人口は自然減でも外国人は転入超過

 道北では死亡者数が出生数を上回る「自然減」が加速しているが、外国人人口は増え続けて人口減を補っている。東川町や稚内市などが顕著で、旭川市も前年比104人増加した。

外国人の転入増
 北海道の人口が減り続けている。今年1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態によると、総人口は513万9913人で、昨年比で4万3774人減った。減少幅は全都道府県の中で最大だった。
 新型コロナ禍で出生数が減り、死亡が出生を上回る「自然減」が加速したことが要因とみられる。
 道内主要10市は軒並み減少となったが、減少数が最も大きかったのは旭川市で3774人。函館市の3675人、釧路市の2627人と続く。道都・札幌市も1156人の減となった。
 ただ、「外国人人口」は増え続けており、外国人の転入超過は全道で8530人となり、日本人の転出超過4509人を差し引いても4021人の「社会増」となった。
 急速に進む北海道の人口減を、外国人の転入が補っている格好。外国人の転入が多かった恵庭市、南幌町、倶知安町、ニセコ町、東川町、大樹町、占冠村、猿払村、鶴居村の計9市町村は、〈日本人+外国人〉の総人口で、昨年比増となった。
 東川町のように総人口でプラスに転じるほどの外国人人口増加ではないが、道北エリアでも、稚内市129人(+34.04%)、旭川市104人(+8.75%)留萌市51人(+45.95%)美瑛町35人(+43.75%)など増加が目立つ。14人と増加数は多くはないが、比布町は増加率で466.67%と全国町村で増加率1位となった。

外国人労働解禁
 なぜ、外国人人口、外国人居住者が増えているのか?
 一つは国策。政府が意図的に増やしている。
 「日本で学ぶ留学生30万人計画」を掲げた取り組みは2018年末に前倒しで達成され、その後も増え続けている。
 第二は1993年に制度化された技能実習制度。この制度を利用して来日した外国人は「技能実習」という在留資格を持ち日本で活動している。技能実習生が日本で培った技能・技術・知識を母国に持ち帰り技術移転、経済発展を伴う「人づくり」に寄与するという国際貢献が狙いの制度だ。
 その後、在留資格「特定技能」が新設された。単純労働領域で就労出来る在留資格の創設で、少子高齢化による人手不足から産業界が国に要請し、国が外国人労働を解禁。外国人労働者が出稼ぎ目的で来日できるようになった。
 また、国際化に伴う自然発生的な増加という面もある。
 外国人人口増加の要因はこのようにいくつかあるが、自身の企業で外国人労働者を雇用しているという市内の企業経営者は「特定技能制度導入で、旭川エリアの外国人労働者が増えている」と話す。
 「以前は、外国人労働者受け入れへの抵抗感があった。しかし現場はどこも人手不足で、社員の〝仕事を奪われる〟という懸念は少なくなり、労使ともに受け入れの下地が育成されてきた。経営者仲間で話していても、工場や農業、ホテルで働く外国人労働者が1年位前から急増しているのを実感する」

ベトナム急増
 実際、旭川でも、「特定技能」の残留資格で働いている東南アジアの人ではないか思われる若者のグループに出くわすことが多くなっている。毎朝の様に見かける男女十人余りのグループに声をかけてみた。3人の女性(10代2人、20代1人)が「日本にあこがれてきた。日本語学校で勉強しながら、コンビニ、回転寿司で働いている」と答えてくれた。あこがれで日本に来てバイトで生活費を稼いでいるとのことで、日本語学校留学生に認められている労働時間を超え「もっと働きたい」との希望も語ってくれた。
 外国人人口としてカウントされる者は何らかの在留資格─在留カードを所持している。今年1月1日時点の旭川市の外国人人口は1292人だが、在留資格別にみると、最も多いのが永住者で221人。特別永住者135人と合わせると356人になる。これに次ぐのが技能実習1号の196人、技能実習2号の110人。合わせると306人。その後が特定技能で110人となっている。永住者─技能実習─特定技能の順は、全国も全道も同じだ。
 また、1292人を国籍地域別にみると、最も多いのがベトナムで356人となっている。

コロナ後増加?
 ベトナム政府は労働者輸出国を目指し、海外への労働者送り出しを促進している。海外で働くベトナム人から家族への送金がベトナム経済の一部を支えているのが実情だ。多くの日系企業がベトナムに進出しており、日本での就労を希望するベトナム人は増え続けている。
 ベトナムに次ぐのが中国で193人、そのあとは韓国または朝鮮191人、フィリピン92人、ネパール84人、インドネシア70人などが続き、やはり東南アジアの人たちが多い。
 前出の企業経営者は「最近東京出張で利用した小さなビジネスホテルは、カウンターもルームサービスのスタッフも皆、東南アジアの人だった。業種によっては旭川も労働者の大半が外国人という時代がくるのではないだろうか」と話す。
 コロナ規制が緩和され、外国人観光客が急増している。特定技能の就労資格で来日する外国人労働者も増えるのではないかと思われるが、ただ昔のように「何がなんでも日本に」という状況ではなくなっている。日本国内でも魅力ある滞在先、働き先になれるかの地域間競争がある。人口減を補う外国人人口増大につながる魅力を打ち出せるかが、旭川の課題のようだ。

この記事は月刊北海道経済2023年10月号に掲載されています。
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