官製談合証言は〝昔話〟か?

官製談合──いまから15年ほど前に社会を騒がせた問題だ。公共事業について他ならぬ発注者からの働きかけで、入札に参加する民間業者同士で入札価格をすり合わせ、特定の業者が落札するように仕向ける行為はもちろん違法なのだが、以前は当たり前のように水面下で行われていた。公取や警察による相次ぐ摘発でそれが社会問題となり、政府や地方自治体が競争原理を導入するための制度改革に乗り出した。しかし具体的にどのような手法で官製談合が行われていたのか、外部からうかがい知ることは難しい。ある人物が本誌の取材に対して、かつての官製談合の「最前線」を生々しく証言した。

「辞退の謝礼」封筒に
 A氏が上川管内の建設会社に勤めていたのは今から二十数年前のこと。ある日、その会社の所在地の町役場から呼び出され、社長に同行して町役場を訪れた。町の担当者から「町営団地の工事に入札してください」と言われ、入札要綱や図面などを含む書類一式を手渡された。数千万円規模の、町が発注するものとしては小さくない規模の工事だった。
 他にも数社が町役場を訪れて書類を入手した。異常なのはここから。同業の3~4社の社員がA氏の勤務先に足を運び、町役場から受け取ったばかりの入札関連書類を置いて帰った。引き換えにA氏の社長から手渡されたのは封筒。A氏があとで社長に封筒の中身について尋ねると、社長は事もなげに言った。
 「1社あたり30~50万円の『寸志』が入っている」。書類は受け取ったが「入札辞退」する見返りとしての金銭だった。
 町役場から書類を受け取りながら、それを持ってこない業者が他に1~2社あった。A氏は社長がこれらの企業に電話するのを聞いた。「あの工事はうちが〇〇〇〇万円で取る。おたくはもう少し高い金額で入札してください」。
 そして入札当日、A氏は社長とともに開札会場に行った。工事契約は予定通り、A氏の勤務している企業が勝ち取った。結果を聞いた社長が立ち上がり、「ありがとうございました」と言って深々と頭を下げるのを見た。感謝の相手が発注者である町役場なのか、工事を譲ってくれた同業他社なのかはわからなかった。
 この建設会社に勤めている時、A氏はもう1件、数千万円規模の町発注の工事で、同様の体験をしたという。

綿密な積算せず
 まっとうな商売をしている企業なら、価格を提示する前にはコストを綿密に計算するもの。建設業はコストの規模が大きく、また選択する資材や工事方法によって大きく金額が変わってくるため、一定の積算基準(町や村は北海道の積算基準をそのまま採用)に沿ってコスト、さらには入札価格を弾き出さなければならない。ところが、A氏は公共工事でも、厳密な積算を行っているのを社内で見たことがなかったという。理由は町役場から「〇〇〇〇万円で落札してください」との指示があったため。町役場は発注者としてコストを把握しており、それに一定額の利益を上乗せして、官製談合を主導していたことになる。
 それから間もなくA氏は離職。いまは民間企業を相手にする仕事についている。もちろん談合はなく、同業他社との間で厳しい価格競争を強いられている。いまから振り返れば、価格競争の余地がまったくない官製談合のしくみは異常だったと感じている。もっとも、「当時はそれが当然だと思っていたし、隣接する町でも同じことが行われていたはずだ」(A氏)
 A氏が目撃した官製談合は20年余り前の話であり、決して「最近」のものではない。では、官製談合や、民間業者同士の談合は根絶されたのだろうか。
 2013年旭川市、2016年札幌市、16年美瑛町…。ここ数年を振返ってみても、これらの自治体で官製談合が摘発され、逮捕者が出ている。内部通報など何らかのきっかけがない限り捜査当局は動けず、実際には他にも官製談合が行われている可能性がある。A氏は、いまも類似した行為が行われているのではないかと感じている。
 しかし、工事や入札には小さな町とはいえ多くの人が関わっている。なぜ官製談合に関する情報が出てこないのか。それは町や村における密接な人間関係と関係がありそうだ。旭川市民には想像がしにくいが、人口規模の小さな自治体では、「あそこの家の子はこういう子で、いまはどこでどんな仕事についている」といった情報が広く共有される傾向にある。談合に疑問を感じて情報を漏らせば、漏らした本人はもちろん、その家族親戚にも累が及ぶ。この記事でA氏のかつての勤務先やその所在地を伏せているのは、A氏や家族を保護するのが目的だ。
 一方、本州に目を転じれば、道内とは比較にならない大きな金額で、大手建設会社4社がJR東海のリニア工事で談合を行った疑惑が関心を呼んでいる。

特別扱いは不当
 「地元企業が生きていくためにも、談合は必要なんだ」──いまは存在しない建設会社の会長が本誌記者に語った言葉だ。地元の建設会社に落ちた金は結局、地域社会を巡る。激しい価格競争が繰り広げれれば、地域経済に落ちる金も減る、というのが主張の根拠だった。しかし、どこの自治体も懐事情は厳しい。昔なら市役所や町村役場が正職員に任せていた仕事を、人件費の安い臨時職員を雇ってこなすことも広く行われている。建設会社だけ特別扱いされていいいわけがない。
 A氏が本誌に語った一連の行為が、「むかしむかしある町で」で始まる昔話であることを願わずにはいられない。

