旭東高「アドミッション・ポリシー研究」が奏功

道内屈指の進学校として知られる旭川東高。毎年、東大、京大、早慶など難関大に多くの合格者を輩出しているが、今年の受験では7クラス編成になった2005年以降で最多となる158人が国公立大に現役で合格するという好結果を残した。3年前に導入した「アドミッション・ポリシー研究」の成果だ。

 旭川東高は18年大学受験でも好実績を残した。特筆すべきは現役生の国公立大合格者数。ここ数年、右肩上がりで増加傾向にあり、15年は127人、16年131人、17年145人と推移していたが、今春は158人になり、7クラス編成が導入された2005年度以降で最多となった。
 難関大学にも多くの合格者を出した。北大の合格者数は昨年よりも減少したが、道内5位にランキング。難関の医学部にも現役1人、既卒2人が合格した。東京大は現役1人、既卒1人が合格し、東北大5人、一橋大1人、筑波大5人、大阪大1人が合格。難関私立大では、早稲田11人、慶応4人、上智1人、国際基督教大1人の合格者を輩出し、地域ナンバー1高校としての底力を見せつけた。
 同校の快進撃は、15年度に導入を始めた「アドミッション・ポリシー研究(以下AP研究)」の成果だ。アドミッション・ポリシーとは、大学の入学者受け入れ方針のこと。自校の特色や教育理念などに基づき、どのような学生像を求めるかを示したものだ。たとえば旭川医大の場合は、「医師、看護職者としての適性とともに地域社会への関心を持ち、自らが問題を見つけ、解決する意欲と行動力を持つ学生」としている。
 東高では、1、2年次の「総合的な学習の時間」でAP研究を導入。1年次では、北海道大学、東京大学、京都大学のアドミッション・ポリシーを読み、各大学が求めている人物像や、大学の社会的責務などについて生徒同士が意見交換をして理解を深める。2年次では、自分が志望する大学のアドミッション・ポリシーを調べ、グループワークを通じて理解をし、志望校への思いをあらたにし、受験勉強に弾みをつける。
 今春の卒業生が入学した年に導入し、その成果が今年度の実績として確実に現れた様子。進路指導部部長の松井恵一教諭は次のように話す。
 「社会情勢が変動し、社会が大学に対して求める人物像も変化しています。大学は目的意識を持った学生を求めるようになり、それに対応すべくAP研究を導入しました。当校では以前から全国各地の大学を受験する傾向がありましたが、今年は学生たちが自ら様々な大学について調べ、明確な意思をもってより全国に目を広げて志望校を選びました。以前のような偏差値競争ではなく、将来、自分がどうやって社会に貢献できるのかを視野に入れ、進路を選ぶ学生も多く見られました」
 同校のAP研究は他の高校のモデルケースとなっており、進路指導の一環として導入する高校が次第に増えてきている。道北随一の進学校は実績だけではなく、独自の教育方針でも注目を集めている。

表紙1805
この記事は月刊北海道経済2018年5月号に掲載されています。

上川神社祭3条通露店を取りやめ

 短い旭川の夏を彩るイベントの一つが上川神社祭。この期間中、神輿を見たことがない市民はいても、一度も露店を見たことのない市民はいないはずだ。ところが夏の到来を前に、今年1月に実行委員会が、3条通での露店の廃止を決定した。スタッフの高齢化が最大の原因だが、露店側は同じ期間中、市内の他の場所での開催を目指すとしている。

800㍍に300店余
 毎年7月20日から22日にかけて開催される「上川神社祭」。本誌ではこれまで、神幸式(みこしパレード)のあり方に関する記事を何度か掲載してきた。その神幸式と並ぶイベントが「露店」。多くの市民にとっては、この露店こそがお祭りの主役かもしれない。
 護国神社祭で多くの露店が常磐公園内に並ぶのに対し、上川神社祭では古くから3条本通りの中央橋通りから大雪通まで(13丁目~18丁目)まで約800㍍の区間に300余りの露店が軒を連ねてきた。
 悪天候にさえならなければ、期間中、会場は多くの人で賑わう。浴衣姿の男女も多い。フランクフルト、焼きそば、おでん、わたあめなど、祭りだからこそ食べたくなるフードを頬張りながら歩く人も。「型抜き」は祭りの日しか体験できない特別な時間だ。
 ところが、少なくとも3条通では、今年の夏から露店が出ないことになった。地元住民で作る実行委員会は関係者に配布した文章の中で、以下のように説明している。
 「毎年7月20日~22日に開催されております上川神社祭の露店出店の件でございますが、約50年前に誘致され現在に至りますが、時代の変化に伴い市中心部での開催が難しくなってきておりました。十数年前よりいっそう厳しい状況となっておりましたが、3条通りの沿線の皆様のご理解とご協力により、続けてこられました。実行委員会でも改革などに努力、苦慮しておりましたが、実行委員会の高齢化も伴い、どうにも展望が見えなくなり、露店の出店の廃止策をとらざるをえないこととなり、実行委員会で何度か協議を重ね、昨年9月には大成地区の各町内会長にお集まりいただき説明会を開催し、同11月には露店側の役員との協議を行い、結果、平成30年1月に今年度より3条通りでの『上川神社祭の露店出店」を廃止する確約が成立いたしました」
 これまで露店設置のため奔走してきた実行委員会委員長の宮口幸治さんは、寂しさを表情に浮かべながらも、長年の懸案が解決したことでほっとした様子だ。

