と、即日返送されてきた回答は以下の通り。
Q 会長就任の経緯は?
A 複数の世話人からの賛同のもと打診があったのでお引き受けした。
Q 支援する会と世界平和統一家庭連合の関係について何か知っているか。
A 何も知らない。
Q 今後も旭川家庭教育を支援する会の会長として活動するか。
A 活動する。
 東氏は危機感を感じていないようだが、それには歴史的、かつ全国的な事情もある。
 政界関係者にとり、「統一教会」よりもなじみ深いのはむしろ「国際勝共連合」。教祖である文鮮明氏が1968年に韓国で設立、同年には日本での活動を開始している。いまでこそ右派は韓国に批判的だが、当時はソ連・中共・北朝鮮からの共産主義勢力を跳ね返すためのパートナーだった。自民党と勝共連合の密接な関係は、「霊感商法」が明らかになったあとも変わらなかった。自民党には、統一教会から寄付を受けたり、会合に参加したり、イベントでビデオで祝賀メッセージを寄せる国会議員がゴロゴロいる。その代表格が銃撃されて死亡した安倍元首相。にもかかわらず、自民党内から統一教会との関係を見直すべきだといった声は聞こえてこない。
 本誌は、旭川家庭教育を支援する会の落合博志副会長にも取材した。
 「家庭活動支援を通じて地域を良くしたいという純粋な思いで活動してきた。A氏が旧統一教会に関与しているのなら、関係を解消した上で、これからも会の活動を続けていく」(落合氏)。A氏からは8月4日付けで「一身上の都合で事務局次長を辞任する」との辞任届が提出された。

累計の全国被害額 1237億円
 自民党の一部の国会議員たちは旧統一教会と関連のある団体だと知った上で知ってイベントに参加しているが、旧統一教会については、正体を隠した活動で仲間を増やして信徒集めにつなげているとの指摘がある。たとえば「CARP〇〇」といった団体は社会問題や環境問題、SDGsに関心のある若者を集めてセミナーなどを開催し、札幌でも活動の実績があるが、実質的には旧統一教会の別動隊だとみられている。
 旭川家庭教育を支援する会の参加者も(すべてではないが)A氏の背景を知らなかったと強調する。会を取材した本誌記者も、「同性婚問題を考える旭川の会」や旧統一教会との関わりについては知らなかった。A氏は「それぞれが個別の目的と活動をしている別団体」と強調するが、関係を隠していることこそが旧統一教会の問題点だ。
 霊感商法の被害者やその家族を支援している「全国霊感商法対策弁護士連絡会」のウェブページによれば、相談のあった被害額は2018年だけで21億9100万円あまり。1987年からの累計では1237億円と、自然災害に匹敵する規模になる。行政や政治が利用され、お墨付きを与えるようなことがあってはならない。

表紙2209
この記事は月刊北海道経済2022年09月号に掲載されています。