表紙2010
この記事は月刊北海道経済2020年10月号に掲載されています。

「コロナ疑い」に苦悩する救急病院

 旭川市内では新型コロナウイルスの感染者が散発的に報告はされているものの、医療関係者の必死の努力や、一般市民の感染防止策への協力の結果、急増には至っていない。しかし足元では医療関係者の負担が蓄積。感染リスクをゼロにするのは不可能で、「私たちの病院で起きたらどうなるのか」と心配を募らせている医師も少なくない。医療システムを守るには、コロナのリスクを意識しつつ救急医療にあたる医師や看護師への支援や、情報公開のあり方の再考が必要だ。

厳重な防護で感染を防止
 市内のある二次救急病院に、患者が運び込まれた。患者は高齢者で発熱しており、意識は朦朧、栄養状態・衛生状態ともに悪く、自力では動けない状態で、明らかに入院が必要だ。高齢者の発熱は救急搬送の多くを占め、とくに珍しくはないが、現在、病院の対応はものものしい。防護服を着たスタッフが鼻に綿棒を入れて粘膜から検体を採取。院外の検査業者によるPCR検査が行われる。結果が出るのは陰性の場合翌日、陽性は翌々日。それまでは感染リスクのある患者として、厳重な防護下での対応となる。
 この病院ではコロナウイルスの道内上陸以来、救急患者への検査で結果が陽性となったことは一度もないが、対応を緩くすることは出来ない。「感染者と気が付かないまま受け入れてしまえば、院内クラスターが発生するから」と、この病院に勤務するA医師は説明する。一方で、こうした患者の受け入れを拒否することも考えにくいという。「高齢者が肺炎などで発熱するのはよくあること。断ってしまえば患者さんの行き場所がなくなる。さらには感染病棟を担う医師やスタッフ達に不公平な負荷がのしかかり、現場の疲弊を招く」
 旭川市内でコロナ対策の中心となっているのは市立旭川病院。公的な基幹病院も協力している。より小規模な病院もコロナウイルスと無関係ではいられないのだが、とくに救急医療の現場では、患者への対応に苦慮する場面がある。

遺体受け入れ断念
 それを端的に示したのが、発熱して死亡した人の事例だ。ある日、A医師に救急隊から連絡が来た。「発熱直後に心臓が停止した患者がいる。救急隊が2時間心臓マッサージを続け、市内中の病院に電話をかけているがどこにも受け入れてくれない。先生のところで受けてもらえないか」
 A医師は迷った。救急隊員のことを考えれば受け入れたい。コロナ感染であった場合、救急隊員は長時間「密」に患者に接触するほど感染リスクが高まることから、一刻も早くその状況から解放してあげたい。しかし、病人が死亡しているのは明らかで、新型コロナに感染している可能性があり、院内には受け入れられない。最悪、戸外での死亡確認は可能だが、かといって、そのあと遺体を外に置いておくわけにもいかない。病院内には感染リスクのある遺体を引き入れられない。保健所は夜間は閉まっており相談先もない。対応してくれる葬儀業者があるかどうかもわからなかった。
 感染が確定すれば、密閉型の納体袋に遺体を納めることで、病院スタッフへの感染拡大は防げる。しかし、札幌市内にある納体袋のメーカーにはコロナの流行が始まって以来、問い合わせが殺到しており、旭川市ではその時点で保健所に1枚が割り当てられただけで、A医師の病院は手に入れることが出来なかった。保健所からは、納体袋は貴重であり、遺体のコロナ感染が確定しなければ、各病院に割り当てることは出来ないという見解が示された。医師はやむを得ず救急隊員からの要請を断ったという。なお、納体袋に関する保健所の見解は今も変わっていない。

対応に苦労しても支給額は最低限
 多くの病院ではコロナの流行が始まって以来、軽い病気なら受診を控える動きが患者に広がっており、収入が減少している。その一方で、防護服、マスクなど院内感染を防ぐための資材は入手困難な上に値上がりし、A医師が勤務する病院では月100万円単位で出費が増している。公的な病院には手厚い財政措置が行われ、倒産の心配もないが、民間病院はより難しい経営を強いられている。
 政府は「新型コロナ慰労金」として、医療従事者個人に、状況によって1人あたり5~20万円を支給している。しかし、受給には都道府県からの役割を認定されている指定医療機関に勤務していること、コロナ患者を受け入れていること、実際に患者と接していることなどの条件から金額が設定されている。指定医療機関ではない場合、慰労金の支給対象にはなるが、二次救急で発熱者などの救急患者の受け入れを行い、さらには旭川市の夜間医療体制を支える輪番制の一次医療機関としてもコロナ感染疑いの患者を診ていたとしても、支給額は最低水準となってしまう。
 A医師が焦燥感を募らせるのは、こうした問題を伝える先がないためでもある。旭川市は市の関係部署や市立病院などの関係者を集めた対策会議を開いており、旭川市保健所、市内の5基幹病院、旭川市医師会、陸上自衛隊を集めた「新型コロナ対策連絡会」も2週間に1回のペースで開催されている。しかし、A医師の勤務する民間病院は会議に参加できない。現場で実際の臨床に関わる中、個々の事例にまつわる問題点を持ち寄り、様々な予測を立て対策を先んじて講じる必要がある。会議に参加したいとの要望は各方面に伝えているが、実現のめどは立っていない。
 こうした声があることについて旭川市医師会は「参加者が増えすぎるので、希望に沿うのは難しいかもしれない」と慎重な見方を示している。

