塩漬け6年 東海大跡地の行方

東海大学旭川キャンパス(旭川市神居町忠和)の跡地が〝塩漬け〟のまま6年を迎えた。民間事業者からアイデアや意見を出してもらう「サウンディング型市場調査」も行ったが、利活用の方法は五里霧中のままだ。跡地の有効活用は今津寛介旭川市長の選挙公約の一つだが、今のところ具体的な動きは見えない。

寄付されたが
 同キャンパスは、1972年4月に東海大学工芸短期大学として、旭川市外を西方から見下ろす丘の上で開校した。当時の五十嵐広三市長が、東海大の松前重義総長に働きかけ実現したとされる。以来、建築・デザイン・木工・家具などの分野に優れた人材を数多く輩出してきた。卒業生は5000人を超える。旭川市内でも多くのOB、OGが活躍している。
 2008年には東海大学と統合され、旭川キャンパスとなった。「くらしデザイン学科」「建築・環境デザイン学科」の2学科を運営してきたが、少子化の影響で定員割れが続き、2010年には札幌キャンパスに「デザイン文化学科」を新設することで、旭川キャンパスを閉鎖・統合する方針が決まり、2014年3月に閉校された。忠和の高台にそびえていた旭川市民になじみ深いタワーが姿を消して久しい。
 閉校から2年後の2016年、土地35万平方㍍と研究棟・図書館(共に2000平方㍍弱)の一切が旭川市に寄付(無償譲渡)された。土地は一般的なゴルフ場の3分の1ほどの広さで、スタルヒン球場14個分に相当する。
 寄付はされたが、敷地内のグラウンドなどでスポーツ団体が野球やクロスカントリーの練習をしたり、専門学校が重機の使い方を教えるフィールドとして利用するなど、散発的な利用に留まっており、本格的な利活用には至っていない。

市場調査で民間は数々の魅力指摘
 旭川市は民間事業者への売却や貸付も視野に検討を重ねてきた。2019年には民間事業所を対象にサウンディング型市場調査を実施し、市内に事業所を有する3社から考えや意見を聞いた。3社からの意見として▽市中心部から近く利便性が良い▽自然が豊かで市内を一望できるロケーションの素晴らしさ▽新規事業の展開で雇用機会の創出と観光客の増加が見込める─などの指摘があった。
 提案内容は、A社が家具製造・体験交流施設(事業方式・購入あるいは賃貸)、B社が文化・観光施設(同・公設民営)、C社が高齢者向け福祉施設(同・賃貸)を挙げた。調査結果から、旭川市は民間事業者に利活用のニーズがあると把握する一方で、都市計画法が定める用途の制限といった課題が明確に浮き彫りになったと受けとめている。だが、この調査以降、具体の動きは見えず塩漬けが続く。

利活用妨げる土地の用途区分
 寄付された土地は、旭川市の都市計画で第2種中高層住居専用地域に定められている。建築基準法は、第2種中高層住居専用地域では、店舗は1500平方㍍を超えてはならず、原則2階建て以下と定めている。さらに、カラオケボックス・ボウリング場などの遊戯施設、ホテル・旅館といった宿泊施設も建てられない。こうした用途の制限から、文化・観光・交流といった施設を整えるためには現行の用途区分のままでは難しいのが実態。「都市計画法上の用途の制限は高いハードルの一つ」(所管・市政策調整課)との認識だ。
 用途の変更は、そう簡単ではない。変更することが旭川市全体の利益に合致する合理性のあるプランを有識者・市民(公募)らで構成する「都市計画審議会」に提示し、諮る必要がある。審議会の承認を経て道とも協議し、理解を得ることも求められる。

土砂災害警戒区域
 課題は、もう一つある。敷地内は土砂災害警戒区域で、一部は、一定の要件を基に開発が制限される特別警戒区域に指定されている。開発に伴う施工に厳しい技術的基準が設けられているほか、建築物の構造にも規制が加えられる。このため通常に比べ事業費が割高になることは必至で、利活用策のネックともなりそうだ。
 今津市長は、今年2月の記者会見で、冬季のトレーニングセンター誘致について言及をしているが、具体的な場所については明言を控えている。
 跡地から、国道12号のバイパスを超えた南には、旧優佳良織3施設がある。一時期、市内の経済人から一体的に再開発すべきとの声が出たこともあるが、具体化する前に旧優佳良織はツルハなどが取得した。
 東海大旭川キャンパス跡地の維持管理費は年間150万円ほど。厳しい台所(財政)事情の旭川市にとって重い負担だ。利活用されないまま塩漬けが続き、税金からこれまでに1000万円ほどの費用が投じられたことになる。
 跡地を整備するには、多大な資金投下が必要だが、一般家庭の預貯金に相当する市の財政調整基金の2020年度残高は44億円ほどで、中核市平均の半分ほどにとどまる。2021年度決算見込みの借金残高(地方債残高)は1718億円。「財政調整基金の額を見ても他の中核市に比べ低く、市の財政状況は決して潤沢とはいえず厳しい」(旭川市財政課)
 建設中の市本庁舎の今後の借金返済(起債償還)に加え、一般廃棄物最終処分場、旭川市民文化会館整備など今後も高額な支出が見込まれる案件が目白押しの旭川市にとっては、東海大学旭川キャンパス跡地の利活用で市が事業主体となる多大な投資はできるだけ避けたいのが本音だ。
 だが、塩漬けのまま年間150万円の公金を無益に費やすこともできない。早急な対応が求められる。旭川市に寄付された跡地は、全市民の共有財産なのだから。

表紙2208
この記事は月刊北海道経済2022年08月号に掲載されています。