旭川VS帯広 公示地価に見る格差

 ライバル視される旭川市と帯広市だが、3月に発表された「公示地価」では、右肩上がりの帯広、停滞する旭川が印象付けられた。帯広エリアの地価が二ケタアップしたのに対し、旭川は横ばいが目立った。

外的要因で上昇
 訪日外国人観光客の回復や企業進出といった外的要因から道内の地価が上がっている。3月26日に国土交通省が発表した公示地価によると、住宅地の上昇率で「富良野市北の峰町25の11」が上昇率全国1位で、「千歳市栄町2─25─20」が2位の地点となった。
 富良野市では、円安から不動産が割安に映り外国人による転売やさらなる値上がりを見込んだ土地購入が盛んで、国内投資家も参入してさらなる価格上昇となっている。
千歳では、次世代半導体製造のラピダス(東京)の工場建設に伴う賃貸住宅用地の引き合いが続いている。ラピダス進出発表から1年余りで地価は3倍に上昇。中心部に事務所を構えられる空きテナントがほとんどない状況から引き続き需要は高いと見られている。
 「外国人要因」「ラピダス」といった特殊要因がないのに地価(住宅地)上昇が目立つのが帯広エリアだ。
 次ページに道内住宅地上昇トップ10を一覧にしたが、富良野や千歳に割り込む格好で「帯広市大空町1─6─13」が4位にランクインしている。また、隣接する幕別町の「札内あかしや町」も7位。
 4位の帯広市大空町は帯広駅から南西へ約7キロの郊外に位置する。1平方メートル3~4万円代の中心部より大幅に安く子育て世代が土地を購入してマイホームを建てるケースが増えているという。
 これに連動する形で隣接する幕別町や更別村の住宅地需要も多い。7位の札内あかしや町は、JR札内駅や幹線道路から少し外れているが帯広の価格上昇が波及してプラス19・5%となった。

地域で明暗
 これに対して旭川の住宅地価格はどうかというと、地域によって明暗が分かれている。
 今回発表された公示地価で、東光や豊岡の調査地点では昨年より千円以上上昇した地点も目立つ。
 「東光2条2─4─5」が前年の1平方メートル2万8200円から2万9300円。
 「豊岡2条8─7─17」が2万7000円から2万8100円。
 これに対して高砂台や春光台など高台の地区は下落傾向が続いている。橋を渡らず渋滞を回避して中心部に行ける東光・豊岡の住宅地需要は堅調だが、冬季の坂道が敬遠されて高台は人気が今一つとなっている。
 旭川の商業地公示地価をみると、国道沿いで交通量が多く店舗が集積している永山地区の2地点だけ価格は上昇したが、41年連続で管内商業地価トップの「旭川市2条8」は2年連続で横ばいとなっている。

旭川に波及せず
 道内の商業地の上昇率上位は、1位、千歳市幸町3─19─2で30・3%アップ。2位、千歳市千代田町5─1─8、29・3%、3位、千歳市錦町2─10─3、28・8%と、価格を大幅に伸ばしている。4位以下も、前年比20%前後上回る地点が続いている。
 41年間管内トップの商業地、旭川市2条8の価格変動率を過去10年さかのぼってみてみると、19年までは横ばいで20年に若干上昇したものの21年に急降下し22年も低迷。23年は回復して20年のレベルに戻ったのだが、今回公示では前年とほぼ横ばいとなった。
 同じく過去10年の全道の商業地価格変動率は、15年から20年までほぼ一貫して上昇し、コロナ感染拡大の影響から21年は大きく下落したが、昨年23年に回復し今回も微増となっている。
 商業地上昇率上位の数字に現れているように、道央圏を中心に地価は上昇傾向にあるのに、北海道第二の都市旭川には波及していないのが現実だ。
 旭川市の人口は今年2月末時点(以下も同じ)で31万9594人。対して帯広市の人口は16万2155人。人口規模からすると約2倍の開きがある。
 しかし帯広は農業を軸とした安定した経済基盤を持つ。
 帯広市と隣接する幕別町、更別村の〝リッチ度〟は、本誌昨年12月号で紹介した市町村ごとの「住民の平均課税所得」にも反映されている。帯広市は321万円で、幕別町、更別村は帯広を上回り、313万円、319万円だ。旭川市はというと298万円。帯広エリア1市2町の後塵を拝している。
 旭川の隣接町東神楽と鷹栖を幕別町、更別村になぞらえてみると、東神楽310万円。鷹栖は286万円。今回の公示地価、また平均課税所得からは帯広エリアに旭川エリアをしのぐ勢いを感じる。

この記事は月刊北海道経済2024年05月号に掲載されています。
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