破局率45% 旭川の離婚事情

 「離婚数」を「婚姻数」で割って「離婚率」をはじき出すと、45.34%と出た。「3組に1組」を大きく上回り、旭川市の離婚率は高止まりしている。その理由を探ってみた。

4割超えて…
 北海道、中でも旭川は離婚件数が多いと以前から言われている。本当にそうなのか? 保健所が集計している、年間の婚姻数と離婚数を調べてみた。
 確定値として公表されているのは2021年の数字で、この年に結婚したカップルは1215組、そして離婚したカップルは551組となっている。お役所では「人口1000人に対し何件の離婚があったか」を計算して「離婚率」としている。これで計算すると離婚率は「1.70」だ。
 この年、全国では50万1138組が結婚し18万4384組が離婚。全道では1万9326組が結婚し8662組が離婚。離婚率はそれぞれ「1.5」「1.68」。これと比較すると、確かに北海道は全国平均より離婚率が高く、その中でも旭川はさらに離婚が多いことがわかるのだが…。
 しかし、コンマ以下のわずかな差であって、人口1000人当たりの割合で示されても、正直言って、多いのか少ないのかピンとこない数字だ。一般的に「3組に1組が離婚する時代になった」との言い回しがあるが、3組に1組、2組に1組が破綻すると表現された方が、離婚率の高さがダイレクトに伝わってくるというもの。
 そこで公にはあまり使われることはないが、離婚数を婚姻数で割って算出する離婚率を使ってみる。
 21年の旭川市の離婚率は、「551組÷1215組」で「45.34%」となる。破綻率ともいえるが、4割を超して5割に近い。なるほど、〝破局するカップルが多いマチだ〟と合点がいく。
 同じ算出方法で全国の離婚率を出すと「36.79」。ほぼ3組に1組が破綻していることになる。北海道は「44.82」で、4割を超す高率だということが分かる。

南端と北端で高い
 国(厚労省)の人口動態統計には都道府県ごとの離婚率が掲載される。順位はその年によって変動するが、上位の顔ぶれは大きくは変わらない。沖縄、大阪、北海道、福岡が〝常連〟となっている。先ほどの「離婚数÷婚姻数」で離婚率を算出すると、いずれも45%前後とさすがに高率だ。
 日本列島の南端と北端に位置する沖縄と北海道は、常に横綱、大関クラスの位置にある。その理由が気になるところだが、沖縄は古来、薩摩藩と中国本土の影響を受けてきた。また、戦後にはアメリカ統治を経験している。そうした他国からの文化流入の歴史があって、他都道府県にはまだ保守的な家庭感、夫婦感が残っているのに対し、それとは違うクールな結婚感が育ったのではないかとの分析がある。
 一方、北海道は開拓によって開かれた地域で、開拓者たちは厳しい寒さと広大な土地を切り拓いて生活するしかなかった。男も女も一緒になって働かなければ生きていくことが無理。開拓にくる人は男性が多く女性は貴重な存在で、労働においても生活においても女性は不可欠で大事に扱われた。それで女性は自分を主張するようになり、男勝りで強くなっていった。北海道の女性は強く自由、主婦も外で遊ぶことが多い。そうした背景が、離婚率の高さにあるとされる。

家庭経済余裕なし
 旭川の場合は加えて、ひ弱な経済体質も理由にあげられる。
 「旭川は経済が不安定で所得が低い。低所得な家庭が多いが、一方で持ち家志向が強く、新車購入とか飲み歩くとか消費行動も旺盛だ。このため住宅ローンなどの支払いにきゅうきゅうとなり、妻も働きに出ていく。社会に出ればいろんなことがあり浮気や不倫に発展するケースも出てくる。夫婦間の争いも生まれ絆は不安定になり何かのきっかけで離婚に発展していく。家庭経済に余裕がないことが離婚率が高い理由だ」との見方だ。
 見回すと、記者(本田)の知人・友人にも離婚経験者が大勢いる。プライベートな問題なのでごく簡略に彼女、彼らの離婚に至る経緯を紹介する。
〈ケースA・60代S子さん〉若くに結婚し一男一女を授かったが、第一子が生まれた直後から夫婦間の争いが絶えず30代で離婚。「転職が多く収入が安定しない夫だった。家計をやりくりし子育てしていくことに疲れ喧嘩が絶えなかった」
 大手保険会社が男女それぞれの「離婚の理由」をまとめている。女性があげる理由は多い順に、、①性格の不一致②生活費を渡さない③精神的な虐待④暴力⑤異性関係⑥浪費、となっている。ケースAは、②と、旭川特有の「家庭経済に余裕なし」
が理由となっているようだ。
〈ケースB・40代A子さん〉結婚3年目で別れた。「嫌いになって別れたわけではない。うちの会社の取引業者なので今でもときどき顔を合わせるが、知り合いとして普通に話す。毎日の食事づくりなど家事をなぜ私ばかりやらなければならないのかと不満が募って切れた」。保険会社がまとめた離婚理由にぴったり合うものはないが、無理にあてはめるならば①の性格の不一致だろうか。