迷惑駐車も発生
 もともと上川神社に向かう参道で行われていた臨時露店が3条通に場所を移したのは今から約50年前のこと。以来、大成地区市民委員会と銀座商店街振興組合から構成される実行委員会が運営にあたってきた。
 実行委の仕事は多岐に渡る。道路通行止めに関する警察との交渉、警備員の手配、ごみ処理、露店関係者が備品を載せてやってくるトラックの駐車場所の確保…。かつては大成地区にも多くの若者が住んでおり、また露店の開催で地域の商店街全体が潤ったことから、多くの人が協力した。ところが、時代とともに祭りを囲む環境が変化し、開催は年ごとに困難になっていったという。

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人情食堂で「せんちゃん勉強会」

 地域で愛される〝人情食堂〟で、小中学生を対象に始まったプロジェクト「せんちゃん勉強会」。子どもたちの未来に投資する目的で、今年で創立50周年を迎える旭川北ロータリークラブ(田中稔会長)が取り組む人財育成事業の一環だ。常盤通で行っている学習支援「エンむすびの会」(高倉晴美代表)とも連動し、学習した後にはラーメンを食すというラーメンのまち旭川らしい勉強会。「子どもは地域の宝」と小川諭一奉仕開発委員長が込める思いも旭川ラーメンのように懐が深い。

「同じ釜の飯を食す」
 3月5日の夕方、人情食堂「せんちゃん食堂」(大町1条3丁目)には複数の小中学生と保護者、指導スタッフらが集い学習に励み、和やかな雰囲気に包まれた。大有小学校の3年生、志野原彩来さんは「勉強の途中、ラーメンの匂いがしたので頑張ろうと思った」と本音をポロリ。やりかけの学習を終え、せんちゃん名物「しょうゆラーメン」を味わうと、「頑張って良かった」と満面、笑顔がはじけた。
 同じテーブルに座っていた別の小学生も、「モチモチしていて美味しい」と思わず納得の表情。「私、ラーメンの味にはうるさいのよ」「勉強の後のラーメンは、とびっきり美味しい」との感想をたまたま耳にすると、「美味しくなかったら美味しくないって、言っていいよ」と傍らにいた店主の千田健雄さん。
 千田さんは子どもたちの笑顔を微笑ましく見つめ「私も子どもが好きなもんだから、ニコッと笑ってもらえたら嬉しい」。指導スタッフには現役の高校生や大学生、元教師、塾・外国人英語講師ほか、市役所職員等が顔をそろえるが、その一人、平島淳嗣さんは「あの場所の持っている力でしょう」と、子どもたちの学習に親身に寄り添っている。
 このせんちゃん食堂を切り盛りするのは、千田さんと、妻の真砂江さん…。

表紙1805
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「人口ダム機能」低下する旭川市

 総務省が発表した2017年の住民基本台帳に基づく人口移動報告によると、上川管内23市町村のうち17市町村で、人口転出が転入を上回る「転出超過」となっていることが分かった。旭川市が最多の830人で、名寄市228人、富良野市198人と続く。道北の人口流出を防いでいた旭川市の「ダム機能」も低下している。

830人の転出超過
 住民基本台帳に基づく人口移動報告は、総務省が1月末に発表した。それによると、旭川市は転入1万245人に対し転出1万1075人で、830人の転出超過となった。前年は747人の転出超過だったから、さらに83人拡大したことになる。
 管内23市町村の転入・転出数は次ページの表の通りで、転出超過の上位は、旭川に次ぐのが名寄市で228人、続いて富良野市198人、士別市166人、鷹栖町81人などとなっている。一方、転入が転出を上回ったのは東川町、上富良野町、下川町、占冠村、比布町、当麻町の6町村だけで、管内全体で人口流出が止まらない現状が浮き彫りとなっている。

ダム機能の限界
 若者が札幌や首都圏へ流れる一方で、上川管内の高齢者、また宗谷、留萌からの高齢者の転入が続く。この結果、老齢人口割合が高まりつつも、大幅な人口減少はなかったのが2010年頃までの旭川だ。36万人台を長く維持し、05年に36万人の大台を割りはしたものの14年までは35万人台をキープしてきた。
 道北圏という広域でとらえると、若年層が転出する一方で高齢者を近隣から集め人口流出を食い止める「ダム機能」を旭川は果たしてきた。
 しかし今回の総務省の人口移動報告で管内最多830人の転出超過となった旭川は、人口ダム機能が著しく低下していることが歴然となっている。
 国立社会保障人口問題研究会(社人研)と日本創生会議が数年前に発表した予測値では、旭川は15年以降急速に人口減が進み40年には24万1526人になるとされている。この予測が当たっているとしたら、現在下り坂にさしかかり、このあと下り傾斜は急になる。本誌先月号既報の通り、今年2月1日のデータでは34万人も割り込み33万9858人となったが、これが人口急減の始まりなのかも知れない。
 24万人というのは昭和30年代の旭川の人口で、40年にはその規模までまちが〝縮小〟するという予測。それほどの人口減が急速に進むとは信じがたいが、ダム機能を失った今、人口が増える要素は残念ながら見当たらないのが現実のようだ。