公表回避も責められない
 A医師も同僚も、感染を防ぐために万全の措置を講じている。しかし、感染のリスクをゼロにはできない。「もしもこの病院でも誰かが感染したら、どうすればいいのか」と、A医師は心配が頭から離れない様子だ。企業経営者が自身の感染に際して企業名を公表して世間から称賛を浴びる事例もある。一方で、全国各地で医療関係者の感染が自治体により発表され、抗議の電話が殺到、診療業務に支障をきたす事態も繰り返されてきた。A医師は自問している。「もしも自分の病院のスタッフから感染者が出たら、報告するべきなのか」。
 疑問には理由がある。一般企業に勤務する一個人の感染が判明した時、それを自治体が発表するかどうかは、本人の意見を尊重した範囲で公表されている。一方、医療関係者の感染については自治体により判断が分かれる。発表された場合はその病院に全国から抗議が殺到し、来院患者が減ることもある。しかし、自治体により判断が分かれるということは、コロナ感染の疑いがある場合でも、市外で検査を受け陽性反応が出た場合に、市外での対応として旭川市からは発表されず、医師会からの通知もないという「抜け道」を作ってしまうことになる。この場合、感染の事実は自治体に把握されず、その病院に抗議が来るようなこともない。
 仮に市内での検査を回避した医療従事者がいたとしても、こうした行為を一方的に批判するのは難しい。普通に生活している人でも感染のリスクからは逃れられず、感染が知られれば病院が理不尽な批判にさらされる現実があるためだ。また、医療従事者が外部で感染したとしても、マスクや手洗いなど感染防止措置を徹底することで、同僚や患者への感染拡大を防げることは、これまでの事例が証明している。接触者全員に検査を徹底することは必須だ。しかし、「院内の集団感染ならともかく、医療従事者個人の感染を公表することにどれだけの意味があるのか。医療者でなければ会社勤めの人は会社まで発表されることはない。日々恐怖や不安と闘いながら病院に勤務する医療従事者やその家族を追い詰めて医療体制を守れるというのか」というA医師の問いかけは重い。

コロナ感染対策 まだまだ不十分
 国や地方自治体の対策によって、指定医療機関の検査体制、医療体制の強化はなされ、感染予防対策、感染者に対する対応や治療体制などは、緊急事態宣言の時期よりは安定しているように見える。しかし、軽症者が検査を受けるさいのハードルの高さや、前述した「感染したその先」といった不安要素は残っている。
 コロナ感染疑い患者やコロナ感染患者が亡くなってしまった場合には、厚生労働省から出されている処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドラインに沿った対応が推奨されている。コロナ禍以前には、遺族が葬儀会社を手配し、医療機関は遺体を密封する必要もなく引渡しをしてきた。コロナ禍以降、感染リスクがある場合は葬儀会社に敬遠されてしまうことも多く、遺族からも葬儀会社の手配に苦慮して医療機関へ多くの相談が寄せられている。葬儀会社が見つかったとしても「非透過性納体袋に収納、密封」が必要となり、医療機関にはそのための「非透過性納体袋」が必要になるが、製造販売を行っている会社には全国からの注文が殺到して手に入りにくい状態となっている。
 道外には、納体袋を自治体が用意し、葬儀会社とも連絡を密にして情報公開するなどして、市民のライフイベントにしっかりと寄り添っている自治体もあるという。こうしたバックアップを保健所をはじめとする行政機関がしっかりと行うことは、コロナの最前線で頑張り続ける医療機関、医療従事者の負担減にもつながるはずだ。
 ウイルス感染症の一種であるコロナは、秋から冬にかけて新たな波が発生する可能性が指摘されている。感染や重症化を防がなければならないのはもちろんだが、医療システムの崩壊を防ぐことも同様に重要な課題だ。

表紙2010
この記事は月刊北海道経済2020年10月号に掲載されています。

コロナ軽症者「隔離施設」を準備

 道が主体となり、新型コロナウイルス感染者の中で軽症者を隔離する施設(ホテルなど宿泊施設を賃借)の設置の準備が道内全域で進んでいる。上川管内でも、旭川市内のホテル数軒が道の要請を受け入れ準備を進めている。今のところ上川管内では急を要する事態になってはいないが、札幌市のようにすでに隔離施設の利用者が出ているところもあり、クラスター(集団感染)などで一気に感染者が増加する事態に備えている。

