まるでドミノ倒し ピザ販売店に異変

 2021年6月に旭川初進出を果たし店舗数を増やしていった宅配・持ち帰りの「ドミノ・ピザ」だが、旭川市内の3店舗が一斉に臨時休業となった。コロナ明けによる需要の変化が影響しているようだ。

当分の間…
 休日のランチや誕生会、趣味のサークルの打ち上げなどで頼みたくなるデリバリーピザ。〝御三家〟といわれるドミノ・ピザ(以下、ドミノ)、ピザーラ、ピザハットは旭川にもそろい踏みし集客を競っている。
 全国店舗数ではドミノが業界ナンバー1で、旭川には21年5月に2条16丁目のセブンイレブンあとに「旭川2条店」をオープンさせ、続いて「旭川パワーズ店」「旭川緑が丘店」「旭川春光店」と一挙に4店舗体制とした。ところが10月に入って突然、春光を除く3店─2条、パワーズ、緑が丘の入り口ドアに「当店舗は令和5年10月16日より当分の間休業いたします」との張り紙が出され営業をやめた。
 休業を知らずに訪れた女性が言う。「持ち帰りが半額なので時々利用している。ピザ生地の種類が豊富でデリバリーでLを頼むとМサイズ一枚がついてくるので、いっぱい食べたいときに最高だった」

コロナ特需?
 ドミノは、東京都千代田区に本社を構える「ドミノ・ピザジャパン」が展開する。一度北海道に進出したものの撤退。コロナ禍がまだ収まらない20年11月に札幌市内に3店舗を出店し再進出した。5ヵ月後に伏古、北一条、清田1条をオープンさせて札幌市内6店舗とし、余勢を買っての旭川進出だった。
 外食、フランチャイズ業界に詳しい市内の企業経営者が解説する。「コロナ感染拡大の影響でフードデリバリー市場が急成長した。その筆頭は宅配ピザ。オンラインで注文が可能で、大手がさまざまなアイデアを打ち出した。対面せずに受け取る〝置きピザ〟も人気が出たし、ドミノではピザ×日本食のコラボ商品〝ピザライスボウル〟を発売して話題となった。コロナでピザは日常的な食べ物として浸透していった」
 コロナ禍で飲食業界全体が衰退していったのとは対照的にピザ業界は引きこもり特需で潤ったわけだ。
ピザ一択でなく
 しかしコロナが感染症2類から変更となり行動制限が撤廃された。市民が外食に出かける機会が増えている。ウーバーイーツや出前館は定着し宅配需要も一方で定着しているがウーバーも出前館もさまざまなものを注文できる。宅配ピザ一択という状況に変化がおきている。
 旭川ならではの競争の激しさもあるようだ。
 トリトン、魚べい、はま寿司、北々亭など大手回転ずしチェーンはすべて出店し、すき家、吉野家に一歩遅れをとっていた松屋も牛丼+トンカツの新店(大町)で巻き返しを図る。マクドナルド、ケンタッキー、かつやなどは不動の人気を保っている。「ピザも好きだが、ランチにするには高額だ。すき屋やかつやならピザの半額以下ですむ」─2000円台に達してしまう金額の高さでピザチェーンに二の足を踏む市民は多い。
 「コロナ明けの需要の変化」が影響しての旭川市内3店舗の同時休業のようだが、このまま再開はないのだろうか?

運営会社破産
 市内4店舗はもともと「ドミノ・ピザジャパン」の直営店舗だった。そのうち春光を除く3店舗は2023年10月1日に、神奈川県川崎市に本社を置く「㈱ROX’S」(岩口正義社長)のフランチャイズ店となった。大手宅配ピザチェーンに勤務していた岩口氏が独立し数店舗を引き継ぎ川崎市や旭川市で計7店舗を展開した。しかし複数の不採算店があって欠損を計上し資金繰りが急速に悪化。10月16日に全店の営業を停止し破産申請の準備に入った。
 旭川の3店舗はFC経営わずか半月という短命に終わった。ただし、3店舗の賃貸はドミノ本社との契約で店舗オーナーに被害はなかった。前出の企業経営者によると「2条店、緑が丘店は集客力があったようだ。ピザ半額キャンペーンなど市民に定着しており、企画力があるナンバー1チェーンだから、この2店舗は再開する可能性があるのではないだろうか」と話す。
 長期化するウクライナ紛争でピザの減量となる小麦の価格は今後も上昇するものと予想される。そんな環境下で旭川のドミノの復活はあるのか?

この記事は月刊北海道経済2023年12月号に掲載されています。
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