上川北部が顕著
 上川管内の中でも、北部8市町村の人口減が顕著だ。今回の人口移動報告では下川町が唯一転入増となっているが、ほかは軒並み減少。2年前に公表された国勢調査では、8市町村の減少率は7・0%に達し、全道平均を上回った。
 上川北部の拠点都市である名寄市は12年に3万人台を割り、その後年間400人強の減少を続け、今年1月の人口は2万7891人。名寄市では「大学や病院がそろい、潜在的に人口を吸収する力はある」としているが、人口減を抑える効果的な政策はみつからない。
 士別市は、1954年の市政施行以来、15年に初めて人口2万人を割った。旧士別町時代を含めると、約70年ぶりの1万人台となっている。死亡率が出生率を上回る自然減が顕著で、若い世代の流出をどう防ぐかが緊急課題だ。
 上川だけでなく宗谷管内も10市町村すべてで人口減が加速しており、稚内市を例にとれば、人口のピークは75(昭和50)年の5万5464人から、今年1月の人口は3万4801人にまで減少。ピーク時と比較して約40%も減った計算になる。少子化と若者の管外への流出が止まらず、それに対する特効薬は見つからない。
 留萌管内も同様で、管内拠点の留萌市は70年に4万人を割り込み、97年に3万人をも割って今年1月の人口は2万1738人。雇用の場が少なく若者の流出が続いている。

交流人口増やせ
 4年前に発表され日本創生会議の「消滅可能性都市896」には、道北のほとんどの市町村が入っていた。そして現状、人口の推移はほぼその指摘どおりになっている。創生会議の〝試算〟を上回るペースで人口減が進んでいるまちもある。
 そんな〝消滅予測〟を払拭しているのは東川町だ。今回の人口移動報告でも唯一、三桁、108人の転入超過となった。
 同町は住宅建設費補助などの移住促進策を打ち出しており、その成果が現れ、大雪山連峰の麓で旭川空港も近い立地もあって本州からの移住者がカフェなどをオープン。まちの認知度が高まってさらに移住者を呼び込み好循環が生まれている。
 今回の人口移動報告には実は外国人はカウントされていないが、同町では2009年度から外国人学生受け入れに取り組んでいる。初年度は韓国から72人を受け入れ、翌年度は台湾も加わり2カ国合わせて104人。その後、中国、ラトビア、タイと増えて、さらにシンガポール、ヨルダンなどからも生徒が集まる。日本語を学び終えた生徒は離日し、代わりに新しい生徒が町にやってくる。たえず相当数の学生がまちに滞在している。
 移住者、滞在者を増やす。交流人口を呼び込むのが人口減を食い止める方策の一つのようだ。

表紙1804
この記事は月刊北海道経済2018年4月号に掲載されています。

高額寄付金めぐり門徒反発

 比布町にある真宗大谷派一念山「浄慶寺」(寿町1丁目、中根慶滋住職)で、お寺が計画する納骨堂と庫裡(住居)の改築計画をめぐり、多くの門徒が反発する騒動になっている。お寺側が、2億円を超える建設費の負担を門徒たちに求めているためだが、1戸当たり100万円前後の寄付といえば高齢の年金暮らしの家庭には酷な要求。3月15日に開かれる門徒総会でもすんなり話がまとまるとは考えにくい。落としどころはあるのか。

納骨堂も庫裡も大修理迫られる
 浄慶寺は1896(明治29)年の開創。今年で122年目を迎える由緒あるお寺。住職は初代の中根慶純氏から1979(昭和54)年に2代目の中根慶邦氏に移り、昨年には3代目の中根慶滋氏が就任している。1996(平成8)年には比布町蘭留にあったお寺を統合して大きくなり、その後数は減ってきたが現在の門徒数は約200軒。 納骨堂の新築・庫裡の改築計画は昨年夏頃から動き始めた。これまでに総代会や検討委員会で数回にわたって議論が重ねられてきているが、今年1月26日に開かれた門徒総会では計画案に対する反対意見が続出した。
 計画案を説明する前にまずはお寺側が作った建築趣意書の内容から見てみよう。一部を抜粋すると次のようなことが書かれてある。
 「浄慶寺の納骨堂は昭和43年、庫裡は昭和50年に建築された。昭和40年代初頭から各寺院で納骨堂建築の機運が進み、浄慶寺もその機運に乗って建築の運びとなった。その当時はそれなりの形態で充分だったが50年も経つと損傷が目立ち、古い・狭い・暗い・小さい、しかも階段が狭く、急で危ない。高齢化社会の現在では全くその形態を成しておらず、お参りしたくともできないとお叱りを受けている。
 庫裡も損傷が激しく、大修理に値するかどうか問われる代物である。息子(3代目慶滋住職)家族も帰郷し、同居生活をしているが、居住の部屋が屋根裏の2階で、天井が低く、狭く、圧迫感があり、夏は暑く、冬は寒く、屋根の雨漏り、窓際の隙間風と厳しい環境での生活で、その対応を考慮しなければならない状況でもある。
 42年間、修理、補修を重ねながら今日に至っているが、早急に対応が迫られている。

