売上高ランキングで見る道北経済30年の盛衰

 高速道路(道央道)が北へ延伸され旭川鷹栖までつながって30年余り。期待された経済効果は小さく、逆に高速道路の負の作用「ストロー効果」で道北経済ははかり知れないダメージを受けた。30年前の本誌に掲載された「1991年道北企業売上高ランキング」の上位20社は次ページのとおりだが、流通激変で統合・合併、経営破綻が続き、この30年の間に実に20社中11社が経済界から退場した。いま直面する問題は人口減と少子高齢化。今後10年、20年を生き残るには企業の変革が必要だ。

卸し業退場
 91年の道北地区企業売上高トップは医薬品卸しのモロオだった。この年、初めてキョクイチ(当時の社名は旭一旭川地方卸売市場)を抜き1位となった。計上売上高は725億円。医療業界全般の伸びに伴い前年売上高を大幅に増額させた。
 その後もしばらくの間キョクイチとのトップ争いが続くが、86年に札幌中央店、88年に大谷地物流センターを開設し営業エリアを道央圏中心にシフト。2000年代に入ると札幌に本社機能を移し、創業の地旭川のオフィスは営業所となった。
 売上高3位、食品卸しの杉野商事もモロオと同様、88年にドライ物流の拠点を江別に開設した後、最大の仕入れ先であった雪印乳業の合併提案を受け入れ杉野雪印アクセスとなり、その後社名を日本アクセス北海道に変更した。
 20位までのランキングには入っていないが、旭川本社の眞鍋薬品もまた、道内医薬品卸し5社合併で誕生したパレオに参画した。
 個人営業からスタートし、道北・道東をカバーする社歴の長い優良な卸し業者は旭川に数多くあったが、90年代から2000年代にかけて本社機能移転、あるいは吸収・合併で次々に道北経済界から退場していったのだった。
 卸業退場の一番の要因は高速道路の延伸だ。

ストロー効果
 90年10月、高速道路が2車線で旭川鷹栖までつながった。その後4車線化工事が行われ2003年に全線4車線となった。
 経済界や市民からは「物の流れが一層、盛んになる。旭川は名実ともに道北の物流基地となる」「農業と観光を結びつけた街づくりを」と経済振興への期待を込めた意見が多数出た。一方で、「大手の進出、競争激化、顧客流出によって小売業を主に競争激化時代が始まる」との厳しい見方をする経済人もいた。
 結果は、「高速道路のストロー効果」により流通が激変し、卸売り業は再編の嵐、小売は大競争時代を迎えることとなった。
 ストロー効果とは高速道路の負の要素。開通によって、大都市圏(札幌圏)に直結する便利なアクセス手段を持つことで農産物などをすばやく輸送できるようになり、また企業誘致もしやすくなる反面、高速道路がストローのような役割を果たし、旭川の消費を札幌圏が吸い上げるというものだ。
 道央道整備が進んだ80年代後半(昭和時代末)から流通激変は始まっていたが、旭川鷹栖延伸以降、ストロー効果が働き、戦後培ってきた旭川の問屋機能─旭川にストックを確保し地方に商品を卸すシステム─そのものが必要でなくなった。
 薬品、食品を襲った荒波は繊維卸しにも波及し、16位、売上高150億円の東栄は2003年に民事再生法を申請。その2年後には松岡繊維が経営破たんし繊維卸しの凋落を印象付けた。

勝ち組合併
 小売業界でも淘汰・再編の嵐が吹き荒れる。業界激変を象徴するのが、ランキング8位の食品スーパー三島の破綻。士別、名寄地区で地盤を固め、旭川と北見に進出し業績を伸ばしたが、スーパーふじとの激しい商戦に破れ転落。店舗拡大を急ぎすぎたことが破綻の主因だが、90年代に入って大きく変貌した小売業の環境に三島が対応できなったことも業績を急速に悪化させた。
 旭川永山パワーズが代表するように、90年代以降、小売業が複合的にショッピングゾーンを形成するようになっていった。三島の地元である士別にはマックスバリュー、ツルハ、ホーマックの強力なゾーンが誕生した。
 三島が旭川で展開していた店舗は、スーパーラルズが引き継ぎ、そのラルズはアークスに商号変更し道内各地のスーパーを次々と傘下に収め、2004年にはスーパーふじも子会社となった。その後、ふじを存続会社として道北アークスが誕生。
 近年、キョクイチと売上高ランキングでしのぎを削り昨年も2位につけている道北アークスは勝ち組合併企業だ。ここ数年、売上高トップの日専連旭川も、大が小を飲み込む吸収合併の荒波を乗り越えた信販会社。


 30年でランキング上位の顔ぶれはガラリと変わった。流通変革で始まり、近年は人口減と少子高齢化が企業経営の壁となっている。
 30年前のトップ企業の売上高は725億円、20位で135億円。対して昨年トップは482億円、20位73億円。3割以上減額している。旭川を中心とする道北経済圏はそれだけ縮小したともいえる。
 アフターコロナを見据えて2022年以降の経済予測は楽観的なものも多いが、人口減から市場は縮小しており、道北企業の試練は続きそうだ。

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この記事は月刊北海道経済2022年02月号に掲載されています。

旭川市廃棄物処分場 応募ゼロの背景

 2030年3月までに閉鎖されるごみ最終処分場(江丹別芳野)の移転・新設計画を進めている旭川市は、昨年10月11日から次期候補地の公募を行っていたが、締め切りの12月29日までに応募はなく、改めて市が独自に選定する作業に入っている。応募に意欲的だった西神楽地区も「もうしばらく様子を見る」との判断で応募を取りやめたが、その背景にはさらに壮大な地元の構想もあるようだ。

