11月30日午後、4回目の開催となった自民党道第6区選挙区支部(吉川貴盛暫定支部長=自民党道連会長、竹内英順幹事長=道議)の「第6区支部長選考幹事会」が旭川市内のホテルで開かれた。会議は30分ほどの短いもので進展は何もなく、候補者選びの今後については竹内氏と本間勲氏(支部長代行)の2人の道議に預ける形で終わり、方向性の確認は1月末開催予定の次回幹事会まで持ち越されることになった。次期衆院選は早ければ7月の東京都知事選と同時、もしくは8月の東京五輪後という見通しがささやかれる中で、候補者不在の状況は一日も早く解消したいところなのだが……。(文中敬称略)
挙げられたのは相変わらず4人の名前
今津寛前衆議が引退を表明、自民党の衆院選道6区の次期候補が不在となって早2年が過ぎた。現職または次期候補が支部長を務める仕組みの中で、道連会長の吉川衆議が暫定的に6区の支部長となり、本当の支部長を選ぶ作業が19年夏から竹内幹事長と本間支部長代行を中心に進められてきた。
これまでを振り返ると、1回目は7月23日、2回目は8月19日、3回目は9月21日、そして今回の11月30日。この間、自民党旭川支部が独自に各業界・団体への聞き取り調査を実施、竹内幹事長と本間支部長代行も旭川を中心に6区管内の企業や団体の意向を聞いて歩き、「誰が候補にふさわしいか」など、幅広く意見を聴取してきた。
2回目の会議以降、会議のテーブルに名前が挙がったのは旭川支部が推す東国幹道議をはじめ鈴木貴子(衆議・鈴木宗男参議長女)、加藤剛士(名寄市長・加藤唯勝元道議長男)、今津寛史(小野寺五典衆議秘書・前衆議今津寛長男)、さらに元衆院議員で現在はタレントとして活躍している杉村太蔵らだった。
これら名前の挙がった人たちに対し選考幹事会として直接、立起の意思確認に動いた形跡はなく、4回目の会議でも竹内幹事長の口からは相変わらず東国幹、鈴木貴子、加藤剛士、杉村太蔵の4人の名前が挙がっだけにすぎない。
竹内幹事長の口から「〇〇に当たってみたが脈はありそうだ」とか「〇〇は可能性がない」などという報告を期待していた選考幹事会メンバーはなんとも拍子抜けした様子だったという。つまり第3回の会議時から2ヵ月以上たっても、何の進展もなかったということなのである。
選考幹事会は初めから貴子ありき?
選考幹事会の成り行きを外野席から見守っているある自民党旭川支部の関係者は、伝わってくる候補者選考の動きを聞きながら、次のような分析をする。
「今回の衆院選6区の候補者選びは、出来レースのような気がしてならない。つまり竹内幹事長には初めの段階から鈴木貴子で行こうという思惑があり、何人か別の人の名前を挙げているのも貴子に持っていくための形づくりにすぎないのではないか」
竹内幹事長が6区の暫定支部長で自民党道連会長の吉川貴盛の意向を受け〝貴子ありき〟で候補者選考を進めようとしているのではないかという見方は、以前からウワサとしてあった。
6区有権者数の7割近くを占める大票田の旭川支部が推し、必然的に最有力候補として挙げられるはずの東国幹道議に対し、同じ道議の竹内があまり良い感情を抱いていないという話も伝わっており、「竹内は東が衆院選候補になることを阻止したいのではないか」というのが、貴子にこだわる理由だというのだ。
竹内と東の関係はともかくとして〝初めから貴子ありき〟の信ぴょう性の高さを想像させる話が出回っている。
それは19年6月16日に旭川市内のホテルで開かれた自民党北海道第6区選挙区支部の令和元年度定期大会に出席した吉川暫定支部長と竹内幹事長の2人が、大会終了後に向かいのホテルに場所を変え、旭川の経済界を代表する2人を呼んで「6区の候補者は貴子にしたい」と話したとされることだ。
確認の取れた話ではないが、仮にそうした会談があったとすれば、この時点からすでに吉川道連会長の腹は決まっていたということになる。吉川には道連会長として、7区(釧路・根室)にこだわる鈴木貴子の6区への国替えを実現させれば、伊東良孝衆議との調整に苦労しなくてもいいという思惑があったとしても不思議ではない。
「(選考幹事会は)出来レースではないか」という見方が旭川の自民党関係者の間で出てくるのもあながち根拠のない話ではなさそうだ。
「勝てる候補」が選考の大きな命題
11月30日に開催された4回目の選考幹事会では、次回開催を年明けの1月末として、なんの進展もないまま散会した。当初は「11月中には決めたい」としていたが、その11月中には何も決めることができず、竹内幹事長と本間道議に今後を預ける形で年を越すことになった。
では、今後どうなっていくのだろうか。次期衆院選がいつになるかはっきりした見通しは立てられないが、いずれにしても東京都知事選(7月5日)と同時、東京五輪後(9月以降)を視野に入れて準備を進めておく必要がある。とすれば、少なくともその半年前には候補が決まっていなければ、相手候補が佐々木隆博であろうが西川将人であろうが、自民党の劣勢は明らかだ。
自民党は「勝てる候補」という大きな課題を持って候補者選考を進めている。いま名前の挙がっている東、鈴木、加藤、杉村の中では、知名度で勝るタレントの杉村が「勝てる候補」に最も近いと思われるが、その杉村はすでに本誌の取材に対しても「ノー」の結論を出している。また、名寄市長の加藤も最近の名寄の混乱状態を考えれば、市長職を放り投げて国政へという状況にはない。
貴子は無理、やっぱり東しかいない
残るのは東国幹と鈴木貴子の2人ということになってくるが、貴子本人はあくまでも地元7区からの立起にこだわっている様子が伝えられ、父親の鈴木宗男参議も「貴子は7区から」と言い続けている。
確かにいかに知名度があり、上川管内に根強い信者を多く持つ宗男の長女という強みがあったとしても、6区の選挙区では落下傘候補という位置づけとなり、有権者にどれだけ浸透できるか不安は残る。貴子もそれを十分承知しているはずで、しかも短期決戦となればなおさら。6区管内で貴子への期待感が出ているのは間違いないが、貴子も今は、よほどのことがない限りそれに簡単に応えられる状況ではないようだ。
とすれば結局、東しかいない。戦いの相手を選挙にめっぽう強い西川と想定して「東で勝てるのか」という声があるのも確かだが、状況を考えると、今のところ東以上の候補は見当たらないのである。
6区の選挙では小選挙区で負けても比例の惜敗率で救われるケースが過去に2回あった。このほかいずれの戦いも接戦状態なのである。東を6区の候補者として推している自民党旭川支部の関係者も「以前は〝東で勝てるのか〟だったが、今は惜敗率を考慮し〝東なら当選できる〟に党内のムードが変わってきた」と言う。
待たれる東の態度表明
半年がかりで難航する候補者選びだが、今の状況を打開できる簡単な方法が一つある。それは東自身が「私がやる」と手を挙げることだ。
道議選では3度のトップ当選を飾り、選挙強さを見せつける東だが、旭川市長選では2度苦い思いを体験しており、このことが国政への道を躊躇する一つの要因になっているとも想像できるが、周囲から「東しかいない」の大合唱が起こってくれば、さすがに決断せざるを得ないだろう。
伝えられるところ鈴木宗男からも東に対し「あなたが出るべきだ」との激励があったとされるだけに、ここは一番、6区の候補者選考に風穴を開ける意味でも、東の態度表明が待たれる。
この記事は月刊北海道経済2020年01月号に掲載されています。