表紙1804
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札幌駅で新幹線用ホーム不足、旭川延伸困難に

 3月末までに決着する見通しの札幌駅新幹線ホームの位置。旭川市民の関心は低いが、注目すべきは現在検討の対象となっている2つの案ともに、ホーム数が(2編成の列車が同時に停車し、乗降できる)2線だということ。全国の主要な新幹線駅はいずれも4線以上だが、札幌駅はスペースの関係で異例の2線体制となりそう。その時点で、国が新幹線網の青写真に描いていた「旭川延伸」の可能性がなくなる。

今年度内に位置決定
 北海道新幹線のホームを札幌駅のどこに建設するかを巡って、激しい論議が戦わされている。二転三転を経て、現在有力視されているのは、札幌駅の構内に新幹線のホームも設ける「現駅案」と、東側、つまり旭川方向に創成川をまたぐかたちで新しいホームを設置する「大東案」だ。かねて浮上した地下化案は高い工事費用を理由に検討の対象から外された。
 2016年3月に函館北斗までの延伸が実現し、ようやく北海道に上陸した新幹線は、2030年度末に札幌に乗り入れることになっている。昨年10月の新青森─函館北斗間の乗車率は36%に低迷しているが、これはあらかじめ予想された数字。北海道新幹線が威力を発揮するのは札幌延伸後であり、それまでの14年間はいわば「助走期間」だ。
 函館北斗─札幌間ではすでに土木工事が始まっており、21本のトンネルのうち昨年10月までに着工したのは8本。掘削率が60%を超えたトンネルもある。
 新小樽(仮称)近くで地下トンネルにもぐる新幹線は、長さ21㌔の「札樽トンネル」を通って、桑園と札幌の中間付近で地上に出たあとで札幌駅に達する。ただし、札幌駅のどこに新幹線のホームを設けるのかが決まっていない。国から示されたホーム位置決定のタイムリミットは2017年度末だ。

2案ともホームは2線
 改めて、これまでに浮上した案を振り返れば、まず現在の1番線、2番線、つまり最も南側にある2線のホームを在来線用から新幹線用に転換するのが「現駅案」。問題は、このプランだと在来線のホームが減り、運転本数にも影響が及ぶということだ。一時浮上した「地下案」は、駅南側で東西方向に伸びる北5条通の下を掘って新幹線の駅を設けるという内容だったが、費用が現駅案の倍、1000億円に達することがわかり、候補から外れた。
 もう一つのアイディアが「東案」。1番線と、その南側に新設する0番線を新幹線に当てるという内容だが、この方法だとホームの一部が札幌駅の上にそびえるJRタワーに食い込むため、この高層ビルの耐震工事に300億円が必要となり、現実味は薄いとされていた。
 そしていま注目を集めているのが「東案」を修正した「大東案」。東案よりもさらに東側、つまり旭川方向に、創成川と国道5号をまたぐかたちで新しいホームを設置し、連絡橋で在来線のホームと結ぶ構想だ。
 現在、検討が続けられているのは現駅案と大東案の二つ。両者の長短を比較すれば、前者ではJR在来線や地下鉄との乗り換えがスムーズである反面、ホームの幅を十分に広く取れず、混雑時に不安がある。在来線の運行本数への影響もある。後者は乗り換えのために乗客が長い距離を移動しなければならないのが欠点だ。
 本誌の読者からは「札幌の話など、旭川には関係ない」という声が聞こえてきそうだが、実は札幌駅での新幹線ホームの設置状況は、旭川延伸の可能性を大きく左右する。札幌以北に新幹線を伸ばすためには、最低でも4線のホームが必要だが、現駅案と大東案はいずれもホームが2線。どちらが選ばれるにせよ、その時点で新幹線の北の終着駅は札幌に固定されてしまう可能性が高い。

旭川発着の列車が追い越しできない
 東京駅10線、新大阪駅8線、博多駅6線、金沢駅4線、新青森駅4線。主要な駅の新幹線用ホームの数だ。新幹線網の最南端に位置し、延伸の可能性がない鹿児島中央駅でさえ、4線のホームを新幹線に割り振っている。
 どの主要駅でも、新幹線には4線以上のホームがあるが、札幌駅では2線しかないために、混雑や出発の遅れが発生する可能性がある。札幌の場合、多くの荷物を抱えた観光客が多く、さらに外国人の比率も高いため、乗り降りに比較的長い時間がかかると予想されることも不安要素だ。
 ましてや、ホーム2線の札幌駅から旭川に延伸するのは事実上不可能。旭川まで新幹線のレールが伸びたとしても、大半の列車は札幌発着で、札幌駅のホームに列車がしばらく停止することになる。札幌駅に4線の新幹線ホームがあれば旭川発着の列車は開いているホームに停車して、札幌発着の列車をやり過ごすことができる。それこそが全国の主要な駅で新幹線のホームを4線以上確保している理由なのだが、2線だと不可能になってしまう。
 札幌以北に延伸しないとしても、2線のホームは明らかに容量不足。なぜそんなことになってしまったのかと言えば、それは新幹線ホームを作るのに最適の土地に大丸、ステラプレイス、JRタワーなどの駅ビルを建ててしまったためだ。

