旭川の建築単価 道内主要都市より割安

 地域経済で重要な役割を果たしている建築業。幅広い産業への波及効果もあり、その動向が注目される。「道内建築業」は「十把一絡げ」にとらえられることも多いが、実は地域によって状況は微妙に異なる。政府の統計をもとに地域別の建築業の状況を探った。

札幌に3分の1集中
 国土交通省が毎年行っている建築着工統計調査によれば、2018年に道内で着工した建築物は2万330棟、合計床面積は495万7365平方メートル、工事費予定額の合計は9421億9419万円に達する。北海道の主力産業と言われる農業の産出額が年間約1兆2000億円だから、建築業も道内産業の重要な柱であることがわかる。
 当然、建築業の着工件数には地域的な偏りがあり、人口195万人(人口はすべて2018年)の札幌市に道内合計の約3分の1にあたる7074棟が集中している。以下、人口8万人以上の12市(札幌、旭川、函館、釧路、苫小牧、帯広、江別、小樽、北見、千歳、室蘭、岩見沢)における状況に注目すれば、札幌の次が旭川の1376棟、函館の1051棟、帯広の873棟と、ほぼ人口に比例するかたちで続く。
 注目すべきは人口千人当たりで割った着工件数。最高は千歳市の6.44棟で、これに江別市の5.81棟が続く。大都市・札幌のベッドタウンとして発展を続ける千歳と江別で活発な住宅着工が続いていることをうかがわせる。これに続くのが帯広市の5.21棟。旭川は4.04棟とこれらの市よりかなり少ないが、それでも水産業の苦戦で人口減少の止まらない釧路市の3.34よりも多い。
 統計には建物の構造別の数字も掲載されている。棟数の大半を占める木造建築の床面積は全道の合計で241万3156平方メートル、棟数は1万6382。札幌市が5086棟で31.1%、旭川市が1189棟で7.3%、函館市が920棟で5.6%、帯広市が753棟で4.6%をそれぞれ占めている。

坪単価 最高は北見
 1棟あたりの面積にも微妙な違いがある。上記12市の中で着工した木造建築の1棟あたりの面積が最も広いのは岩見沢市の156.92平方メートルで、これに室蘭市の152.43平方メートル、旭川市の152.22平方メートルが続く。ちなみに札幌市は135.33平方メートル、その近郊の江別市は136.61平方メートル。地価の高い札幌周辺は他の地域よりも木造建築がやや小ぶりであることがわかる。
 建築会社の収益と密接な関係のある1平方メートルあたり単価にも、地域的なばらつきがある。12市で最も高いのは北見市の18万円。これに札幌市の17万3600円、千歳市の17万3100円、江別市の17万1800円が続く。旭川市は16万100円で12市では帯広市に次ぐ安さ。旭川市の木造建築の坪単価は道内の主要な都市のなかでは安めという状況が数字にはっきりと表れている。
 鉄筋コンクリート造の着工棟数は全道で1081棟。そのうち札幌市に760棟が集中している。新千歳空港の拡張が続く千歳市は36棟、函館市は26棟、旭川市は18棟、小樽市は12棟だった。1棟あたりの面積は農業関連の大型建築物の多い帯広市が3146平方メートルで最大。以下、室蘭市の2998平方メートル、北見市の2604平方メートル、苫小牧市の2569平方メートルが続く。旭川市は1788平方メートル、札幌市は1051平方メートルだった。
 鉄筋コンクリート造建築物の1平方メートルあたり単価に注目すれば、北見市は45万1700万円、帯広市が43万7100円。これらの地域では、大型かつ単価の高い建物が建設されていることがわかる。旭川市は28万8700円だった。
 道内の建築は都市部に集中しており、町や村では少数の工事しか行われていない。例外はインバウンド客向けのホテルや観光施設の建設が相次ぐニセコ地区。とくに人口が1万6432人しかいない倶知安町では各種の構造を合わせた棟数が168、面積が11万2826平方メートル、予定額が319億956万円に達するなど、集中的な投資が行われた。

耐寒でもコスト差なし
 以上、道内の状況に注視してきたが、道外の状況についても注目してみよう。よく言われるのは、道内、とくに寒さの厳しい道北や道東は断熱性能を高めなければならないため住宅コストがかさむという「特殊事情」。このコスト高が全国的な住宅メーカーの旭川進出を阻んでいると指摘する業界関係者もいる。ところが、統計を見る限り工事費にそれほど大きな違いはない。
 前述した通り、旭川市の木造建築の1平方メートルあたり工事費予定額は16万100円。旭川市と同じ30万人前後の人口を抱える他の中核市と比較してみれば、群馬県高崎市は17万6000円、埼玉県越谷市は16万3000円、山口県下関市は16万6000円、福岡県久留米市は16万3000円だった。なお、単価は道内でも道外でも都市から離れた町村部で割高になる傾向にある。ちなみに東京都23区内では台東区が21万6000円で最高だった。
 この記事では道内を中心に建築業の状況を見てきたが、旭川市内の主要な住宅メーカーが札幌圏など道内のほかの地域に進出するようになって久しく、今では札幌市内の工事現場で旭川市民になじみ深い社名を記したのぼりを見かけることも珍しくない。セールス人員や職人の確保など課題はあるものの、旭川市よりも単価が高いこと、そして需要が旺盛であることが全道各地への進出を促しているようだ。

表紙2002
この記事は月刊北海道経済2020年02月号に掲載されています。