災害の要因は無落雪屋根?

 7月2日から3日午前にかけて猛烈な雨が降り、旭川市内では24時間で195㍉を超える観測史上最高の降水量を記録した。このため市内全域の汚水管が集まってくる忠和地区では3ヵ所のマンホールから大量の水があふれ出し、十数戸が床上浸水する被害が発生した。一見、豪雨による自然災害と見られがちだが、実はその要因をつくった責任の一端が市内全域の住民にもあることを知っておきたい。「忠和の災害は、天災ではなく人災だ」の声も聞こえてくる。

旭川は汚水管と雨水管の分流式
 おいしいと評判で、ペットボトルに詰めて販売までしている旭川の水道水。市民の「上水道」に対する関心は高いと思われるが、「上下水道」とひとくくりにされる、一方の「下水道」に対してはどうだろう。重要性では上水道と同等、あるいはそれ以上なのだが、汚水管が地中深くに埋まっていて普段目にすることがないため、一般的な市民生活の中ではほとんど意識されない存在になっている。
 旭川市内の場合、各家庭のトイレや風呂、台所などの生活排水は、地域にくまなく張り巡らされている汚水管を流れて忠和にある下水処理センターへ運ばれる。また旭川は広域圏下水道として周辺の東神楽、鷹栖、比布、当麻、東川の5町の汚水管ともつながり共同処理をしているため、下水処理センターへ流れていく汚水の量は相当なものとなる。
 つまり旭川市内及び周辺5町の汚水は、直接下水処理センターへつながる台場と神居の一部を除いてすべて、忠和へ忠和へと流れていきそこで合流しているのである。下水処理センターでは実に1日に16万㌧以上の汚水を処理し、石狩川へ放流している。現状の処理能力はギリギリのところにあるという。
 旭川の下水道は、汚水と雨水を別の水路で集め、汚水は浄化処理して川へ放流し、雨水はそのまま川へ放流する、いわゆる分流式を採用している。このため、誤って雨水が汚水管へ流れてしまうと、汚水処理場は想定外の事態となり定量オーバーになってしまうのである。
 汚水管と雨水管の分流式。市民はまずこのことをしっかり意識しておかなければならない。

雨水が大量に汚水管へ流入
 7月2日から3日にかけての豪雨による災害を総括した旭川市は、忠和地区の浸水について、その理由として「汚水管への大量の雨水侵入」を挙げた。通常の汚水以外に雨水が大量に混ざり込んだことにより、全市の汚水が集まってくる忠和地区でマンホールの蓋が破壊し、そこから汚水が道路に流れ出し、近くの忠和体育館駐車場や住宅街が浸水したというものである。
 そして、なぜ汚水管へ大量の雨水が流れ込んだのかの理由として、地下に染み込んだ雨水が汚水管のつなぎ目から管の中に侵入したり、マンホールの蓋の穴から雨水が汚水管に流れ込んだり、さらにそれ以上の大きな可能性として、本来、雨水管へつながっているはずの融雪槽からの排水や、無落雪屋根の上に降った雨水を雨水管へ流すスノーダクトが、市内の多くの家庭で汚水管につながっている状況を挙げた。
 通常の汚水の他に大量の雨水が汚水管に入ってくると、流れる量は通常の2倍から3倍ほどに膨れ上がり、下水処理場の能力の限界を超えてしまう。それが処理場近くのマンホールの蓋の破壊につながってしまう。今回の忠和地区の浸水事故はその典型ともいえるのである。