上川管内の感染者、幸い少ないが…
 道は本庁に新型コロナウイルス感染者対策本部指揮室を設け、感染者の中でも軽症者を隔離する施設の開設を目的とした宿泊療養斑を組み、道内全域でホテルなどの宿泊施設へ協力を求めている。
 旭川市を含む上川管内では、9月2日現在、新型コロナウイルスに感染した人は46人(実人数で回復後に再び感染した人は1人としてカウント)で、死亡した人はいない。最も多い旭川市では21人となっているが、道内最大の都市、札幌市は1289人と旭川市の60倍余りが感染している。両市の人口を比較すると5・5倍ほどの開きがあり、札幌市のコロナ感染者の数が桁違いに多いことがわかる。
 本誌9月号で市保健所の川辺仁部長インタビューでも指摘されていたように、旭川市の場合、市外の人との交流が少なく、市民が用心して慎重に行動していたことが大きな感染が発生しなかった要因と見られている。
 それとは対象的に、ビジネスなどで本州との人の交流が多い札幌市では、ある程度の感染は致し方ないという意見もあるが、一方で「住民意識が低く、夜の街や医療機関、高齢者施設でのクラスターが多すぎるのではないか」という指摘もある。

第2、第3波で感染拡大の恐れも
 旭川市内の総合病院でコロナ感染者を受け入れるのは、市立病院をはじめ日赤や厚生病院、医大病院、旭川医療センターの5ヵ所。その中で重症者のみを扱うのは、日赤と医大病院の2ヵ所。市立病院と旭川医療センターは元々、感染症病棟や隔離病棟を備えている。
 保健所によると、「9月3日現在、市内の5ヵ所の総合病院でコロナに感染した患者を入院させているのはわずか数人。クラスターなどで急激に感染者が増加した場合、すべてを受け入れることができるのかと言われれば難しいかもしれないが、専門の隔離病棟を増やすことは可能で今のところ余裕はある」という。
 それでも、国が割安な旅行ができる「GoToトラベル」を進めていることや、国民が窮屈な思いをしている中で我慢できずに外出して「夜の街」に繰り出す動きも一方であり、第2、第3波の感染拡大が懸念されている。
 そうなれば、非常時に備えて対策を取ることは不可欠であり、いざというときに備えて道も道内全域に感染者の隔離施設を準備する必要に迫られている。
 実際の動きとしては、すでに札幌市でススキノにあるホテル「東横イン」と契約して開設した隔離施設がある(現在は契約が終了)。その後、同市南区にあるアパホテル(670室)と契約をして当分の間、利用する体制を整えている。

数軒のホテルが協力姿勢
 そのような動きの中で、上川管内では旭川市内のホテルに道が依頼した業者を通じて要請した結果、数軒(噂では3軒)のホテルが道の要請に協力することとなり、感染者を受け入れる準備を進めている。当初、市内で閉校した小中学校を軽症者の隔離施設として活用してはどうかという意見も一部であったが、「室内の改装や医療機関関係者の確保、隔離に耐え切れず〝脱走〟する患者を監視する警備など24時間体制で管理する必要があり、あまりにも経費がかかりすぎる」という理由で、具体化には至らなかったようだ。
 道と契約するホテルは、1棟丸ごと賃貸し、「前もって隔離施設の意義をしっかりと理解していただいた上で、ホテル側に負担をかけないように損をしない程度の金額で契約する。契約終了後は、専門の業者に依頼して館内をしっかりと洗浄することで、ホテルのイメージダウンを極力防ぐよう対策をとる」(道の担当者)。
 ホテル側が実際受け入れる場合は、予約状況などを見ながら、タイミングを図って行われることになる。感染者の数にもよるが、1棟すべてを借り上げるため対象となるホテルはひとまず1軒にとどまる模様だ。宿泊費(食事代含む)は、すべて国からの補助金を充てるため患者負担はない。
 患者への対応は、当然のことながらホテルの従業員ではなく道と市保健所が受け持つ。症状に応じて医師や看護師を派遣することもあり、一定期間(2週間程度)様子を見て、完治していれば施設から解放されることになる。
 これ以上感染者が増えることがないことを祈るばかりだが、「備えあれば憂いなし」と言われるように拡大を未然に防ぐ対策が必要だ。

表紙2010
この記事は月刊北海道経済2020年10月号に掲載されています。

名寄市街地近代化 補助金審査に甘さ?

