旭川トヨタ封印不正に国交相カンカン

 本誌だけが伝えてきた旭川トヨタをめぐるさまざまな問題。今度は国土交通大臣が「断じて許されない」と怒る不正をしでかしたことから、新聞も取り上げないわけにはいかなくなった。明らかな法令違反の事態に、改めて同社のコンプライアンス体制に疑問符が付いた。過去の事例への対応から見て自浄能力があるとは考えにくく、西川弘二社長ら経営陣交代を含む抜本的な改革が必要なのではないか。このままでは「TOYOTA」の看板にさらに大きなキズが付くかもしれない。

「断じて許されない行為」(国交相)
 旭川ナンバーならどの自動車にも(軽を除く)、後ろのナンバープレートに「旭」のマークが付いている。いわば車両の「身分証」であるナンバープレートが不正に外されたり、取り換えられたりするのを防ぐための封印だ。物理的に封印を外すのは工具があれば簡単だが、外せば「封印冠」が壊れてしまうので、新たな封印冠を手に入れなければならない。
 ナンバープレートを取り付けるのは、新車の登録時。中古車の再登録時や、修理の際にも取り付けることがある。そのたびに、ナンバープレートの封印作業が行われている。
 しかしこの作業は、誰もが行えるわけではない。本来ならお役所で担当すべき仕事だが、自動車業者と役所の間を何度も往復するのは煩雑で、双方の負担が重いため、民間業者への委託が行われるようになった。長年、一定の条件を満たし、登録された業者で、封印作業が行われている。自動車ディーラーでは日常的な作業の一つだ。
 ところが、この作業にからんで旭川トヨタ自動車で不正が行われていたことが明るみに出た。封印冠は、外すと壊れる構造になっているのだが、同社では作業に「工夫」を加えることで、使用済みの冠を再利用して再度封印を行っていた。ある業界関係者によれば、封印はナンバープレートについて不正がないことを証明する印鑑のようなもの。冠を再利用するのは、真正な印鑑をコピーして他の書類に押すような大胆かつ悪質な行為だ。
 3月22日朝、国土交通省の会見室で行われた会見で、斉藤哲夫大臣が記者からの質問に答えるかたちで以下のように述べた。
 「本年2月、国から自動車のナンバープレートの封印の取付けを委託されている旭川トヨタ自動車株式会社から国土交通省に対し、『社内における封印業務に不適切な取扱いがあった』との報告がありました。その後、同社においては、本件事案を踏まえ、自主的に封印業務を停止しています。不正行為が事実であれば、自動車登録制度の根幹を揺るがす、断じて許されない行為です。国土交通省においては、現在、不正の行為の詳細について、事実関係の確認を行っているところであり、その結果を踏まえて厳正に対処してまいりたいと考えています。その上で、業界団体を通じ関係事業者には、二度とこのようなことが起きないよう周知徹底を図っていきたいと思っています」
 運輸行政のトップである国交大臣をして「断じて許されない行為」と言わしめる不正行為を地方の企業がやらかした。滅多にあることではない。
 大臣会見の翌日、旭川トヨタのWebページに「封印受託業務に対する弊社の不適切な対応に関するお詫び」と題する文書が掲げられた。不正を認め、封印作業の受託を3月1日付で自主返納したと明らかにした上で、「弊社をご利用いただいておりますお客様、並びに、取引先様、関係官公庁様の皆様の信頼を損なう事態になり、また、多大なるご心配とご迷惑をお掛けすることになりましたことを深くお詫び申し上げます」と陳謝する内容だ。文書は以下のように続く。
 「現在、社内全拠点に対する調査を行い、全体像の実態と共に原因究明に取り組んでおります。先行調査で不適切な封印業務が判明した対象のお客様へは、弊社担当スタッフよりご連絡をさせていただき、改めて、旭川運輸支局様の指示に従い、正しい封印業務への対応をさせていただきます。また、このたびの封印業務の返納に伴う封印取扱い停止の期間中は、最寄りの自家用自動車協会の封印取付所および、旭川運輸支局様指定の封印取付所分室に車両を搬送し、封印を行った上で、お客様への新車納車や分解整備等のサービスメンテナンス業務に対応致します。お客様にはご不便やご迷惑をおかけすることとなり大変申し訳ございません」

「原因調査には時間必要」(旭川トヨタ)
 本誌は、この文書に名前が記されている寺沢和久常務に取材を申し込んだ。いったんは取材の日程が決まったが、翌日に電話が入り、「現在、調査している途中なので」とキャンセルされた。記者は文書で質問を送り、4月5日に宮澤義行専務、寺沢常務らへの取材が実現した。
 冒頭で宮澤専務から「このたび弊社の封印取扱業務について、重大な法令違反をしてしまい、多くの皆様に不安を与え、ご心配・ご迷惑をおかけしたことを深くお詫びしたい」との発言があった。それに続く説明の概要は以下の通り。

この続きは月刊北海道経済2024年05月号でお読みください。
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