相手の不貞
 次の〈ケースC・T夫さん〉は、かなり年下のかわいい女性と熱烈恋愛で結ばれ、すぐに女の子が生まれた。子どもが生まれた直後から夫婦仲が怪しくなっていった。「喧嘩の毎日が続き、彼女は元の彼氏と復縁して子どもを連れて去った。元カレとの関係はずっと続いていたのではないかと思っている」
 男性側があげる離婚理由は、①性格の不一致②精神的な虐待③異性関係④家族親族との折り合いが悪い⑤浪費する、となっている(大手保険会社集計)。「異性関係」は離婚理由の3番目だ(女性側は5番目)。T夫さんは破局の影に元カレの存在を疑っているが、「自己主張が強く男勝り。主婦でも外で遊ぶことが多い」とされる北海道の女性の異性問題は夫婦間の火種となるケースは少なくないようだ。
 こちらは記者の親族の話。〈ケースD・K夫さん〉ともに30代で結婚し、すぐに子どもが生まれたが、K夫さんは結婚直後から妻の異性関係に疑いを抱いていた。一子誕生から激しい争いになってドロドロの離婚劇を展開した。K夫さんはその後落ち着き、温厚そうな女性と出会い再婚した。

ピークは過ぎた?
 悲しいケースの紹介が続いたが、離婚・破綻が増えているといっても、半数を超す夫婦は艱難辛苦を乗り越えて長く生活をともにしている。高齢になっても仲睦まじいカップルも存在するのも事実だ。
 ここまでの話を否定するようだが、実は離婚件数自体は2002年ころをピークに全国どこも減少している。理由は明快で、婚姻数が減少しているからだ。
 厚労省の人口動態にある全国平均離婚率も「2.0」を超えていたものが「1.6」台にまで減少している。沖縄、北海道と逆に、離婚率が低い(1.2~1.4)方の常連は、富山、秋田、島根などだが、いずれも少子高齢化が進んで婚姻数自体が減っている。
 旭川の確定している過去5年の婚姻数も、2017年から、1555件→1412件→1449件→1317件→1215件と推移し、5年で340件、率にして20%強減っている。離婚数も、644件→666件→652件→545件→551件と、5年前と比べると21年の離婚数は91件の減少だ。
 「離婚数÷婚姻数」での離婚率は、41.4→47.16→44.99→41.38→45.34。必ずしも増加を続けているわけではなく21年はその3年前の18年と比べるとダウンしている。「離婚が増えている」と感じるのは、婚姻数自体が減少していることと、熟年離婚など身近に感じる破局のケースが増えているせいなのかも知れない。

人口減が元凶か
 最後にちょっと意外なデータ紹介。
 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県など首都圏は離婚率が低めだ。転入超過で若い世代が多く、ペアリングによる婚姻数の維持が続いているためと見られる。中部エリアもまた離婚率が低いエリアだ。
 36万都市だった旭川はいま人口32万人を割ろうとしている。少子化、非婚化はとどまることを知らず、本誌4月号既報の通り、高齢者を中心に単身世帯がついに4割を超えてしまった。人口減、少子化を何とか防ぐことが離婚率改善に最も重要な方策といえるのではないだろうか。

この記事は月刊北海道経済2023年06月号に掲載されています。
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