 名寄市の「中心市街地近代化事業」は、商業地域内で行う店舗や事務所の新築・増改築の工事費を市が補助するというものだが、事業者が市役所に申請する書類等の審査体制が不十分なため、補助金の不正受給が横行する可能性が出てきている。市は「審査は適正に行っている」と強調するが、市民の間からは「このままでは公序良俗に反する、ただの税金のばらまきに終わってしまう」と危惧する声も上がっている。

工事費8割補助 上限600万円
 名寄市では従来から市内の中小企業者を対象に様々な支援事業を行っている。今年に入ってからはコロナ対策の一環として一部、補助基準の特例措置を設け、期限付き(今年4月~来年3月)で支援の中身を充実させたものもいくつかあり、その中の一つに「中心市街地近代化事業」がある。
 これは、市が都市計画用途地域としている商業地において、店舗や事務所を近代化(新築・改築・増築)する場合に工事費の一部を市が補助するというもので、これまでは工事費が300万円以上のものについて2割まで補助するという基準を、150万円以上の工事について8割まで補助すると基準を変えた。
 補助限度額の600万円、施工業者は地元企業であるという条件は変わらなかったが、さほど大がかりな工事でなくとも制度を利用できるようになり、しかも8割も補助を受けられる仕組みに変わったことは、深刻なコロナ問題への対策とはいえ、行政にとっては結構な大盤振る舞いである。
 工事を計画する事業者が行う補助金申請は4月から始まっており、窓口となる市経済部産業振興室によると、7月末現在で申請が上がってきたのは3件ということだが、「中心市街地近代化事業」と同様の制度で、中心市街地以外のエリアを対象とする「店舗支援事業」(補助限度額100万円)の方は7件にのぼっており、この際、積極的に行政の支援を受けようとする中小事業者の意欲が伝わってくる。

工事金額水増した見積書を市に提出?
 7月下旬、名寄の市民から本誌に情報提供があった。簡単に言えば「補助金申請における市の審査が不十分で、このままでは市民の血税が悪質業者の食い物にされる」という内容だった。この情報提供者Aさんは、市に対して審査のずさんさを指摘し改善を求めたが、その時の対応の甘さに納得がいかず、このまま放っておけば被害が増え続けると、詐欺罪の適用を求めて警察にも情報を持ち込んでいる。
 Aさんが「中心市街地近代化事業」制度に盲点があることを意識し始めたのは、市内のある工事業者が話していた内容を耳に挟んだからだ。
 この事業では、補助の対象となるのは建物の新築や増改築に係る経費だけで設備の更新や屋根・外壁の塗り替え・補修などは対象外となるのだが、飲食店事業者から改築工事を相談された施工業者が「役所の担当者は、1本5000円の材料を5万円だ10万円だと言っても分からないから、補助に該当するような見積書を作ってあげる」と言っていたというのだ。
 これは言い換えれば、見積書の工事金額を増やすことによって、補助金として受け取る金額も増えるから、その分で補助対象外の工事も行えるということである。さらにうがった見方をすれば、実際以上に補助金を多額に受け取ることができれば、事業者と施工業者で山分けできるということにもなる。ここまでくれば、補助金制度を利用した悪質な詐欺ということにもなる。
 Aさんも、こうした手口の詐欺行為が行われているという証拠を握っているわけではない。しかしAさんは、水増しの見積書を作ってあげると言っている施工業者(個人事業主)の人柄を知っていることもあり、疑いの思いは募るばかりだ。

表紙2009
この続きは月刊北海道経済2020年09月号でお読み下さい。

近文清掃工場建替  電力転売難航で練り直し

 旭川市から排出される「燃やせるごみ」の焼却を一手に引き受けている近文清掃工場(近文町13丁目)。1996(平成8)年に完成・稼働したこの施設の煙突は高さ801メートル。それほど高い建築物がない市内では一種のランドマークともなっている。順調に進めば2022年にも着工する予定だったこの工場の建て替え計画について、大幅な見直しが必要となっている。主要な問題は3つ。現在の工場が老朽化で使えなくなるまでに、新工場を完成させるのは可能なのか─。

廃プラ焼却のはずが
 近文清掃工場は稼働から20年が経過するのに対応して2012年に「長寿命化計画」を策定し、13~16年に基幹的設備改良工事を実施して施設を10年間延命。2026年度までの使用が可能になった。
 しかし、どんな設備もいつかは使用期限を迎える。2027年度以降のごみの焼却処理の方針決定を迫られた旭川市は昨年4月までに「旭川市清掃工場工場整備基本構想」をまとめた。その3年前の「新・旭川市ごみ処理・生活排水処理基本計画【改訂版】」、2017年6月の「旭川市最終処分場整備基本構想」でうたわれる将来のごみ処理システムの基本方針が、清掃工場整備の基本構想にも反映されている。
 同構想によれば、旭川市の現行のごみ処理のしくみが抱える課題のうち、近文清掃工場が受け持つ焼却処分に関する主なものは以下の通り。
①廃プラスチック類を燃やせないごみとして直接埋め立てしている。
②焼却施設の年間稼働率が約9割と高水準にあり、不測の事態に対応する余力が少ない。
③ごみ焼却で発生する熱エネルギーで発電を行ったり、プールの水を温めるなどして再利用しているものの、回収率が低い(2016年度実績=7・8%)。
 このうち①について補足すれば、プラスチック製容器包装については毎週決まった日に回収が行われており、リサイクルのしくみが確立している。廃プラスチックとは容器包装以外のプラスチックを指し、CDや歯ブラシ、園芸用のプランターなどがこれに当たる。旭川市ではこれらのプラスチック製品を、燃やせないごみとして出すよう市民に求めている。
 ちなみに、2015年度に旭川市内で発生した燃やせないごみの量は1万270トン、このうち4112トン、比率にして約4割が廃プラスチックだったと推定されている。
 しかし、廃プラスチックの扱いは地域によって異なる。たとえば札幌市では廃プラスチックを燃やせるごみのカテゴリーに入れている。旭川市では「燃やせないごみ」、札幌市では「燃やせるごみ」と扱いが違うのは、ごみそのものというよりも受け入れ施設側の事情。もともとは石油から作られているプラスチックは含まれるエネルギーの量が多く、「燃えすぎる」ために、紙や布を燃やしたときよりも炉内の温度が高くなる。あらかじめプラスチック焼却を想定して建設された焼却炉でなければ破損する可能性がある。近文の清掃工場はプラスチック焼却を想定しておらず、2013~16年の延命でもプラスチック焼却のための改修は行わなかった。このため「基本構想」には、対応する焼却炉を導入して廃プラスチック類を処理対象とする方針が明記された。

