道内初! 当麻町に小水力発電

 太陽光や風力、地熱など自然の力を利用した再生可能エネルギー政策の一環として注目を集める「小水力発電」。今年6月、道内で初めてとなる小水力発電所が当麻町(最大出力139㌔㍗)で発電を開始する。これにより、当麻町と旭川市永山地区にまたがる約600戸の農家がその恩恵を受ける。老朽化した農業用水路を整備するだけでなく、小水力発電に適した条件がそろえば今後、道内の他の地域にも小水力発電が広がる可能性もある。なお、来年度には南富良野町でも同様の施設(同166㌔㍗)が発電を開始する予定だ。

水路が老朽化 改修が必要に
 国土交通省が進める小水力発電は、農村地帯に張り巡らされている農業用水路を利用する。農業用水路は、農産物を生産する基盤としてだけでなく、洪水を防ぐための貯水や地域の排水、地下水涵養に寄与している。
 ただ、水門の開閉などに必要な電力の値上がりや、施設の老朽化などで維持管理費が増加しているため、施設の適正な管理が年々、難しくなっている。用水路の管理運営費は農家から徴収する賦課金で賄なっているが、農家の数が年々減少していることから、農家1戸当りの負担が重くなっているという事情もある。
 小水力発電が供用される当麻・永山地区における農業用水は、以下のような現状になっている。同地区は、国営当麻永山土地改良事業として1968年から79年にかけて整備されたが、それから約30年が経過して施設の老朽化と凍害によるコンクリートのひび割れ、水路側壁の傾きなどが発生し、農業用水の安定供給に支障をきたしていた。また、野菜類の栽培の増加や良質の米を生産するための水管理の必要性から、新たな水需要が生じ取水量を見直す時期に来ていた。
 ところが、全国的には農業用水路の持つ新たな可能性が大きな注目を集めている。北海道と本州の大都市圏を除いて、小水力発電の設置が進んでいるためだ。

全国で注目集める
 小水力発電とは、巨大なダムや発電所を必要とする一般的な水力発電のミニチュア版。その「舞台」として利用されるのが農業用水路だ。農業用水は地形の傾斜を利用して、高いところから低いところに向かって水を流している。ほとんどの場所で水はゆっくりと流れているが、崖や河岸段丘などに差し掛かり、水が急速に流れ落ちる場所がある。水が持っていた「位置エネルギー」が「運動エネルギー」に変わるわけだが、従来はほとんど利用されることのないままエネルギーが無駄になっていた。
 従来の水力発電よりもかなり小さく、効率の高い機器を利用して水の運動エネルギーを電力に変えるのが「小水力発電」だ。
 小水力発電の魅力は「エネルギーの地産地消」を実現できるということ。一般的に電力は発電する場所と需要地が離れているため、その間を結ぶ送電線や鉄塔が大量に必要となり、災害で送電設備が被害を受ければ、発電所が無傷でも電力が止まってしまう。送電途中のロスも無視できない。小水力発電は規模が小さいため、大都会の電力需要を賄うことはできないが、小規模な農村にとっては有力な選択肢となる。もちろん、いったん設備が出来てしまえば二酸化炭素を排出しないという長所もある。
 国交省では、2016年までに全国の約1000の地域で小水力発電の導入を進めてきた。ところが、道内では冬場の低温と降雪量の多さに加え、雪解けの5月上旬から農作物の収穫が始まり水を流す必要がなくなる8月下旬までしか用水路を利用することがないため、費用対効果の面で、小水力発電の効果が得にくいと考えられていた。
 しかし、取水期間を4月から11月まで延長すれば発電設備設置の効果が得られる。技術面では、施設を委託運営する土地改良区の技術向上も設置を後押しした。

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この続きは月刊北海道経済2017年6月号でお読みください。