ニセ建築士に手玉に取られた建築業者ら

 旭川市内で建築に関わる大勢の人たちが「あの女性にはだまされた」と感じている。建築士の資格もないのに「建築設計事務所」を名乗り、基本プランだけで建主の懐に飛び込み、業者に仕事を請け負わせ、工事監理まで仕切ってしまう。工期中は追加、手直しの連続で、その費用の大半は業者持ち。とうとう住宅の建主と建築業者が、建築士法に違反する行為だとして旭川中央署に被害届を提出した。

プラン作りだけの空間デザイナー
 「年齢は分からないが、子どもや孫もいるから50歳前後ではないか。持ち込んできた住宅建築の仕事を引き受けたが、建築設計事務所の名刺を持っていたので、すっかりだまされた。最初から何か不自然な感じはしていたが、まさか事務所登録もしていないモグリだったとは……」
 旭川市内で50年の実績を持つ工務店の2代目社長は苦々しく振り返る。この社長が〝モグリ〟と言い切る相手は、市内永山の自宅内に事務所を構え、空間デザイナーと称して住宅や店舗のプランニングに関わっている中年女性(以下Y氏)。
 話はこうだ。
 工務店は昨年11月、旭川近郊の顧客と約2900万円の工事請負契約を交わし、住宅の新築工事に入った。顧客を紹介してくれたのは、すでに建主と「設計業務委託契約」を結んでいたY氏。Y氏は「12年ほど前に御社が手掛けた住宅を見ている。とても素敵だったので私の仕事に力を貸してほしい」といった巧みな言葉で工務店に近づき、工事を依頼した。
 相手はてっきり建築士だと思い込んでいた工務店は、Y氏がプランニングした簡単な基本設計をもとに実施設計図面を作り、確認申請を提出した。その際Y氏からは「確認申請はこれまでも建築業者に出してもらっていた。この工事でもそうしてほしい」と頼まれていた。
 工務店社長は多少の不自然さは感じていたが、建築業者が実施設計を行い、確認申請を提出することはよくある話なので、Y氏の言葉に従った。しかし、後から分かることになるのだが、Y氏には簡単な基本設計図は作れても、役所から確認を取るための実施設計図を作る資格もなければ能力もなかったのである。

表紙1606
この続きは月刊北海道経済2016年06月号でお読みください。
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