駅前再開発でスペース不足
 札幌駅が高架化されたのは今から30年前の1988年のこと。すでに北海道新幹線が札幌まで伸びることは決定しており、高架化に伴い生じる駅南側の空き地が新幹線用に活用されるはずだった。ところがいつの間にかこの土地で札幌駅南口再開発事業が推進され、大丸、ステラプレイス、JRタワーが建ってしまった。この土地の活用方法をめぐる札幌市やJR北海道の判断は、現在に至る札幌駅周辺の商圏の賑わいぶりを見れば「正解」だったが、同時に旭川への新幹線延伸は困難になった。1993年、南口再開発が決定した時点で、旭川市民の与り知らぬところで、旭川延伸も大きな影響を受けていたことになる。
 札幌駅内における新幹線ホームの場所を巡っては、札幌市、北海道、JR北海道、国などが綱引きを広げているが、関心を集めているのは乗客の利便性、工事費、駅周辺の賑わいに及ぼす影響など。札幌以北への延伸の可能性を考え、拡張性を確保すべきだとの主張は聞こえてこない。
 しかし、国が描いた新幹線網の青写真には、しっかりと「旭川延伸」のビジョンが描かれている。全国新幹線鉄道整備法にもとづき1972年に行われた運輸省告示(いわゆる基本計画)によれば、北海道新幹線は青森を起点とし、函館や札幌を経由して旭川を終点にすると明記されている。しかし、道内の経済界が掲げる札幌延伸の早期実現という一大目標の前に、「旭川延伸」の四文字は霞む。旭川・道北の経済界の目下の関心事はJR北が「単独では維持困難」とした宗谷線(名寄以北)、石北線、富良野線の維持で、新幹線延伸を考える余裕はない。
 話を札幌駅新幹線ホームの現駅案、大東案に戻せば、現駅案だとホーム増設の可能性は皆無。比較的スペースに余裕があるとみられる大東案でも、2線のホームを囲むかたちで周辺の再開発事業が推進され、ビルが建ってしまうと、やはり旭川延伸の可能性はなくなる。
 このように、札幌駅での新幹線ホームの設置状況は旭川延伸の可否を大きく左右するのだが、旭川市民の関心は低い。ある市民は語る。「札幌延伸だってかなり先の話。旭川になんて来ない」。また、旭川延伸の前には巨額の工事費をどう調達するのか、旭川─札幌間の在来線の収益に悪影響を及ぼさないのかなど、数々の課題をクリアーしなければならない。
 しかし、新幹線のレールが札幌に届くよりも十年以上早く夢を諦めなければならないとしたら、そして、何から何まで札幌中心という現実に異を唱える人がいないとすれば、旭川を包む無力感を象徴する残念な話だ。

表紙1804
この記事は月刊北海道経済2018年4月号に掲載されています。

旭川電気軌道108万株の「顛末」

 旭川電気軌道㈱の筆頭株主・光陽商事㈱が所有する電気軌道株108万株が密かに売却された問題は本誌先月号既報の通りだが、購入代金はなぜかふらのバス㈱から出ていた。しかも光陽商事へ振り込まれる間に2000万円が消えていた。旭川地裁は108万株の譲渡・質権設定禁止の仮処分を決定。108万株と1億円はともに光陽商事が握る。(記事は2月7日現在)

巨額迂回振り込み
 旭川電気軌道の発行株数は714万株で、株主は800人を超える。その数多い株主の筆頭が光陽商事。108万株を所有する。
 本誌先月号既報の通り、その108万株が密かに売却され、売却代金の一部として1億円が光陽商事に振り込まれた。振り込んできたのは昨年11月6日に新設されたばかりの㈱紅葉商事(旭川市神楽岡15の4、金野久男代表)だった。
 1億円もの大金を資本金100万円の設立されたばかりの会社が簡単に捻出できるとは信じがたい。本誌先月号では「電気軌道が関連企業から貸付金として提供させ紅葉商事に回したのではないか」との〝推理〟を紹介したが、その後の取材で、やはり電気軌道の経営陣が子会社に大金を拠出させ、株購入資金として紅葉商事に提供していたことが判明した。
 その金の流れは図表に示した通り。
 まず、ふらのバス(富良野市住吉町)が電気軌道北洋銀行大雪通支店の口座に6999万9460円と4999万9460円を2回にわたって振り込んだ。総額1億1999万8920円。1億2000万円から振込み手数料を引いて手続きしたものと思われる。昨年12月15日午前中の早い時間だ。
 電気軌道はこれに1512円をプラスし1億20000万432円を小切手で紅葉商事に振り出した。432円の端数がつく巨額かつ半端な金額である。
 そして紅葉商事は電気軌道経由で入ってきた1億2000万432円のうち1億円を光陽商事に振り込んだ。
 ふらのバスから出た1億2000万円が、電気軌道─紅葉商事を経て光陽商事の口座に入るまでのすべてが、12月15日の午前中の短時間に行われた。

