野党の荒業不発 市議会で与党が正副議長独占

 前議長の再登板濃厚とも見られた議長選挙だったが、終わってみれば議員歴6期目の福居秀雄が選出された。野党会派は〝読み違え〟て、副議長ポストも手にできなかった。正副議長選を振り返る。(文中敬称略)

〝ねじれ〟を解消
 「当選回数、そして議会での経験や実績を見ても、次の議長は福居しかいないと見ていた。それなのに、なぜそれを阻止するような話が出るのか」。これは市議会議員選挙が終わり、正副議長選挙を直前に控えた市の幹部、今津市長側近から出た言葉だ。
 改選前の旭川市議会は、今津市長を支える、いわゆる与党の自民党・市民会議が11人、公明党が5人の合わせて16人だった。これに対し、いわゆる野党は民主・市民連合の9人、共産党の4人、無党派Gの3人、そして無所属2人の合わせて18人。議員定数は34だから野党が過半数を獲得し、自民党を支持母体とする今津市長にとっては、野党が与党を上回る〝ねじれ現象〟に陥っていた。
 しかし、今回の市議選で状況は一変した。自民党・市民会議は1議席増で12。これに保守系色の強い参政党で当選した笠井真奈美が会派に加わり、13と勢力を伸ばした。また、今津市長を支える立場の公明党は前回と同様、新人・現職合わせて5人の当選を果たし、自民勢力と合わせて18人となり「安定的多数」を確保できることになった。仮に、両会派から議長=採決には加われない=を出しても、過半数は維持できる。つまり、野党が多数を占める〝ねじれ〟は解消することができたのだ。

2年交代慣例
 自民と公明の話し合いで統一候補を出せば、議長ポストは手にできる。自民党は、当選回数の多い順から、杉山允孝、安田佳正がいるが、すでに議長を経験している。次に当選回数の多い福居議員が「順送り人事」として名前が挙がってくるところだ。
 しかし、選挙が終わった直後に自民党市議の重鎮に意見を聞いたところ「福居では、他の会派が納得しない」と不安感を吐露した。そして、もう一つ。4年前の市議選の後、議長に選出された安田が再び議長の座に座ることに意欲を見せているということだった。
 安田が議長になった時は、新型コロナウイルスの「嵐」が吹き始めたころで、議長としての公式行事や様々な会議などが、中止あるいはオンラインで行われるようになり、通常の議長の業務とは一線を画していた。したがって、議長として十分な活動が出来ていなかったという心残りがあったようだ。
 ただ、旭川市議会は法的には4年間となっている正副議長の任期を2年で交代することが慣例化している。かつて、保守系議員が議長になった時、法的な任期を根拠に、慣例を無視し4年任期を主張して、議長の座に居座ったことがあったが議会は大混乱。議案審議の本会議が開かれないという異常事態に陥った。しかし、それも議長が折れる形で半年後に混乱は解消。2年任期に戻った。
 一方、最近では民主党系の議員が、議長を4年間務めたという例がある。これは、まさに異例中の異例。その時は与野党が全くの互角で同数だった。このため、くじ引きで議長選が行われ、西川与党だった民主の候補が勝利。2年後の議長選も自民党がくじ引きを嫌って候補の擁立を見送り、民主の議長が再選された。

公明議員擁立
 議長を4年間務めるというのは極めて異例で、安田が2年あけて改めて議長ポストを手に入れるというのはかなり無理があったようだ。自民党議員に対しては外部からも「福居を議長に」という意見などが伝えられたようで、安田は再登板の断念に追い込まれた。
 ところが、民主系からは新たな多数派工作が仕掛けられた。
 それは、本来は一丸となって動き出すはずの「自民・公明」が揺れ動いている状況を見て、民主が公明の中村徳幸を議長候補とする動きを見せ、これに共産も同調。無所属の一人も民主と同様の動きを見せたことで、公明の「中村議長」誕生が現実味を帯びた。民主、公明、共産、そして無所属一人を合わせると18人となり、過半数を獲得できる。
 この荒業(あらわざ)に議会関係者からは「中村議長で決まり」との観測も流れたほどだ。
 しかし、その場面で逆に自民・公明の与党が結束、一枚岩となった。いかに福居では納得できないという声があっても、せっかく、ねじれを解消した意味がなくなる。

結束固めた自公
 改選後初めての臨時議会が行われた5月19日の本会議はまず、議長選挙から始まった。
 誰が誰に投票したのかは分からない「無記名」による選挙。結果は福居が18票、能登谷繁(共産)が10票、金谷美奈子(無党派G)が3票。白票と思える無効票は3票だった。
 つまり、自公会派合わせて18票は、そのまま福居に投票したことになる。野党は共産と民主、そして無所属に足並みの乱れが見られ、無効票は3票になった。続く副議長選挙では公明の中村が18票、品田登紀恵(民主)が13票、上野和幸(無党派G)が3票だった。無効票はなかった。
 追い詰められた与党の結束は逆に強まり、正副議長選挙は自公与党の結束の強さを改めて象徴する結果。「まさに一晩でひっくり返ったようだ」と議会関係者は話す。
 市の幹部からは「終わってみれば、今津与党の会派が正副議長ポストを独占した格好となった。本来であれば、議長は与党が獲得しても、副議長は野党に譲るというのがこれまでの形だったが、それが崩れたことで、今後の議会運営、市政運営に影響が出ないとも限らない」と懸念する声も出ている。

懸念材料多く
 それは、正副議長に次ぐともいわれる主要ポストである監査委員を高見一典(民主)と石川厚子(共産)の野党が独占したことにも見られる。
 主に、市の決算について審査するのが監査委員だが、これまでは与野党から一人ずつ出すのが慣例となっていた。ところが今回は野党が独占した。
 監査委員は全部で4人体制で、市が議員以外から選任する2人の委員がいるため、一定のバランスはとれているが、議会選出の監査委員が野党のになるのは珍しい。
 議会運営についても懸念材料はある。
 本来であれば、議長を出している会派から議会運営委員長を出すことになる。しかし今回は自民党会派から議会運営委員会の主要ポストに就いたのは、佐藤貞夫で、副委員長。公明の中野寛幸が委員長を務めることになった。これに対し自民会派の関係者は「佐藤は3期目といっても、2期目の一時期は無所属で自民党会派ではなかった。また議会運営員会の委員についても代表を経験したことはない」として「議会運営で経験豊富な公明の中野さんにお願いすることにした」と話す。
 また、今回の市議会の改選に合わせて、議会の常任委員会が担当する部局に入れ替えが生じた。議会にはこれまで「総務」、「民生」、「経済文教」、「建設公営」の四つの常任委員会が設置され、各部の案件が各常任委員会に付託され、審議されてきた。
 しかし、今回からは「経済文教」と「建設公営」がなくなり、「子育て文教」と「経済建設」に名称変更された。当然、所管する部局も入れ替わり「子育て文教」は子育て支援部といじめ防止対策推進部、教育委員会を担当することになる。委員は全員で8人だが、うち6人は女性議員。これまでの常任委員会の委員の構成としては異例中の異例だ。また、「経済建設」は経済部、観光スポーツ交流部、農政部、農業委員会、建築部、土木部水道局と多くの部署を担当することになる。
 4常任委員会の委員長は次の通り。総務・蝦名安信(自民)、民生・高橋紀博(民主)、経済建設・菅原範明(自民)、子育て文教・高花詠子(公明)。

この記事は2023年07月号に掲載されています。
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