雨水、融雪水は必ず雨水管へ
 旭川市水道局のホームページを見ると、豪雨当日の7月3日に「大雨による下水道への影響について」として次のような発信を行っている。
 「大雨のときには、汚水管にも大量の雨水が入り込むことから、マンホールから水が溢れ出たり、トイレが一時的に流れにくくなったり、ゴボゴボと音がして水が噴き出す現象が発生することがあります。
 これは下水道施設の不具合によるものではなく、大量の雨水が汚水管に流れ込むため、汚水管が満杯となり流れづらくなることと、汚水管の中の空気が上に押し出されることが主な原因です。ほとんどの場合は天候の回復及び時間の経過とともに収まりますが、降雨量が多い場合は上流から流れ込んでくる水量も増えるため、下流側の地域では雨が止んだ後もしばらくこうした現象が続く場合もあります」
 大量の雨水が汚水管に流れ込むことによって生じる状態を説明し、市民に注意を促す内容のものだが、実は同じ水道局のホームページ上では2年以上前から「雨水・融雪水等の放流先について」として次のような発信もしている。
 「雨水、融雪水などは、必ず雨水桝(雨水管)、側溝に流すか、地下に浸透させてください。
 スノーダクト、融雪機などの排水(雨水、融雪水など)は、汚水桝(汚水系統)に接続しないでください。
 汚水桝は、水洗トイレ、台所、風呂などの生活排水を流すための施設です。汚水桝から下水処理場までの一連の施設(公共下水道)は、使用者のみなさまからの使用料によって管理しており、雨水、融雪水などを流されますと、維持管理に支障をきたします。
 なお、雨水・融雪水などの排水管を水道局で管理する雨水舛(雨水管)に接続される場合は、市役所への道路占用申請のほか、水道局への手続をお願いいたします」
 ホームページ上で呼びかけられている二つの内容をつなぎ合わせて読み解くと、つまりこういうことになる。
 「豪雨で上流から大量の雨水が流れ込むと、下流の汚水管が満杯となり、マンホールから水が溢れ出ることがある。だから雨水や融雪水は必ず雨水管か側溝に流すようにして、決して無落雪屋根のスノーダクト、融雪槽などからの排水を汚水管に接続しないようにしてほしい」
 水道局では、汚水管を流れる水の量が増えるのは旭川市内の無落雪屋根、融雪槽の排水管が、本来つなぐべき雨水管でなく、違反行為にあたる汚水管に接続されている可能性が強いとみているのだ。

無落雪屋根の雨水が汚水管へ
 旭川市水道局では、市内の無落雪住宅の屋根からの排水が、正しく雨水管につながっているかどうか、ほとんど把握できていない。また調査する方法もない。住宅敷地内の地下を掘り起こし、排水管がどうなっているのか確認すれば分かることなのだが、市内だけでも何万戸もある個人の住宅でそれを実施することは事実上不可能。
 雪を屋根に乗せたまま自然に溶けるのを待つ無落雪屋根は、道内を中心にここ20年ほどの間に著しい普及を遂げている。旭川でも近年の新築住宅の大半はこの方式で建てられている。
 無落雪屋根にもいくつかの種類があるが、一般的に普及しているのはスノーダクト方式。屋根の形状を緩やかなM字型にし、中央部分に排水溝(スノーダクト)を設け、雪が溶けた水をそこに集め、排水管を通って雨水管に流すという仕組み。
 これは雪が降り積もるシーズンの話だが、雪のない時期には無落雪屋根は大量の雨を受け止め、雨水管へ流すことになる。しかしその雨水が雨水管でなく汚水管の方へ流れる仕組みになっていると、大雨が降れば下水処理場へ流れていく汚水管があふれてしまう。
 水道局では市内の無落雪屋根からの雨水がかなりの量で汚水管に流れ込んでいるのではないかと見ている。その理由として「本来の雨水管へつなぐと凍結する可能性が高くなるので、生活排水のため1年を通して水温が安定している汚水管の方へつないでいるのではないかと思う」と推測する。

違反行為による災害天災ではなく人災?
 無落雪屋根住宅の新築工事の際、建築確認申請では正しい配管の図面を提出するが、実際の工事にあたっては汚水管につないでしまう。建築業者が勝手にやるのか、建て主が要望を出すのか、ケースはいろいろあると思われるが、結果として雨水管につなぐべき雨水を汚水管の方へつないでしまう。このようなことが相当数あるものと想像される。また、新築の際には正しくやっていても、凍結事故の修理の際に〝改造〟してしまうケースもあるようだ。
 行政はそうしたことを承知していながら、現場を掘り返し、確認する作業ができないでいる。その間に忠和地区の汚水管があふれ出し、住宅に被害をもたらしたのである。天災ではなく人災だと言われても仕方ない。
 人災とするならその責任が誰にあるのか難しいところだが、いずれにしてもなんらかの改善策は見出したい。また、使用料金が生じるはずの下水道の無断使用は、発覚すれば詐欺行為に相当する可能性もある。

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この記事は月刊北海道経済2018年9月号に掲載されています。