旭川に熱波「アサヒサウナ」

 サウナをこよなく愛する市民グループ「アサヒサウナ」(桐原和弘代表)。2019年に放送され、サウナブームの火付け役になった人気TVドラマ「サ道」(テレビ東京)には、この旭川市がサウナシティとして登場し話題となった。そんな時代の追い風を受け〝サウナ道〟をブームにとどまらず、サウナ文化として確立し、温浴施設の底上げやマチおこしにまで発展させたい思いを抱くのがアサヒサウナプロジェクトだ。

「蒸し風呂の日」に発足〝旭川の下町〟活性化へ
 サウナ好きを一般公募し、サウナに関する情報を共有したり、その魅力を普及する市民グループ「アサヒサウナ」。旭川を中心に帯広、札幌のほか、東京、長野など道内外にメンバーが点在し、増加傾向にある。昨年の6月4日、語呂合わせにちなんだ「蒸し風呂の日」に発足。買物公園通りに面した十字屋ビルの屋上、十勝岳温泉郷などでフィンランド式テントサウナで「ロウリュ」(フィンランド語で「蒸気」)を体験できる期間限定イベントを随時行ってきた。

桐原代表(右)と田中さん
 イベントでは「#ソラトサウナ」と称し、テント式のサウナを楽しんだり、旭川市内の寺院とのコラボ「#テラトサウナ」など、開催場所ごとに好評を得た。そんな取り組みが一つの形に結実したのが、6月に銀座商店街にオープンした「銀座サウナ」(3条通14丁目)。空き店舗を活用しマチおこしも兼ねた試みで、施設整備費はクラウドファンディングを通じて集まった金額(325万円)で賄った。
 その運営を担うのが、アサヒサウナのメンバー、田中朗嗣さんだ。7月に行われた北海道を元気にする粋な男子「エゾメン」を発掘するイベントの「エゾメンコンテスト」ヤング部門のグランプリ受賞者。アサヒサウナとしては銀座サウナを起点とし、銀座商店街だけでなく、周辺の高砂酒造や、旭川ラーメンの元祖ともされる蜂屋などの老舗、高架下の四条駅界隈などレトロで魅力的な場所が近隣に点在することから、これらを〝旭川の下町〟ととらえ、エリア一帯の活性化も目指している。
 田中さんは元々、八条プレジャー(昨年廃業)の常連だったが、馴染みの温浴施設への喪失感は大きく、その思いが銀座サウナ誕生の原動力にもなった。ドラマの「サ道」からは、「サウナと水風呂に繰り返し入るだけではなく、途中で休憩することで、よりサウナを楽しめることも知った」と実感を込める。「目標としているところは、サウナというキーワードを通じて好きな人はもちろん、サウナに興味がない人に向けて熱波を送りたい」。熱波師(日本サウナ熱波アウフグース協会公認)の資格も持ち、一過性で飽きられてしまいがちなブームに終わらせず日常の中に溶け込み定着する文化として、サウナ道の追求に意欲を燃やす。

旭山動物園にラーメン、これにサウナどころ?
 そんな熱波師のそばで、サウナ道の奥義を語ったのが、アサヒサウナ代表の桐原さんだ。「水風呂が苦手な方は多いですが、サウナで芯まで温めた後に水風呂に入ると、温度の膜が生成されて意外に入れますよ。たとえるなら〝水の羽衣〟を着たかのような感覚。これが出来れば、『ととのう』(神経が研ぎ澄まされた状態)は、すぐそこに。ストレスから解放され、頭がすっきりしますよ」。
 そもそも、桐原さんがサウナ道に開眼したのが、「ととのえ親方」と呼ばれサウナタレントとして名をはせるサウナ好きとの出会いから。桐原さんは元々水風呂も苦手だったが、ととのえ親方からサウナの入り方を伝授され、「こんな気持ち良くいいものがあるなら、この魅力を広げたい」と一念発起。アサヒサウナを設立することになった。
 昨年10月にはサウナ行脚とばかりに田中さんと5泊6日の日程で1都5県(東京、埼玉、千葉、神奈川、静岡、愛知)にまたがる名物施設めぐりを決行。途中〝サウナ界のゴッドファーザー〟が造る施設などをめぐりながら、サウナ親交を深めた。サウナ通の間では、サウナに目覚めるきっかけとなった最初の施設のことを「産湯」といった表現を用いているが、田中さんにとってサウナ行脚は、産湯の連続体験になったという。
 ちなみに、札幌には〝北の絶対王者〟とサウナーの間で呼ばれる名物サウナがあるそうだ。それぞれ熟練の熱波師が客のリクエストに応じ、「1、2、サウナー!」とタオルを使って」熱波を送る。
追加の〝おかわり熱波〟も、サウナーにとっては無上の一撃。その後の水風呂で体感する水の羽衣は、やがて「天使の羽衣」へとサウナーの間で称される至福の装備になる。
 血行がよくなり、全身に酸素と栄養が行き渡り、身体の細胞を元気づける日本由来の温泉とフィンランドが由来のサウナ。こうした至福のひとときを桐原さんは「ヒュッゲ」(デンマーク語で「自分を見つめ直す時間」)ともとらえ、観光面で「旭山動物園にラーメン、これにサウナを加え、認知をはかるための取り組みを進めていきたい」と語る。
 リラックスした状態で仲間と語り合うことも、サウナの楽しみ。フィンランド式のサウナハットをかぶり、サウナマットをお尻に敷き「ととのう」気分を満喫してみるのも、サウナどころならではの味わいだ。十勝岳温泉郷の白銀荘は〝北の聖地〟。旭岳や層雲峡の伸びしろも大で、アサヒサウナは旭川の温浴施設をめぐるサウナパスポートを近く作成する見通しだという。

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この記事は月刊北海道経済2021年09月号に掲載されています。