介護保険3億円以上余分な給付 地団駄踏む旭川市

 高齢化が進む中で増え続ける有料老人ホーム。老人福祉の根幹に関わる施設だけに、設置の際には当然、行政機関への届け出が必要なはず。しかし現実はなぜか〝未届け〟が〝届け出〟を上回っている。旭川市内ではこの状況がことさら顕著。そのため市は介護保険の※住所地特例を適用できず、年間3億円以上(本誌推定)も余分に給付するという状況が生まれ、市民が納める介護保険料の上昇にもつながっている。

グループハウスの名のもとに未届け
 有料老人ホームは、老人福祉法第29条に規定された高齢者向けの生活施設で、介護付き、住宅型、健康型に分類される。現在最も多いのが住宅型で、旭川市内でも大半が住宅型の有料老人ホーム。
 住宅型でも、入浴や排せつ、食事の世話など日常生活に必要なサービスを受けられるため、一般的には老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や老人保健施設などと同じ介護施設と思われがちだが、住宅型の介護サービスは訪問介護や居宅介護支援など外部からの派遣で行われる形になっており、制度的には介護施設とは言わず、介護を受ける環境の整った高齢者向け住宅なのである。
 この有料老人ホームを設置する場合、老人福祉法第29条は「施設を設置しようとする地の都道府県知事に届け出なければならない」と定めている。しかしこの〝届け出〟が履行されていない施設が全国的に数多く存在し、中でも北海道は〝未届け〟が〝届け出〟を圧倒的に上回り(昨年10月の厚労省調査)、旭川市内ではさらにその傾向が顕著に表れている。
 届け出ることが法律に定められていながら、なぜ未届け施設が多いのか。それは、以前は有料老人ホームの定義があいまいで、実態は有料老人ホームでありながら、老人福祉法が適用されない単なる高齢者向け住宅として設置される施設が多かったからである。
 そしてこうした施設は、介護付き有料老人ホームの総量規制が始まった06年頃から有料老人ホームの定義が明確になった12年頃にかけ、老人福祉法の網にかからない、行政への届け出もいらない「グループハウス」という名称で、どんどん普及を続けた。

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この続きは月刊北海道経済2014年12月号でお読みください。
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