総額は約4億円
 1億円という巨額な振り込みに心当たりがなかった光陽商事の経理担当者が銀行から教えてもらった振込主の電話に問い合わせると、金野氏と思われる男性が「小山田氏、斎藤氏、宮本氏、私の4人で株譲渡契約を結び、手付金で1億円を振り込み、残金約3億円は3月末に行うことを決めた」と言ったという。電気軌道経営陣が仕切って1億円が動いたのである。金野氏によると、さらに3億円が振り込まれてくるという。
 何度も報じているとおり、光陽商事が電気軌道の筆頭株主であることを利用して宮本典洋氏、電気軌道OBの斎藤哲朗氏らが電気軌道の臨時株主総会を招集し強引に新役員体制を発足させた(10月11日)。社長には元旭川トヨタの村中浩氏が就任し、大竹泰文専務は留任。宮本氏は常務、斎藤氏は監査役に就いた。
 これに対して豊島弘通元会長の相続人で光陽商事の大株主である豊島美智子氏と2人の娘─尾﨑摩衣子氏、濱田美紗子氏が光陽商事の臨時株主総会召集を要求し、開催日は12月15日と決まった。議題は小山田社長解任。つまり、豊島家が光陽商事の〝経営権〟を取り戻す日。その日にぶつけて迂回振込みが実行されたのだ。
 臨時株主総会は予定通り行われて小山田氏は解任され尾﨑氏─濱田氏の姉妹が新たに取締役となった。しかし108万株譲渡契約が法的に問題なく行われていれば、株はもう光陽商事にはない。豊島家が筆頭株主として電気軌道の臨時株主総会を招集し村中社長らに役員退陣を求めることはできないのだ。

弱み握られ?
 ふらのバスは、電気軌道が666株、富良野市が334株所有する、電気軌道の子会社であり、第三セクターでもある。  
 子会社が親会社に資金を融通すること自体に問題はない。ただ、ふらのバスの企業規模を考えると巨額すぎる金額である。 
直近3期の決算を見ると、ふらのバスの売上高は5億7200万円─5億6000万円─5億5600万円と推移している。電気軌道への送金1億2000万円は、年間売上高のほぼ4分の1にあたるのだ。直近3期の純利益は2500万円─5300万円─5400万円で、計算上は直近3期の純利益をそっくり電気軌道に提供した格好。
 ふらのバスの社長は旧経営陣から唯一残留した大竹氏である。12月15日時点では電気軌道専務でありふらのバス社長だ。
 9月に河西社長ととも大竹専務も辞任すると思われていたが、残留するとの情報が流れた。この時、宮本氏は本誌にこう語っている「大竹はまだまだ利用価値があるから、しばらく専務として残す」そしてこう付け加えた。「大竹の女性スキャンダルは聞いているだろう。お前のところ(北海道経済)では書かないだろうな、書くなよ」。
 「まだまだ利用価値がある」とは、大竹氏を利用して株購入資金をふらのバスから引き出すとことではなかったのかというのは考えすぎか? 大竹氏には女性問題がつきまとう。さんろくの某酒場で付き合っている女性と愁嘆場を演じたのは有名な話。社内に親密な関係の女性社員がいることは電気軌道の大半の社員の知るところだ。女性問題で何らかの弱みを握られ、9月に辞められず、さらに巨額拠出という〝危ない橋〟を渡ってしまったということだろうか。

認められた仮処分
 さて、ふらのバスは3月期決算である。1億2000万円が年度末までに返還されていれば大きな問題にならずに済みそうだが、状況は厳しそうだ。というのは、光陽商事の新社長となった尾﨑氏が年末に旭川地裁に申し立てた「電気軌道、紅葉商事は、光陽商事が所有する108万株の売却、書き換えをしてはならない」が認められ「仮処分決定」の判決が1月23日に出たのだ。
 この種の申し立てとしては異例に早い裁判所の決定だ。先月号で斉藤監査役が光陽商事の銀行印の印影を持ち出し警察が出動した騒動を紹介したが、電気軌道と紅葉商事の株取得の手法が尋常でないとの裁判所の判断が働いたようだ。
 108万株は光陽商事に戻った。また、手付金として振り込まれた1億円は光陽商事の口座に残ったまま。ふらのバスは1億2000万円をどう穴埋めするのか。
 尾﨑氏はまた、10月11日の電気軌道株主総会自体が「違法行為があった」として無効を求め1月10日に訴訟を起こしている。

表紙1803
この記事は月刊北海道経済2018年4月号に掲載されています。

スピードマイニング(本社旭川)の将来性早くも〝枯渇〟?

