人手不足に拍車かける 「介護離職」

 家族の介護や看護を理由に仕事を辞める「介護離職」が社会問題となっているが、旭川でも介護離職者は増加の一途をたどり、この5年間で倍増という勢い。管理職や経験豊かなベテランなど企業の中核を担う人材の離職も多く、ただでさえ慢性的な人手不足にあえぐ市内の企業にとって大きな打撃となっている。

全国で9万9千人
 家族の介護や看護を理由に仕事を辞める「介護離職」が社会問題となって久しい。総務省が昨年8月に公表した「平成29年(2018年)就業構造基本調査」によると、2017年に介護や看護を理由に離職した人は、全国で年間9万9千人。そのうち、ほぼ8割を占めたのが女性で7万5000人、男性は2万4000人となった。年齢別では、50歳代が最も多く37%。これに60歳代(30%)、40歳代(18%)が続いた。安倍政権では2020年代の初めまでに介護離職者ゼロを目指しているが、実現にはほど遠い状況だ。
 介護離職が一向に減らない背景には少子高齢化が挙げられる。
 高齢化は急速に進み、総人口に占める70歳以上の割合は18年9月の時点で前年の0・8ポイント増の20・7%。少子化にも拍車がかかり、17年の出生数は、統計を開始した1899年以降最少の94万6060人となった。
 加えて、晩婚化によって育児と親の介護が重なる「ダブルケア」が増えたことや、少子化や非婚化によって、家族の中で介護を分担できる人が減っていることも影響している。
 旭川でも介護離職の解消は喫緊(きっきん)の課題だ。
 先の平成29年就業構造基本調査では、人口30万人以上の都市については個別にデータが示されているが、旭川の介護離職者の数は1200人。これは2012年10月から17年9月までの5年間の介護離職者総数となっている。ちなみに、前回の平成24年のこの調査では、総数は600人となっており、実に倍増した計算となる。
 全国の傾向と同様に、離職は男性よりも女性が圧倒的に多く、1200人の離職者のうち、女性が8割以上を占めて1000人となり、男性は200人となった。

高齢の両親を介護
 厚労省が発表している「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によると、介護離職の理由として最も多いのが、職場での仕事と介護の両立の難しさで、男女ともに6割以上が回答。続いて多いのが、介護する本人の心身の健康状態が悪化したこと。これに、本人が介護を専念することを望んだことが続く。
 中には、親が介護サービスの利用を拒んだために自宅で介護をしていたが、仕事との両立に限界を感じて離職するケースもある。高齢の両親を長年にわたって介護してきた旭川在住のAさん(60代女性)もそんな一人だ。
 独身のAさんは三人姉弟の長女で、弟と妹が独立した後も両親と暮らしてきた。市内の企業で事務職員として働き、年をとった両親の身の回りの世話もするようになった。
 本格的な介護が始まったのは4年前のこと。当時84歳だった母親が認知症を発症したことで生活スタイルが一変した。
 毎朝5時に起床して両親の3食分の食事を用意。主食や副菜にラップをかけて、メモを貼って冷蔵庫に入れてから出勤し、仕事を終えると直帰して両親の世話をして足浴もさせた。母親よりも3歳年上だった父親は家事が苦手だったが、Aさんが家を留守にする時には母親を見守ってくれた。
 しかし、母親は認知症に加えて足腰が急速に弱り、移動するときにはAさんの介添えが必要となった。デイサービスを利用することで、仕事と介護を何とか両立させようと考えたが、父母ともにデイサービスに通うことを嫌がったために、一人で介護を続けるしかなかった。
 時間的にも体力的にもギリギリの状態で仕事と介護の両立を2年続けたが、両親の老化が進む中で離職を選択するしかなくなった。17年春に市内の企業を退職した。

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この記事は月刊北海道経済2019年02月号に掲載されています。