住民基本台帳ベースでも34万人割った旭川市の人口

 人口減少が止まらない。2月1日時点の旭川市の人口は33万9858人と、前月比で353人、前年同月比で2775人減少した。長年守り続けた「北海道・東北で札幌、仙台に続く第3の都市」の座も譲り渡した。人口、とくに若年人口が減り続ける将来への対応策が求められている。

多死時代が到来
 33万9858人。今年2月1日時点での旭川市の人口だ。「36万人都市」だったはずの旭川市だが、いつの間にか34万人の大台さえ割り込んでしまった。33万9858人は、住民基本台帳をもとにした数字。人口統計としては他に直近では2015年10月1日を基準日として実行された国勢調査がある。このときの旭川市の人口は33万9605人。同じ日の住民基本台帳ベースの人口は34万5566人だったから、5000人以上のズレがあった。冒頭で挙げた数字は、どの基準を使うにせよ旭川の人口が34万人を下回ったことを意味している。
 人口の増減は、出生数と死亡数の差である自然増(減)と、転入と転出の差である社会増(減)に大別できる。このうち顕著なのは自然減の拡大だ。2007年の自然減は554人だったが、昨年は1987人へと拡大した。07年には2649人が生まれて3203人が死んだのに対して、17年は2203人が生まれて4190人が死んだ。生まれる人が16%減る一方で、死ぬ人は3割増えた計算だ。もうすぐ、死ぬ人の数が生まれる人の2倍に達しようとしているのは、「多死時代」を象徴する現象と言えるだろう。社会増(減)は年ごとのばらつきが大きいものの、減少傾向が続いている。

増加地域は永山だけ
 同じ旭川市内でも人口増減は一律ではない。地区別ごとに傾向には大きなばらつきがある。違いをわかりやすくするために今年1月1日現在の人口と、約20年前の1998年3月末の人口を比較してみると、市全体の人口が6%減ったのに対して、農村部の江丹別・西神楽ではそれぞれ45%、29%減ったのが目立つ。一方で、市の中心部に近い中央地区で15%減、西地区で9%と落ち込みが激しい。一昔前には若い世帯が多かった豊岡および東光の1~4丁目を抱える東地区でも6%減、春光地区と神居地区は10%減少となっている。地区別でこの20年間で人口が増えたのは永山(1・64%)だけだ。
 市内で総人口が減り、生まれてくる子どもが減る中、増加しているグループがある。それは、東南アジア、南アジアの外国人。国勢調査ベースで2000年10月には447人の外国人が居住していた。うち長年日本社会で暮らしている人が多いと見られる韓国・朝鮮人、中国人は288人。ベースは異なるが、住民基本台帳をもとに昨年1月1日時点の外国人数に注目すれば、その総数は812人。韓国・朝鮮人、中国人は374人で、フィリピン82人、ネパール62人、ベトナム142人など東南アジア、南アジア勢の顕著な増加が目立つ。その大半は技能実習生として定住しているとみられ、この旭川でも外国人労働力への依存度はじわりじわりと深まっている。

原発事故の影響
 人口では遠く札幌に及ばない。北海道・東北全体を見回せば、仙台という大都市がある。旭川市民にとってのささやかな自慢は、「北海道と東北で第3の都市」ということだったが、この強みも失われた。
 現在、旭川に代わって「北海道と東北で第3の都市」となっているのは福島県いわき市だ。福島県では県庁所在地の福島市や、歴史の舞台となった会津若松市の方が知名度が高いが、県内で最も人口と工業生産額が多いのはいわき市。福島県は山地で山通り、中通り、浜通りに三分されているが、このうちいわき市は太平洋岸の浜通りの中心都市であり、福島市などが位置する中通りよりも、むしろ南側に広がる茨城県とのつながりが密接だった。新幹線は走っていないが、在来線の特急列車を利用すれば東京から2時間強の距離だ。
 いわき市の人口のピークは1998年に記録した36万661人。その後は旭川市を上回るペースで減少が続いていたが、2015年9月から10月にかけて約2万5000人、率にして約7%も増加して34万9344人に達し、旭川を抜いて「北海道と東北で第3の都市」となった。ちなみに同じ月の旭川市の人口は34万5566人だった。
 この突然の人口の急増には、統計上の要因が作用している。北海道を除く多くの都府県では、「現住人口」をベースに人口統計を発表している。5年おきに実施される国勢調査ではじき出された数字をベースに、その後の自然増減・社会増減を加算して最新の人口を算出する方式だ。ところが、道内の自治体ではこの方式が採用されておらず、国勢調査の結果は発表されるものの、人口統計のベースは住民基本台帳となっている。一般的には現住人口をベースにしたほうが実勢を正確に反映できると言われているが、最新の国勢調査の結果が反映されるたびに大きな数字の変化が生じる傾向がある。いわき市の人口が見かけ上急増した15年10月1日は、前回の国勢調査の基準日だ。
 実際にいわき市の人口が旭川市を上回っているのは確実。2011年3月に事故が発生した東京電力福島第1原発は直線で約40㌔。原発で居住が困難になった自治体から多くの人がいわき市に移り住んだ。原発に近い自治体への帰還は進んでおらず、住民はこのままいわき市に定着する可能性が高い。

9年後には31万
 順位はともかく、長期的な人口減少傾向は避けられない。旭川市は第8次総合計画の中で、2027年度の人口が31万2000人に、高齢化率が36・5%に達すると予測している。110ページの同計画に「人口」という言葉が登場するのは80回。人口減が行政、経済、社会など広い分野に影響し、その対策が必要になっているためだ。
 人口減への対応を迫られているのは行政だけではない。個々の企業も人口のカウントダウンを直視し、生き残りの方法を探ることを求められている。

表紙1803
この記事は月刊北海道経済2018年3月号に掲載されています。
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