平成に半減、旭川エリアのGS

 人口減少に伴う需要の落ち込みと後継者難、2010年の改正消防法も追い討ちをかけてGS(ガソリンスタンド)が減り続けている。旭川エリアでは平成年間で半減。鷹栖、比布など周辺5町が経産省の分類で「給油所過疎地」となっている。過疎が進む道北では今後「公営GS」も増えていきそうだ。(経産省などではSSと表記しているが、記事では従来どおりGS表記)

GS難民もうすぐ出現?
 旭川市豊岡に住む男性会社員からこんな意見が本誌に寄せられた。
 「人手不足から営業時間を短縮するガソリンスタンドが増えているのではないか。GSの数自体、年々減ってきている。本州の山間部では最寄りのスタンドまで10㌔以上というところは珍しくなく、給油するのに往復30分以上かかかるという話を聞くが、旭川エリアでも周辺の町では近い将来〝GS難民〟が出現しかねない。昨年10月の胆振東部地震ではブラックアウトで給油所の重要性が再認識された。国や道にはGSを減らさない政策をしっかり打ち出してもらいたい」。「仕事で帰宅が遅くなった際、残量が少なくなったガソリンを補給しようと、GSを探す場面が最近たびたびあった」という経験からの意見だ。

給油所過疎地
 資源エネルギー庁のデータによると、1994(平成6)年時点の全国のGSの数は6万ヵ所を超えていた。その後減り続け、2017年度末で3万747ヵ所と、23年間でほぼ半減となっている。
 広大な北海道では自動車は〝生活の足〟として不可欠な存在だが、全国の傾向と同様、GSは減り続けている。経産省北海道経済産業局のデータでは、2002年の道内GSの数は2572ヵ所だったが、次ページのグラフが示すように、12年に2000の大台を割り込み直近データの17年度末では1819ヵ所となっている。
 旭川ではどうか。
 旭川市と周辺町の業者で構成する「旭川地方石油販売業㈿」のエリアでは、1989(平成元)年に154ヵ所あったGSが2018年度末で67ヵ所にまで減っている。実際のGSの数は、組合に加盟していない業者のGSも加わるので、89年時点では約160ヵ所、18年度末では80ヵ所強と推測されるが、いずれにしても平成年間で旭川エリアのGSも半減している計算。
 GSが減り続ける要因の一つはガソリン需要の落ち込み。ハイブリッドなど燃費の良いエコカーが普及しEV車も登場し、また若者を中心とした自動車離れが進んでガソリン販売量は平成に入ってから減り続けている。
 過疎化と高齢化が急速に進む町村でとくに需要減が顕著となっている。経産省の推計では、ガソリンの平均販売量は、都市部のGS1ヵ所あたり月間530㌔㍑に対し過疎の町村は同34㌔㍑と都市部の10%にも満たないのが実情で、過疎地ほど給油所運営は厳しい。
 このため過疎地から次々にGSが消え、経産省はその実態を調査し17年3月末の集計で、自治体内に3ヵ所以下しかGSがないところを「給油所過疎地」として発表した。それによると、全国で給油所過疎地の数は302市町村。内訳は、給油所ゼロが12町村。1ヵ所だけが75町村、2ヵ所が101市町村、3ヵ所にとどまるのが114市町村となっている。
 旭川エリアでも、鷹栖町と比布町が2ヵ所の過疎地、東神楽町、愛別町、東川町が3ヵ所の過疎地に分類されている。

公営給油所
 市内GS経営者がこう話す。
 「6年前に占冠村トマムにあった地元石油販売会社のGSが閉店した。商圏人口が1000人以上でなければGSの営業は継続できないとされるが、トマム地区は過疎が進み定住人口が400人ほどになって、経営が立ちゆかなくなった。
 旭川近郊では愛別町が人口約2700人、比布町が約3700人。今は2ヵ所、3カ所の給油所があるが、人口減が加速すれば〝GSゼロ〟となりかねない」
 地域からGSが消えた占冠村トマムでは「給油所は絶対必要だ」との住民要望から、村は公営の営業形態で給油所を再開した。危険物取扱資格を持つ住民らで一般社団法人トマムスタンドを設立し、2017年秋から週3日、1日3時間の日時限定で営業を再開している。経営的には年間500万円程度の赤字で、その分を村が委託費として補填している。
 道内では伊達市大滝地区でも農協が運営していた地区唯一の給油所が2年前に撤退した。古い地下タンク更新に1000万円以上が必要なため事業継続を断念したものだが、伊達市は地区住民の利便性を考え、施設を無償で引き取り経産省から補助金を受けて地下タンクを更新。また、事務所や給油設備も更新して指定管理者制度で営業を再開させている。
 「公営給油所」は、旭川エリアの町にとっても他人事ではなくなっているのだ。

表紙1905
この続きは月刊北海道経済2019年05月号でお読み下さい。
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