新設のほうが安い
 ③のエネルギー回収効率に関しては、リサイクル率向上に役立つ「メタン発酵」という技術があるものの、コスト上昇や維持管理の複雑化といった不安要素があるため導入を見送り、現行の3倍、6300キロワットの発電能力を持つ設備を導入して高効率化を目指すことになった。
 清掃工場は市民生活に必須の施設だが、整備には巨額の費用が必要となる。旭川市は工場を建て替えた場合、再度の大規模改修を行い2度目の延命を行った場合の20年間の収益を試算して比較した。その結果、はじき出された建設費用は、建て替えが213億円、再度の延命が302億円。「市の実質負担額が優位であることから、焼却施設の整備方法については新設を基本とします」(基本構想)との姿勢を明確にした。
 単純に建設費だけを比較すれば、延命のほうが安いのだが、建て替えれば国からの交付金(66億円)、起債にかかる交付税措置(78億円)、完工後の売電収入など(42億円)といった収入が見込めることから、合算すれば新設のほうが安上がりになると、旭川市はソロバンを弾いていた。

政府が戦略を変更
 この基本方針を見直す必要が出てきた。理由は2つある。まずは廃プラスチックの扱いの変更。これまで政府はプラスチック容器の回収を推進する一方で、容器以外のプラスチックについては焼却することも認めてきた。埋め立て処理は環境に一定の影響が及ぶ上に、廃プラスチックに含まれるエネルギーが無駄になる。それなら燃料として活用して「熱回収」したほうが地球に優しいというわけだ。
 ところが、政府のこの方針が変更されてしまった。昨年5月31日に環境省、消費者庁、経産省などがまとめた「プラスチック資源循環戦略」には、「プラスチック製品の使用後は効果的・効率的なリサイクルシステムを通じて、持続可能なかたちで徹底的に分別回収し、循環利用(リサイクルによる再生利用、それが技術的経済的な観点から難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を含め)を図る」との方針が盛り込まれた。方針変更の背景には、地球温暖化やプラスチックごみによる海洋汚染への世界的な規模での関心の高まりがある。
 プラ資源循環戦略は熱回収を完全に否定したわけではなく、旭川市環境部廃棄物政策課も熱回収の余地が残されたことに注目している。しかし、政府が新しい方針を明確にした以上、廃プラスチックを燃やす清掃工場をいまから建設すれば、論議を呼ぶのは必至だ。
 今年7月21日には、政府の有識者会議がプラ容器だけでなく、リサイクルされていない廃プラスチックも一緒にリサイクルするのを促進するため、新しい分別区分「プラスチック資源」を設けるとの基本方針を公表した。年内にも法改正を含む改革案をまとめる方針。旭川市の新しい清掃工場で廃プラスチックを焼却するのはますます難しくなっているように見える。

独自送電線も検討
 さらに大きな問題が、北海道電力の送電網との接続。旭川市では「北電と2017年から事前相談を始めたが、見通しが立たない状況。現在、接続検討を申し込み、正式な回答を待っているところ」と説明する。つまり、北電からは電力を買い取るとの確約は得られていない。
 北電では一般的に「電力を買えない」とは言えず、「買うためには新たな設備を追加しなければならない」と説明する。こうした場合、設備追加のコストは発電事業者が負担することになる。このため旭川市は昨年度、「自営線供給」つまり自前の送電設備を使った北電への電力整備についても調査を行い、「制度上」は可能であることを確認した。しかし、コスト面で見合うかどうかはまた別の話だ。
 理解に苦しむのは、電力の買取に関して北電からの確約が得られない状況で、なぜ基本構想をまとめたのか。東日本大震災の後、当時の民主党政権が再生可能エネルギーの活用を促進したことを受け、全国各地で大規模な太陽光発電所の建設構想が持ち上がった。旭川の近郊でも数百キロワットクラスの太陽光発電所が続々と登場したが、愛別飛行場跡地を活用する数十メガワットクラスの構想は実現しなかった。北電から数十億円規模の送電設備の整備が必要と伝えられたためだ。こうした経緯を知っていれば、従来の3倍近い発電能力を持つ新清掃工場の建設が基本構想に盛り込まれることはなかったのではないか。
 電力が売れなければ、収支計画は根本から崩れてしまう。前述した通り、旭川市は清掃工場の建て替えでエネルギー回収効率を高めて発電、これを北電に売却することで、10年間で42億円の収入(基本料金や購入料金を差し引いたネット額)を上げることを見込んでいた。再延命の場合はわずか3億円。42億円がまるまる消えたとしてもまだ新設のほうが安上がりだが、再延命と比較した場合の魅力は薄れてしまう。このため市は現在、「今年度中に方向性を整理して、次の見通しを立てる」(環境部廃棄物政策課)ことを目指している。
 なお、2026年度までとなっている現在の清掃工場をそれ以降も使用することは、整備コストはかさむものの可能だという。

