人口25万「帯広圏」気が付けばすぐ後ろ

 戸建て住宅の大きさ、飲食店の単価、屋台街の繁盛ぶりなどから、帯広圏を訪れて旭川市との経済格差を感じた市民も多いはず。釧路を抜いて道東最大の都市となった帯広だが、その周囲にある3つの町と一体的に発展しており、「帯広圏」の実力はさらに強い。合計人口はすでに約25万人。これからも旭川市の人口減少が続けば、帯広が「道東・道北最大の都市」になるかもしれない。

十勝川をはさみ連続する市街地
 JR帯広駅のある帯広市中心街から国道を北に向けて進み、十勝川にかかる十勝大橋を渡った先にあるのが音更町。やがてJA木野の運営する商業施設「ハピオ木野」が目に入る。天井の高い約2000平方メートルのスーパーに並ぶ商品は、旭川のスーパーと比較して高級感が目立つ。隣接する敷地では11月8日、無印良品ハピオ木野がオープンし、多くの買い物客でにぎわった。
 自治体こそ違うが、音更町は帯広市のベットタウンであり、人やモノ、カネの流れは一体化している。帯広市に通勤通学する人が音更で住宅を買い求めた結果、土地や建物への需要が増加。「いまやJA木野の主力事業は不動産と流通」との指摘もある。
 このまちの活発な経済活動のもう一つの象徴が、「道の駅おとふけ なつぞらのふる里」。4年前にNHKが放送した朝の連続ドラマが追い風となり、昨年4月15日に移転してから、今年8月2日には来場者が早くも200万人を突破した。
 こうした状況は、帯広市と、隣接する音更町・芽室町・幕別町からなる帯広圏の発展を示す現象の一つに過ぎない。

道内最多・3位の人口を誇る町
 帯広市が人口で釧路を逆転して、札幌市、旭川市、函館市、苫小牧市に次ぐ道内5位となったのは、2021年5月のこと。帯広市の人口は今年9月末の時点で16万2852人と、旭川市の半分程度だが、差はそれほど大きくない。帯広圏には帯広市の他に、人口1万人以上の町が2つあり、一体的に発展しているためだ。
 音更町の9月末時点の人口は町としては道内最多の4万3031人。幕別町は同3位の2万5665人。芽室町は1万7943人(10月末現在)。1市3町の合計は24万9627人に達する。音更町は十勝川、幕別町は札内川、芽室町は道路1本を隔てて帯広市と接している。広大で平坦な十勝平野の地形が、帯広圏の形成を後押ししている。
 ちなみに2010年国政調査によれば、帯広圏全体の人口は25万8594人。今年までに約3・5%減少したものの、同じ期間に北海道全体の人口が約7%減少しているのと比較すれば、小幅な減少にとどまっている。なお、旭川市の人口は同じ期間に8%以上、減少している。
 旭川市周辺で帯広圏内の自治体と同様の関係にあるのは、東神楽町ひじり野地区くらいのもの。他の町の市街地とは、田園や山で隔たれており、一体的な発展は望めない。旭川市に隣接する町で最も人口が多いのは東神楽町の9851人だ。
 76ページに道内各自治体の平均課税所得を比較した記事を掲載したが、市町村ごとに見た平均課税所得は多い順に芽室町(道内179市町村中21位、353万円)、帯広市(55位、321万円)、音更町(61位、319万円)、幕別町(69位、313万円)となっている。
 一方、旭川市および隣接する町では、東川町(33位、335万円)が最高。東神楽町(77位、310万円)、旭川市(108位、298万円)、鷹栖町(139位、286万円)など、帯広圏と比較して明らかに少ない。
 卑近な話では、帯広市内のレストランは、旭川市内よりも明らかに単価が高い。具体的なエビデンスがあるわけではないが、「この価格帯、旭川なら客が付かず経営に行き詰まるはず」と思えるような店も繁盛している。
 観光客を含めた消費者の旺盛な購買力は、「北の屋台」に行けばよくわかる。小さな飲食店を並べた屋台街が、帯広ではすっかり定着したが、旭川では同じような施設が現れては消えていき、「ここはれて」でようやく軌道に乗ったように見える。
 わかりやすい違いは、帯広市内にはベンツの販売店があり、旭川市内にはないということだ。台場にあるのは「ヤナセ札幌支店 メルセデス・ベンツ札幌月寒 旭川サービスセンター」で、整備拠点に位置づけられている。営業マンは札幌から出張してくる。

釧路のような廃墟にならない
 ただ、帯広圏にも不安要素がないわけではない。昨年から今年にかけて、大型商業施設の閉鎖に関する動きが相次いだ。今年1月には地元資本の百貨店・藤丸が閉店。7月には長崎屋も閉店、現在同じ建物で営業しているテナントも来年3月末にすべて撤退する。10月にはイトーヨーカドー帯広店の来年6月閉店が発表された。しかし、地元経済界の状況に詳しい人物は楽観的だ。
 「藤丸の閉店は、2011年に道東道が開通して札幌と帯広が高速道路で結ばれ、ストロー効果で買い物客が札幌に向かうようになった影響が大きいが、建て替えと再開発の方針がすでに決まっている。長崎屋の土地と建物は、大手建設会社・宮坂建設工業(本社帯広)の持ち株会社が取得し、数年以内に新施設を建てる方針。イトーヨーカドー閉店はセブン&アイ・ホールディングスの経営方針見直しが理由であり、土地と建物は上場企業の日本甜菜製糖が所有していることから、何らかのかたちで活用されるはず。釧路市中心部のように大きな建物がいくつも長年放置され、廃墟になるような状況は、帯広では起こらない」
 現在、帯広圏の経済状態は悪い。農業は酪農や畜産の比重が高いが、国際的な飼料の値上がりに円安が重なり、採算が悪化している。建設業界も農業土木や施設の建設などを通じて農業との関わりが深く、悪影響を受けている。
 それでも、十勝地方は年間4000億円近い出荷額を誇る「農業王国」。中川一郎・昭一親子の政治力という遺産があり、多額の農業関連補助金を積極的に獲得している。
 この地域の農業の強さは、農協間に合併の動きがないことでも明らかだ。全道各地で農協が合従連衡を繰り返して規模を拡大してきた。旭川でも現在、農協間の交渉が続いている。一方、十勝地方では23の農協が独立経営を維持しており、「合併しなければ生き残れない」との危機感はない。
 現在、旭川と札幌を中心とする道央圏の間の格差は極めて大きく、とても「ライバル」とは呼べない。今後、半導体メーカーが操業し、新幹線が延伸し、五輪が開催されれば、差はもっと大きくなるはず。うかうかしていると、帯広にも追い越され「道北・道東で最大の都市」の地位を失うかもしれない。

この記事は月刊北海道経済2023年12月号に掲載されています。
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