市議補選で蝦名余裕のトップ当選

 3議席をめぐって4人が出馬した旭川市議会議員補欠選挙は自民党公認と推薦の2人、立憲民主党公認の1人が当選し、市議会会派の空席を元通りに埋めた。共産党は初の5議席目をねらったが夢はかなわなかった。これにより旭川市議会の会派構成は辞職した3人に代わるメンバーが元通りの数で決まり選挙前の状況を維持することとなった。

高橋・石田の3位争いだった
 旭川市議会自民党・市民会議の木下雅之、林祐作、民主・市民連合の宮崎アカネが道議補選への出馬を決めたことから市議会に3つの空席ができ、自民党公認の蝦名安信(38)、同党推薦の高橋英俊(53)、立憲民主党公認の野村パターソン和孝(37)、共産党公認の石田尚利(52)の4人の新人が出馬した。
 正式な立起表明は野村(8月11日)、蝦名(同17日)、石田(同23日)、高橋(9月10日)の順だったが、蝦名は2019年にはすでに次期市議選への出馬を決意し、補選の実施が濃厚となった今年7月には、勤務していた旭川空港ビルを辞職し、いち早く戦闘態勢に入っていた。
 候補者の顔ぶれが確定した時点で選挙の焦点は3位争いだった。大物政治家の秘書経験が長く、自民党旭川支部の期待を背負った蝦名と、組織選挙がお手の物の立憲民主が送り出した唯一の候補・野村の1位、2位は確実な情勢で、3位、4位を自民の高橋と共産の石田が争う構図となっていた。石田の得票目標は、過去の道議選で共産候補が獲得していた票数をどれだけ上回るかで、最大で2万9000票は可能な数字と考えていたようだ。過去には、共産の怪物と言われた萩原信宏(現銀座通内科クリニック院長)が道議選で2万5000票を超えたことがあったが、萩原の後を受けた真下紀子は2万票を超えられず、潜在的に共産は2万票が上限とみられていた。自民の高橋がこれを超えることができるかどうかが3位、4位争いの焦点となっていた。
 ある程度票が読める石田に比べ、高橋の得票は全くの未知数。現役の弁護士という特異な存在で話題性はあったが、一番遅い立起表明に加え、俗に選挙の〝三ばん〟といわれる三つの条件、地盤(組織)・看板(知名度)・かばん(資金力)もなく、自民党推薦という肩書だけが票集めのプラス材料だった。
 結果は高橋が当選。単純なことだが、石田の上限とみられていた2万票を上回る得票だったことが勝ちにつながった。しかし2人の勝敗の行方は投票箱のふたを開けてみなければわからず、勝った高橋、負けた石田、ともに開票日の夜中には天国と地獄のようなドラマがあった。

自民期待の星 蝦名の存在感
 蝦名のトップ当選は大方の予想通りだった。自民党旭川支部にとっても期待の星であり、将来的には政治家としてさらに上をねらえる大器。183㌢の長身でどこにいても存在感がある。政党のテコ入れに加え、JCやPTA、町内会など市民参加の活動にも取り組み、父親(信幸=旭川市議7期)が培ってきた選挙地盤からの応援も受け、隙のない選挙戦だった。1年半後の正規の市議選ではどういう体制づくりになるのか注目される。
 2位当選の野村パターソン和孝の得票は、立憲民主から1人だけの出馬だった割には予想を下回る結果だった。しかし、政党関係はなんとかまとめられたものの、自分の後援会組織はにわか作りで未成熟だった。それを考えれば、まずまずの得票だったといえるのかもしれないが、野村にとっては1年半後の本戦が本当の挑戦となる。

投票先決まらず際立った無効票
 今回の市議補選を総括すると、特徴的なのは無効投票の多さで、選挙戦における市民への浸透が足りなかったことがよくわかる。通常の市議選では白票などの無効票はせいぜい1000票なのだが、今回は5639票と際立った。
 投票率こそ前回2019年の本戦の41・30%を大きく上回る49・42%だったが、これはあくまでも市長選との相乗効果。3つの選挙が同時投票だったため、投票所へ足を運んだものの市議補選についてはだれに投票してよいものかわからず、何も書かずに投票箱に用紙を入れた人が100人中4人もいた。道議補選も同様の傾向だったが、市議補選については突出した。
 本来最も市民に身近なはずの市義会議員選挙。今回は市内全域が対象で、地域密着型の選挙戦でなかったことが白票の多さに見て取れる。

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この記事は月刊北海道経済2021年11月号に掲載されています。
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