新設の敷地も「?」
 基本構想によれば、新しい清掃工場は、現工場の隣に建設されることになっていた。現在は資源ごみ中間処理施設「近文リサイクルプラザ」がある一角だ。リサイクルプラザをまず東旭川に移転、空いた土地に新しい清掃工場を作るはずだったのだが、別稿記事で報じた通り、近文リサイクルプラザの今後も状況は見通せない。清掃工場新設の用地についても疑問符がついたことから、市は年内にはスケジュールを再調整するとしている。
 ごみの処理は基本的な政サービスの一つ。万が一にもほころびが生じないよう、旭川市はごみ処理の将来像を市民に示す必要がある。

表紙2009
この記事は月刊北海道経済2020年09月号に掲載されています。

日本最北のCG制作会社 スタジオBACU

 時代の最先端を進むIT産業で、旭川市内の企業が東京の企業と競争するのは難しいと思われがち。実際には、誰でも知っている人気アニメ映画の一部が、市内のスタジオに並ぶパソコンから生み出されている。Studio BACUを訪ねて、CG映像制作の最新事情を探った。

人気アニメ映画 6作連続で参加
 「旭川ではどんなものが作られているの?」─社会科の宿題に取り組む子や孫から質問されれば、数十年前に小学校で受けた授業を思い出しながら、コメや野菜などの農作物、酒、肉、紙パルプ、家具といった品目を教えるはずだが、いまの子どもたちが飛びつく情報がある。「劇場版『名探偵コナン』最新作の映像のかなりの部分が、この旭川で作られている」
シリーズ第24弾となる『名探偵コナン 緋色の弾丸』の劇場公開は、新型コロナ対策のため予定されていた今年春から来年4月に延期されてしまったが、その予告編を動画サイト「Youtube」で観ることができる。例えば劇中に登場するリニアモーターカー。実車を撮影したわけではなく、仮想の車両データをコンピュータ上で「走らせて」、その映像データを合成している。昔のロボットアニメは見る角度によってロボットの体が歪んでいたり、さらにはペンを握るアニメーターによって微妙に形が異なったりしたものだが、コンピューターが莫大な量の計算を行って作り出す「CG」の映像は常に正確だ。
 戦前から昭和に至るまで、問屋街が形成されていた2条通。その13丁目にStudio BACU(スタジオ・バク)がある。2階の部屋には大量のパソコンが並び(その多くには2台のディスプレイが接続されている)、20代を中心とするスタッフたちが制作に取り組んでいた。アニメ映像の制作が仕事だが、ペンを持つ人は一人もいない。
劇場版コナンの制作に、BACUは第19作の「業火の向日葵」(2015年春公開)から参加している。「担当する部分は少しずつ長くなり、最新作では全編約90分のうち半分以上に関わりました。劇場版コナンのCGはすべてうちでやっています」と、BACUのチーフマネージャー・松倉大樹さんは説明する。
 ちなみに、1997年から毎年春に公開されている劇場版名探偵コナンは日本のアニメ産業、映画産業にとっての「大黒柱」的なシリーズ。2018年の「ゼロの執行人」は同年の興行収入邦画部門1位(91億8000万円)、19年の「紺青の拳」は同2位(93億7000万円)だった。毎年決まったシーズンに上映されるアニメ映画としては他にも「ドラえもん」「ポケモン」などがあるが、近年はコナンが稼ぎ頭だ。

表紙2009
この続きは月刊北海道経済2020年09月号でお読み下さい。

日本医師会新会長は買物公園ビルオーナー

 日本医師会の会長選挙で、5期目を目指した横倉義武氏(75)を破り新会長に就任した中川俊男氏(69)は旭川出身。舌鋒鋭い理論派で熱血漢。「スピード感ある新しい医師会、平時医療の強化」を掲げる新体制に期待は大きい。