 ビットコイン、仮想通貨、コインチェック…。ITを活用したお金の流れにまつわるニュースが騒がしいが、「私とは関係ない」と思っている人も多いはず。実はこの旭川に昨年、仮想通貨の流通に欠かせない施設が構築されたとの発表があった。しかし、ビットコイン相場の急落から明らかなように、仮想通貨はまだ大きな不安要素をはらんでいる。旭川の施設の将来性にも大きな疑問符がつく。

IT時代の「鉱山」
 かつて北海道は鉱業の一大生産拠点だった。道北だけでも、紋別近郊の鴻之舞鉱山では、金・銀・銅が採掘されていた。下川にあった下川鉱山からは黄銅鉱、磁硫鉄鉱を産出。富良野近郊の野沢鉱山ではクリソタイル(白石綿)を生産していた。留萌、羽幌、昭和炭鉱(沼田町)といった地域では石炭が生産され、日本のエネルギー需要を支えた。しかし、鉱物資源の枯渇や採算割れなどのために、こうした鉱山のほとんどは閉山し、いまでは廃墟となってまれに物好きなマニアが訪れる場か、鉱物生産に伴い大量に残された有害物質を堆積するだけの場となっている。
 2017年、旭川市内で久しぶりに「鉱山」が誕生した。場所は1条通10丁目のオフィスビル内。とはいえトロッコもボタ山もなく、必要なのは専用のコンピュータとネットの回線だ。すべてが計画通り、宣伝通りなら、この場所で「ビットコイン」という名の財産が生み出されるはずだった。
 ここで「採掘施設」を稼働させているのは、同ビル内に登記上の本社を置く㈱スピードマイニング(小嶋真由社長)。この企業のウェブページを開けば、現在、旭川で展開している事業の大枠がわかる。その説明の前に、仮想通貨とは何なのかを説明しなければならない。

膨大な計算への報酬
 仮想通貨とは、ネット上で我々が毎日使う現金のように取引される通貨のこと。専門取引所で現金と交換して購入・売却できる。当局による価値の保証がない反面、規制も受けない。紙・金属の実体としてではなく電子データとしてコンピュータに保存されている。現金はどこかの金庫に預け入れられるのに対し、仮想通貨は複数コンピュータで記録を共有・相互監視するブロックチェーンで管理されている。
 仮想通貨の中で最も有名なのはビットコイン。その後、リップル、イーサリアム、ライトコインといった後発組も登場している。仮想通貨が今後定着するか、商取引の決済で一般的に用いられるようになるかは不明だが、世界中で仮想通貨が新たな投資先として注目を集めたのは事実。とくにビットコイン(BTC)の円に対するレートは昨年4月には1BTC=13万円程度だったものが、しばしば下落しながらも年末に向けてじりじりと上昇し、12月17日には最高値の223万円まで達した。しかしその後急落し、2月7日現在では約80万円となっている。
 ビットコインなど仮想通貨はネットを通じた取引が中心であることから、一攫千金を狙ってなけなしの手持ち資金をつぎ込んだ若者も多い。昨年12月からの急落で、虎の子をすっかり失ってしまった人もいると伝えられている。その反面、ピーク時よりも安くなったいまこそが買い時だと判断して、ビットコイン取引に参入した人もいる。ビットコイン関連業者はなおもテレビやネットで積極的に宣伝を流しており、しばらくはフィーバーが続く可能性もある。
 仮想通貨には、円に対する日本銀行のような管理者が存在しない。代わりに導入されたのが、世界中に分散したコンピュータで仮想通貨の流れを追跡・記録する「ブロックチェーン」という概念だった。ブロックチェーンに乗せて仮想通貨を世界中で流通させるには、膨大な計算を行う必要があるのだが、その計算は有志が提供するコンピュータが担う。無報酬のボランティアではなく、計算量に応じてビットコインで報酬が支払われる。計算しただけで報酬が支払われるというのはあまりにもウマイ話に聞こえるが、実際にそういった話が転がっているのがIT業界だ。

3億円で500台
 このしくみに注目して設立されるのが「マイニングセンター」だ。高速で作動するコンピュータを導入、ネットに接続して作動させることで、報酬を獲得することを目指す。かかるコストは初期の設備投資と電気代、そしてシステムの運用スタッフに支払う人件費だ。
 このうち電気代は、コンピュータを動かすのにかかると同時に、熱くなったコンピュータを冷やすのにもかかる。つまり、気温が涼しい地域でマイニングを行えば、熱い地域よりもコストを抑えることができる。スピードマイニングが旭川進出を決めた理由は、まさにそれだった。
 ス社はホワイトペーパー(投資家向けの事業説明書)の中で以下のように説明している。
 「マイニングセンターは日本の北海道内を予定しています。(中略)日本の北海道は東京から遠く離れた地方で寒冷であり、拠点として適しております」
 ほかにもス社は▽まず自己資金3億円で500台のマイニングマシーンを発注済み▽その後ICO(後述)で30億円を調達、うち20億円でマイニングマシーンをアジア最大規模となる3000台購入、といった大風呂敷をホワイトペーパーで広げている。
 ス社がマイニング以上にウェブページで力を入れて宣伝しているのがICOだ。ICOとは「トークン」という独自の仮想通貨を発行し、投資家に販売して資金を集める行為のこと。仮想通貨の将来がバラ色なら投資家は利益を得られるが、その見通しが立たない現状では、投資家にとりリスクの高い投資先となる。ただ、ス社はWebページ上で、昨年11月付けでトークンの販売が終了したと説明している。販売予定額を売り切ったためなのか、ほかの理由なのかは明らかにされていない。事業への投資を名目に広く出資を募った企業の経営が破綻して大きな被害が出る事件は過去に何度も繰り返されてきただけに、ICOに応募した投資家としてはス社の今後の事業がうまく進むことを祈るしかない。
 この冬も旭川市民を苦しめている厳しい寒さがIT事業で強みになるなら、まさに「奇貨」。IT産業を発展させる絶好のチャンスだ。だが、さまざまな情報を総合すると、ス社の将来性には疑問符がつく。この「鉱山」がそもそも「虚構」だった可能性さえある。