なぜ応募が一件もなかったのか?
 市が当初建設を予定していたコンパクトな覆蓋型(屋根付き)の埋め立て施設は、可燃ごみ焼却施設「近文清掃工場」の建て直しを断念して延命化策に切り替えたことから、焼却量の増加に伴う埋め立て量の減少が見込めなくなったため、より多くの容量を処理できるオープン型に変更せざるを得なくなった。

美瑛町にある「しらかば清掃センター」
 このため、候補地には予定の4倍の広さが必要となり、市は改めて建設予定地の選定をしなければならなくなった。そのために全国的にも例が少ない公募という形をとることになったのだが、結果は応募ゼロ。市にとって想定内だったのか想定外だったのかはなんとも言えないが、年明けから、2月上旬の候補地絞り込みを目標に粛々と選定作業に入っている。
 昨年、市が「一般廃棄物最終処分場建設候補地を募集しています」として市民に呼び掛けたチラシによると、応募できるのは①応募地の土地所有者②応募地の位置する市民委員会または町内会の長のどちらかに該当する人。
 そして応募の際には①旭川市内の土地②10万平方㍍(10㌶)から20万平方㍍(20㌶)③市街化区域以外に位置する土地④各種規制を受けていない土地⑤新処分場として土地利用及び売却することについて、土地所有者の同意またはその見込みがあること⑥応募の意向について、応募地の位置する市民委員会及び町内会に伝えていること─などの要件を満たしていることとしていた。
 この公募に踏み切る前、市内では西神楽地区のまちづくりに取り組むNPO法人が「ぜひ西神楽を最終処分場の候補地に」と市に要望書を提出する動きがあった。正式に公募することが決まった段階でも当然、名乗りを上げるものとみられていたが、なぜか応募には至らなかった。
 詳しい経緯はわからないが、市民委員会などから「もう少し様子を見よう」という声が上がり、とりあえず今回の公募には応じないことにしたようだ。同じく、隣接する神居地区でも応募の動きはあったが、こちらも今回は見合わせたようだ。

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この続きは月刊北海道経済2022年02月号でお読み下さい。

旭川赤十字病院医療過誤裁判で和解

 いまから5年近く前に行われた副腎摘出手術が適切だったかどうかをめぐり旭川地裁で開かれていた裁判で、原告(患者の女性およびその母親)と、被告(旭川赤十字病院を経営する日本赤十字社と担当した医師)の間で12月24日に和解が成立した。被告が「遺憾の意」を示し、「解決金」として原告に合計4000万円を払うなどの内容。被告は医療ミスがあったと明確に認めたわけではないが、判決を待たずに多額の解決金を支払ったということは、事実上、医療行為に問題があったと認めたことになる。再発防止が重要なのはもちろんだが、注目すべきは、被告がこれまで他の患者にも不適切な診断を行い、健康上の被害が発生している可能性だ。

摘出手術の前提条件
 旭川赤十字病院で、問題の副腎摘出手術が行われたのは2017年3月のこと。当時22歳の女性は、原発性アルドステロン症と診断されていた。副腎に良性腫瘍ができてホルモンの一種、アルドステロンの分泌量が過剰になり、高血圧になってしまう病気だ。なお、副腎とは左右の腎臓の上にある三角形の小さな臓器。腎臓が尿の濾過を担っているのに対して、副腎は複数のホルモンを作っている。このうち人体に不可欠なナトリウムを蓄える働きがあるのがアルドステロン。このホルモンが分泌過剰になると塩分が大量に蓄えられるため高血圧になる。高血圧症の人の約5~10%は、原発性アルドステロン症だと言われている。
 治療のためには腹腔鏡を用いた副腎摘出手術が行われる。ただし、副腎は人体に欠かせない臓器であることから、手術ができるのは左右どちらかの副腎に異常があり、もう片方が正常な場合(片側性)に限られる。当然、摘出されるのは異常がある方の副腎だ。両方の副腎に異常がある場合(両側性)や、何らかの理由で手術ができない場合には摘出という選択肢は最初からなく、薬物投与など他の治療方法を探ることになる。
 原発性アルドステロン症の診断、そして左右の副腎のうちどちらに異常があるのかを調べるために行われるのが「副腎静脈サンプリング」。太ももの付け根から細長いカテーテルを差し込んで、副腎からの血液の出口となる副腎静脈までカテーテルの先端を送り込み、採血して検査する。患者の身体に一定の負担があり、気軽に何度も行えるものではないが、異常のある副腎を特定するためにはこの検査が不可欠だ。例えば腕の血管から採取した血液を調べれば、血中のアルドステロン濃度が正常なのか異常なのかはわかるが、左右どちらが異常なのかはわからない。
 原告の患者は旭川赤十字でこの検査を受け、担当医に説明を受けた。「おそらく左側の副腎に異常がある」。右側については数値が異常に低いレベルだった。「血液サンプルをうまく採取できなかった可能性があるが、おそらく採取できているでしょう」と医師。患者は医師を信頼して手術を受けることを決意して、左側の副腎が摘出された。
 なお、原告の母親は手術を受けることを決断した当時の経緯について、「医師から『手術をしなければ一生薬を服用しなければならず、妊娠もあきらめなければならない』と言われ、娘は怖かったが手術を受ける決心をした。医師に勧められたからこそ、健康になると信じて手術を受けた。決して『一か八か』で手術を受けたわけではない」と語っている。

表紙2202
この続きは月刊北海道経済2022年02月号でお読み下さい。