ガチンコ選挙
 「日本医師会(日医)」は、全国の開業医や勤務医がおよそ17万人が加入する公益社団法人。その影響力は医療関係の業界にとどまらず、政界にも及ぶ。
 そのトップを4期8年務めてきた横倉義武氏は、福岡県にある病院の理事長で、麻生太郎副総理とも懇意。政界とのパイプは太い。日医のトップに就任した9ヵ月後に政権トップの座に返り咲いた安倍晋三総理大臣も旧知の仲で、診療報酬の改定をはじめとした重要な局面では直談判を行うなど医師会の要求実現に手腕を発揮してきた。このため2期目以降の会長選挙では、無投票、あるいは大差で再選されてきた。
 日医トップの任期は2年で、今回は新型コロナ感染拡大が依然終息しない状況下での会長選挙、6月1日公示27日投開票となった。
 旭川市内の開業医の話──「選挙などやっている場合ではないと、日程の延期も検討されたようだ。行うにしても無投票による決着を望む雰囲気で、副会長を10年務める中川氏の立起意思が固いことから、横倉会長が勇退する方向に傾いた。しかし何があったのか、公示直前になって横倉氏が〝再チャレンジ〟を表明し、ガチンコ対決となった」。
 横倉氏の翻意の背景には、自民党二階俊博幹事長らの続投要請があったとされる。

東西対決の構図
 今回の会長選挙では、北海道医師会の長瀬清氏が選対本部長を務め「これからの医療は、病院や大学も含めて考えていかなければならない。先々を読む力と行動力がある中川氏こそ新会長にふさわしい」と全面支援を打ち出した。
 最大の票田である東京都医師会も中川氏についた。「正義は中川先生にある。新しい医師会を一致団結してつくることが大事だ」と尾崎治東京都医師会長はエールを送った。
 このほか東北など東日本の医師会が中川氏支援を表明。これに対して九州を中心とする西日本にある医師会が、四国を除き一丸となって横倉氏を推した。
 過去に一度、小樽の医師会から日医会長選に出馬した例がある。事前予想では大きくリードし「北海道から初の日医会長誕生」と期待されたものの、結果は惜しくも落選となった。東西対決の構図となった今回の選挙で旭川市内の開業医の中には過去の道内候補落選の記憶もあって「現職横倉氏優位」と、西日本がリードとする向きが少なくなかった。
 投票は東京都文京区にある日本医師会館で行われた。投票権を持つ代議員は372人で、この日は1人だけ欠席。一人ずつ壇上の投票箱に投函した結果は、「中川191票、横倉171票」。中川氏が17票差という接戦を制した。勝因の一つは、やはり大票田東京都の支援を取り付けたことのようだ。

中川ビルオーナー
 新しい日医会長誕生は新聞やテレビで報じられ、そのたびに「中川氏は旭川出身」とされているが、不思議なことに〝中川氏の〝旭川時代〟を知る人は極めて少ない。
 公表されている経歴によると中川氏は、1951年6月27日旭川生まれ。奇しくも今回の会長選の日が誕生日だ。77年に札幌医科大学医学部を卒業し、88年に「新さっぽろ脳神経外科病院」を開院している。本誌編集部では1951年生まれの市内の開業医、企業経営者などにコンタクトしたが旭川時代の中川氏の消息に詳しい人には会えなかった。ただ、市内の不動産業者から「4条通7丁目買物公園に建つ中川ビルのオーナーは中川俊男氏だ」との情報を得た。
 登記によると、実際に中川氏が所有し、1998年11月に中川ビルディング㈱に抵当権が移っている。不動産業者によると「中川ビル7階にあるクリニックの副院長は中川氏の実の妹で、中川ビルディング㈱は一族の会社」だという。
 中川ビル7階のクリニックを訪ねたものの副院長に面談することはできなかったが、札幌医大で同窓の複数の開業医に中川氏の人となりを聞くことができた。

理論派のリーダー
 大学同窓の開業医の話では、中川氏は熱血の人。
 「サッカー部に所属しMF(ミッドフイルダー)をやっていた。チームの中心でリーダーシップを発揮しまとめ役だった」「学生運動が盛んな時代。中川さんも弁舌鋭くアジを飛ばしていた」「理論派で、行動とともに説得力があった」。組織の上に立つ資質を学生時代から持っていたようだ。また「函館ラサール出身なので函館の人だと思っていた。日本医師会の役員になってから会ったこともあるが、故郷のことや家族の話は聞いたことがない」と話す同窓生もおり、プライベートなことにはあまり触れない人柄のようだ。
 政権と太いパイプがあった横倉氏を破った中川氏には、政権との距離に不安が残る。旭川市内の開業医は「横倉体制では、安倍政権との関係を強化し、診療報酬の引き上げを勝ち取った。中川体制でどうなるか。年内には75歳以上の医療費に2割負担を新設する制度設計も待ち構えている」と話す。そうした危惧を払拭するかのように、当選後に中川氏は自民党の二階幹事長と会談し「自民との関係は不変だ」とアピールした。
 北海道初、旭川出身者で初の日医新会長は、当面コロナで手腕を問われ、社会保障改革では75歳以上の医療費2割負担導入の成否が焦点になる。

表紙2008
この記事は月刊北海道経済2020年08月号に掲載されています。