「全日」の再興目指す
 2012年8月、「㈱全日本プロレスリングシステム」という会社が東京都文京区湯島で設立された。設立目的の冒頭には「プロレスの興行」と記されており、取締役には、渕正信という昭和のファンには懐かしいレスラーも名を連ねていた。
 この企業はその後、㈱アールワン→㈱きらめきアセットマネジメント→㈱小嶋不動産と転々と社名を替えていくことになる。会社の設立目的はそれ以上のペースでコロコロと変更され、不動産売買→各種債権の買い取り・保証→新車・中古車販売業→不動産の販売・運用と変遷した。社名が「スピードマイニング」、に変更されたのは昨年10月のこと。ほぼ同時に登記上の本社を旭川市内に移転している。
 こうした社名や目的の頻繁な変更自体に、法的な問題はない。注目すべきは、設立から2013年11月まで「白石伸生」なる人物が社長を務めていたという事実だ。
 実業家の白石氏はプロレス好きが高じて、ジャイアント馬場の死去以降、低迷が続いていた全日本プロレスの支援に名乗りを挙げたが、結局低迷を脱するには至らず、現在はプロレスと距離を置いている模様。SNSで奔放な発言を繰り返したこともあり、一時はプロレスファンに名を知られる存在だった白石氏も、最近ではほぼ忘れられた状態になっている。
 その白石氏の名前が再び登場するのが、㈱みんなのクレジットをめぐる騒動だ。同社はウェブサイトを通じて広く集めた資金を融資する「ソーシャルレンディング」事業を手がけていたが、関東財務局による調査で、集めた資金の大部分が親会社に集中していたことが判明し、昨年3月に1ヵ月間の業務停止命令と業務改善命令を受けた。8月にも東京都から業務停止処分(1ヵ月)と業務改善命令を受けた。みんなのクレジットは数千人から総額34億円を集めたと言われ、投資家は巨額のお金の行方に注目している。なお、白石氏は4月29日付けでみんなのクレジットの社長を辞任している。

「みんクレ」との関係
 話をそろそろスピードマイニングに戻そう。ス社は昨年11月、東京銀座に本社を置く㈱NEWARTの子会社である㈱ニューアート・コインとの戦略的業務提携を発表した。ス社はニュースリリースで「ニューアート・コイン社から弊社にマイニングマシーンが発注され、弊社が運用管理まで一貫してサポートして参ります。また、その結果、幣社が現在実行中のマイニングICOにおける投資家への仮想通貨リターン率はマイニング管理受託からのレベニューシェアによる追加マイニング収入が加算され、これまで以上に高くなります」と強調している。
 ここで白石氏が再度登場する。N社で会長兼社長を務める白石幸生氏は、前述した白石伸生氏の父親だ。
 スピードマイニングと、みんなのクレジット、NEWARTの関係をもう一度整理すれば…
①スピードマイニングの出発点となった企業で初代社長を務めたのが白石伸生氏
②その後、白石伸生氏が社長を務めたみんなのクレジットでは、ネットを通じて集めた資金の大半を関係会社に融資していたことが明らかになり、業務停止処分を受けた。出資金が出資者に戻ってくるかはいまのところ不明
③スピードマイニングはネットを通じて広くマイニング事業への投資を呼びかけている
④ス社の経営からは離れているように見えた白石伸生氏だが、父・白石が経営するN社のグループ会社がス社と提携を結んだ。
 現在、みんなのクレジットは投資家から訴訟を起こされている状況。ウェブの掲示板には、ピンチを打開するためス社とN社がICOを企てたのだろうといった観測も書き込まれている。
 本誌ではス社の旭川事務所に電話をかけて取材を申し込んだが「代表は東京にいて忙しい」「取材は受けていない」との回答。ウェブサイトを通じて再度取材を申し込んだものの、英文の自動返信だけが返ってきた。ス社の本社があるはずのオフィスビルを訪ねたが、入り口の雪の積もり方から判断して、人の出入りはほとんど行われていないようだ。

消えた580億円
 この記事の取材をしている最中に「コインチェック」事件が発生した。仮想通貨を取り扱っていた業者、コインチェック社のサーバーが不正に侵入されて26万人から預かっていた総額580億円もの資金が不正に引き出されたこの事件は、仮想通貨が多くのリスクをはらんでいることを浮き彫りにした。旭川の街角で計算するだけで富が生み出されるというのは投資家だけでなく市民にとっても夢のある話だが、冷静に見守る必要がありそうだ。

表紙1803
この記事は月刊北海道経済2018年3月号に掲載されています。